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レベル3 私に任せてくれ

「ここがレバ村西の森か」


 手早く薬草と解毒草採取の依頼を終わらせた俺たち四人は、経験値を稼ぐために採取ポイントから少し行ったところにある森へと来ていた。


 ここのモンスターは村周辺の草原のモンスターよりも強いものの、根を張っていてその場から動かない植物型のものが多いらしい。なのでヤバくなったら全力で逃げれば死ぬことはないだろう、たぶん。


「狩りまくってレベルアップしますわ!」

「うむ、今日中に2はレベルを上げたいところだな」

「がんばろうネ!」


 みんな気合十分のようだ。


 俺も初めての本格的なレベリングを前に、気分が高まってくる。


 この世界に来てからは生活費を稼ぐための依頼ばかりで、本格的にモンスターと戦ってなかったからな。今日は森のモンスターを全滅させる勢いで頑張ろうと思う。


「色々あったけど、ようやく勇者の冒険っぽくなってきたな」

「あら、アキラはまだまだですわね。私はとっくに勇者一行として活動してますわ」


 その活動のせいで指名手配されているわけだが、今は黙っておくことにしよう。


 ちなみに森に入る前に改めてステータスをみんなでチェックしてみた。


 キナコがレベル3でその他は全員レベル2である。


 攻略本によると、スキルや魔法はレベルアップや本人の行動に応じて覚えていくらしい。レベルアップではその人に素質があるものを覚えることができ、レベルアップで覚えることができなくても努力次第では覚えることができるようだ。


 俺の場合は攻略本を眺めまくった結果鑑定のスキルを覚えたので、他のみんなも何かスキルを持ってるかもしれないな。


「ユリカってスキルとか覚えてるのか?」

「私は忍び足と逃げ足と鍵開錠を覚えてますわ」

「レベルアップで覚えたのか?」

「いいえ、私の普段の努力の賜物ですわ!」


 足音を消すスキルと逃げるのが早くなるスキルと鍵を開けるスキルか。どういう努力をしたのか非常に気になるところだけど、この話は聞かなかったことにした方がいいかもしれない。よし、聞かなかったことにしよう。


「キナコとカンナは何かスキル持ってる?」

「私は忍び足と気配察知を覚えたヨ」

「私は回復薬調合というスキルが手に入ったぞ」


 キナコのスキルは狩りで手に入れたものだろう。カンナの回復薬調合ってのはそのまま回復薬が作れるスキルなのだろうか?


「作った回復薬を見せてもらってもいいかな?」

「いいぞ、存分に見てくれ」


 カンナから薬を受け取り、早速スキルで鑑定してみる。


【謎の白い粉】高い回復効果があるものの、幻惑や興奮、混乱などの状態異常を引き起こす。依存性:中


 依存性のある回復薬ってなんだろう。


「……この白い粉は本当に回復薬?」

「回復薬だ」

「もしかしてやばいものなんじゃ……」

「回復薬だ」


 うん、そうだね。本人が言うならきっと回復薬だね。


 きっと使い慣れてないスキルだから間違った結果が表示されてるだけだよね。


 気にしててもしょうがないし、とりあえず森に入ってみようかな。


「それじゃそろそろ森に入ろうか」

「先頭は私に任せてネ」


 そう言いながらキナコが率先して森に入って行ったので、俺たち三人も遅れないように森に入る。


 森は思ったより暗くて入り組んでおり、はぐれたりしたら大変そうだ。

 そんなことを考えながら歩いていると、どうやらキナコがモンスターを発見したらしい。


 地面に根を張る植物型のモンスター、人食い草である。


 人食い草が あらわれた!


「思ったよりでかいな。どうやって倒そうか」

「ふむ、私に任せてくれ」


 そういうとカンナは懐から白い粉の入った袋を取り出し、盛大に人食い草に振りかけた。


「グォォォォォ」


 最初は幻覚を見ているのか暴れまくっていたものの、しばらくすると幸せそうな様子でグッタリとしだした。よだれなのか蜜なのかわからないが謎の液体を垂れ流していて見ていて不気味である。


「よし、バッチリとキマッたようだな」


 一体何がキマッたんですかね。


「やっぱりその白い粉ってなんかやばいもの……」

「回復薬だ」


 もう何も言うまい。


「今のうちにこいつを倒すぞ!」

「行きますわよ!」

「おー!」


 気合の掛け声ともに四人で人食い草を囲んでひたすら攻撃しまくる。途中正気に戻った人食い草がユリカを攻撃しだしたが、見事な身のこなしですべての攻撃を回避し、無事一匹目のモンスターの討伐に成功した。


「ふー、なんとか倒せたな」

「村の警備兵の攻撃に比べたら全然大したことなかったですわ」

「もっと薬漬けにした方がよかっただろうか」


 ユリカとカンナが何か言っているがかかわらないでおこう。


 キナコはどうしてるかなと思って見てみると、自分の武器をじっと見つめているところだった。


「どうかしたのかキナコ?」

「うーん、もっと武器が強ければいいなって思ってネ」

「確かになぁ」


 今俺たちが装備しているものは、森で拾ったこん棒や棒に石を巻き付けた石斧という原始人スタイルである。早くちゃんとした武器を買って現代人へと進化したいところだが金がない。


「早くお金を貯めて新しい武器買おうな」

「ん? 金が欲しいのか? なら良いクエストがあるぞ」


 そういうとカンナは一枚の紙を俺に手渡してきた。


『ここ最近この村に怪しげな女が出没するようになった。私は勇者一行ですわ、というわけのわからないことをしゃべりながら民家のツボやタンスをあさり、さらに若い娘の下着を盗っていくという。この女の特徴は全身黒タイツに怪しげな覆面、それから特徴的な口調である。この女を捕まえた者には賞金として百五十ゼニーを支払おう。       警備兵長・ゴンザレス』


「村を出る時に警備兵から貰ったんだが、なかなかいいクエストじゃないか?」

「いやいやいや! この依頼は受けないからな!」

「フフッ、冗談だ。仲間を売るなんてこと、私はせんよ」


 その右手のロープは何に使うために準備したのかな?


「そうだネ! やっぱり仲間は大切だよネ!」

「うむ、その通りだ。やはり仲間同士助け合っていかなければな」


 カンナ、言ってることは立派だが目が泳ぎまくってるぞ。売る気マンマンじゃないか。


「助け合いなら私の出番ですわね。私は元の世界ではやさしさのカタマリって言われていたほどですわ」

「それはどう考えても、やらしさのカタマリの聞き間違いだろ」

「酷いですわアキラ! 大切な仲間に向かってなんてこと言うんですか!」


 わいせつな仲間なんだよなぁ。


「ところでユリカ、今朝俺のパンツが行方不明になったんだがどこに行ったか知らないか?」

「……さーてそろそろ休憩も終わりにして狩りに行きますわよ」


 そう言いながら逃げるように森の奥へと入って行くユリカ。その動きは戦闘の時よりも二倍くらい素早い。


 ユリカ一人で行かせるわけにはいかないので、俺も急いで森へと入る。他の二人の同情的な視線を背後に感じながら。





 あれから一時間ほど森の中を行ったり来たりしながらモンスターを倒し、無事全員のレベルを一ずつ上げることができた。レベルが上がったこと自体は嬉しいのだが、いまいち効率が悪い気がする。


「やっぱり武器が弱いから一匹倒すのに時間がかかってしまうなぁ」

「さっき手に入った人食い草の素材を売れば、少しはマシな装備も買えるんじゃないか?」


 攻略本によればモンスターの素材は売れるらしいが、怪しい白い粉が大量にかかったブヨブヨしたツルなんて売れないだろ。それにツルを持つ手がネチャネチャして気持ち悪い。俺はコッソリとツルを捨てた。


 疲れのためか思考が鈍くなってきたため休憩しようかなと考えていると、前を歩いていたキナコから声がかかる。


「みんな、モンスターを見つけたヨ!」


 キナコが指を指した方を見ると、そこには二匹の密集した人食い草がいた。さらに森の木を挟んだ隣にも、二匹の人食い草が密集している。


「四匹か。これは無視した方がいいんじゃないかな?」

「そうですわね。これはちょっと厳しいですわ」


 一匹倒すのにも時間がかかる現状、この数を倒すのは無理だろう。


 キナコもどうやら俺たちの意見に賛成の様で、モンスターからは距離をとっている。


「ふっ、ここは私の出番だな」


 そういうとカンナはカバンから火炎瓶を取り出して、火をつけてモンスターに投げ放った。


「なんでそんなもの持ってるんだ?」

「役に立っただろう?」


 うんまあ役に立ったけどさ。


 カンナがさらに追加で火炎瓶を投げたこともあり、人食い草がすごい勢いで燃えていく。燃え盛る炎が森の木にも燃え移り、さらにその隣の人食い草にも燃え移っていく。


「おいおいおい、森が燃えてるじゃないか! 早く消化しないとやばいだろ!」

「待て!」


 どうやって火を消すかを考えていた俺に、カンナの鋭い声が聞こえてきた。


 *レベルアップ! アキラはレベル4に上がった!*


 その直後、頭の中にレベルアップのファンファーレが響く。どうやら燃え移った炎が人食い草を倒したらしい。


「私の予想通りだな」


 予想通り? 一体なんのことだろうか。


「燃え移った炎がモンスターを倒した場合でも経験値が入るということだ」


 そういうとカンナは俺を含めた仲間たちに火炎瓶を配っていく。


「大量レベルアップのチャンスですわ!」

「さすがカンナだネ」


 そう言いながらユリカとキナコは盛大に森を燃やし始めた!


「ちょっと待て! さすがにこれはヤバいだろ!」

「大丈夫だ。村の人間はこの森には近づかないので人的被害は出ない。つまりこれはモンスター退治なんだ」

「モンスター……退治?」

「そうだ。村の人も言っていただろう。この森の人食い草が生息域を森の外にまで広げ始めたせいで、薬草の採取がやりにくいと」


 そういえばそんなことを言っていた気がする。確かそのおかげで薬草採取の依頼が毎日あるんだったな。


「森を焼くのは村の人間のためなんだ。さあ、一緒に森を焼こう」


 なるほど、村人のためか。それなら勇者として頑張ってモンスターを倒さないとな!


「よし! 燃やそう!」

「おお、アキラもわかってくれたか」


 そう言いつつカンナはさらに火炎瓶を俺に渡してくる。


「村の人間のために頑張ろうじゃないか!」

「おう!」


 こうして俺たち四人は盛大に森を燃やしまくった。


 *レベルアップ! アキラはレベル8に上がった!*


 *【称号】放火人を手に入れました!*





「いやー、いいことをした後は気分がいいな」

「本当ですわね」


 森を燃やし大量の経験値を得た俺たちは、現在村へと帰る途中である。


 途中頭の中にアナウンスが流れた気がしたが、モンスターを退治するのに集中していたためどんな内容だったのかはっきりと覚えていない。宿屋に帰ってから確認すればいいだろう。


 次はどこで経験値を稼ごうかと考えていると、正面から村の警備兵の団体が歩いてくるのが見えた。


「ゴンザレスさんじゃないですか。どうしたんですか」

「おお、アキラ殿。ご無事ですかな?」


 先頭を歩いていたのは警備兵長であるゴンザレスさんだ。その後ろには村の警備兵の人が武器を持った状態で三人立っていた。何かあったのだろうか?


「皆さんこんな時間にどうかしたんですか?」

「東の森が盛大に燃えているのが見えましてな。邪悪な魔族が火を付けたのではと村人の間で噂になったため、念のため見に行くことにしたのです」


 なるほど邪悪な魔族か。さっきまで森にいたけどそんな存在は見てないな、うん。


「森を焼くなんて頭がイカれてやがるぜ」

「まったくだ。今回は俺たちに被害がなかったからいいものの、村を焼かれでもしたらたまったもんじゃねぇな」

「さっさと犯人を見つけてしまいたいぜ」


 どうやらゴンザレスさんの後ろに居る警備兵の人たちは、森を燃やした存在をかなり危険視しているようだな。


 ……。


「アキラ殿は、森の周辺で怪しげな人物などは見かけませんでしたかな?」

「……。黒いフードを被った怪しげな男がうろついているのを見ました!」

「おお! そうですか! 情報提供感謝しますぞ」


 そういうとゴンザレスさんは警備兵の人を率いて森の方へと歩いて行った。

 ゴンザレスさんを見送ってから仲間の方を見ると、皆一様に微妙な表情を浮かべていた。


「まさかこんなことになるとは、予想外だ」


 カンナの呟きに一瞬頷きかけるものの、よく考えたら予想通りすぎる展開だろ。俺は何をやっていたんだ?


「あの、皆さんちょっといいですか?」

「どうしたんだ? ユリカ」

「先ほどまで私のステータスに、状態異常の混乱が付いていましたわ。皆さんも付いていたんじゃありませんか?」


 はっきりとは覚えていないものの、言われてみれば確かに混乱の状態異常が表示されていたような気がするな。


 とりあえず攻略本で混乱の状態異常を調べてみる。


『【混乱】正気を失う。正常な思考が出来なくなる。』


 なかなか厄介な状態異常のようだな。もしやこれのせいで森を燃やしまくってしまったのか?

 いつの間にこんなものにかかってしまったのかと考えていると、数時間前の鑑定結果が頭に思い浮かんできた。


【謎の白い粉】高い回復効果があるものの、幻惑や興奮、混乱などの状態異常を引き起こす。依存性:中


 そういえば白い粉が大量にかかったモンスターをみんなで囲んで攻撃しまくっていたな。


「おいカンナ」

「さて、お腹もすいたことだし急いで宿屋に戻ろうじゃないか」


 カンナは 逃げ出した!


 しかし回り込まれてしまった!


「しっかりと説明してもらいますわよ」


 ニッコリとした笑顔でカンナを捕まえるユリカとキナコ。表情は笑顔だが、その威圧感はまるでボスモンスターだ。


 残念だったなカンナ。イベント戦は回避することはできないのだ。


 カンナ追及イベントのため、俺たちは急いで宿屋へと戻るのだった。


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