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レベル28 決戦だネ

 アンデッドモンスター並みの酷い見た目で村へと帰った俺たちは、宿屋のベッドで爆睡した。二日ぶりの睡眠が心地よい。どれだけでも眠っていられそうだ。しかしそんなわけには行かない。俺たちには大事な使命があるのだから。


 疲れ果てていたにも関わらず、村を出る予定の時刻の一時間前には自然と目を覚ましていた。


「村を救うぞ」


 短い言葉とともに、俺たちは宿屋をあとにする。


 歩き続けて村の出入り口に来た時、そこに俺たちのよく知った村人たちが待ち構えているのを発見した。


「頼んだよ、みんな。失敗したって気にしないから、危なくなったら逃げるんだよ」


 女将さんと、道具屋のおっちゃん、それから武器防具屋のおっちゃんたちだ。


「これは俺たちで集めた薬草だ。魔物の討伐に役立ててくれ」


 そう言って、両手で持ちきれないほどの薬草を俺たちに渡してくる。俺は貰った回復薬を無限のアイテム袋へと入れていく。


「ありがとう、みんな。必ず倒してくるから」


 そう言って村を出る。村の周りの草原をしばらく歩くと、また人が立っていた。ゴロツキたちだった。


「お頭! それに姉御たち! とうとう、行くんですね」


 三人のゴロツキたちは、手に持っていた袋を俺たちへと渡して来る。


「肝心な時に役にたてねぇ自分たちの弱さが、情けねぇ。その袋には、俺たちが依頼で稼いだ約束の金が入っていやす」


 すっかり忘れていたが、そういえばそんな約束もあったなぁ。


 袋を受け取ると、思った以上に重量感があった。明らかに約束の金額よりも多い。こんなに貰ってもいいのか?


「何も言わず、受け取ってくだせぇ。俺たちにはこれくらいしかできませんから。どうか役に立ててくだせぇ」

「今から決戦だから、アイテムを買いに行くことはできないけどな」

「ああ、そういえばそうだ! 俺としたことが!」

「いや、いいよ。その気持ちが嬉しいんだ。それに、金はいくらあっても困らないからね」


 まさかあの、子どもたちからカツアゲをしていたダメダメなゴロツキたちが、ここまで変わるとは。そのことが一番の驚きだ。


 俺たちはゴロツキたちの声援を背に受け、さらに迷いの洞窟へと歩みを進める。


「いよいよだな。ここから私たちの勇者伝説が始まるのだ」

「ああ、長く苦しい戦いになるだろうが、頑張ろうぜ」

「苦しい時には、この世界での思い出を思い浮かべましょう! そうすれば、きっと力が湧いてくるはずですわ!」


 この世界に来てから、いろんなことがあったよなぁ。


 目を瞑ると、大切な思い出たちが次々と頭の中へと浮かんでくる。


 村について数日で、ユリカは指名手配されていたなぁ。それにいきなり森を焼きつくしてしまったっけ。三日前にはパンツ泥棒もしたな。あれ、おかしいな。ロクな思い出がない。力がどんどん抜けていくんだが?


「この世界に来てからの輝かしい思い出たちが、走馬灯となって私の中を駆け巡りますわ!」


 走馬灯は死ぬ間際に見るものだろ。戦う前から死にかけてるんじゃねぇよ。 


「この雰囲気、私がボス戦直前にアカウントを凍結された時を思い出すな。待っていろよ悪のクソGMゲームマスターめ。私が成敗してくれる!」


 気合を入れるのはいいけど、まったく関係のない私怨をぶつけるんじゃない。あと、今まで聞いた話を総合すると、どう考えても悪いのはチートを使ったカンナだ。


「こんな時でもみんないつも通りだなんてネ。緊張感がないのかナ?」


 そう言いながらキナコは、アイテム袋から干し肉をとり出して食いまくっていた。お前はいつも以上に緊張感がないだろ。


 どうでもいいことを話しているうちに、気が付くと狼がいる部屋の入り口へと到着していた。中からいびきが聞こえてくるから、攻略本の通りちゃんといるみたいだ。もう着いてしまったのか。作戦とか何にも考えてないぞ。


「突然だが、どんな風に戦うかを事前に決めておかないか?」

「そんなものは必要ないだろ。いつも通り戦えばいい」

「いつも通り戦いましょう!」

「いつも通り戦おうネ」


 いつも通りか。付け焼刃の戦い方なんて無駄になるかもしれないし、そっちの方が良いかもしれないな。よし、いつも通り戦おう! ところで、俺たちっていつもどんな風に戦っていたっけ。毎回格下相手にワンターンキルだったのでいまいちハッキリとしない。まあいっか。何とかなるだろう。


 俺たちが部屋へと入ると、人型の狼が殺気を放ちながら腕を組み、こちらを見下ろしていた。


「待っておったぞ人間どもよ。お前たち人間を八つ裂きにするのが楽しみ過ぎて、夜も眠れぬほどだったわ」

「さっきまで思いっきり寝てたよネ?」

「……」


 いきなりの先制攻撃が決まった。いいぞ、今日もキナコは絶好調だな。


「待っておったぞ人間どもよ。さあ、我の糧となるがよい」


 ナチュラルになかったことにしたな。見た目通り、ごまかし方もパワータイプだ。


「森を焼きつくした邪悪な魔物は、勇者ユリカが成敗してくれますわ!」

「同じく、勇者カンナが天誅を下す!」

「勇者キナコも居るんだヨ!」


 しまった、出遅れた。俺も急いで名乗りを上げなければ。


「真の勇者である勇者アキラだ! 覚悟しろ!」

「うるせぇ! 何人勇者居るんだよ! どうせ勝手に名乗ってるだけだろ! つーか、森を焼いたのはてめぇらの方じゃねぇか!」

「その真実を知っているなんて、生きて返すわけには行きませんわね」

「うむ、私のメイスが血を求めておるわ」

「お前らの方がよっぽど魔族っぽいなおい。こっちはな、この世界に転移した瞬間焼き殺されかけたんだからな。燃やされた恨みを晴らす日を、どれだけ待ち望んだことか」


 話を聞いた感じだと、この二足歩行狼は俺たちが森を焼いているときに丁度森の中へと転移して来たらしい。運の悪いやつめ。


「ふむ、転移か。魔界からやって来たとか、そんな感じか?」

「その通りだ。我の名はウルモフ三世。魔王様が最も信頼を寄せる男である」

「この狼ウソをついていますわ! 魔王が信頼する魔物がレベル10しかないなんておかしいですわ!」

「ウソツキだネ!」


 ウルモフ三世か。名前の由来はウルフでモフモフしてるからかな? おっと、今はそんな事はどうでもいいな。


「仕方ないだろ! この世界には魔界のレベルを持ち越せぬのだから! あっちではレベル40のバリバリの強者だったわ!」

「どうせ魔界ではウダツの上がらない中級魔物だったから、無双するためにこっちの世界に転移してきたのだろう? 私にはわかるぞ」

「ぐぉぉぉぉお、ぐごごごご」


 ダメージ受けすぎだろ! 本当に無双目当てで転移して来たのかよ!


「貴様ら、触れてはならぬところに触れてしまったな。声を荒げることすらほとんどないほど温厚なこの我を怒らせるとは、命はないと思えよ」


 いや、さっきから声荒げまくってただろ。どんだけ触れてはならぬところがあるんだよ。全身触れてはならぬところなのか?


「ゆくぞ! 八つ裂きにしてくれるわ!」



 キラーウルフ 【ウルモフ三世】が あらわれた!


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