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レベル22 強敵との遭遇ですわ

 村で買える一番強い武器を買ったし、ゴブリンの塔も攻略した。レベルも十分だしそろそろ次の村へと行く頃合いかもしれない。朝食代わりの焼き鳥を買い食いしながらそんなことを四人で話していた、その時だった。


「ゴンザレスさんたちが帰ってきたぞー!」

「誰か回復薬を頼む! あるだけ持って来てくれ!」


 長らく村を開けていた警備兵長のゴンザレスさんと、その仲間の警備兵たちが村へと帰ってきたみたいだ。

 村の入り口を警備していた警備兵たちの叫びが村へと響き渡る。焦りを含んだその声音から、良くないことが起こったということは容易に想像出来た。


「行ってみるぞ」


 俺たちは声のした方へと走り出す。しばらく移動すると、村の入り口へと到着した。そこには既に話を聞きつけた村人たちが集まっており、ゴンザレスさんたちの姿を確認することはできない。


「一体何が起こったんだ。これじゃあわからないな」

「私に任せテ!」

「スキルの使いどころですわ!」


 ユリカとキナコお得意の盗み聞きにより、何が起こったかを確認するようだ。

 情報を集めるために真っ先にすることが、周りの人に話を聞くのではなく盗み聞きという時点でこのパーティは色々とダメだと思う。なんてコミュニケーション能力のないパーティなんだ。


 いや、コミュ力のなさを嘆いている場合ではない。コミュ力がないのなら身に着ければいいんだ。思い立ったが吉日。早速周りの人に話しかけてみよう。


「あのー、何があったんですか?」

「あん? 今忙しいんだ話しかけんじゃねーよ」


 うん、情報が手に入るなら盗み聞きだろうが何だろうが別にいいよね。コミュ力なんてなくてもいいよね。俺は速攻でコミュ力を諦めた。


「ふむふむ、なるほどですわ。そういう事ですのね」

「おっ、ユリカ何か分かったのか!?」

「ええ、人が多すぎて警備兵さんたちの会話が上手く拾えませんわ。何もわからないということがわかりましたわ」


 思わせぶりなセリフから、クソのような情報。スキルはまったく役に立っていなかった。


「ナルホド、ようやくわかったんだヨ」

「おお、何があったか分かったのか!?」

「何もわからないということがわかったヨ」


 やっぱりキナコも駄目だった。


 これだけ人がいる中からから、特定の人物の会話を拾うというのは無理があるのかもしれない。


「ふっ、情報なら私に任せてもらおう」


 声のした方を見ると、カンナが人をかき分けてこちらへと近づいてくるところだった。そういえばさっきから姿が見えなかったな。どこに行っていたのだろう。


「お得意様の警備兵の姿が見えたので、話を聞いて来た。どうやらかなり厄介な事になっているようだ」


 カンナの独自のネットワークのおかげで情報を得ることができそうだ。しかしお得意様か。なんのお得意様だろう。


「朝からばっちりキマッていたからお得意様だと遠目ですぐにわかった」


 ばっちりキマッていたってのは、鎧姿がカッコよくキマッていたとかそんな感じだよね。そうだと思いたい。


「その警備兵から聞いた話によると、強力な狼型の魔物によりゴンザレスさんのパーティは大ダメージを受けたらしい」


 なるほど、回復薬が必要だと叫んでいたのはそのためか。


「魔物は倒せたんですの?」

「いや、駄目だったらしい。嗅覚を狂わせる煙幕を使いなんとか逃げてきたと、そう言っていた」


 狼型の魔物と言えば、二日前にゴンザレスさんが戦っているのを攻略本で見たな。確かアレは迷いの洞窟だった気がする。


『迷いの洞窟 推奨レベル:10』


 !? このダンジョンは二日前は推奨レベル4のダンジョンだったはずだ。なんでいきなり推奨レベルが倍以上に跳ね上がってるんだ?


 もっと詳しく攻略本を読んでいく。


『ダンジョンBOSS キラーウルフ レベル:10』


 こいつか、このボスのせいで攻略に必要なレベルが一気に増えてしまったのか。


 しかしおかしい。このモンスターは二日前の時点ではレベル4だったはずだ。この短い時間で6もレベルが上がるなんて、チートもいいとこだろ!


 きっとこいつがゴンザレスさんたちにケガを負わせたに違いない。チートにモノを言わせて戦うなんて卑怯だぞ!


「みんな、速攻でレベルが上がるチートモンスターがいるみたいだ」

「なに!? チートだと? 許せん! みんなが苦労してレベルを上げているのに自分だけサクサクレベルを上げるなど、言語道断だ!」

「その通りですわ! 正義の鉄槌を下すべきですわ!」

「成敗してやるんだヨ」


 チート、ダメ。ゼッタイ。コンザレスさん、カタキはとってやるからな。


 しかしそれにしても、周りにいる冒険者たちの視線がやけに痛いような……。「ちょっと前まで初心者だったくせにあっという間にブロンズシリーズの武器を揃えやがって」とかなんとか聞こえてくるような気がする。確かに少し前まで村一番の冒険初心者だったけど、それがどうかしたのかな?


 いや、今はそんなことはどうでもいいか。それよりもすぐに迷いの洞窟へと出発するべきだ。卑怯な手段を使うモンスターなんて、袋叩きにしてやるぜ!


「みんな、迷いの洞窟へ乗り込むぞ!」

「「「おー!」」」


 *【称号】棚上げを手に入れました!*





「ここが迷いの洞窟か」


 この洞窟は、方向感覚を狂わせる霧が発生していて迷いやすいことから、そう名前が付いたみたいだ。しかし攻略本を持っている俺には関係ない。一直線にボスがいる部屋に向かおう。


 洞窟を歩き始めて三十分ほど経ってから、俺たちは異変に気が付いた。モンスターと遭遇しないのだ。どうやらキラーウルフに全員倒されてしまったみたいだ。魔物が魔物を倒した場合でもレベルアップするという、新発見である。


「それにしても、すごい臭いだネ」

「逃げるために悪臭を放つ煙球を投げまくったらしいからな」


 これだけ臭いが充満していると、いくら鼻が利く魔物であっても臭いで人間をたどるのは不可能だろう。


「皆さん、動物の寝息らしき音が聞こえますわ。静かに静かに近づきましょう」


 かなりボスへと近づいてきたな。しかも寝ているらしい。これはチャンスだ。


 いくつか角を曲がり、ボスが寝ている部屋の入り口へと到着する。こっそりと中を覗き込むと、そこには巨大な人型の狼が眠っていた。


「ぐぉぉぉぉぉ。ぐぉぉぉぉ」


 なんかやたらとでかすぎないか? というか迫力がありすぎるんだが。


 鑑定スキルで覗き込んだ結果、狼のレベルは10だ。つまり俺たちと同じである。しかし同格の魔物とは思えない気配を放っている。危険を感知するスキルなんてもってないけど、一目でわかる。こいつはヤバい。


 キナコは後ずさり、ユリカとカンナは冷や汗を流している。こいつのことをヤバいと思っているのは、俺だけじゃないみたいだ。


「みんな、のまれるんじゃない。集中するんだ」

「アキラ……」

「俺たちはこんな時のために、レベルを上げ、ステータスを強化して来たんだろ?」

「そうだな、私たちの努力の成果を今こそ見せる時だ」


 キナコが無言でうなずく。その表情は、何をするべきかをはっきりと理解している。ユリカとカンナも、やるべきことはわかっていると、瞳がそう語っている。


 狼の耳がぴくぴくと動きだした。そろそろ目を覚ますのかもしれない。ゆっくりしている時間はないな。


 相手は格上の魔物だ、失敗は絶対できない。チャンスは一度きり。


「みんな、俺に続けよ」


 全員がうなずいたのを確認して、俺は一気に走り出す。洞窟の出口へと向かって。


 アキラたちは にげだした!


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