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レベル20 やっぱりユリカは変態だネ

 うーん、太陽の光がまぶしいな。時計を確認すると十時と表示されていた。朝早く起きるつもりが、大分寝過ごしてしまった。


 周りを見るとまだ全員寝ているようだ。俺が一番起きるのが遅かったと思ったけど、逆だったみたいだな。これなら安心して二度寝できるぜ。穴を掘る作業は……昼過ぎからでもいいよね!


 それにしても、カンナはなんでパンツを頭に被って寝ているんだろう。これがユリカの言っていた教育というやつなのかな。理解不能だ。


 おっと、今はそんなことはどうでもいいか。それよりも二度寝だ。朝の貴重な時間をこれ以上無駄にするわけにはいかない。おやすみー……。


「邪悪な魔物め! 俺たちが成敗してくれる!」

「ボスの部屋にはどんなトラップがあるかわからんぞ。みんな気を付けろ!」


 勢いよく扉が開けられた音とともに、複数の足音が部屋の中へと入ってきた。

 な、なんだ!? 何が起こってるんだ?


 ボス部屋の入り口の扉を見ると、いかにも冒険者っていう雰囲気の男たちが六人、ボス部屋に入ってきたところだった。

 この顔は見覚えがあるぞ。この人たちはレベ村の冒険者だ。


 よく見てみると服装は土にまみれており、背中にはスコップを担いでいる。あまり寝ていないのか、目の下にはクマができていた。


 間違いない。この冒険者たちは徹夜で土を掘ってダンジョンへと侵入して来たのだ。

 土を掘らなくてもダンジョンから出られるなら安心して二度寝ができるな。そう思ったものの、冒険者たちの次の言葉で完全に目が覚める。


「こいつらがダンジョンのボスだな! 覚悟しろ!」

「まさかボスが四人も居るとはな。だが、俺たちの敵じゃないぜ!」


 いやいやいや待ってくれ。俺たちのどこにダンジョンボスの要素があるというのか。どこからどう見ても善良な人間だ。


*【称号】ウソツキを手に入れました!*


 俺たちはどこからどう見ても善良な人間だ!


*【称号】ウソツキを手に入れました!*

*【称号】レベ村への嫌がらせ・プロを手に入れました!*


 脳内アナウンスとは一度徹底的に話し合う必要がありそうだな。俺がいかに素晴らしい人間かを説明する必要があるね。しかし今は時間がないのでまた今度だ。早く冒険者たちの誤解を解かなければ、手遅れになってしまうかもしれない。


 説明のために脳内の葛藤から現実へと復帰して冒険者たちの方を見ると、冒険者たちは一人残らず意識をもうろうとさせて座り込んでいた。


「ふむ、やはり私の回復薬は効果抜群だな」


 駄目だ、もう手遅れだ。


「ふあ~まだ眠いな。三度寝をするとするか。いや待てよ。折角だから回復薬をたっぷりと与える実験をするのも悪くないな」

「カンナぁ。三度目にして最後の眠りにつきたくなかったらこれ以上余計な事するんじゃないぞ」

「ア、アキラ起きていたのか。もちろん冗談だ。そんなことするわけないだろう?」

「本当か?」

「本当だ! ほらよく見てみろ。私のアイテム袋の中身はもうカラだ」


 本当に冗談だったみたいだ。まったく紛らわしい。


「おはようですわ」

「おはようだヨ」


 ユリカとキナコも起きてきた。ユリカはともかく、寝ている時も気配に敏感なキナコが今起きてくるなんて珍しい。


「寝たふりから不意打ちをしようと思ったケド、カンナに先を越されたんだヨ」


 よく見ると右手にブロンズナイフを握りしめている。うん、良かった。ナイフの一撃に比べれば、カンナの薬の方がまだマシだ。


「冒険者をナイフで攻撃したらだめだからな?」

「大丈夫だヨ。ちゃんと峰打ちするつもりだったからネ」


 両刃のナイフのどこに峰があるんですかね。


「冒険者を攻撃したら駄目だぞ?」

「でもあの人たち、やっぱりあの四人が諸悪の根源だったか、とか村長に報告だ、とかこっそり言ってたヨ」

「よし! 記憶が曖昧になるくらい殴ってもいいぞ! カンナも好きなだけ薬をぶっかけるといい」


 あいつらの記憶は抹消しておかなければ。俺もカンナからメイスを借りよう。


「落ち着くのだアキラよ。ここで冒険者をボコボコにしては、それこそダンジョンボスだ」

 

 真っ先に攻撃したカンナに言われるのはちょっと悔しい。しかし、確かにその通りだ。やはり無実の冒険者をボコボコにするのはまずい。


「記憶に関しても安心するといい。あの様子だと、幻覚を見たのだと勘違いしてくれることだろう」


 冒険者たちを見ると、皆幸せそうな顔で虚空を眺めている。安心したけど安心できない光景だ。


「アレは本当に大丈夫なのか? なんていうか、副作用とかヤバそうなんだけど」

「大丈夫だ。私自身で薬の効果を試したこともある。それほど問題はない」


 それほどってのがすごく心配だけど、今はカンナの言うことを信じよう。


「そもそもあの薬の幻覚効果は、気合があればレジストできる。あの冒険者たちが未熟なだけだ」

「ああ、薬の効果は状態異常効果扱いなのか」

「そう言うことだ」

「ん? 今状態異常が出ることを認めたな?」

「私は何も言っていないぞ。朝から幻聴でも聞いたのか? まったく困ったやつめ」

「ああ、カンナの薬を少し吸い込んでしまったかもしれないな」

「なるほど、それは仕方な……」

「ん?」

「いや、なんでもない」


 惜しい、あと少しだったのに。


「森を焼いた晩に問い詰めたときは、状態異常が出ることを認めてたよな?」

「記憶にないなぁ。それよりもそろそろ朝ごはんにしようではないか」


 露骨過ぎる話題逸らしだった。しかし俺も腹が減ったことだし、この話はこの辺でお終いにしよう。今回はカンナの薬のおかげで助かったわけだしな。


 キナコが大量に食べ物を持って来ているため、食べるものには困らない。なんならあと三日はダンジョンに引きこもることもできるだろう。


 みんなで干した肉や干した魚などを食べているのだが、さっきからカンナが被っているパンツが無性に気になる。なぜパンツを被っているのだろう。まさかユリカに洗脳されて変態の仲間入りを果たしてしまったというのか。


 聞くべきか、聞かざるべきか。聞くとしても、まずは遠回しに聞いた方がいいのかな。そんなことを考えていたわけだが、どうやらパンツのことを気にしていたのは俺だけではなかったようだ。


「カンナはどうしてパンツを被っているのかナ?」


 いきなりの直球過ぎる問いかけだ。キナコの表情はいつも通りの笑顔だけど、カンナが変態へとメタモルフォーゼした可能性を考えてか、若干笑顔が硬い。


「うん? 何を言っているのだ。ユリカじゃあるまいしパンツなんて被るわけ……ってなんだこれは!?」


 まさに今気が付きましたと言った発言だ。しかしまだ油断はできない。ユリカの教育の結果、無意識の内にパンツを被ってしまう体質になってしまったことをごまかしている可能性があるからだ。


「本当は自分で被ったんじゃないのかナ? いいんだヨ、隠さなくてモ」


 キナコがどんどんと切り込んでいく。いいぞ、その調子だ。


「自分に正直になってもいいんだぞ。俺は例えカンナがユリカ二号になっても気にしないからな」


 キナコだけに任せるのは性に合わないので、こちらからも援護射撃だ。


(ナイスなんだヨ、アキラ)

(ああ、キナコの方こそ良い突っ込みだ)


 お互いに目線で会話を行う。今の俺たちの連携は、このダンジョンに来てから一番のモノだ。こんなことで最高の連携を発揮するのもどうかと思うが、やはりカンナが変態に汚染されたかどうかは気になるので仕方がない。


「ちょっとアキラ! 私の名前を変態の代名詞みたいに使うのはやめて欲しいですわ」


 ユリカが何か言っているが今は無視しておけばいいだろう。それと、ユリカは変態の代名詞というよりかは変態そのものだ。


「まさか私がユリカになってしまったと疑っているのか!? 断じて私はユリカになってなどいない。信じてくれ!」


 相当焦っているようだ。素早く言い訳をするために、変態(四文字)という単語をユリカ(三文字)へと省略してきた。言葉の意味は同じなので何も問題はない。


「待って下さい。私は変態ではありませんわ。どこにそんな根拠があるんですか!」


 根拠ならアイテム袋の中に大量にあるだろ! そう思ったけど言葉には出さない。今はユリカへのツッコミよりもカンナの変態疑惑の方が気になるからな。


「それじゃあなんでパンツを被って寝ていたのかナ?」

「私は何もしらない。大方、ユリカが寝ている私に勝手に被せたのだろう」


 確かに可能性としてはそれが一番高い。しかし被せた理由がよくわからないので、カンナ変態説も捨てきれないのが現状だ。


「ユリカがパンツを被せたのかナ? 被せたとしたら、なんで被せたのかナ?」

「はい、私が被せましたわ。理由は睡眠学習のためですわ」


 睡眠学習か、またわけのわからないことを言い出したな。何を学習するというんだ。


「聞いてください。私がパンツの魅力に目覚めたのにはちゃんとした理由があるんですわ。今回カンナにパンツを被せたのも、それが関係しているんですわ」


 何がどう関係あるのかサッパリわからない。取りあえずユリカの話を聞いてみよう。


「まずは、私がパンツの魅力に目覚めた時の話からしますわね。あれは十歳の頃のことでした。私はいつも通りクラスの女の子のパンツを頭に被って自室でリラックスしていたんですわ」


 変態に目覚めた時の話をすると言いながら、最初から変態に目覚めているのはなぜだろう。聞き間違いを疑うレベルだ。


「その時の私は、あまりにリラックスしすぎてそのまま寝てしまったんですわ。そしてそのまま朝になった時、私はある異変に気が付いたんですわ」


 異変に気が付いたも何も、最初から異変しかないだろ。何さも十歳の女の子がパンツを被るのが当たり前みたいに話してるんだ。


「朝起きた時、いつも以上に活力がみなぎって来ていたんですわ。その時の満ち足りた気持ちをカンナにも味わって欲しかったので、被せて差し上げたんですわ」

「つまり善意からの行動で、やましいことは何もないと?」

「その通りですわ!」

「睡眠学習ってのはどんな意味だ?」

「寝ている間にパンツの魅力を学ぶことですわ」


 学びたくない、そんなもの。


「だ、そうだぞカンナ。どうだ、活力はみなぎってきたか?」

「朝から活力がゴリゴリと削れてしまったぞ。もう駄目だ、私の体力は持ちそうにない。今日の夕食は三人で行ってきてくれ。私は宿屋で早めに寝るとしよう」

「それはまた別問題なんだヨ」


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