レベル17 裏ワザが存在するだって?
攻略本で見た限りでは一階には罠はなく、モンスターの出現率も高くはない。
多少入り組んではいるものの、攻略本を持っている俺からすれば一本道も同然だ。
俺たちは遭遇するゴブリンを一撃で倒しながら、あっさりと二階へと続く階段の踊り場まで到着した。
「ふぅ、ここで少し休憩しよう」
「うむ、了解だ」
このダンジョンの階段の踊り場は、モンスターの出現しないセーフゾーンというエリアらしい。危険はないみたいなので、俺たち四人は腰を下ろして休憩する。
「ずっと走りっぱなしだったから少し疲れたな」
「ええ、夜中に警備兵の方に追いかけられた時のことを思い出しますわ。あの時は二人そろって逃げきれて良かったですわね」
思い出を勝手に捏造するんじゃない。俺はそんな警備兵に追いかけられることなんてしたことないから!
「それにしても、レベ村の村長め。ダンジョン攻略は私たちに任せておけば良いものを」
村を出発する前に、俺たちは村長にダンジョン攻略を俺たちに任せてくれと話をしてみた。すると「お前たちの評判は知っているぞ、今度は何を企んでいるんだ」とか「広場での怪しげな魔法の続きをダンジョンでやるつもりか?」とか、あることない事……いや、根も葉もないことを言われてしまった。
仕方ないので、俺たちは急いでダンジョンへと向かうことにしたのだ。
決して村長の言うことが半分くらいは本当のことだったので、心にダメージを受けたから逃げたとか、そういうことではない。勘違いしないように。
そういえば、次はダンジョンの二階だな。二階は罠が大量にあったはずだから、そろそろ攻略本をチェックしようかな。いや、その前にアレをやってしまおう。
俺は立ち上がり、下りの方の階段へと歩いて行く。
「どうしたんですの? 一階に用があるんですの?」
「まあ、見ていてくれ」
罠が大量にある二階には村の冒険者を入れたくない。しかし冒険者たちはこのダンジョンを攻略する気マンマンである。ならどうするか、答えはこうだ。
アイテム袋を逆さに持ち、下りの階段の方に手を伸ばす。
「土、それから石」
俺が呟くと、アイテム袋から大量の土と石があふれ出し、あっという間に階段を埋めていった。
「おおっ、まさかこれは」
「フフッ、カンナ、気が付いたか。これが俺の新スキル、アイテム袋だ!」
スキル・アイテム袋とは、袋の質量を無視して大量のアイテムをアイテム袋の中に入れられるという、とっても便利なスキルである。
「素晴らしい。どうやってそのスキルを覚えたのだ?」
「いやー、気が付いたら覚えていたんだ」
「そうか、残念だ。私もそのスキル欲しかったんだがな」
言えない。アイテムの詰め過ぎで袋が破れたことに腹を立て、破れた袋に八つ当たりをしまくっていたらいつの間にか新しいスキルを覚えていたなんてとても言えない。
八つ当たりで新スキルをゲットとか、カッコいい俺のイメージが台無しだ。
それにしても袋を叩きつけて新スキルゲットか。ということは、攻略本とかも叩きつけまくれば何か新スキルを覚えたりするのだろうか。今度試してみよう。
「この土と石は、どうやって袋に入れたんですの?」
「私が手伝ったんだヨ」
「キナコの新スキル、落とし穴作成を使ってもらったんだ」
落とし穴作成とは、穴を掘る速度がアップするスキルである。みんなが眠っている間に、キナコと一緒にこっそりと穴を掘りまくったのだ。
「ついでに村の入り口に大きな落とし穴を作っておいたから、ゴブリンが村を襲っても時間が稼げるぞ」
「完璧な仕事だネ!」
「落とし穴を作ったことを村の誰かに言いましたの?」
「……」
「……」
「だ、大丈夫だ。結構雑な落とし穴だから、人間は引っかからないよ。うん……ん?」
*【称号】落とし穴・プロを手に入れました!*
*【称号】レベ村への嫌がらせ・プロを手に入れました!*
現在の時刻は十二時だ。村の冒険者たちが出発するのも昼頃らしい。そして落とし穴・プロと同時に手に入れたレベ村への嫌がらせ・プロという称号。このことから導き出される答えは――。
「さあ、階段も埋まったことだし急ごうか! なあ、キナコ!」
「そうだネ! 急いで二階に行こうネ」
俺たちは称号を手に入れたことをごまかすように階段へと向かう。ふと横を見ると、カンナが満面の笑みを浮かべていた。俺はそれを無視して階段を上って行った。
「ここが二階か」
階段を上り切ると、目の前には二十メートル四方くらいのサイズの大部屋が現れた。
「さあ、行きますわよ」
そう言いながら、一階の時と同じペースで走り出すユリカ。
「待て!」
「えっ、なんですの?」
警告したが少し遅かったようだ。ユリカの足元からスイッチを押したような音が聞こえ、その直後、頭上から突如現れた大岩が降ってきたのだ。これはもう手遅れかもしれない。
一瞬そう思ったものの、やはりユリカは規格外な存在だった。
なんと大岩を受け止め、横に放り投げたのだ。
「す、すごいパワーだねユリカ」
「ふっふっふ、実は私、すごい発見をしましたの」
すごい発見? もしやその発見とやらが、この怪力の秘密なのだろうか?
「私のアイテム袋の中を見て下さい。何か気が付くことはありませんか」
「盗んだパンツが入っているだけだろ。もしかして、盗んだパンツを他の人に見せつける趣味にでも目覚めたのか?」
「もう一度よく中を見て下さい。新しい発見があるはずですわ」
見せつける趣味のことは否定しないのか……。
俺はダメ元でユリカのアイテム袋を覗き込んでみた。
『ヒトミのパンツ
トリシアのパンツ
シンシアのパンツ
コーネリアのパンツ
ノゾミのパンツ
ミエコのパンツ』
「なるほどな」
「気が付きましたか。流石アキラですわ」
「ああ、ユリカがド変態だということを再確認したよ。さて、攻略の続きをやるか」
「違いますわ! そうじゃなくて、重要なのはアイテムの順番ですわ」
「盗難品か」
「生活必需品ですわ」
「……それで、順番がどうかしたのか?」
「私、気が付きましたの。パンツを特定の順番でアイテム袋にしまうと、力が二倍になる裏ワザが存在するんですわ」
……は? コイツ何言ってるんだ。いやしかし、ユリカが言っていることが本当なら、さっきの凄まじいパワーにも納得がいく。うーん、でもいまいち信じられない。
「私のアイテム袋を装備してみてください。そうすれば、アキラにもわかるはずですわ」
ユリカから受け取ったアイテム袋を腰に装備する。そしてステータス画面を開く。こ、これは……。
「どうですか。とても良いものだと思いませんか?」
「まさか本当に攻撃力が二倍になるとはな。確かに、これはすごい裏ワザだ」
「いえ、私が聞きたいのはそっちじゃありませんわ。女の子のパンツがいっぱい入った袋を身に着ける気分はどうですか? とても良いものだと思いませんか? 安心できませんか?」
「は?」
「パンツの魅力を理解してもらえたことですし、これでアキラは私の同好の士ですわ。二人で真夜中のお宝ハンターとして頑張りましょう!」
「まさかそんな趣味がアキラにあったとはな。見損なったぞ」
「軽蔑したんだヨ」
「待って、そんな趣味ないから! 俺は女の子のパンツに興味なんて、な……ないから!」
「言葉に詰まるとは、まさかアキラ本当に……?」
しまった! こんな時に限って抑えてきた男子高校生としての本能が顔を見せるなんて! なんてタイミングが悪いんだ。
「そんなことは今はどうでもいいだろ! それよりも急いで塔を攻略しよう!」
アイテム袋をユリカに投げ返し、急いで走り出す。
「待つのだアキラ!」
ビー! ビー! ビー! ビー! ビー!
部屋中に響き渡る、警報装置の音。そして左右の扉から現れる、大量のゴブリン。
警報装置の罠を踏んでしまったみたいだ。
最悪だー!




