表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/30

レベル15 おかしい、こんなはずではなかったのだが……

 今日もレベ村は良く晴れたいい天気だ。ポカポカとした陽ざしが気持ちいい。


「こんな日は、何かいいことが起こりそうだよな」

「大変だ! 東の草原にゴブリンが現れやがった! ケガ人も多数!」


 ……。


「うむ、素晴らしい天気だ。狩りなんかほったらかして、ピクニックに行かないか?」

「とてもいい考えですわ。お弁当を用意して、みんなで食べましょう!」

「決まりだネ!」


 そこの三人、空気読め! 村の住人たちがめちゃくちゃ睨んできてるぞ。


「東の草原にゴブリンだと? あそこは角うさぎしかいなかったはずだろ?」

「確かにそうだ。しかし薬草を採取しに行った連中は、ゴブリンを見たらしい」

「それだけじゃねぇぞ。どうやら、東の草原の先に、塔のようなダンジョンが出現しているのを目撃したらしい」

「ダンジョンだと!?」

「てことは、魔物が外へと出てくるタイプのダンジョンか?」

「くそっ、ゴンザレスさんたちがいない時に排出型のダンジョンとか、どうしろってんだ」


 村人たちが非常に気になる会話をしている。ダンジョンが、出現した? まさかこの世界は、何もない場所にダンジョンが突如沸いてくるのだろうか。そんなバカな。


 とりあえず攻略本をチェックしてみよう。


『【ゴブリンの塔】 攻略推奨レベル:5

一夜にして現れた謎のダンジョン。多数のゴブリンが生息している。罠も多数存在しているので、しっかりと準備をしてから挑もう』


 本当に突然ダンジョンが出現したらしい。この世界の世界観はどうなっているんだ。


 排出型のダンジョンとは、ダンジョンで発生した魔物が外へと出てくるタイプのダンジョンのことみたいだ。攻略本にそう書いてあった。


「強力なダンジョンと魔物に村人が苦しめられているとは。こういう時こそ、私たちの出番だ」

「その通りですわ。勇者一行として、この状況、見過ごせませんわ」

「決まりだネ!」


 お前たちはさっき村人を見捨ててピクニックに行こうとしてただろ! その場のノリと勢いで適当なことを言うんじゃない。


「それにしても、急に出現したダンジョンにも対応しているとは、アキラの攻略本は本当にすごいな」


 攻略本で情報収集していた俺を、カンナが覗き込んできた。


「ああ、この攻略本、本を閉じてまた開くと情報が更新されるみたいなんだ」

「それはすごい、私にも見せてくれないか?」

「いいぞ」


 攻略本をカンナに見せながら、ページを開く。


『五月三日 晴れ 今日もハニーの肉体は素晴らしい。乱れに乱れたベッドを見るだけで、昨日の光景が頭に思い浮かぶ。上質な酒を飲み、いい雰囲気になった俺とハニー。やがてどちらからともなく、体が近づいて行き――』


 そこにはクマボディ二人組の日常(武器屋視点)が二ページにわたり書かれていた。俺は速攻で攻略本を閉じた。


「ふむ、アキラのその本はBL本だったのだな」

「BLって、あのお二人はボーイではありませんわ」

「ベアーラブの略だ」


 そんなことは非常にどうでもいい。


 再び攻略本を開いてみる。すると二人組の日常は姿を消しており、いつもの攻略本だった。

 どうやら攻略本のイタズラだったようだ。


 アッハッハ、まったく仕方ないなぁ。次やったら燃やす。


 気を取り直して、ダンジョンの情報を詳しく確認していく。塔は全部で三階しかないが、内部はそこそこ入り組んでおり、落とし穴などもあるみたいだ。攻略推奨レベルは十分に満たしているが、今まで罠のあるダンジョンには行ったことがない。気を引き締めて行く必要がありそうだ。


「そういえば、警備兵長のゴンザレスさんはどこに行ったんだ? 村がピンチの時こそ出番だろう」

「そうですわ。最近警備兵の人たちも数が少ないですわ」

「ゴンザレスさんたちは魔物と戦ってるみたいだぞ」

「なぜわかるんですの?」


 俺は無言で攻略本を三人に見せる。


『迷いの洞窟 攻略推奨レベル:4』


 レベ村から西に行ったところにある洞窟型のダンジョンである。そのダンジョンのイラストには、二本足で立つ狼の様な魔物を囲むゴンザレスさんたちのイラストが描かれていた。


『キラーウルフ レベル:4』


 大したモンスターではないようだ。イラストに描かれているゴンザレスさんの表情も、余裕がうかがえる。


「村の人たちの会話によると、警備兵さんたちは四日前から東の森近くに現れた狼の魔物を追ってるらしいヨ」


 キナコが村人たちから盗み聞きした内容で情報を補完してくれる。キナコの話によると、警備兵は一度村に食糧を補給しに帰ってきたのみで、その後はずっと魔物を追いかけ続けているようだ。


「四日前か。森を盛大に焼いてしまった……じゃなくて、森がなぜか燃えていた日だな。ということは、アレはやっぱり魔物のせいだったんだな!」

「そうですわ、邪悪な魔物許すまじ、ですわ」

「私は最初から魔物の仕業だと睨んでいたぞ。やはり邪悪な魔物の仕業だったか」


 ここぞとばかりに魔物へと罪をなすり付ておく。


 俺たちが魔物へのなすり付けを熱心に行っていると、村の奥から一人の男が歩いて来た。パッと見の年齢は五十代半ばといったところだろうか。


「落ち着け皆の衆。まずは皆で話し合い、解決策を考えようじゃないか」

「そうですな。こういう時にこそ冷静に行動しなければいけませんな」

「うむ。それでは、一時間後に広場で話し合いを行う。ここにいる皆は、村に居る戦える者たちに声をかけておいてくれ。私は武器屋、防具屋、道具屋の者たちに声をかけておこう」

「了解だ」


 戦える者たちを集めて話し合いを行うみたいだ。ということは、これはダンジョン攻略のための話し合いである可能性が高い。


「どうやら私たちの出番のようだな」

「ああ、ようやく勇者として、華々しくデビューする時が来たようだ」


 この村に来てから、俺たち四人の評判は日に日に悪くなっていく一方だ。しかし、ここでダンジョンを一気に攻略することができれば、俺たちの評価は上がるはず。


「みんな、絶対にゴブリンの塔を攻略するぞ」

「フフッ、腕がなりますわ」

「私が最速で攻略してみせよう」

「頑張ろうネ!」


 村の人たちを見ると、冒険者の人や数少ない警備兵の人たちに声をかけているようだ。

 俺たちもいつ声をかけられてもいいように心の準備をし、仁王立ちでその時を待つ。

 しかし、誰にも声をかけられることなく、気が付くと一時間が経過していたのだった。





「おかしい、なぜ村の住人たちは私たちに声をかけなかったのだろう」

「そんなの分かりきったことだろ? 俺たちなら何も言わなくても行動してくれる。そう思われてるってことさ」

「やはりそうですのね。表面上は邪険に扱ってても、心の中では私たちのことを頼りにしてくれているんですわ」

「期待に応えてあげなくちゃネ」


 全員が全員、明るい調子で答える。しかし、ユリカは視線を泳がせ、カンナは顔を引きつらせている。キナコに至っては、飛んでいるちょうちょに見向きもしていない。


 内心ではかなり動揺しているのだろう。俺もさっきから言葉に詰まりそうになるのを必死にこらえている。まさか村の危機に声をかけられることもないとは、俺たちの評価は少々ヤバいかもしれない。


「おい、なんであいつらが話し合いの場に居るんだ? 誰か声かけたか?」

「いや、俺はかけてねぇぞ。かけるわけねぇだろ」

「あいつらがこの村に来てから、妙なことが立て続けに起こりやがる。もしや、魔王の手先じゃあるまいな」

「ありえる」


 訂正しよう。俺たちの評価はものすごくヤバい。これは早急に何とかしなければいけない。


「お頭! お頭たちも来てたんすね」


 身長が高く、筋肉質な体形で見た目だけは強そうなゴロツキ三人衆が、俺たちのそばへと寄ってくる。


「まさかこんなに早くチャンスが巡ってくるとはなぁ。前にお頭に話したアレ、実現できそうですぜ」

「うぇっへっへ、この村の連中を、へっへっへ」


 痛い、村人たちの視線が痛い。ゴロツキたちよ、恥ずかしいのはわかるが、ちゃんと村人たちを助けたいって声に出して言ってくれ。ダンジョンに向かう前に村人たちの視線だけでHPがゼロになってしまいそうだ。


 それから、やる気があるのはありがたいが、俺が見たところこの三人はまだゴブリンと戦うにはレベルが足りないだろう。ケガをされても困るので、注意しておこう。


「気持ちは嬉しいが、ダンジョンに行くにはレベルが足りないと思うぞ」

「へっへっへ、承知してますぜお頭」

「ダンジョンに向かう連中はお頭たちに任せておけば安心っすわ」

「村の方は俺たちに任せてくだせぇ。へっへっへ」


 鑑定のスキルで広場にいる冒険者たちのレベルを確認したところ、大量のゴブリンが待ち構えるゴブリンの塔を攻略できる者はいないみたいだ。無理に攻略しようとすれば、ケガ人がさらに増える可能性がある。そのことをなんとなく理解しているから、ゴロツキたちは俺たちに冒険者たちのことをサポートして欲しいのだろう。


 ダンジョンに向かうであろう冒険者たちの身を案ずるとは、見かけによらず心優しいゴロツキである。見直したぞ。


 これなら村人たちのゴロツキに対する評価も変わるだろう。


「ヒソヒソ、あいつらに何を任せるつもりなんだ?」

「村ではゴロツキたちが何かするらしいぞ」

「なんか危なそうだな。警戒しておこうぜ」


 どうやら言葉が足りなかったようだ。依然として村人たちの視線が痛い。なぜこうなるんだ。


「皆集まったようだな。これより、ダンジョンに関する話し合いを行う」


 見ると、広場の中央には先ほど村人たちに声をかけて回っていた中年の姿があった。周りの様子を見るに、この男は村の責任者、村長のような立場の人間なのだろう。


「もう大体予想が出来ていると思うが、攻略隊を編成し、ダンジョンに送ろうと考えている。意義のあるものは居るか?」


 意見を言う者はいない。無言の肯定というやつだ。


「反対の者は居らんようだな。次に、誰にダンジョン攻略を任せるかを決めようと思う」


 村長の話はまだ続いていたが、俺と仲間の三人は広場を後にする。ダンジョンに対して攻略隊を送るということを聞ければそれで十分だからだ。


 村の危機について話し合いを行っている最中に、人知れずその場から離れ解決のために行動する。今の俺たち、最高に主人公っぽくてカッコよくないか?


「攻略隊が攻略に向かうなら、急いで準備しないとな」

「そうですわ。ケガ人が出る前に、私たちで攻略してしまいましょう」


 攻略本にも入念な準備が必要だと書いてあったのだ。ここは油断せずに行こう。

 回復薬や解毒薬、それから保存食を買うために道具屋へ向かう。

 アイテムを買ったらすぐにダンジョンへと出発だ。


 そう考えていた俺たちだったが、道具屋に着いた時に重大な事実に気が付く。

 なんと道具屋のおっちゃんが話し合いに参加しているため、店が閉店していたのだ……!


「私たちで薬草を採取しに行った方が早いのではないか?」

「あと三十分もしたら話し合いが終わるかもしれない。話し合いが終わるのを待とう」


 結局話し合いは夜まで続いたようで、アイテムを買えたのは深夜になってからだ。

 道具屋のおっちゃんが帰ってくるまで店の前で立ち尽くす俺たちは、最高にカッコ悪かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ