レベル11 キナコは私たち称号四天王の中でも最弱……!
思った以上にダンジョン攻略に時間がかかってしまったため、村に着いたのは夜になってからだった。
「ようやく到着だネ」
流石のキナコも少し疲れているようだ。しかしそれも無理のないことである。
「次はキナコの番ですわ」
「私たちが素晴らしい称号を授けてあげよう」
足を引っ張り合いたいユリカとカンナが、キナコに絡みついていたのだ。この二人は生者をうらやむ亡霊か何かなのだろうか。
俺が変な称号を手に入れてしまったことはカンナに一発でバレてしまった。こういうことに関してはカンが鋭いヤツである。
「ほら、もう村の中なんだから変なことばっかり言うんじゃない。警備兵の人がこっちを睨んでるだろ」
俺たちは村の入り口近くに立って話しているので、入り口を警備する警備兵の人から鋭い視線を向けられているのだ。
なんだかいつにもまして睨まれているような気がする。雰囲気もピリピリしているし、何か事件でも起きたのかもしれない。
もしも何か困ったことがあるのなら、遠慮なく勇者パーティ(自称)である俺たちに相談して欲しいものだ。そうすれば俺が勇者(自称)としてしっかりと村を守ってあげるのに。
*【称号】ウソツキを手に入れました!*
*【称号】ウソツキを手に入れました!*
うるさいぞ、脳内アナウンスは黙っていてくれ。そもそも俺はちゃんと女神に選ばれてこの世界に来たのだから間違いなく勇者……のハズだ。もしや日頃の行いが悪いので勇者として認められていないのだろうか。
明日から善行を積む必要があるかもしれない。そんなことを考えていると、村の外から帰ってきた三人のゴロツキに声をかけられた。
「お頭! お頭たちも今帰ってきたとこっすか?」
「ああ、そうだな。依頼の方はどうだ? ちゃんとできているか?」
「もちろんですよお頭! 薬草と解毒草、集めてきやしたぜ」
ゴロツキたちはしっかりと採取の依頼をこなしているようだった。話を聞くと、昨日の内に一回目の依頼を終わらせたので、今受けているのは二回目の依頼らしい。
「意外と真面目にやってたんだな」
「それに俺たち、なんとレベル2に上がったんでさぁ。これもお頭のおかげっす」
そう話す三人のゴロツキたちの表情は本当に嬉しそうだ。
「この調子で力を付けていけば、いずれはこの村を……へっへっへ」
警備兵がすごい目つきでこっちを見てる。やばい。
「この村をどうしたいんだ?」
「実は、これまで村に迷惑をかけてきたから、村のために役に立ちてぇって考えてるっす」
心の内を話すのが恥ずかしかったのか、周りの人に聞こえないような小声で話しかけてきた。
依頼をこなして人から感謝されたことで、人のために行動するということに目覚めたらしい。
それはとてもいい事なのだが、警備兵が勘違いしているのでこの誤解は今すぐ解いてしまわないといけない。
「村をどうしたいか、大きな声で話してみてくれ」
「ヘイ! 俺たちはこの力でこの村の住人を……へっへっへ、これ以上はここじゃ言えねぇなぁ」
警備兵がこっちに走ってきた!
「俺たちは疲れたから先に帰るぞ! それじゃあな」
「お疲れさまッス! お頭!」
ゴロツキたちの背後から走り込んで来る警備兵から逃げるように、俺たちは宿屋への道を走った。
さらばゴロツキよ、安らかに眠れ。
「あの方たちも頑張っているのですね」
「そうだな、俺たちも負けてられないな」
その後俺たちは何事もなく宿屋へとたどり着き、腹が減っていたのでそのまま宿屋の食堂へ行くことにした。
「良かったですわ。無事宿屋までたどり着くことが出来ましたわ」
宿屋に移動するだけで何かが起こる可能性があるって事自体が良くない事のような気がする。
時間が遅かったからか、それともタイミング的なものなのか、食堂には俺たち以外の客は見当たらなかった。
食堂のテーブルに着き、今日の成果や反省などを話し合いながら運ばれてきた料理を平らげていく。
初めてダンジョンを攻略したということで、みんなのテンションは普段よりも高いようだ。かくいう俺もかなりテンションが上がっている。
料理を食べ終わり話も一区切りついたので部屋に戻ろうとしていると、宿屋の女将さんが俺たちの近くへとやってきた。
「あなたたちダンジョンを攻略したんだって? やるわね~」
「冒険者ですからね、このくらい当然ですよ」
ちょっと見栄を張ってみる。
「うちの息子にも見習わせたいわ~」
そういえば女将さんには息子が一人いるという話を聞いたことがある。この宿屋で女将さんと一緒に暮らしているはずなのだが、俺はその姿を一度も見たことがない。
「息子はねぇ、冒険者になるのが夢だって言ってるんだけど、冒険に出るわけでもなくずっと部屋に引きこもってるんだよねぇ」
冒険に出ない冒険者か、その息子は何を目指しているのだろう。
「明日から冒険に出るとか言って部屋に引きこもり始めてから早五年。一体いつになったら出てきてくれるのかねぇ」
あと十年は出てこないんじゃないかな。
「もう今年で十六歳になるんだから、そろそろ家の手伝いの一つくらいして欲しいんだけどねぇ」
俺には関係ない話のハズなのにすごく精神にダメージを受けている。俺には関係ないハズなのに! こういう苦しい時は、ともにダンジョン攻略を成し遂げた頼れる仲間の顔を見て気を紛らわせよう。俺はカンナの方を見た。
俺より死にそうな顔をしていた。
「くっ、まさかこんなところにダンジョンボスが潜んでいようとはな……」
「落ち着けカンナ、ここはダンジョンじゃないぞ」
「来年からはちゃんと学校に行くから、だから許してください母上」
「言ってることが女将さんのダメ息子より酷いぞ! それでどう許してもらうつもりだ!」
俺とカンナが元の世界のカルマと戦っている間は、ユリカとキナコが女将さんの話を聞いている。女将さんは話を聞いてもらえれば誰でもいいようで、グッタリとした俺とカンナを特に気にした様子はない。
「息子ったら、十六歳にもなって彼女の一人も連れてきたことがないのよ。どこかにいい子いないからしら」
「防具屋のおじさんが恋人を募集してましたわ!」
「待てユリカ! 話をソッチ方向に持っていくんじゃない」
「あら、復活したのですねアキラ」
「おかげさまでな」
あのままユリカに話をさせていたらロクなことにならなさそうだ。いい加減に彼女募集中の男に防具屋のおっちゃんを紹介するのはやめて欲しい。
大切な息子をその道に引きずり込もうとしたユリカに対して、女将さんはどんな反応をしてるだろうか。おそるおそる見ると、女将さんは何かを考えるような様子だった。
特に怒っているとかではないみたいだ。安心した。
「ねぇ、私からの依頼を受けて欲しいんだけど、いいかい?」
依頼? この話の流れから依頼を頼まれるとは、どういうことだろう。
「どんな依頼ですか?」
「実はこの間、たまたま息子と防具屋のおじさんが食堂でばったり出会ったんだけど」
「はい」
「防具屋のおじさんが息子のことを狙ってる可能性があるの」
「狙ってるって、どういうことですか?」
「視線がとっても嫌らしいのよ」
知りたくなかったよそんな事実。
しかしそれは女将さんの勘違いじゃないのだろうか。防具屋のおっちゃんといえば、女の子のおっぱいをガン見するおっぱいウォッチャーだ。
「あのおっちゃんが男好きとは思えないのですが。女の子ばっかり見てますし」
「確かに女の子ばかりを見ているわね。けどその視線には一切欲が篭ってないの。清らかすぎるのよ!」
清らかな視線でおっぱいをガン見する中年というのがいまいち想像できない。そもそもその行動自体が清らかさからかけ離れているんじゃないかな。
「つまり……?」
「女の子を見るのはカモフラージュ! 本命は男! 間違いないわ」
力強すぎる女将さんの宣言だ。視線一つからここまで断言できるなんて、防具屋のおっちゃんがどんな目で息子さんを見ていたのか少し気になる。
「うーん、あんまり信じられないんですけど、それは本当なんですか?」
「それをアキラたちに調査して欲しいの。頼めるかしら?」
正直言ってかなり面倒だ。そういうことに首を突っ込むのは遠慮しておきたい。
「すみません、俺たちは疲れているのでこれで失礼します」
女将さんには悪いけど、この依頼は断ろう。俺たちは冒険がしたいのであって、探偵がしたいわけではないのだ。
「報酬は五百ゼニーで良いかしら?」
「俺に任せて下さい。明日中に真実を突き止めて見せますよ」
ここ数日狩りとダンジョン攻略で疲れてたから、探偵をやるのもたまにはいいよね。
*【称号】金の亡者を手に入れました!*




