第21話「ボッタクリにはご注意!」
前回の続きです。
お城での一件のせいで貴族が本気で嫌いになったようです。
騒動の匂いしかしませんが続きは読んで頂ければと・・・。
あっと言う間に約束の一週間が過ぎようとしたその頃だ。
ギルドの入り口まで来た所で叫び声が聞こえてくる。
「何だと?どうしたらそんな金額になるんだ!?
過去の相場の軽く10倍はあるぞ?そんな金額が通ると思ってるのか?」
「ふむ、なんか揉めてるみたいだね?
爺ちゃんどうする?しばらく時間を空けてまた来る?」
「そうじゃのぉ。時間を潰すにしてももうすぐ約束時間じゃろうし・・・・。」
そう、昨日の夜に伝令が来て、報告するべき事がまとまったとの事で
今日の昼過ぎには国王からの使者が来る約束になっている。
「まぁ、俺達には関係ないからいいかな。
んじゃ、さっさと行ってオヤツをアインのおっさんに出してもらえばいいよね?」
「ワシはけーきとやらは余り好きじゃないからのぉ。
他のものが良いのぉ。」
「ん~。俺もあれはあんまり好きじゃないなぁ。」
塩は海が近い為結構安く手に入るものの、砂糖はなかなか手の出ない値段で
ケーキも甘さがかなり少ない。
前世の俺からすれば少し甘いパンケーキと言った物だ。
などと雑談しながら執務室に入ろうとすると、アインのおっさんと鉢合わせになる。
「お、来やがったな。時間には少し早いが丁度言い。
賢者様は部屋で少し待ってて欲しい。
サイラス、おめぇは俺と一緒に来い!」
「ふ~ん。それが人に物を頼む態度なの?
そう言う態度で来るなら当然断らせて貰うよ?」
とたんに、アインのおっさんは苦虫を潰したような顔になり始める。
「ぐぬぬぬ。
申し訳ないが俺と一緒に来て頂けないだろうか?
ギルドだけで貴族連中を抑えておくのが本気で限界なんだ。
今もしたの受付に長蛇の列が出来ている始末なんだよ。」
「さっきの怒鳴り声はやっぱりアレ関係?」
「そうだ、アレだ。」
「なんどか宿まで伝令を出したのに、おめぇは全く聞いちゃくれなかっただろ。
ギルドでも何度も説明して入るんだが、最初は買出しの兵士から始まって
その上司と来て貴族のまとめ役。
今日はそれでも納得出来ないと、貴族連中の張本人どもが出張ってきてんだよ。
受付の三つのうち二つが常時占領されていて通常業務が破綻しかけてんだよ。」
「へー?それは大変だねぇ。」
「おめぇ、完全に他人事じゃねぇか。元々はおめぇが倒した魔物の素材なんだぞ?」
「アインのおっさん、言葉は選んで吐けよ?
俺は別に素材を全部引き上げても構わないんだ。
無理にギルドで委託販売してくれとは一言も言った記憶は無い。
提案し引き受けたのはそっちだろ?
対価も無しでそれは無いんじゃないか?
ある意味一方的な契約破棄になると思うんだが?」
「ぐっ。お、俺が悪かった。
ギルドでは処理しきれない程に問題が膨れ上がったのはこちらの不手際だ。
それ相応の対価は用意する。」
「最初からそう言えよ。ガキだからってなめるんじゃねぇよ。
まかりなりにも、命を賭けて金に換えてる冒険者の端くれで
なおかつ、他の追従を許さない賢者様の孫だぜ?
俺を言い負かそうなんて1000年はえぇよ。」
「軽んじて事は謝罪する。しかし、あの連中はどうするんだ?」
「任せろ、とりあえず並んでる連中全員に名前を書かせてリストアップしろ。
その次は、そいつらの希望部位と購入限界金額を書かせろ。
ちなみに書けるチャンスは一回のみ。後からの訂正は負荷だ。」
そう言うと、アインのおっさんは下へと走っていった。
したから怒鳴り散らす声やら物が飛び交う音がするも、俺は高みの見物を決め込む。
それから一時間後リストが出来上がったようだ。
「サイラス出来たぞ。
どこから嗅ぎ付けて来たのか、隣国の貴族連中まで含め総勢20名の貴族連中だ。
金額はどれも過去の相場の1倍から高いもので3倍が最高だな。」
「よし解った。ではその20名を下に集めろ。護衛やらなんやらは外に待機だ。
集める前に金額の安い順番に数字の書いた木札を渡し
[俺の許可無く発言したもの]
[条件を飲めない等言った者]
先の二つに関して守れない者は即購入権利がなくなると言っておけ。」
「おい、そんな事言って大丈夫か?」
「俺に泣きついて来たのは誰だ?
文句があるなら、手を引く分にはこちらは一向に構わないんだぞ?
そもそも、俺には一切損が無いんだから。」
「くそっ。もう何とでもしてくれ。すぐに準備してくる。」
さすがに、説明も無しだと不安だろうが下手な入知恵は逆効果だしな。
こうして、下に集まった貴族連中は総勢20名
困惑した顔をするヤツ、顔を真っ赤にして今にも怒り出しそうなヤツ。冷静に場を確認するヤツなど三者三様の顔をしている。
当然の様に俺の様な子供が前に出て来ると文句を言いそうになるが
条件の一つで許可無く発言した者には購入権がなくなると言う事で
全員が沈黙を守っている。
そうした中で、冷静さを保っていた者の内一人が手を上げる。
「質問したい事があるのですがよろしいでしょうか?」
ふむ。悪くは無いが許可をした覚えは無い。
だが一度だけチャンスをやる事にした。
「お前に発言を許した記憶は無いはずだ。購入権を取り消すぞ?」
そう言うと、そいつは当然の様に表情を曇らせる。
まぁ、あまり虐めても話が進まないな。
「まぁ、今回に限り無かった事にしてやろう。一度だけ発言を許す。
質問とは何だ?言ってみろ。」
貴族連中には下手に出るとすぐに付け上がってくるのがテンプレだったから
慣れてはいないが、出来る限り高圧的な態度で話を進めていく。
「申し送れました、私はりn」
「俺は質問とは何だと聞いたんだが?お前の名前などに興味はない。」
「も、申し訳ありません。
ギルドマスターにここに集まれと言われ説明も無く集められたのですが
一体何が始まるのか教えていただけますでしょうか?」
「なんだその事か、全く使えねぇマスターだなぁ。
先に言っておくが、例のワイバーンを討伐したのは俺だ。
付き合いのあるギルドマスターがどうしてもと言うので販売を委託したまでだ。
俺は死ぬほど貴族連中が嫌いだから、あの値段設定にさせて貰った。」
質問して来た貴族は、揚げ足を取られ冷や汗を流しつつ最初の冷静さは微塵も残っていない。
周りに連中に至っては、俺の様な子供が本気で討伐したとは思えず、
疑心暗鬼に包まれているようだ。
「俺としては、別に無理して買って欲しいとはこれっぽっちも思ってねぇ。
俺も冒険者の端くれだ。自分の身内の装備に回す分が増えるし予備にも出来る。
そう言った訳で納得出来ないものは帰ってくれて結構だ。」
そう言っても、席を立つ者は誰一人居ない。
「そうか、全員購入の意思があると言う訳だな?」
数秒間を空けて次の言葉を連ねていく。
「先程数字の書いた木札を渡したはずだが、その数字の20~15と1の書いてあるヤツ。お前らに売るものは何一つ無い。今すぐ帰れ。」
「なんだと!ふざけるな!
ここまでどれだけの時間と金を使って来たのか解ってるのか?」
「平民の分際で貴族である我々に対してなんたる不敬な態度!」
「今すぐ首をはねてやる!」
こいつら本当に勝手な事を言いやがる。
これだから貴族ってのは信用できねぇんだよ。
「おい、今喋ったヤツ。
俺がワイバーンを討伐したってのを忘れたのか?」
「ふんっ、どうせ上位ランクの奴らにひっついておこぼれを頂戴したのが真実なんだろう?」
おっと、ここまで来て凄いのが出たな。
「この中でサイラスと言う名前に聞き覚えのあるヤツは居るか?」
そこで番号1番の札を持ったヤツが手を上げた。
どうやら、気が付いたようだな。
当然の様に顔面蒼白で今にも気を失いそうになり
足元もおぼつかない様な状態になっている。
そして、当然の様に全員の視線がそいつに集中する。
「よし、お前の知っている事をすべて話せ。
それ次第ではお前にも売ってやる。」
「は、はい。
私の父はマイローと言いまして、この国の宰相を務めています。
今回の騒動の件で父が失態を犯した原因と言われるのが
そのサイラスと言う冒険者との事です。
国王の目の前で攻撃魔法を使い、挙句に国ごと滅ぼすとまで言ったと聞き及んでおります。」
うん。概間違ってはいないが滅ぼすとまでは言った記憶は無いぞ?
そうだ、後でマイローに何か罰を与えてもらおう。
「だそうだが?」
「だから、そのサイラスとやらがどうしたんだ!」
「今の話に関係あるか!」
「おうおう、てめぇら勝手に喋ってんじゃねぇよ。
俺がそのサイラスだって言ってるのが解らないのか?
今回の騒動=魔物の群れ+ワイバーンを討伐した者が王城で大暴れをした。
そしてそのワイバーンを討伐したと言うのが俺。
ここまで説明しなきゃ解らねぇほどてめぇらは馬鹿か?」
ようやく頭の中で線が繫がったのが、貴族連中の表情が驚愕に染まる。
「ちなみに、代理購入とか圧力とかまともじゃねぇ手段に出た奴らは俺が直々に始末して回るから忘れるなよ?
逃げたり、誤魔化してもお前らの顔は覚えたし名前もさっき直筆で書かせたから問題ないぞ?」
言うが早いか20~15までの連中は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「よし、お前ら普通にして良いぞ。
貴族は嫌いだがルールを守るヤツは嫌いじゃない。」
そう言うと、途端に安心したのか全員が力尽きる様にその場に座り込む。
「お前ら5人に素材を売ってやりたいと思う。
だが、一つ問題があって、それぞれの希望部位がかぶる部分多い。
さて、どうしたものか?」
まぁ、競り合いでも良いのだが面白くない。
そう思っていると、最初に手を上げたやつが口を開く。
「誠に勝手なのですが、競り合いなどだと何も持ち帰れない可能性があるので
この5人で相談させていただけないでしょうか?」
ほう、コイツなかなか考えてるな。
見た目は若そうだが将来が楽しみだ。
「おい、マスター決着がついたぞ。俺の出番はここまでで良いな。」
「あ、あぁ、助かったよ・・・。」
何故かサブマスまで顔が青ざめてるのは気のせいだろう。
よし、伝令が来るまで爺ちゃんとお茶をしながら時間を潰そう。
「ほっほっほ。流石はワシの孫じゃなかなか様になっておったぞぃ?」
「ん。爺ちゃんありがとう。」
こうして素材の売却に決着が着き、残るは城での騒動の結果となる・・・。
相変わらず、文才のなさが浮き彫りですが、
そろそろ学園辺へ行けそうな気がします。
ラブコメは無理だと思いますが、バトルシーンは好きなので
書きたい事が多すぎてまとめるのが大変な筆者です。
話が進むのが牛歩で申し訳ありませんが次回をお待ちください。




