第18話「どうやら再びOHANASHIの時間のようです。」
激闘の末、神爺の登場により何とか命を拾ったサイラス。
そのサイラスを救ったのは、屋台街で助けたスラムの孤児達だった。
傷も癒え行動を開始しようとした所、アインが登場する。
その表情は、焦りと怒りに満ちここ一週間まともに休めていないであろう事が
見受けられる様に目のしたに隈が出来ヤツれている。
果たしてサイラスの命運はいかに・・・・。
目が覚めてから、あっという間に一週間が過ぎた。
俺は、まだハヤテ達の所に厄介になっている。
だが、さすがに所持金もそろそろ寂しくなってきた。
そう思いつつ、怪我の状況を確認していくとほぼほぼ完治して来たようだ。
最初の頃は指を動かすだけでも激痛が走った
右腕も拳を握っても痛みも無く、傷の辺りの皮膚がすこし突っ張る位だ。
防いだとはいえ、ワイバーンからのブレスもあちこちに火傷が出来ていたし
その前の魔物の群れから受けた打撲や裂傷も若干跡が残る程度で
痛みも無く戦闘も問題なさそうだ。
「あ、あんちゃん又動いてる!
まだ傷も治ってないんだから動いちゃダメだって昨日も言ったろ?」
「あぁ、ハヤテか?俺の怪我ならもう治ったぞ!」
「あんちゃん本当に馬鹿なのか?。
あんちゃん自分が死ぬか生きるかの瀬戸際だったのを忘れたのかよ。」
「あれは、俺が弱かった。唯それだけだ。
俺は冒険者だ。自分の力量も測れず相手との差を読み間違えれば死ぬ。
年がいくつだとか、冒険者になって何年たったとかなんて関係ないんだよ。
冒険者になるって事は自分の命すら武器にして強くなるしか無いんだ。
だからと言って、自分より強い相手に挑むのは勇気じゃない。ただの無謀者だ。」
「ほう、ガキの癖になかなか言うじゃねぇか。
調査隊からの報告が来たから、その件も含めておめぇに聞かないといけねぇ事が山ほど出来たんだ。
今から俺と一緒にギルドまで来いや。
あれから一週間だ。お前なら完治とは言わねぇが、5割位なら戻ってんだろ?」
「アインのおっさん俺の事なめてんのか?もう9割5分治ってるぜ。」
「言うじゃねぇか。残り5分戻すのに後3日ってとこか?」
「いや、それも間違いだ。ここ一週間戦ってねぇから細かい勘やら動きやらは
戦いの中でしかもどらねぇよ。だから、ここで治せる分には完治だ。」
「よし、じゃぁすぐに支度しろ。あんまり時間もねぇしな。」
「時間が無い?良くわからねぇが条件がある。」
「条件?俺に飲む理由はねぇぞ?」
「じゃぁ、俺もギルドに向かう理由がねぇ。
この間の件ならすでに報告したしな。
これ以上の厄介事はゴメンだ。」
「ちっホント口のへらねぇガキだな。
内容によりけりだ、言ってみな。」
「そう構えるなよ。そんなに難しい事じゃねぇ。
こいつらの事を頼みたい。
俺はいつも街に居る訳じゃねぇ。金が必要なら何とかする。
正直、今回の事はコイツらが居なきゃ俺は間違いなく死んでただと思う。
だか、俺からすればコイツらは命の恩人だ。
出来る限りの事はしてやりてぇ。」
「おめぇにしちゃぁ、冷静に自己分析出来てんじゃねぇか。
しゃぁねぇな。ガキ共も一緒にギルドまで来い。
もう、ここには戻らねぇつもりで荷作りするんだ。」
「にぃちゃん?お家なくなっちゃうの?」
不安そうに俺達を見上げるサリー。
サリー以外は今の状況より悪くなる事が無い事を理解してる様で
それぞれが、必要な物を荷袋に詰めていく。
「サリー、大丈夫だ。あんちゃんに任せろ。」
「よし、準備が出来たならいくぞ。
今回に限っては、マジで時間がねぇんだ。
少し急ぐぞ。
ガキ共は片角の牡鹿亭って所にいってアインにここで待てって言われたって言えばいい。
その金で飯でも食って待ってろ。
多分二~三日はかかるだろうが必ず迎えは出すから大丈夫だ。
もし金が足らなくなるようならギルドにつけとけ。」
そう言いながらおっさんは金の入った袋をハヤテに渡す。
「おっさん、あんちゃんなんか悪い事でもしたのかよ?
あんちゃんを捕まえないでくれよ。」
「おいおい、悪い事はしてねぇよ。
ただ状況が状況だけにすぐには話がおわらねぇんだよ。
だから安心して待っててくれや。」
最後にそう加えるとハヤテ達は片角の牡鹿亭へ向かい、
俺とアインのおっさんはギルドへと向かう。
「おい、そろそろ説明してくれても良いんじゃねぇか?」
「あぁ、そうだな。
ガキ共の居る前じゃあんまり話しやすい内容じゃなかったから
話せなかったがな。
まぁ、歩きながら話せる部分だけになるがサイラス、
おめぇの言った事は本当だった。
まず、魔物の群れだが原型をとどめている分だけでも200は下らない数だった。
そして、ワイバーンだが通常種だがそれでもかなり大きめの固体が二頭。
そして、その固体より二倍近い大きさの亜種が一体見つかった。
そのどれもが何者かによって倒されていたというのが
あの後出した偵察隊からの報告だ。」
「ほら、言った通りだったじゃねぇか。何が問題なんだよ?」
「ほう、てめぇまだ気が付いてねぇのか。
てめぇが言った事が本当だった事も問題だが、
それを、おめぇみたいなガキが一人で倒しちまった事が問題だって言ってんだよ。」
そう言われると、改めて思う。
倒せた事を喜ぶべきでは無かったのだ。
あの時、俺の最善の行動は食い止める事では無かったのだ。
戦いの最中、何度も考えた事。
そう、魔物の群れ、それに加えワイバーン共が街へ到達した時の事を考え
すぐに街へ戻り、冒険者ギルドへ報告するべきだった。
今回はたまたま討伐出来たから良いものの、そんなものは結果論に過ぎない。
本来であれば、ワイバーンの通常固体ですら、Aランクパーティーで
挑むようなものであり、ワイバーンだけでもそれが三頭しかも一体は亜種。
ギルド総出で緊急クエストになるような魔物のの群れだ。
あの時、何故俺はそこで食い止めようとしたのかは俺でも不思議だ。
戦闘時の一種の興奮状態だとしても、本来ならありえない行動だ。
今になって事の重大さがヒシヒシと伝わってくる。
「・・・・・。」
「本当に本当に気に喰わねぇガキだな。
ほんの少しのヒントで全てを悟った様な顔をしやがる。
本当にてめぇは人間か?
魔物の群れがいくら雑魚の集まりだかと言ってもあれだけの数だ
スタンビートと言うギルドでも緊急依頼のなるような代物だ。
それに一人で立ち向かおうなんてヤツはこの街、イヤ俺の知ってる限る聞いた事すらないぞ?
立ち向かうだけならまだ言い。無謀な冒険者だと笑われて終わりだ。
だがなそれを討伐しちまいやがった。
そこまでは、規格外の冒険者だったと済ます事も不可能じゃなかっただろう。
てめぇの場合は、そこで終わらねぇんだよ。
その魔物の群れの後で、ワイバーンの群れとの戦闘だ。
偵察隊が持ち帰ったワイバーンの死体を見たが、
あれが生きて向かってきたとするなら
俺だって、足がすくみ逃げ出したくなるようなヤツだ。
おめぇは、あれになんで立ち向かうことが出来た?
そして、どう言う手段で倒したんだ?」
「おっさん、その事に関しては俺にもわからねぇ。」
「わからねぇだと・・・・?」
「ただ・・・・・。
あの時、何故か俺の中で逃げると言う選択肢が出てこなかった。
逃げたいと言うよりは、頭の中でコイツらを街に行かせちゃいけないんだと
命をかけてでも、街を守らなきゃいけねぇんだと。
それだけが俺を動かしていた気がする。」
「理由はなんだ?」
「理由は俺もわからねぇ。
でも、街が襲われれば少なからず俺の知り合いが、そして街の向こうに居る
爺ちゃんがあいつらの餌食になると・・・・。
それが、俺には我慢ならなかったんだと思う。」
「だがな、それをどうやって国の重鎮ども、それに国王に説明するんだ?
ギルドも国に報告しない訳にもいかず、当然お前に王宮への出頭令が出てるんだ。
時間もねぇからギルドにはよらずにこのまま王宮へ向かうぞ?
あの後、お前の爺ちゃんとザックの野郎にも早馬で伝令を走らせて
王宮に来るように言ってある。
俺達が着く頃には、向こうも揃ってる頃だろう。」
「解ったよ。もう逃げるなんて野暮な事は言わねぇ。
自分の事は自分で始末をつける。」
「ホント、優秀なだけに腹の立つガキだな。
ほら、急ぐぞ・・・。」
そう言い走り出すアインのおっさんは何故か笑っているような気がした・・・・。
次回、王宮へ出向いたサイラス。
国の重鎮、そして国王が座っている王座の間で一体何が起こるのであろうか
次回も楽しみにしていただければと思います。




