プロローグ〜王都にて主人公は、夢の中
異世界に送られたものの、主人公はまだ目覚めない模様。
しかし。世界はそんな事もおかまいなしと、
勝手に話が進みます。
「賢者様、間も無く目的地のアルサーディンに到着致します。」
「うむ?もう、そんな所まで来ておったかぁ。」
「しかしながら、賢者様。
本当にその赤ん坊を連れて行かれるおつもりで?」
「んむ。その事なんじゃがいささかワシにも不思議でのぉ。」
「なにゆえ、人の形跡のみられぬあの森で赤ん坊だけが捨てられておったのか、ワシらが通った道にはここ数日以前の野営の後しか残っておらんかったしのぉ。
本来なら、とうに死んでしまって居ても不思議じゃ無いじゃろうに。
それに、ワシらが見つけるまで魔物に見つからなかったのもなんとも不思議なんじゃよ。」
「それは、わからんでも無いですが賢者様一人で育てるおつもりで?」
「ザックも相変わらず頭が堅いのぉ。
今まで一人で暮らして来たんじゃ、赤ん坊の一人や二人増えた所でなんも問題なんざ無いわぃ。」
「いやぁ、今から国王様に呼ばれて城に行くのに、赤ん坊を連れてってのは流石にマズイんじゃぁないですか?」
「阿呆。ワザワザ出向いてやっとるのに文句を言われる筋合いなんぞないわい。
文句があるならワシは帰るぞ!
国王にはお前から言っておけ。
ワシは忙しいから、用があるならお前がウチまで来いとな。」
「イヤイヤ、ここまで連れてきて逃げられたんじゃ、たまったもんじゃないですって。
まぁ、国王様も悪い方じゃ無いんですから勘弁してくださいよ、」
「うむぅ。しかし面倒くさいのぉ。
ワシは森の中で静かに隠居暮らしをしておるのが性に合っとるんじゃが。
どうせ、こないだ生まれた息子のお披露目じゃろうに。」
「わかってるなら、顔位出してやって下さいよ。
魔物がわんさか居るあの森に迎えに行かされるこっちの身にもなって下さいよ。」
「なんじゃ。Sランクに上がった話は聞いたが、すぐに泣き言を言うのは変わっとらんのぉ。
駆け出しの頃に、オークに追われて半ベソかいておったのはどこのどいつじゃったかのぉ。」
「いやいや。たまたまギルドに登録した日に散歩に付き合えと魔の森にひきづってったのは、賢者様じゃないですか。
挙げ句にDランクの昇格祝いだと連れていかれたのはワイバーンの巣でしたよ?
後から聞いたらたまたま魔石が在庫切れで待つのが面倒くさいからって荷物持ちで連れてったんですよねぇ?」
「ふむ。そんな些細な事まで覚えておらんのぉ。
ワシも、もういい歳じゃからなぁ。」
「都合のいい時だけ、年寄りになるのはやめて下さい。
無駄話をしてるウチに到着しましたよ。」
〜場所は変わって謁見の間〜
「ようこそおいで下さいました。
先日、生まれた息子の名前を付けて頂きたく
不躾ながら先生に来ていただいた所存にございます。」
「お主も随分と、老け込んだのぉ。
ついこないだまでは、タダのハナタレ坊主じゃったのにのぉ。
しかし、なんでワシがお主の息子の名付け親なんじゃ?」
「先生に言わせれば、この国の者はみなハナタレですよ。
名前を付けて頂きたいのは、私が魔法の才に恵まれなかったのですが、幸いに息子には精霊達に好かれて居るようなのですよ」
「ふむ。言霊という事かのぉ。
まぁ、良いじゃろう。
ルシウスなんてどうじゃ?」
「ルシウスですか?
先生にしては至極真っ当な名前ですね?
由来などお聞きしても?」
「ザックよ、ワシを馬鹿にしとるのか?
由来なんぞないわ!
タダの思い付きじゃわぃ。」
「やっぱりですか、国王様も何とか言ってやって下さいよ。
次期国王になる方の名前を只の思い付きで決めるなんて‥‥。」
「ふむ。むしろそれも悪くないかもしれんな。
そうか、ルシウスか。
我が息子の名前はルシウスじゃ!
国中に報せをだすのじゃ!
して、話は変わりますが先生の背中に居る赤ん坊はいったい‥‥‥?」
「ん?そうじゃ、そうじゃ。
あんまりにも静かじゃから忘れておったわぃ。
ワシの孫のサイラスじゃ。」
「先生に孫ですか?
先生に子供が居たどころか奥方様がいた事すら聞いた事が無いんですが?
どうゆう事ですか?」
「んむ。ワシにはカミさんも子供もおらんぞ?
この子は。ここに来る道中の森で拾ったんじゃ。
そのまま。捨てて置くにも不憫じゃから、ワシの孫として育てる事に決めたんじゃ。」
「左様ですか、なら王都に家を用意さましょう。
誰かおらぬか?誰かー
「またんかい。ワシに王都暮らしは、性に合わん。
用も済んだし、すぐにウチに帰るわぃ。
ほれ、ザック帰るぞぃ。」」
「いや、賢者様来たばかりじゃないですか。
一晩位休んで行きましょうよ。」
「ならよいわ。
家に帰る位一人で十分じゃ。
お主らも達者でな。」
王城をでると、未だに王子誕生のお祝いムードの中、屋台街が立ち並び物売り達のさけび声で賑わっていた。
「しかし、賢者様赤ん坊にしては寝すぎな気もするんですが、気のせいですかねぇ?」
「なぁに、時々目を覚ましてる様じゃが泣き声をあげるでもなくまた、すぐに寝てしまってる様じゃのぉ。
腹が空けば泣いてせがむじゃろうに。」
「おゃおゃ、どこかで聞いた声だと思えば、賢者様にザックじゃないかい。
ザックはしばらくみないと思えばどこへほっつき歩いてたんだいな。」
「ヘレン姐さんそりゃないよ。
見ての通り、森の奥の人も住まない様な所に賢者様を迎えに行くって言って出かけたんじゃないですか。」
「ザックよ、ワシのおらん所じゃ好き放題言ってくれたようじゃのぉ。
これは、指名依頼でドラゴンでも狩ってきて
貰うとするかのぉ。」
「ちょっとまったーー!
賢者様の言うドラゴンって道中の話に出てた黒竜じゃねぇか、あんなもん命がいくつあっても、足りねよ」
「何じゃつまらんのぉ。
ワシがこんなに頼んでもダメか?
老い先短いジジイの頼みじゃと言うのにケチな奴じゃのぉ。」
「賢者様、ザックんイジメるのもその位にしておやりよ。
「そんな事よりヘレンは、宿を放ったらかしてこんな所で油売っておって平気なのかのぉ。」
「賢者様に言われ無くてもわかってますよ。
また、時間のある時にでも寄って下さいなぁ」
「ほうじゃのぉ。しばらくは忙しいかもしれんが、時々は顔を出すかのぉ。
ほれ、ザックよ早く街を出んと、変な場所で日が暮れてしまうじゃろ。」
「本当に賢者様は言い出したら聞かないんだから、困ったもんだよ。
いくら、賢者様とは言え一人で帰らせたら
また、森がえらい事になっちまうからなぁ。」
こうして、拾った赤ん坊を連れて二人は森の中にある賢者様の家へと急ぐのであった‥‥‥。