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第二話『精神異常者?』

 目覚めたら森の中。

 …………これ、なんていうゲーム?

 人を気絶させるってアウトだろ。

 てか、これめっちゃリアルだな。見えるものもそうだし、そよ風が頬を撫でる感触だってある。

 今両手を後ろについて足を伸ばしてるんだが、両掌から伝わる土の冷たさも忠実に再現出来ている。

 …………ってか、


「これどっかに捨てられたんじゃね?」


 見上げると、鮮やかな新緑の葉が一面に見える。

 日本でこんな綺麗な森があるのか知らないが、よりリアリティを出すためにあのすごろく場で見たような場所に放置したんだろう。

 どうせどっかにカメラとかあるんだろうな。


 てか、本当にそろそろ勘弁して欲しい。

 俺だってもう中学生三年生だ。変な実験に巻き込まないで欲しい。

 俺の父さんは、親友にかがくしゃだかなんだかがいるらしい。

 そして、たまにアルバイトとして俺に手伝ってくれ、と言ってくる。

 友達思いの父さんは有無を言わさずに俺を派遣する。

 最初は渋々行っていたが、内容が内容なだけに、日に日に抵抗するようになった。

 ライオンの檻にぶち込まれてたり、海に重り付けられて落とされたり、上空五千mから落とされたり…………(命の安全は保障しているらしい)

 だが、抵抗も虚しく今回のように寝ている間に~、なんてことが…………


 と、閑話休題。って誰に言ってんだか。

 まあ、一人になると自分に話しかけることがよくあるからな。

 …………寂しい。


「ま、人のいるところ探してさっさと帰るか」


 まあ、人をライオンの檻にぶち込むような人が人里近くの森なんて選ぶわけないから最低でも二、三日はかかるだろうな。


「おっしゃ、頑張るぞ!」


 一人になると独り言が多くなる…………べ、べつに悲しくなんてないんだから!

 …………男のツンデレとか誰得だよ……


 ガサッ


「っ!」


 俺が自分を鼓舞して歩き出そうとしたら、近くの茂みから何かが動く音がした。

 俺はびっくりして身構える。


 いつでも全力で逃げれるように下半身に力を入れて構えていると一人の女の子が出てきた。

 キラキラと光を反射する綺麗な金髪に青い目。小柄で華奢な体格をしている少女は顔も小さくて人形のように整った顔立ちをしている。多分中学生くらいの年かな?

 少女は俺を見るとその透き通るような白い肌から更に血の気が失せていき顔面蒼白となってしまった。

 

「ねぇ、君」


 俺はとりあえず話しかけることにした。

 俺はなんでこんなに怯えられてるのかと言う前に、こんなに早く人に会えてよかった、と思っていた。

 それにしても話しかけても反応がないのは辛いな~。


「それって何?」


 俺は少女が持っているバスケットのような籠を指差して言った。

 顔が真っ青になるんじゃないかというほど血の気がない少女のためにまずは世間話でもしようと思ってそう言った。なんで世間話かは俺にもよくわからない。

 思った通り少女は一瞬何を聞かれているのか分からずキョトンとしたが、ハッと気づくと目が潤み始めて今にも泣きそうになっていた。


「え? ぁう、ちょっ、ど、どうしたの? え、えぇ?!」


 俺は急に少女が棒立ちになって、えぐっ、と嗚咽し始めて慌てふためいた。

 俺なんか悪いことした?! なにか禁忌に触れたの?! 別にパンツ見せてとか言ってないけど!

 なんかよく分からないことを考えながらわたわたとする俺。

 えぐっ、えぐっ、と棒立ちのまま嗚咽する少女と、目が泳いで手足をバタバタとさせて変な踊りをする男のなんともカオスな光景がここにはあった。…………別に踊っているわけじゃ……

 

「おい! そこでなにをしている!」


 突然の大声に俺はそちらを向いた。手足はちゃんとバタバタさせていない。

 少女とは反対から聞こえた声の方を向くと、三十代ほどの髭面のおっさんがRPGで出てくる革の鎧っぽいのを着て弓を構えている。


「うわ……これはイタイ……」

「なんだとコラ!」


 つい声に出ていたようだ。

 おっさんは怒って弓に矢を(つが)えた。

 そのままグッと引き絞ると矢を持っていた手を離した。

 ものすごい速さで飛んでくる矢。

 それは俺の顔のすぐ横を通り過ぎた。

 後ろを振り向いて見ると矢が木に深々と刺さっていた。

 分かったぞ。ここは…………


「精神異常者が追いやられた場所なんだな」


 そうじゃなきゃ急に弓矢で命狙ってくるとかないだろう。

 って今気づいたけどこれは早く逃げなければ殺られるな。

 昔ライオンの檻にぶち込まれて一回死んだような経験をしたからか少しは恐怖心が和らいでいた。

 俺はおっさんに背を向けて走り出した。


「おい! チッ、しょうがねぇ。死ね!」


 そうですよね。背を向けて走り出したら格好の的ですよね。

 やっぱり恐怖で上手い判断が出来なかったか。

 俺が顔だけ振り向くともうおっさんは次の矢を引き絞って後は離すだけになっていた。


「死ね!」


 おっさんの声と共に放たれる矢。

 なぜか世界がゆっくりと見える。あ、これが死ぬ直前のスローリィーワールド(今命名した)か。

 だが、そのスローリィーワールドでも矢は刻一刻と俺の心臓目掛けて飛んでくる。

 俺はこの矢が見えるほどのスローリィーワールドではほぼ動けていなかった。

 そしてスローリィーワールドでも時間は刻一刻と過ぎていき、矢が俺の体まであと数cmとなった。オワタ。


カンッ!


「ぐはぁぁぁああ!!!! ………………って、え?」


 突如聞こえた金属音。

 俺はスローリィーワールド(なんか恥ずかしくなってきた)が解けて普通に動き始めていた。

 矢が刺さったと思った俺は凄まじい叫び声を上げて膝をついた。

 が、痛みがないことに気づいて間抜けな声を出す。

 後ろからはおっさんの舌打ちが聞こえる。舌打ちと共に、結界を張れるのかよ、とか聞こえてきたが気にしない。あれは非常に残念な人なんだ。

 

「ん?」


 突然ヒラヒラと紙が落ちてきた。

 なんか文字が書いてあるっぽいので手にとり読んでみることにした。


【おひさ~もう俺っちたちのことビリーブして(しんじて)くれた~?】

 

 早速この紙を破りたくなった。

 

【あ、怒った? ごめごめ~。でさぁ、今の状況分かってる?】


 すっげぇ馴れ馴れしいな神さん。

 それに今の状況? そんなの分かりきってるよ。頭がおかしい超えて残念なおっさんに命狙われて…………それか!

 一回死んだと思ってたからすっかり落ち着いていたよ。


【気づいた~? そんでさぁ、不死の力は分かったでしょ? さっさと逃げなよ。このままだとそこのお嬢ちゃんが殺されちゃうよん】


 いちいちむかつくけどその通りだ。てかあの矢ってやっぱり俺に当たったんだ。結界のおかげで守られたって訳か。

 それなら振り返らなくてもいいや。

 俺は、よいしょ、と立ち上がり少女の元へと向かった。


「君走れる?」


 後ろのおっさんから少女を隠すように立つ。

 少女の顔は既に真っ青になっており、今にも倒れそうだ。カンッ!

 少女は俺が敵じゃない(元からそうなんだが)と分かると涙目になりながらも首をフルフルと横に振る。セミロングの金髪が首の動きに合わせて細かく揺れる。

 って見惚れてる場合じゃない。カンッ!

 

「ならしょうがないな」


 俺は軽くしゃがみ、身長百五十cmほどの小柄な体を抱きかかえる。

 膝裏と肩を持って立ち上がる。いわゆるお姫様抱っこだ。ガンッ!

 俺の腕の中で少女はブルブルと震えているのが分かる。よっぽど怖いんだな。ガンッ!

 ってさっきからカンカンガンガンうるさいな。さっさと逃げよう。

 俺は走り出そうと声を出す。


「よし、行くか!」

「待て! 逃がすか!」


 後ろからの攻撃が更に激しくなったが、無視して走り続けるとすぐに音は止んだ。

 森は雑音がなくなって嬉しそうだ。そよ風で擦れる葉の音からそんな感じがする。森も精神異常者にはまいってたんだな。

 

 さて、さ、さっきはつ、ついお姫様抱っこな、な、なんてしちゃったけどだ、大丈夫かな?

 碌に女の子の手すら握ったことのない俺は落ち着きを取り戻…………してないかもしれないが、そんなことを考えていた。喋るくらいなら平気なんだけどな……

 他にもあそこであの神の言葉を簡単に信じて背を向けて走るなんてアホだ、とか考えているがそれはあれだ、おまけみたいな?


 今現在少女が出てきた方向に向かって走り、数十分のところで立ち止まっている。女の子はちゃんと優しく降ろしてあげた。

 俺は小柄で可愛らしい少女を見つめながら質問をした。優しく語りかけるんだぞ、俺!


「あの人はなに? 君は怯えていたけど知っているの?」


 なぜ命を狙う? 唯の精神異常者がそこまでするはずないし、そんなに重症なら病院から、又は独房とかから出てこれないはず。

 ってすぐに気づくべきだよな。気づくの遅いよ、俺。

 まあ、今ならあれが身を隠している快楽殺人犯とか思い浮かぶけどね!

 ちょっと何言ってるかわかんなくなってきた。

 

 少女は幾分落ち着いたのか顔に血の気が戻ってきた。

 少女はその小さな口を開いて喋り出した。


「あの……た、助けてくれてありがとうございます……」

「お、おう」


 消えいるような声で少女はお礼を言った。

 俺は質問の答えとは全く違う返しに戸惑いながらも返事をする。


「ってそうじゃなくて、あれはなに?」

「ひゃうっ!……あの人は多分、ち、近づいたらダメだ! って言ってた村の人だと思います……」


 思わず声が強まり少女はビクッとして小さな悲鳴を上げた。可愛かった。

 が、質問にはちゃんと答えてくれた。

 やっぱりあれは手に負えなくなった精神異常者たちが集まる村の住民だったか。

 ま、それなら気にしても仕方が無い。

 俺は少女に頼み事をした。


「俺ちょっと迷っちゃって……君の村まで案内してくれない?」

「っ!…………は、はい!」


 少女は一瞬驚いた顔をして、考え込んだ後、まだ突っかかりながらも承諾してくれた。


「は~、よかった~。これで帰れるわ~」


 俺は安心感からか、思わず声に出して安堵した。

 とりあえず少女の村に行ってここがどこかとか聞いてそこからタクシーか、電車のところまでの道を聞けばなんとかなるだろ。

 俺はいつも変なところに置いていかれるのに慣れたからか、常にお金を持つようになった。そのお金すら足りないところに置いていかれたこともあったが……

 ま、そんときは頑張って歩くか! 学校は親父がなんとかしてるだろ。てかしてくれてないと困る。


「つ、ついてきてください」


 少女は最初よりも体の強張りはなくなった。

 まだ少しカクカクとした動きだが、案内してくれるようだ。なんかカクカクした動き可愛いな。

 俺は少女について行き、村へと向かった。







「ひゃっ!」


「…………」


「はぅ!」


「………………」


「きゃん!」


「……………………手、貸そうか?」


 あれから村へと歩き出した俺ら。

 特に喋ることもなく、普通に歩いてる時にそれは起きた。

 少女が木の根など、躓くものが何もないのに転んだのだ。

 まあ、たまにはあるか、と見ないフリをしていた。少女も俺の気遣いに気づいたのかなにもなかったかのように歩き出した。

 だが、またすぐに転んだ。完全に平らな道でだ。

 今度は見られて恥ずかしそうにそさくさと歩き出す少女は可愛らしかったが、数mも歩いていないところでまた転ぶ。

 そして俺はある言葉を思い出した。


 こ、これは………………俗に言う『ドジッ子』ではないか?


 転んで起きた時の若干潤んだ瞳がその人形みたいに整った顔を更に可愛く見せる。

 やばい、これは完全にあれだ。

 二次元だけの存在だと思っていたものが現実にも存在するとは…………


 そして、俺はそんなドシッ子少女に手を差し伸べた。

 まあ、こんな可愛い子と手を繋ぎたいとか下心もあるっちゃあるが、一応親切だ。一割がた親切だ。


「だ、大丈夫です!」


 少女はスクッと立ち上がり強い意思を持った目で俺を見ながらそう言い切った。


「おう、気をつけろよ。怪我でもしたらその綺麗な肌が台無しだからな…………あ」

「は、はい……」


 うわぁぁあああ!!!!

 俺なんてこと口走ってんだよ! 

 少女もなんかちょっと俯いて戸惑ってるし!

 俺たちの間に風が吹く。風が俺の短髪と少女の金髪を揺らす。

 

「「……………………」」


 なにこの空気! めっさ気まずい!

 やべぇよ、俺この子に変な人とか思われてんのかな?

 それともいきなりなに馴れ馴れしくしてんの? とか思ってんのかな?

 俺は一人頭を抱えて悩み始めた。


 ふと、顔を上げると少女が俺を覗きこんでいた。少女の身長は百五十cmほどということで百八十cmある俺の顔を少女が見ると覗きこんでいるように感じるのだ。

 

「どうしたのですか?」

「っ!」


 その少女の何気無い仕草でも、女耐性があまりない俺をKOするには十分だった。

 なんだよこの可愛い生き物は……


「い、いや! なんでもない! い、行こうか」


 俺は顔が熱くなるのを感じながら早足に歩きだした。






 

 

 

 



 あっちのほうは先が思い尽きません

 頑張ってはいるのですが……テスト週間でしたし……

 あ、今日テスト終わりました(*^-^)ようやくですよ……まったく。

 しかも後期中間なのに九教科あるんですよ。わけわかめ



 では!

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