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第一話『目覚めたらすごろく場?』

『パンパカパーン! おめおめ~、君は当選しちゃいました~!』


 俺が意識を取り戻すと同時に、軽いおちゃらけたような声が聞こえてきた。


「うぅ……ここは、なんだ?」


『パンパカパーン! おめおめ~、君は当選しちゃいました~!』


 俺が意識を取り戻すと同時に、軽いおちゃらけたような声が聞こえてきた。


「うぅ……ここは、なんだ?」


 目を開けても真っ暗で閉じているときと大差ない。

 俺は横になっていると思われる体を起こす。真っ暗で上も下も分からない。かろうじてケツの下に床と思わしき感触があるだけだ。


『ちょいちょいちょい~。俺っちのこと無視~?』


 また聞こえた軽い声に誰かがいると思った。

 俺は、見えないけれども首を左右に振って辺りを見渡した。


「すいません、あなたは誰ですか?」

『お? やっと気づいてくれた? 俺っち神! よろしくね~。ちなみに俺っちの姿は見えないからね~』


 やはり軽い感じに話す『神』と名乗る声。なんだこのチャライ神は。とりあえず『神さん』でいいや。宿の人みたいだな。

 俺は神さんにここはなんなのか聞いてみることにした。


「ここって……」

『あ~! ごめんね~、急なことでわけわかめだよね~。ついでに寝起きっぽいし、目を覚まさせて上げるよ~ん』


 わけわかめって……

 と、馬鹿にする通り越して呆れていると、淡い青色の光がわずかに見えて、急に頭が冴えてきた。

 頭が冴えてくるとこの現状に焦り始めた。


「ちょ、これなんだよ。ここどこだよ!」

『ちょいちょいちょい、落ち着きなって。今から説明するからさ~』


 俺は先ほどまでの寝ボケてた状態とは正反対にうろたえていた。みっともないくらいに。

 だって、俺は昨日ちゃんと自分のベッドで寝たはずなのに起きたら右も左も分からないような暗闇にいたんだ。真夜中だとしてもこんだけ時間があれば目も慣れるはずなのに本当になにも見えない。

 俺は神さんがこの状況を説明するのを待った。


『俺っち暇だしさ~、説明する前に世間話でもしちゃわない?』

「説明プリーズ!」


 つい神さんに怒鳴ってしまった。

 でも、俺の心境も考慮して欲しい。いきなりわけのわからない場所にいて、なにも見えない状態。フレンドリーな神さんの声があるからなんとか平静を保ててるのに世間話なんて出来るわけがない。

 もし神さんが脅すような感じだったり、なにも聞こえなかったら発狂してる自信がある。


『ソーリソーリー、なんか君面白いからさ~。ぷくく~』


 ……なんかマジでぶん殴りたくなってきた。会ってすらないのにこんなにムカつかせるって逆に凄いよ。


『ま、イジるのもこれくらいにしますか。それじゃ、説明係君よろしく~』

「お前が説明するんじゃないんかい!」


 神のやろう……さっさと説明係に代わっとけよ!

 だんだんイライラが増してきた頃、ようやく説明係っぽい人? が出てきた。もちろん視界は真っ暗のままだが。


『初めまして【一ノ宮(いちのみや)勇太(ゆうた)】さん』


 真面目そうな口調で一言一言しっかりと発音するやや高めの声が聞こえてきた。神さんとは違ってチャライ感じの高さじゃない。

 神さんとは違って普通の人? でよかった。


『今回説明係を務めさせてもらいます【瀬爪(せつめ)伊賀仮(いがかり)】と申します』

「…………………………………………………………俺突っ込まないよ?」

『残念です。では私が代わりに……』

「なんでそこでお前が突っ込むんだよ! どうしてもそのやり取りがやりたいのか!」

『冗談です。私のことは説明さんでも係さんでもどうとでも呼んだらどうですか?』

「投げやりか!」


 こいつまでおかしなやつかよ……

 自分の体さえ見えない真っ暗な暗闇の中で俺はガクンと肩を落とした。


『まあ、そんなに肩を落とさないでください。ここから本題ですから』


 俺は本題と聞いてピシッと座った(つもり)。

 そういえばこの声ってどこから聞こえて来てるんだろう? まるでイヤホンから聞こえるみたいに直接聞こえるなぁ。


『あ、これはてれぱす? てれぱすぃ? ってやつで喋ってるんで声は聞こえていませんよ』

「お前人の心を読むなよ!」


 あ、テレパシーだから思ってること駄々漏れなのか?


『ピンポーン、ていうか早く気づけよ』

「お前キャラどうなってんの?!」


 思わず目を見開いてどことなく叫ぶ。ま、目を見開いても何も見えないのだが。

 説明係は、ゴホン、とわざとらしく咳をするとようやく本題に入った。


『まずはあなたがここに来たのは我々の【抽選】によって選ばれたためです』

「抽選?」

『わざわざ言葉にしなくても伝わるのになんで喋るんだよお前』

「なっ…………!」


 こいつ、本当になんなんだよ。


『私は説明係です。続きを説明しますね。

 あなたは寝ているところを拉致られました』

「っ……」


 俺は叫びそうになる衝動を必死に抑えて続きを待つ。


『ここはどこかから入ったどっかにあるどこかです』

「何一つ情報でてきてねぇよ!」

『冗談です。あといい加減叫ぶの止めてくんない? 目障り』


 なんとなく負けた気がして俯いた。

 自分の体が認識できないからよくわからないんだよね。


『本当のことを言うと、ここは【神】が作った世界です』

「世界を作る?」

『言われたことをすぐ忘れる鳥頭のことはもう言わないでおきましょう。

 先ほどの神は本物です。モノホンです』


 と、鳥頭……それにわざわざ言い直さなくても……モノホンて。

 

『いえ、これが私のポリシーですから。

 そして…………ってまだライトアップされていないじゃないですか。神様早く明かりをつけてあげてください』


 ちょっと遠くから、ヘイヘ~イ、とやる気のない声が聞こえたあとパッと目の前が明るくなった。部屋の電気をつけるみたいに軽いな、おい。

 真っ暗闇からの急な発光で目がやられた。

 痛みで目を押さえていると、全く少しは考えて……と声がして痛みが急に引いて行った。

 恐る恐る目を開くと視界には真っ暗闇の中にポンポンと光る丸い円が多数。

 たくさんの大きな丸い円が様々な色を出して発光している。

 しかし逆に、丸い円以外のところは真っ暗だ。まるでそこに床はないかのように。

 

『よし、これで説明がしやすくなりました。

 ところでこれ見たことありますよね?』


 説明係の声で意識が戻る。どうやら目の前の非現実的な光景に呆然としていたようだ。

 見たことありますよね、って言われても……


『あ、すいません。鳥頭だってこと忘れてました』

「おちょくってんのか?!」


 もうちょい考えたら出るっちゅうの。

 え~っと……

 と考え始めて下を向くと、俺のところも光っていることに気がついた。ここは普通の白い光だ。

 そしてなにやら太い線で文字が書かれているようだ。

 俺はスクッと立ち上がり文字を見る。目が見えるってだけで恐怖は大分やわらぐんだな。


「スタート?」

『はい。ここまでくればノミ並のあなたの脳味噌でも分かるでしょう』


 俺は説明係の言葉を無視して再度目の前に広がる丸い円を見つめた。気にしてたら負ける気がする。

 これは……


「すごろく?」

『ピンポーン、頭の回転の悪さに私びっくりです』

「もうお前はそのキャラで行くんだな……」


 俺は諦めた風に呟いた。

 

『そこまで分かったならあとはルールの説明だけですね。ここで分からなかったら張り倒していましたよ』


 姿がないのにどうやって張り倒すんだよ。馬鹿じゃねぇの?

 と、思った瞬間視界が高速で右に動いた。いや、真後ろか、これは?


「あぎゃあぁぁああ!!! 首が! 首があらぬ方向にぃぃいい!」

『あなたはこの世界から出るためにはこのすごろくでゴールまでたどり着かなければいけません』


 俺の悲鳴も無視して何事もなかったかのように説明を続ける説明係。

 てかどうやって張り倒したんだよ……てかあれ張り倒せてないよ。体が追いつかないで首だけがグリンって動いたよ。

 俺は痛む首を両手で掴み、なんとか正面を向かせた。


『まずあなたの立っているところはスタート地点です。そこからさいころを振り、示された道筋を通ってゴールまで進みます』


 説明係がそう言うと円と円の間の暗闇にある程度幅がある白い線が現れた。

 

『今注意しておきますが、真っ暗のところに進むと落ちますからね。ちゃんと光っているところをお進みください』


 円は半径五mくらい。円を繋ぐ光は幅が一mくらい。

 つまりこの範囲から外は出てはいけないってことか。

 …………どうなってるんだろう?


『下は何もありません。永遠に落ち続けます』

「なにそれ! なんか怖い! なんなら思い切って針地獄とかにしたらどうよ!」


 俺は何を言っているんだ……

 俺がそう叫ぶと説明係は途端に静かになり、音がなくなる(テレパシーだから音は出していないのか?)

 

カッカッカ


「お前なにかメモしてない?」

『はい、なかなかの案でしたので』


 なにかペンで書く音がしたから聞いてみたら案の定だった。

 てかテレパシーって本人同士の心で会話するとかじゃなかったっけ?


『神様くおりてぃですよ』

「すごいな! おい!」


 わけわかめ…………

 俺はいつまでもじゃれてないで話しを進めようと心の中で言った。


『そうですね。では続きを。

 それぞれのマスには指令があります』


 まあ、当然だよな。すごろくだし。

 今回はそれがどんな内容かということなんだが……こんな盛大なすごろくを作るってどんな大金持ちなんだか……

 俺はなんだかんだ言って神さんとか説明係のことを信用というか真に受けていなかった。

 どうせ俺の親が勝手に実験とかに俺を送り込んだんだろう。毎度のことで慣れて…………はいないな。最初慌ててたし。

 しかし、今回はなんとも手が込んだものだな。スケールが違う。


『今回は本物ですよ。ま、どうせ分かることですから今は置いておきましょうか。

 マスに書いてある指令は絶対です。失敗してしまった場合はペナルティがあります。成功時には報酬が出る場合があります。失敗時は百%ですが、成功時には五十%くらい。てか気分です。御了承ください』

「…………つっこまんからな」


 俺は比較的落ち着いて聞けるようになった。

 先ほどでいつもみたいに実験に送り込まれただけ、と思うことで心に余裕が出来た。

 それにしても、あとでどうせ分かる、とかそれっぽいこと言っちゃって。

 と思っていると目の前にさいころが現れた。それはもう煙と共にポンッとね。


「おお~」

『なんか信じてないようなので説明飛ばします。さいころ振ってください』


 俺は言われた通り円から飛び出ない程度にさいころを転がした。

 さいころは角がやや丸くなっており、真っ白な面に黒い丸が点々と書かれている。

 やがてさいころの勢いがなくなっていき、最後にはプルプルプルッと細かく揺れて静止した。

 

『四ですね。では光の道筋に沿って四つマスを進んでください』


 俺は言われた通りに細い白い光の道を歩いていく。でも四ってたとえ遊びでも縁起が悪いのは嫌だな~。

 下を覗きこんでみるが、やはりなにも見えない。下は全く光りがないということなのだろうか?

 

 そうやって俺は四つマスを進んだ。

 スタートのマスを合わせると五つのマスを踏んだ。ちなみに感触は普通にコンクリートというか、硬かった。

 

『では、マスに書いてある指令を読んでください』


 口調は丁寧だが、なんだかおざなりな感じがする。

 だが、特に気にせず俺はマスを見た。早く帰ってアニメの続き見たいな~、などと考えながら。


「え~っと、

 【指令! 一番近くの人間の村の人たちの全滅を防げ!】

 ってなんだこれ?」

『……それくらいわかれよ』


 ボソッだけどちゃんと聞き取れたぞ! あ、俺に直接語りかけているんだから当たり前か。ってそうじゃねぇ!

 っと、下にまだなにか書いてあるな。


「え~、

 【今回のチート。

  一、言語翻訳

  二、不死】

 ってマジで?!」


 チートなんてもらえるのかよ。いや、その前にこれすごろく? まあ、いいや。

 てか不死って。こんなんもらってなんだかんだで死ぬやつって多いよな。意外な弱点があったりして。


『不死とは、敵の攻撃を防ぐ役割を持ちます。もちろん口内や目の中などの攻撃も防ぎます。しかも痛みは全くありません。もし、トラック並の衝撃が来たら尻餅くらいはついてしまうかもしれませんが』


 俺が疑った瞬間、説明係が補足した。

 てか、本当にすごいな。トラック並の衝撃をくらって尻餅くらいだけとか。チートだな。


『では、早速行きますよ』

「え? まだ何かあるのか?」


 俺はまだ出し物があるのかと驚いた。いや、これからだな。すごろくなのにさいころ振って終わりっておかしいか。それにチートの使い道がいまいち分からない。


 地面が、水溜りに水滴が落ちたように、歪んだ。手が込んでるな~。

 そして徐々に文字が消え、地面に桃源郷のように美しい景色が映し出された。これはテレビで見たことあるぞ。昔のヨーロッパっぽいな。


『あ、言い忘れてましたが、今回はキリがよかったので特別サービスとして不死をつけさせてもらいましたが、次からは死んだら普通に死んでしまいますので。あと、今から行くのはあなたの世界でいうところのファンタジー世界です。では、頑張ってきてくださいね』


 説明係がそう早口にまくしたてたとき、地面がまるで、水面に小石が落ちたかのように波だった。


「え?」


 次の瞬間、足場がなくなったのか一瞬の浮遊状態になり、俺は呆気にとられて間抜けな声を出すことしか出来ずに気を失った。







 読んでくださりありがとうございます!

 次話は出来次第投稿しますね(*^-^)


 そういえばタイトルどうにかならないものかね……

 サブタイトルとかのときでも滅茶苦茶困るんだよね……

 軽く案とかくれたらいいな(チラッ

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