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真・恋姫大戦記  作者: 明火付
第一部・漢中争奪戦
3/34

第三話『張魯。白米で天下を語るのこと』

オリジナルキャラを出すときは抵抗があります。

やっぱり原作キャラを活躍させたいですしね。

という訳で第三話。代休なので好きなだけ書ける平日は豪華で良いですね

投擲された鍼は二人合わせて大小それぞれ10本だ。

一刀は飛来する鍼を見ながら思考する。

気を使えば一気呵成に叩き落せるだが――

とある考えが過り一刀はその考えを放棄した。

故に叩き潰す。腰の愛刀を抜き去った。

即座に黒の直刃が空を裂く。

迎撃。


軽い音と共に鍼が両断される。

距離も角度も違った鍼を、たった一振りで4本、斬り捨てていた。

一刀はだが、同じ結果を信じていた筈の隣から、倒れる音を聞いた。


「星っ」


手に持つ武具が災いした。

高い範囲を持つ槍は、時として小回りに劣る。

苦悶の表情を浮かべる星の足元には3本まで、砕かれた鍼が転がっている。

しかしそのむき出しの膝には、まるであざ笑うかのように輝く1本の鍼が刺さっている。


「大丈夫か!星っ」


「主殿……申し訳、ありません」


震える声は苦悶を我慢するもの。

たった一本の鍼でここまで動きを制限するのか――

驚嘆と焦りが一刀を支配する。


「おやっ。他人を気にする余裕はあるのさね?」


女店主――張魯は笑ったままだ。

その先ほどまでは快活に感じた声が、今は一刀の心にどす黒い感情を生ませていた。

身内を傷つける。

それは、これからするであろう自分以外に―


「星に、何をした?」


「そう聞かれて答える馬鹿はいないだろうねえ」


「じゃあ、馬鹿になってもらう」


一歩。だが距離を詰めようとした一刀に、


「待ちな!教えないって言ってないよ。私の武具は鍼。まあゴッドヴェイドウは治療用。体の誤動作もお手の物って訳さね」


「馬鹿になってくれてありがとう。だがその技は見切った」


「ははっ。良いね!その台詞が格好良いよっ。じゃあ、突然だけど数の問題だ。私が投げたのは10本。あんた等に来たのは8本。さて――」


「投げた残り2本はどこさねっ?」


それは直感だった。

店内を抜ける扉からの風。全身が鋭敏な感覚器と化している一刀は、すぐさま異常を感じ視線を上げる。そこには目と鼻の先、ふらふらと鍼が浮かんでいた。


「ッ」


息を飲む間もない。

瞬間、鍼が射出される。

それは浮いていたものを落とす、などの甘いものではなく。文字通り、空を裂いて打ち出された弾丸。

しかし一刀の表情が変化した。

緊から、笑みへと。

鍼が動いた。

それは落ちる筈の動きが、突然向きを変えたのだ。

まるで引っ張られるように向きを右方に向けた針は、そのまま壁にぶつかった。

張魯は初めて笑みを崩す。


「これなら、どうだい!」


もう一本。これも重力も無視するように浮いていた鍼が、死角から一刀を襲う。それは背後。

まるで目に見えていない一撃。だが、それも一刀は微動だにしない。


「そっちか」


言葉一つだった。

鍼がまたしても機動を変え、天井にぶつかった。

小さな破砕音が響き、部屋が静まる。

張魯が小さく呟いた。


「……あんた。凄いじゃないか」


「いや、俺も驚いてる。あなたの技、凄いよ」


「ふん。見切られた相手に言われても悔しいだけだよ。ああ、悔しいねえ。合格じゃないか」


全く後悔も感じさせない笑みを作る張魯に、一刀は肩の力を抜いた。

それが合図だった。星の体に刺さっていた針が勝手に抜ける。

すると苦悶の表情を浮かべていた星がすぐさま起き上がった。

ぽんぽんと膝を払い、目が合った一刀に、顔を若干赤らめる。


「主殿、格好悪い所を見られてしまいましたな」


「場所が悪かっただけだよ。それより、体調は大丈夫か?


「ええ。先ほどの痛みは消えました。それよりも、体が軽いような……?」


「言っただろう。ゴッドヴェイドウは治療の技さね」


腕を組んだ張魯が言う。


「誤作動も起こせるとは言ったが、したとは言ってないよ。つまり、あんたのそのヒラヒラの服のせいで起きた体の気の冷たい部分を刺激して良くしてやったのさ」


「服は余計なお世話だ」


目を細める星。ふと隣を見ると一刀は笑っていた。

それは安心した――心から安堵したものから生まれる笑みだった。

あまりにも嬉しそうに破顔する一刀に、星はむずがゆいものを覚える。


「そ、それで。最後のあの宙に浮いた鍼はなんだったのです。主殿」


「ああ。糸だよ」


「糸?」


「そ。細い糸がこの部屋の四方に張り巡らされていたんだ。凝らさないと見えないくらいね。鍼はそれに巻きつけていたんだ。後は部屋中の重りと手にある糸を揺らして操作する。しかし、ここまで細くて力強いのは見たこと無いよ」


「ゴッドヴェイドーは鍼だけじゃない。縫合する糸も、この通り……でも何で分かったさね?」


「ああ。簡単だったよ。さっき星が吹き出したお茶だ。掃除でふき取ったみたいだけど、ちょっと濡れててね。糸さえ分かれば、気功で揺らせば良い。そうすれば方向を見失う」


「……あんた、そのレベルの気功が使えるなら、何でそれを最初に投げた時に――」


「いや、それを言うなら星も店内を傷つけても良い程度に槍を振り回せれば鍼防げたし。ああ、でも、その時に一緒の考えて安心したよ。だって」


「ふふっ。流石は主殿。なぜなら」


二人は声を合わせて言った。


「「こんな美味しいお店を壊すなんてもったいなくて」」


その言葉は純粋なものだった。

いきなり――何の脈絡も振りもなく襲い掛かってきた店を気遣う。

当たり前に行い――当たり前に実践してみせた。

張魯は、そんな自然な二人に、

口元が綻ぶのを抑え切れなかった。


「はっはっ!最高だっ。あんた達。良いだろう!二人とも合格だよ!おいでさっ。店じまいだ!話があるんだよ」


かたりと糸を回収すると、張魯は暖簾をたたんだ。

二人は顔を合わせるが、どちらとも言わず付いていく。

部屋の奥。薄汚れた物置のような部屋に入った張魯は、床の取っ手を引いた。

すると床に人が入れそうな地下道が生まれる。


「おいで」


視界は狭い。

しかし、止まるわけにもいかない。それに一刀も星も、この謎の女性の真意と襲撃の意図が知りたかった。

階段を降りながら一刀が言う。


「それで。ゴッドヴェイドウとは何なんだ?」


「お。良い発言さね!あたし達は道教の一つさね。でも――勘違いしなさんな。あたし等はあの黄巾の馬鹿共とは違う。豊かな食と鍼で人の心を支えるのを目的にしているのさ」


「それで、その貴方達が私達に何を持ちかけるのだ?」


星が怪訝な表情で疑問をぶつけた。


「決まっている。ゴッドヴェイドウは病を払い、人を助けるのが目的さ」


視界の奥、目の前に扉がある。

張魯がその扉を開け、中を見た一刀は目を見開いた。

そこは巨大な空間だった。地下とは言え、円状に構成された地下道。

中央に祭壇が置かれ、火が灯されている。

小さな灯りに照らされるように、並び立つ男達の姿が浮かび上がった。

手に持つのはそれぞれの武具。

そして、張魯は祭壇に進み、そこに無遠慮に腰掻ける。




「だから治療するんだよ。この腐りきった漢という病魔を!この、漢中を皮切りにね!」




手が痛いですね。

一気に三話は疲れますが、どんどんかけます。

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