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真・恋姫大戦記  作者: 明火付
第一部・漢中争奪戦
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第十一話『拠点フェイズ 張魯編 1』

ここからは拠点フェイズです。

会話が多くなるのと、一個一個の話しは短いです。

全員分のをやったら、次の話しに移ります。かなりふざけているので、原作乖離お気をつけを。

漢中を手に入れてから数日経ったことだった。

今だ修復中で大工の音が響く漢中城。その執務室で、一刀は風の報告を聞いている。

個室だ。しかし、その机の上には山と積もった書状がある。


「という訳で、農民を使っての灌漑工事に着手致しました。財政出費は手痛いものでがありますが、長期的に見れば民の日銭を賄え、食糧も増えると思いますー」


「今はみんな日々の暮らしに困ってるだろうから。頼むよ」


「はいー。続きましてはー」


そう言って別の書状を開こうとした風に一刀が悲鳴を上げた。


「ま、待った。朝からずっと仕事しっぱなしだ。そろそろ休憩させてもらってもいいんじゃない……で、しょうか……?」


最後、風の睨みで尻すぼみになっていく哀れな主であった。


「私も猫の観察にも行けないのです。真面目な人がいれば風も休みたいのです。でも、いまこの大地は荒れ放題なのですよ」


風こそ不満そうであった。

元来の彼女は働くのはそこまで好きではないのだ。

突発的に策を思いつく分、怠けるときはきちんと怠けたい主義である。

しかし、そんな風をして働かないと!っと思わせるほどに、漢中の人材不足は深刻だった。

そこに前主の横暴である。漢中の惨状、聞きしに勝るものがあるのだ。


「蜂起するだけして、後は放っておくのですかー?」


そして若干悲しそうに、


「もしかして風のことも放って……」


「あー。はいはい、俺が悪かったよ!矢でも何でも持って来い」


「くふっ。その意気なのですよ、お兄さん」


では、っと机に積まれた中から書状を取り出す風。

その内容に、ごくりと息を呑み。


「軍事調練終わりましたぞ酒でも飲みましょう主殿ー」


扉を開いて、星が入ってきた。

額に珠玉の汗を浮かべながら入ってきたところによると、今終えたばかりなのだろう。

そして机にかじりつく二人の気も知らず暢気にこう言った。


「おや。朝からまだ終わらないのですか。お二人とも仕事が遅いのですな」


その言葉に、一刀の苛立ちが上限を超えた。

なぜならこの星。

私は内政など分かりませぬほほほほほ、と机の戦争を全て投げ捨てた武人(笑)なのだ。


「なあ、風。やっぱりちょっと休憩するよ、俺」


「ええ。どうぞお兄さん。それに長期的に見れば、星ちゃんも鍛えないといけないですからねー」


「な、なんだ風。そんな笑顔でにじり寄って何をする気だ。待て、筆?竹?嫌だ、嫌だぞ。主殿、助けてください」


にじりよる風に壁に追い詰められる星。

それを横目に、ごゆっくりーっと一刀は執務室を後にした。

閉じた先。少しの静寂。そして、


「メンマアッーーーーーー」


星の悲鳴が響いた。

合掌。





一刀は城の中を歩いていた。

まだ先日の戦いの傷跡は至る所に残っている。

皹割れ、血濡れ。それは深くに残る漢中争奪戦の名残だ。


「ゴッドヴェイドウたちも旅立ったんだよなあ」


信者は全員国中に散っている。

張侑に組していた人間、あの楊昂、楊松、楊任の三人もだ。

間に立ったのが師愉である。

どうかこいつ等を許しておくれ、嫌な夢を見ていただけなんだよ――

その言葉に三人は深く頭を垂れていた。

自分の仕えていた主の私利私欲ぶりを見たのだ。その気持ち、分からないでもなかった。

そんな思案めいていると、窓の下に、(くだん)の師愉の姿があった。

彼女は城を抜け、森の中に入っていく。


「なんであんな所に?」


特に寄る予定もないが、いまあの執務室に戻るつもりもない。

一刀は彼女を追うことにした。

城を降りて、城の周囲に広がる森に入る。

ぬかるんでいる道はあるが、青々とした森林は大樹を抱いて気持ちの良い。

過多に輝く日の光りに若干の眩しさを感じながら、残された足跡を頼りに進む。

しばらく進むと、その森が晴れた。

瞬間、大気の渦が頬を撫でた。

いつの間にか随分と上っていたらしい。進んだ先は開けた崖の上だった。

漢中城、そして城下街が一望出来る場所だ。

そして、そこに師愉がいた。

体を降ろし、座っている。そして、その前には縦に長い石が二つあった。

足音に師愉が振り向き、苦笑する。


「何だい、一刀様。女を着けるのは関心しないねえ」


「その石は――」


「ああ、これかい。墓石だよ。と張脩と楊拍の二人のね」


そう言って手に持つのは酒の入った竹筒だ。

容器を懐より取り出し、一刀に投げる。

無事手に取った一刀に、師愉は竹筒を上げた。


「ちょっと話しでも聞いてくれないかい。なあに、ただの昔話しさね」





「張脩はね。昔は、それはもう才能があったんだよ」


一献。頬に朱をさしながら師愉は言った。


「幼い時は鍼の使い方もその振る舞いもね。ゴッドヴェイドウの指導者になれる器だったんだ――だけど、ある日。あいつの母親が病魔に犯されてね。急病だった」


それは張侑の力ではもうどうにもならないものだった。

だがゴッドヴェイドウの宿舎に行けば。それを直せる薬草があった。


「あいつの家は山里にあった。ゴッドヴェイドウの宿舎は城下町だ。だから、自分の手じゃ母親を運べなかったんだ。人の手じゃ何人かかっても時間が掛かりすぎる」


彼は村で一番の馬車を持つ、商人の家に頼みに言った。

そこの老母を治療したばかりだったのだ。助けてくれると思った。


「でもその糞商人はね。馬車を期限のある荷の方に使ったんだよ。それでも頼み込む張脩に、なら荷の分の金を出せと言いやがった。あいつは無償で治療をしたのにね」


結果、馬車を借りられなかった張侑は、母親を肩に抱いて山を降りた。


「あたしらが見たのは、宿舎に息をしていない母親を抱えて現れた張脩さ。勿論、すぐに治療をした。でも、あと少し、ほんの少し時間が足りなかった――それからさ。あいつは変わっちまった」


ゴッドヴェイドウの力を誇張して使うようになった。

急病人から金を取り、ゴッドヴェイドウ以外の者を見下すようになった。

金銭を蓄え、欲を増大させていった張侑はそして――


「それでも、あいつがしたことは許されることじゃない」


「そうさ。でも、たまに思うんだよ。あいつを、もうちょっと違った導き方が出来たんじゃないかって。もっと気づいてやれば」


傲慢だ、っと思う。

師愉はわかっている。そんな考えは、先日、叱責した間違った弟子そのものだ。

人には言える。勿論、自分でも理解している。

しかし、どうにも感情という面でも、師愉はまだ若かった。


「楊伯だって、そうさ。素晴らしい弟子だったんだ。でも、正面から褒めるのが照れくさくて、独り立ちしても会えばいっつも叱ってばかりだった。あたしは、きちんと褒めてるんだ、認めてるんだって、声に出して言ってやればよかった――」


そして、顔を向ける。

涙は流していない。だが、


「それにね。あたしはもう本当に、指導者失格だよ。楊伯に、命を上げようとした。一刀様、あんたとの約束を破ってね。他の信者のことも忘れて――」


風が一陣吹いた。

師愉はくすぐったそうに揺れる黒髪を押さえる。

そんな様子を見ながら、一刀は言った。


「でも俺は、師愉が間違ったとは思わないよ」


「何で、そんなことがいえるのさ」


「確かに弟子さんのことや、張脩のことがあった。でも、それは彼らが自分達で決めたことだ。確かに気づくのが遅かったかもしれない。でも、その二人に、きちんと師愉は向き合ったじゃないか」


嫌なことから逃げるのは簡単だ。

だが師愉はそのどちらとも向き合い、そしてこうなった。


「それに個人を優先して他の信者を、なんてのを糾弾したら俺なんて1人の女の子の為に計画早めたんだぞ。もっとタチが悪いよ」


そう言って笑う。


「だから間違ったなんて言っちゃ駄目だ。師愉は、二人に間に合ったんだよ」


その声が優しくて、どうにも耐え切れなくて。

我慢しようとしたら喉から嗚咽が洩れ出た。

そのまま一刀の胸の中に飛び込む師愉。

何も言わず抱きしめてくるその両腕はどこまでも広く、温かった。





(休憩時間中、見直しながら)


更新ペース速いような気がしますが、だ、大丈夫ですよね?

次は星の拠点編です

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