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真・恋姫大戦記  作者: 明火付
第一部・漢中争奪戦
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第一話『北郷一刀』

※オリジナルルートです。

北郷無双。ループ、ハーレム成分。時代考察齟齬。ご都合主義あります。お気をつけ下さい。

荒野。見果てぬ大地。

駆ける空が、風が一人の人物を境に抜けていく。

青年がいた。

薄茶色の髪を靡かせ、目は静かに伏せられている。

腰には一本の脇差。白い学生服を身に纏っている。そんな彼の、まだ幼さを残す整った顔立ちは、しかし次の瞬間小さく歪んだ。


「……ッ」


ため息は、その体全体を小さく脈打たせる。

それは波紋となり、波となり、ぶるりと青年は身を震わし。

遂には激情となる。


「――うああああああああああああ!」


咆哮となって大地を揺らす。

その意味を知る者は今は、まだいない。

彼、北郷一刀を除いては。



「おい、餓鬼」


声がした。

その主は近くの岩壁から現れる。

一刀は一瞥する。

異様な格好をした男である。

頭に黄色い頭巾を巻きつけ全身を包む皮鎧も同じく黄。

異様に膨れた二の腕と野獣のような目つきが、その無骨さを物語っている。現れたのは男だけではない。それに従うように、気づけば数十名の同様の格好をした兵達が一刀を囲んでいる。


「貴様ぁ。光ったかと思えば突然現れたな?何者だ。まさか邪鬼の類ではあるまいな」


威圧するように、手に持つ大剣を構える男。

だが対する一刀は表情を変えずに口を開く。

     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

「成る程。今回は君なんだ。それで、ここはどこなんだ?」


――その歳不相応の落ちつき払った声に違和感を覚える。

鉢巻の男は今まで思い通りに行かなかったことは血を以って思い通りにしてきた。切り殺した数も両の手では収まらない。

本来なら怒気を以って相対すべき態度だ。

だが、今回は違った。

この疑問には答えなければならないと、彼の戦を生き抜いてきた感性が囁いていた。


「地の名前を聞いているのならば漢中だ。それが、貴様は何者なんだ。ここで何をしていた。あの光は一体、何だ」


「へえ。漢中か。それは珍しいな。じゃあ君達は黄巾党か」


「そうだ!我こそは天の軍が一将、波才よ!」


ここまで来ているのか、と目の前の青年は呟き、


「じゃ、お疲れ様」


そして男、波才の視界に黒い線が入る。


「……あ?」


斜め均一に綺麗に綻んだ光景に男は理解が働かなかった。

線は次第に大きくなり、それに連動してまるで零れるように感覚が落ちる。

ごぽっと血の吹き出る音が最後に耳朶を打った。

波才は絶命する瞬間まで、自分が何をされたか気づかなかった。

しかし残った部下達は見ていた。

腰の刀で将の頭部を目にも止まらぬ速さで切り裂いた青年を。

血に身を染めながら口元を歪ませる、人の形をした悪鬼羅刹の姿を――



凄惨とも取れる戦いは終わった。

若干の疲労を感じながら、一刀は近くの岸壁に身を預ける。

手で顔を拭い、軽く息を吐きながら体の力を抜いていく。

血の熱気が退いていくと同時に、冷静な思考が語りかけた。


人殺し


見上げれば晴れた空は青い。

しかし、彼の眼下には対照的な色が広がっている。

一刀は得物を集団が持っていた布で拭う。

その動きを、一筋の気配が押し止めた。


「――誰だ」


その問いに動きが答える。


「雨でも降りましたか」


涼やかな声と同時、岸壁から身を出す人影。

少女だった。可憐な四肢を白い布服で身を包んでいる。脚に深くスリットを入れているがそれは動きの面であろう。短く整えられた青焔の髪を揺らし、瞳は爛々と一刀を捕らえている。

そして手にはその身の丈ほどの槍が、その切っ先を相手に向けていた。


「ああ。すぐに止んでよかったよ」


「ほう。ですが、これから本降りかもしれませぬな?」


剣呑な会話だ、と一刀は思う。

でも自分達にはそれが最初の流れなんだろう、とも。

目の前の少女を一刀は知っている。

目の前の青年を彼女は知らない。

最初に会えたのが彼女で良かった。

だから、そう、まずは。

お互いに理解し合うところからまた、始めよう。


「俺としては降って欲しくないんだけどね」


「さて。どうでしょうな。私は付近を荒らす黄巾党がいると聞いてやってきました。黄巾党が将、波才。その武に期待していた面もあったのですが――」


「じゃあここで手打ちとしないか。名も知らぬ人。雲もないのに雨を降らす必要はないだろう」


「それならば――」


瞬間、少女の槍が光を引いた。

射出された穂先は風を裂く。


「雲を作れば宜しい」


直後鈍い音が響いた。

突きの姿勢で繰りだれた刃は、向き合う直刃の表面を凪いだ。そのまま流れるように刀の奥まで滑り――


「ふっ!」


槍の勢いをそのまま、北郷は刀を滑らす。

向きを入れ替えられた槍はそのまま地面へ流される。

対して、受け流した登るように柄の先の少女へ迫る。

だが、少女は動いた。

受け流された槍をそのまま地面へ深く突き刺し、身を上げる。

槍を頂点に、柄を支点に。

まるで曲芸のようにその矮躯は宙に浮いた。その誰もいない空間を、一刀の刀が凪ぐ。

笑みを作る少女。しかし、その口はすぐさま緊を作った。

凪いだ姿勢をそのままに、一刀が振り返る。その刃は勢いを無くさず振り上げた力そのまま、背後に浮かびあがる少女の腹部に向う。


「やりますな!」


叫び、少女は槍を掴んだ手に力を加える。槍を引き抜き、宙を浮く姿勢そのまま、その穂先で向う刀を受け止めた。

鈍い破砕音が響いた。

力負けしたのは少女だった。威圧に押し負け、宙に浮いた体はそのまま吹き飛ばされる。地面に向う風を感じながら、しかし無様には倒れない。

体を回転させ、勢いを押し殺して数歩離れた先に着地。

土煙を上げながら顔を上げ、


その首元にはいつの間にか刀が突きつけられていた。


「――っ」


「止めよう。こんな戦いは誰も得しない」


片膝をつく少女とは対照的に、一刀は力も要れずに立っていた。

立ち位置からすれば少女は見上げることになる。その背後を太陽が浮かんでおり、残光がやけに眩しく見える。


「天が降らした岩より現れたのを見ておりました。将、波才と部下を討ち取る武に見たことも無い衣装と刀」


一言。ただ静かに語るように。


「貴方は一体――」


それは問いでもあり答えだ。

いまこの場の自分は何者でもない。

だから、一刀は言った。


「それを今から見つけに行くんだ、趙子竜」


知らない筈の自分の名前を言われ、趙雲――星が大きく目を見開いた。その様子がまた可笑しくて、一刀はくすりと笑みを作った。













とまあ一話です。

正直訳わかめな内容と戦闘ばかりでしたね。

次からは深いところを書けたらいいなあ

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