いきなりのラブ展開
※6話目です。
細谷さとしさん。
とても良い感じのオトコである。
昼休み…、
食事を済ませた私は本社ビルの屋上で細谷さんと語らう機会を得られた。
ビルの屋上ガーデンは残暑の日差しが照り付けて、とてもうんざりする気分だけど…
頬に当たる風が心地良く、秋が少しずつ迫っている事が実感出来る。
ベンチで缶コーヒーを飲みながら、私は細谷さんと語り会った。
細谷さとしさんは私より3歳年上の独身で北海道出身、都内でマンション借りて1人で住んでいると言う。
両親は地元で菓子店を経営していて、帰省している時は店の手伝いをするんだって。
店の方はいずれ、お兄さんが後を継ぐらしく…、今、パリの方でパテシエの修行中だとか。
今度は細谷さんが質問する。
「篠崎さんは出身はどこ?」
「四国の松山です」
「家族の人と、一緒に暮らしているの?」
「私も東京では1人暮らしなんです」
「じゃあ、家族の人は地元で暮らしているんだ?」
「上に姉がいるんですけど。今、ニューヨークにいます」
「ニューヨーク! 仕事か何かで?」
「アメリカ人と結婚しているんですけどね」
「そうなんだ。グローバルな家庭なんだね?」
グローバルな家庭だって。
単に姉が白人好みに過ぎないんだけど。
さーってと!
いよいよ本題に入っちゃおうか?
「細谷さんは…、個人的に、お付き合いされている女性はいますか?」
私がこう、質問すると…、細谷さん、急に表情を変えた。
チョット、驚いた素振りをも見せたかな?
「俺? 単なる、女友達なら」
女友達…!
この時、私は恋心がときめき出した。
「じゃあ、恋人として付き合っている人は?」
「ああ? うん。今のところ…」
「いない」
細谷さん、苦笑いしながら答える。
「なかなか、出会う機会がなくてねぇ」
やった!
これはチャンスかも!
恋人はいないし!
出会う機会もない!
だったら、この私が!
私のラブハートに火が着いちゃった!
ドッキドキ気分で、細谷さんに自分自身の心境を打ち明ける。
「そうなんですかぁ…、実はぁ、私も何ですぅ」
「ええ? アンタも?」
「異性との出会いが、なかなか無くて…寂しい思いをしているんです」
とまぁ、私は寂しそうな表情で今の心境を話してみた。
「そうなんだ? でも信じられないな」
「信じられない?」
「アンタのようなキレイな人なら、周りの男たちが黙っちゃいないだろう? 絶対、注目を浴びるハズだよ」
ケッ!
私の今の状況を知る由もないくせに!
注目浴びているなら、とっくに彼氏は出来ているわよ!
でも実際には、誰も私には振り向いてはくれないんだからね!
…なーんて、文句言ってやろうかと思ったけど、女の格が落ちてしまうから我慢しておきまっしょう。
「それがぁ、なかなかそんな状況にはなっていないんですぅ」と、冷静になってこう
私がこう、答えると…
細谷さんは目を輝かせて言った。
「だったら! 僕と、付き合わないか!?」
「え?」
いきなりのラブ展開である。
「お互い、寂しい者通しだろう? こうして語りあうのも、何かの縁だと思うし」
「…」
「俺はいつでもOKだし…、アンタが良ければ…」
細谷さんとのラブラブが始まったのは、コレがキッカケだった。
私たちは互いにメール交換したり、休日のデートを楽しんだりして親交を深めて行った。
彼って最初、見た目には大人しくて控え目な印象だったけど、付き合いを続けてみて案外活発な人である事が分かった。
色々な面で私と共感出来るモノも持っているみたいだし…
これは生涯のパートナーになれると私は期待を膨らませた。
が…