3-2: スポンサーの命令でも聞きたくないね。
「待て、アポロ」
いつの間にか、オーウェル辺境伯が従者を伴って現れていた。
「うげ・・辺境伯閣下……」
「うげとはなんだ。うげとは。しかし汚いとこだな。」
「汚いところで悪かったわね」後ろに案内してきたシルクがマジお怒りだった。
「おっほん。エステル殿の申し出、聞き届けよ。彼女たちの覚悟は本物だ。それに、彼女の治癒魔法と、その少年の森の知識は、確かに貴様の助けとなるだろう。」
アポロは、苦虫を噛み潰したような顔で辺境伯を見、それからエステルとフィンに視線を移しながら、
「スポンサーの命令でも聞きたくないね。」
それを聞いたエステルは絶望的な状況にあっても、神が杖と鞭で導き、守ってくれるから恐れないと、アポロの目を見て、
「死の陰の谷を歩むときも わたしは災いを恐れない。あなたがわたしと共にいてくださる。あなたの銃、あなたの剣 それがわたしを力づける。」
この女神官の妙な迫力と、少年の瞳の奥の炎が、彼の琴線を揺さぶったところへ辺境伯が、
「リスクを前にじっとしてたら可愛い子ちゃんを口説くこともできないんだろ。」
「……チッ。地獄耳めどこでそんなことを・・。わかったよ。だがな、俺の指示には絶対に従ってもらう。勝手な行動は一切許さん。いいか、足手まといになったら、容赦なく放置プレイだ。それでいいな?」
「放置プレイはよくわかりませんが・・はい、結構です。ありがとうございます、アポロ殿」
エステルは、安堵の表情を浮かべ、再び深く頭を下げた。
フィンも、小さな声で「ありがとう」と呟いた。
「ちょっとぉ「可愛い子ちゃんを口説くこともできないって(キラッ)」余所でそんなこと言ってんの~」アポロの口真似しながらシルクはさらにお怒りだった。
こうして、隻眼の元騎士、若き女神官、そして森の民の少年という、奇妙で、どこか不釣り合いな三人のパーティが結成された。
今はまだ互いに不信と警戒心を抱えたまま、隻眼と聖女と森の子、彼らは未知なる旅路へと踏み出す準備を始めた。