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終章-1 ファーストブロッド


死線を彷徨い、生き延びた高揚感と虚無感を漂わせたアポロ、エリアス、フィン、シャドウ、角鹿たちは、半壊した筏で岸辺にたどり着いた。


「どうやら生き残れたな。フォーク一味は…確認するまでもないか・・エステル。仇討ちのルサンチマン(怨念・憎悪)を終えたわけだがこれからどうするね。」


「愛する者よ。復讐をせず、神の怒りに任せなさい。という言葉があります・・・・「アポロ!」・・・

超越的な存在によって目的を達し憎しみの連鎖から開放されたと思うのになぜ虚しさや新たな問いが生まれているのでしょう。」


「エステル、絶望の中で己の良心と向き合う話をしたが、自我とルサンチマンがエステルの中で対立しているのさ。いつか良心の裁定によって先の見えない霧が晴れる時がくるかもしれない。」

「・・・・それは経験から・・?」


「さてね・・仇討ちはできたが、こいつら一味の動きが気になっていてね。黒竜のブレスの後だ。何も残っていないだろが調べさせてくれ。」

「「手伝います。」」


三人は、崩壊した高台の周辺を調査することにした。光熱によりガラス結晶化した大地は、大きく削り取られていた。もう何も出てこないと諦めかけた頃、黒竜のブレスの射線上から大きく外れた瓦礫の中から、魔法的な加護がかかっていた奇跡的に全損を免れた外観がボロボロの革の鞄を発見する。

「これは…」 フィンが中身を改めると、そこには羊皮紙の巻物と、見慣れぬ貴族の紋章が刻まれた蝋印が入っていた。エステルが、震える手で巻物を広げる。


「『…辺境伯オーウェルを失脚させ、シルバラードの支配権を王家の手に取り戻「焼けてて読めない」。遺物を使い、禁域の魔獣の仕業に「ここも読めない」引き起こし統治能力が無く国内の権威を毀損した咎でオーウェル辺境伯を滅殺せよ。申し開きの機会は与えたが、激昂して挑んできたのでやむなく殺したと。フォーク、貴殿の働きに期待する…』」 差出人の名には、王都の首席判事、そして彼の背後にいるであろう、さらに高位の貴族の名が書いていただろう箇所は「ここも読めない」。


そのとき何か引っかかるものが有ってアポロは鞄を遠くに投げ捨て、エステルとフィンを庇って抱きしめる。

「「アポロ?!」」抱きしめられた二人が驚く。

突然、鞄が空中で爆発するが、庇われた二人に被害はなかった。


「どうしてわかったの?」

「なんとなくだな。罠の類に関してはそう外れない。それにあの後ろの連中はそんなに甘くない。ゲームの駒を活かすようなことは決してやらないさ。」


「父様も、皆も…貴族たちの、利権や政争のために…」 エステルの美麗な顔に強い憂いが広がる。本当の敵は、金と欲に塗れた、醜悪な人間たちだった。その事実が、三人に重くのしかかった。


「やれやれ以外と話はシンプルだったな・・・」 アポロは、そんな雰囲気を払拭するかのように振る舞い、巻物を魔法の収納袋に戻すと沈思した。

「そうなると・・帰投するぞ」とアポロの言葉に

「「はい」」


「ところでアポロ」

「何だ」

「シルクのところで言っていた放置プレイって何?あなたの性癖なの?「ぐはっ」」

エステルの言葉に耳朶を赤くしたアポロは無視してシャドウに乗り込みつつ

「口を閉じてろ。置いてくぞ」フィンはエステルの言葉にダメージを受ける様子を見てあんなに水と油だった二人が背反しつつも惹かれ合っていることに不思議さを感じ、なぜか笑顔でいた。


六時間後、シルバラード城に帰還したアポロたちは、辺境伯に全てを報告した。

オーウェルは、苦々しい表情で羊皮紙の巻物に目を通す。

「・・・そうか。王都の連中が、このシルバラードの富と独立性を快く思っていないことは知っていたが・・アポロお前のその目の色からすると、まだこの先があるのか?・・・」


その報告の最中だった。執務室の扉が乱暴に開かれ、血相を変えた騎士が駆け込んできた。

「申し上げます! 王都より軍と騎士団の一隊が、『貴族の権威を毀損せしめたため遺物の回収および反逆者オーウェル辺境伯の拘束』を行うとの”先触れ”の使者が参りました。ココへ向かっているとの急報! すでに、時間的距離で30分圏内かと!」


「ほう!」 辺境伯が立ち上がる。それは、事実上の侵攻布告だった。


「閣下。どうするつもりですか。」アポロが静かに言った。


「うむ…。対話が成立しない獣には厳しい仕置きが必要だろう。これは、権益をかすめとろうとする野盗共からシルバラードを守る戦だ!」


「ただちに総兵力をもって迎え撃つ!!!」 「敵の数は」〈斥候をすでに二組放っています。〉「住民には退避命令・・ただし戦えるものは参加自由だ」〈〈〈はっっ〉〉〉辺境伯は、シルバラードの騎士団全てに迎撃を命じた。


「アポロ、魔晶石の超臨界粉末アレは使うのか?」

「やれば簡単に終わらせることはできますが、こちらにも被害が出るでしょう。あとその後の土地や何やらが数十年は使えなくなるのでは?マナが強くなりすぎて魔獣がまた増えますぜ」

「そうだな」


城壁の上は、にわかに戦場と化した。そんな中アポロは、回収していた『連装式魔導バリスタ』の設置を終えるとのんびり戦となる地を眺めていた。


「アポロ」

「エステル。奴らの手によって我々に最初の血が流れた。今度は奴らの血であがなってやる。オレは、オレのやり方で、エステルたちを守ることを約束する。」

アポロは、エステルの瞳を真っ直ぐに見据えて言った。エステルは、何も言わず、ただ頷き傍にいた。

フィンは、斥候として城壁の上を駆け回り、敵の配置を的確に伝えているが、敵将を睨んでいたところ首を傾げエステルを見つめている。


気になったアポロが「どうしたフィン」と声掛けすると

「敵将のところにどこかで見た女がいるのです。」

「それでなぜエステルを見つめる?」

「わかりません」


 そこへ、地平線の向こうに、侯爵・子爵×2・男爵連合軍の整然とした隊列が見え意識がそれた。その数、およそ約二万。

対する辺境伯オーウェルの手勢は参加してきた住民たちを合わせても五百名に満たなかったため城で迎え撃つこととなった。


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