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「フレンド」という名の他人

作者: 木野キヤ

 前もって言っておくが、ここで語ることは実際に私がそう思っている、というわけではないことを視聴者の皆様には言っておきたい。覚えておいてくれよ。


 これは昨日私が思ったことを想像を加えながらお話していく。「VRchat」というゲームをご存知だろうか。よくネットに精通した人なら、最近話題だということぐらいは知っていると思う。噛み砕いて言うと、仮想世界の中で様々な世界を探検したり、色んな人と交流したりできるゲームだ。某芸能人がテレビで紹介していたことをきっかけに、ゲームにあまり興味を持っていなかった人も始めるほどの人気ぶり。中には、ゲーム内のある世界で勤務して実際に給料をもらっている人もいるそうだ。

 私はこのゲームを遊び始めて二週間の、いわゆる「ヴィジター」だが、様々な世界に行ってみた。日本の神社がテーマの世界、空想上のカフェでコーヒーを飲める世界、銃で撃ち合う世界。現実ではないと、頭では理解できるものの、目の前には現実ではない世界が広がっている光景に、違和感を持っていた。しかし、遊んでいる人達を見ると、自分がそう思っていることが馬鹿らしくなって、そう考えることはなくなった。


 いろんな世界を旅していると、「フレンド」が出来ていった。どのゲームでも「フレンド」ができるものだと私は思う。しかし、このゲームでは他のものとは少し変わっていると思ってしまう。

 「「フレンド」申請、送ってもいいですか?」

 大概の人はそう言う。「フレンド」になって欲しい人が、声を発しているのだ。私は最初変だと思った。今までは問答無用でフレンド申請が送られてきて、それに承認するだけだった。このゲームは「フレンド」になりたい場合、「フレンド」になるために声を掛ける必要があるのだ。例外で、声もかけず「フレンド」申請を送る場合もあるらしい。


 さて、ここから私が実際に感じたことをぺらぺらと語っていくことにするよ。聞きたくなかった、と後になってクレームを言われても困るから、今のうちにブラウザバックしてくれよ。

 私がそう感じたのは、一週間ほど前かな。その時、私は気を病んでいた。別段、何かの病気だと診断されたわけでもない。ただ“そういう時期”だっただけ。その時の私がなぜそう思ったのか、もう忘れてしまったが、何となく「VRchat」にログインした。癒やしが欲しかったわけでもなく、慰めてほしかったわけでもないことは言っておこう。とりあえずインした。最初に「フレンド」がいるところを確認することが今までのルーティンだったので、今回もそうした。すると、長い間会っていなかった「フレンド」がとある世界にいた。私は、久しぶりにあってみよう、という軽い気持ちで合流した。

 ローディングが終わり、世界が目に入った。視界を回してみると、遠くの方にネームタグが見えたから、近づいて話しかけようとした。

 「来んな、帰れ」

 言われたとほぼ同時に「えっ」と私の口から漏れた。「フレンド」はそれ以上何も言わなかった。凍りついた空気が動き始めて、やっと私はその世界から逃げた。


 後になって、その「フレンド」の「フレンド」から聴いた話によると、彼はお砂糖だった女性と別れたらしい。私が合流した時、丁度傷心中だったとのこと。誰にも言えない話し合いをするときは、「インバイト」と呼ばれる、招待した人しか入れないように世界を制限するのだが、その二人は話が展開に展開を重ねて、お塩になったらしい。タイミングが悪かった、というのがこの話の結論になるのだが。

 

 私の話はこれでおしまい。いざ聴いてみると、「なぁ~んだ、ただのオチのない話じゃないか」と思うだろう。実際、私自身が聞いても同じ感想を言うだろう。でも一度考えてみてほしい。


 その「フレンド」は、本当に「友達」と言えるのか。

(私の実際のフレンドさんは、いい人ばっかりです。持ちつ持たれつの関係です)

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