タイムカプセル
ガキン、と、なにか硬質なものに金属がぶつかった音が辺りに響き渡る。配管でも掘り出してしまったのかと工事現場は一時騒然となったが、すぐにショベルカーが掘り出したのはなにか黒い箱状の金属であることが判明した。
「一体何だこれは」
作業を一時中断した現場監督はそんなことを言いながら、一抱えほどもあるその箱を矯めつ眇めつ見ていた。するとその様子を眺めていた作業員の一人があっと声をあげる。
土で汚れてはいるが、よく見ると箱の表面に古い文字で「2100年代の子孫たちへ」と書いてあるのだ。
どうやらこれはタイムカプセルなのだろうと判断した現場監督は、いまが2132年でありちょうど2100年代であることを思い出し、自分が2100年代を代表する人物になったような心持ちになると、作業現場にあった道具を使い、厳重に封のされているその箱を慎重に開いていった。
すると中から当時作られたのであろう様々な物品や、子孫たちに向けた手紙が出てくる。
どう使うのかもよく分からない道具類はひとまず置いておいて、現場監督は手紙へと手を伸ばす。
そこには2000年代に起こったであろう様々な事件や災害、そしてそれらを乗り越えて100年後の2100年まで文明が存続したことに対する喜びが書かれていた。
祖先たちの息吹を感じて思わず涙ぐんだ現場監督であったが、最後に書かれた文字を見て首を傾げる。
「おい、最後に西暦2000年代の祖先よりって書いてあるんだが、一体全体西暦ってのはなんだ?」
神鼠歴2132年、人類の後に霊長となったネズミたちは工事現場で西暦とはなにかについて議論を交わしていた。