どうせ中身は男なんだろ畜生めぇ!
「俺、詰んでないか?」
そう思った時だった。
モンスターと俺の血潮の隙間から眺める夜空が綺麗だなぁと思ってぼうっとしながら殺されていると──。
「Summon、──Laevatein!」
めっちゃ流麗な発音の魔剣召喚の声が聞こえた。そして、一閃。
俺の頭上で、モンスターは全てパーティクルとなった。
間抜けな顔でぽかんとする俺。
上から見下ろしてくる、北欧系の美女……。
「あの、大丈夫……?」
うぁ……めっちゃタイプ……。
じゃなかったわ。
「たった、助かりましだぁああああああ」
なっさけない声で泣き叫ぶ俺。いや、だって、アンタも2時間クマに襲われて見なさいよ。お漏らししてないだけで褒めてくれ。リアル世界で漏らしてたらどうしよう。泣きたい。
「あ、よかった……。私、ちょうど通りがかって。そしたら、ドラゴンのスタンピードに延々巻き込まれてる人がいるって、思って」
「助けてもらわなかったら多分失神してました」
「あの、もしかして、錬金術師だったりする?」
「古代樹の森に居る初心者。錬金術師じゃないはずもなく」
「だ、だよね……。あっていうかタメでごめんなさい。友達のノリで話しちゃった」
「いや、北欧美女にタメ口で話される方が良いんでタメで」
「び、美女!?」
何をそんなに驚いているんだ。
「え、アバター選んだのあなたでしょ。めっちゃ作り込んでるし、それは素直に誉めなければならない。3Dモデリング、美人過ぎるし可愛すぎるで賞を贈呈する」
「でっ、でもでも、そんな初対面で美女とか──」
「二次元の女の子に美女って言って何が悪い! 本当だからだ!!!」
「嬉しい……。ありがと」
俺のネットミームは華麗に避けられた。まあ引かれないだけいいか。
「しかしよくこんなとこ通ったな。竜騎士?」
「ううん。あたしこの辺で素材周回してて……。って、名乗ってなかったね。あたしはsana。サナって呼んでね」
「やめろよな。優しくされちゃうと好きになっちゃうだろうが。俺は俺。俺くんって呼んでくれ」
「って、なんで俺くんが!?」
元ネタ知ってんじゃねぇか。なんでそんなディープでドープなネットミーム知ってんだ。絶対オタクだろ。仲間意識湧いてきたわ。
「で、サナ氏は何の素材集め?」
「あたし魔剣師なんだけどね、このレーヴァテインって魔剣がさ、人の命を吸わないとレベルが上がんないんだ」
はいクソ職業でました。PvP推奨は良いけど強制はやめろよなぁ。
あ、それで、俺の死を吸ってたわけか。俺の屍を越えてゆけ。
「それで……。ほんとは一時間前に気付いてたんだけど、デスパーティクルを吸うために放置してたんだ」
「ぐう畜じゃん」
なんだ、クズで良かったぜ。恋しちゃうとこだったからな。
「で、でもでも、おかげですっごいレベル上がった。だからさ、なにかお礼させてよ。あたしに出来る事ならなんでもするよ」
「女の子に言われたい台詞ナンバーワンではあるが、だが断る」
「そ、そう?」
「ああ、男に叡智な事をされても嬉しくないからな」
「おとこじゃないもん!」
「黙れ。こんな時間に魔剣師みたいな職業でレベリングしているディープでドープなヘンタイは男に決まっている」
「ち、ちがうもん!」
「はっ! どうだかな。まあいいや、芝居はこの辺にして、シンプルに装備とか色々くれ。そうしないと俺の第二の人生が始まらない」
「え、あ、うん」
割と素直に頷くサナ。そしてそこで装備を脱ぎ始める。
「ばーか!!!! ばかばかばかばか」
「え?」
「何で脱いでんだ!」
「だ、だって装備くれって……」
「誰が追いはぎだ! オスのホカホカホットパンツなんていらねえ!」
「メスだもん……」
「黙れ! ……もういいや、装備はいいからセーフエリアまで案内してくれない?」
「あ、うん、いいよ! うちが近いから行こ」
げんなりする俺はサナについていく。ネカマプレイヤーのVR下着姿で慌ててしまった自分よ、愚かなり……。でもちょっと生々しいんだよなぁ。
俺は若干前かがみで、サナの後を追ったのだった。
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