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ラノベじゃないんだからさ

「ラノベじゃないんだから。俺だけチートクエスト見つけて超レベルアップ的な展開なんてあるわけないだろ」


 目の前でしゅんとする魔剣師サナ。ごつい装備の割にしゅんとすると小さい。


「でもでも、錬金術師があまりにもかわいそうだよ」

「しょうがない。そういうクソなゲームバランスを作っちゃうデベロッパーもいるの。俺らオタクはもう諦めてんだ」

「じゃあこの先どうやって楽しむの?」


 サナはどうやらこのセーフエリアで足止めを食らっている俺を本気で心配してくれているみたいだ。だが──。


「フロムゲーみたいに頑張る」

「死に戻り前提!?」


 そう、俺は腹を決めた。このクソゲー、あまりにもリアルなので死ぬ瞬間とかなにかを漏らしそうになるくらい怖いが、死ぬ事によるメリットがある。


 それはデスパーティクル。


 この魔剣師は俺のデスパーティクルを無料で吸い続けていたが、レベルキャップを気にするくらいの魔剣師が目に見えて有益ととれるほどの経験値オーブが俺の死からは発生する。


 それは、錬金術師の固有パッシブスキル、賢者の石に由来する。


 どうやら、錬金術師という職業は、死んだときのレベルに応じて、相応の経験値を経験値オーブ、つまりデスパーティクルとして残すらしい。


 そして、レベルが下がることもない。つまり、レベル上げには多少の傾斜がかけられており、不遇職の割には、レベリングに対する補助が大きいのだ。


「え、じゃあじゃあ、本当に死に戻りで経験値を稼ぐつもり? ソウルを取りに戻るみたいに?」

「そう。だが、問題なのは、自分のパーティクルは一定時間たたないと、つまり『取りに戻ってきたんだ』と判定されない限り取れない」

「じゃあリスキルで無限レベルアップは──」

「できない」


 しゅんとするサナ。だが、そんな北欧美女──に顔を寄せたプレイヤー──の肩にポンと手を置く。


「そこでお前に協力を要請したい」

「あ、あたし?」

「お前には、俺が死ぬ度に経験値を回収してもらいたいんだ」

「でも昨日みたいにあたしがただただ強くなるだけだよ?」

「そんな時にこれを使う」


 俺は懐からテレレレッテレーと杖を取り出した。ハリー何某が使っている様な手頃な奴。


「これは錬金術師固有スキル賢者の石の本懐だ。賢者の石が杖化したこの緋色の棒切れは、一日一回、任意の対象の経験値を好きな数奪い取れる。これを使えば、サナが回収した分の経験値を俺が受け取ることが出来て──」


 ぽかんとした顔のサナ。おいおいどうした。そんなに難しいこと言ってないぞ。


「そのスキル、強すぎるよ……」

「ん? まあ、スポーン場所を考えたら妥当だよな」

「なんでそれをあたしに使わないの? そしたら一気に──」

「は? そんなの楽しくないだろ。なんで友達から経験値吸って楽しいんだよ」


 サナの目が、一瞬きらっとした気がした。


「……あたし、俺くんに協力する」

「お、おう。なんだよ急に」

「でもそのスキルの事は隠した方が良いよ。それ、使い方によったら覇権を取れる」


 なはは。買い被りだろ。不遇職だぞ。


 それに、俺はチートで成り上がりたいわけじゃない。せこい手は使うが、魂に背いたことはしない。自分の手で、取った天下にしか、意味はない。


 ラノベじゃないんだからさ。

貴重なお時間を割いてお読みいただき誠にありがとうございます。

お気に召しましたら☆☆☆☆☆からご評価いただけますと幸甚です。

ブックマークも何卒よろしくお願い申し上げます。

ご意見・ご感想もいつでもお待ちしております。

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