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令嬢登場。

【前回のあらすじ】

 ななおが良かれと思って余計な気を利かせたばかりに、委員長こと仙石さよりや、彼女を迎えに来た養父母との関係はこじれにこじれ、あわや一家離散の危機に陥ってしまう。

 その時、HWMの力が発動し、皆殺しの富野…否、真の絆を取り戻した仙石家は本当の家族としての新たな一歩を踏み出した。

 めでたしめでたし…と思ったのもつかの間。 委員長、うちに住むってよ♩

 御両親にはやく初孫を拝ませたいんだと。

 え゛、それって…むっひょ〜っ!?





 ザワッ…。

 校門を通ると、静かなざわめきが一際大きくなった。

 登校中の生徒たちの好奇の視線が、こちらを深々と抉るように降り注いでくる。

 ここに来るまでの道すがらも、それなりに注目されはしたけど…

 AI自動運転カーシェアリングが盛んな昨今、登下校や出退勤も車移動が一般的になったから、そもそも表を出歩く人がいない。

 学校が家のすぐ近所とはいえ、朝っぱらから徒歩でうろつく奇特な集団は俺たちくらいのもんだった。


「うーわっ。注目されるのは慣れっこだと思ってたけど、今朝の視線の痛さはまた格別だわ…」


 引き攣った笑顔を貼り付けたままのななみが呟く。


「私も時々お父さんに車で送って貰ったときに注目されることはあるけど、ここまでスゴイのは初めて…」


 委員長こと仙石さよりも引き気味の微笑を浮かべている。そりゃ〜あんな高級外車で送迎されたら、どこのお嬢様かと思われて当然だわな。


「お前ら、いつもこんな状況下で登校してんのか…。俺はそもそも朝礼までに登校したコト無ぇから、これマジ効くわ…」


「それはもうちょっと頑張って寝坊しないようにしよーよ…」


 思わず尻込みする俺に、優等生的にツッコむさよりだが、


「そもそもぉ、そんなありえないカップリングのお二人さんが並んで登校してるからじゃあないですかぁ〜?」


「いやいや、それゆーなら大注目の原因は間違いなくアンタっしょ!?」


 ななみが指摘する視線の先には、彼女と瓜二つの顔を持つ偽ななみ…いや、へぼみの姿。

 ほぼ同じ背格好のコイツらが同じ制服を着ると、マジで見分けがつかない恐れがあったため、HWMのほうには普段ななみが絶対着けない大きなリボン型の髪飾りをくっつけてみた。

 けど、そんな杞憂が徒労に終わったくらい、制服の胸元が今にも弾け飛びそうなくらいムッチムチなシルエットの差異は遠方からでも一目瞭然だった。


「やっぱななみの制服だとパッツンパッツンだな。今後も通わせるなら新しい制服を用意せにゃ…」


「むぅっ…だからなんでロボ子まで学校に通わせようと思ったの? コレを衆目に晒したら大騒ぎになるのは当たり前じゃん!」


「じゃあ訊くが、コレを一人きりでウチに置いといたら一体どーなると思う?」


「…最悪、帰った頃には我が家が跡形も無くなってるわね…」


 だろ? どのみち危険なら、あえて人目に触れさせておいた方がマシだ。

 派遣元のゴタンマは「秘密結社」などと嘯いてるが、だからって俺たちまで秘密に徹する必要はないし、取り扱い上の諸注意とかも聞いてないしな。


「でも、校内への私物の持ち込みはあまり感心しないけど…。生徒たちの身勝手な行動を許しちゃったら校内風紀が乱れまくって…くどくどくどくど」


 私物て。委員長節がさっそく炸裂したな。


「それを言うなら、さよりが日頃から携帯してるノートPCだって立派に私物だろ? それと同じってコトで、ひとつ♩」


「…どーやったらそこまで潔く開き直れるの?」


 苦笑混じりのマジ質問にマジメに答えるなら…考えるな、感じるんだ!


「なんならこの後、どっかで二人っきりで手取り足取りレクチャーしてやろうか?」


「…バカ。」


 卑猥な指つきの俺に、さよりは顔を赤らめこそしたものの、否定はしなかった。

 以前から割りかし簡単に陥せそーな雰囲気はあったけど、晴れて親公認の交際関係になったことだし…ムヒョヘヘヘ♩


「まーたそーやって…あたしもまんまと騙されたクチだけどさ…」


 真後ろから俺たちのやり取りを盗み見てたななみが、意味深な呟きで横槍を入れてくる。


「朝っぱらからサカッてるとこ悪いけど、そんな余裕は無いしょ…劇物指定のアレがいる限り?」


 …だよね〜。


「はぁ〜若い子がよりどりみどりですねぇ〜!

 こんなに大勢の人を見たのは生まれて初めてですぅ〜♩」


 そんな取り扱い注意な危険物は、登校する大勢の生徒たちに若干おやぢっぽいよこしまな視線を手向けて、おぉ〜輝いとる輝いとる…。

 生まれて初めて大都会に出てきた田舎娘みたいな感慨にふけってやがるけど…

 完成したのがほんの数日前だから、まだ生後零才なんだよなコイツ…信じ難いことに。


「浮かれんのも大概にしとけよ〜。都会にはコワーイお兄さんがウヨウヨいるからな〜?」


「ってゆーほど都会でもないけど…早速いたわ、色んな意味でコワイ人が」


 気が緩みまくりなへぼみを戒めてた俺の背後にこっそり隠れつつ、ななみが指差す先には…


「ふ…ふへへ…し、信じられん…ななみタンが増えとるぢゃあないか…むへへ♩」


 手にした学生鞄を滑り落とし、カンペキにキマッた目つきでへぼみたちを凝視する俺の親友、春本はるきの姿が。

 そーいやこんなのもいたっけ。連休前半の間に顔を合わせてなかっただけなのに、ずいぶん久々な気がするが…。


「あやや〜これはこれは、マスターのお友達ですかぁ? いつもお世話になってますぅ〜♩」


 だから初対面だろうに、えらくフランクに話しかけたへぼみに、はるきは夢遊病者のような足取りでフラフラ近づいてきて…むにゅりん☆


「ほあああ〜っ!?」


 そのデカ乳をいきなり両手で鷲掴まれて、慌てて飛び退いたへぼみに、朝っぱらから信じ難い暴挙に出たはるきはことさら信じ難い視線を手向けて、


「柔らかい…だと!? 感触があるってことは…夢じゃないのか?」


「残念ながら現実だ。いい加減目ぇ覚ませボケ」


 私物に勝手に手出しされて黙ってる訳にもいくまいと、二人の間に割って入った俺に、


「はわわわますたぁ、何なんですかぁこのヤバい人ぉ〜!?」


 さっきまでのゴキゲン状態から一転して半ベソ掻いたへぼみが背中にしがみついた。

 いちばんヤバい奴にヤバい奴認定されちまうとは、我が親友も隅に置けないな。


「なん…だと? いつもは教室までたどり着くなり、すぐに寝息を立て始めるななおが、ちゃんと起きている!?

 ってことは、コレはやはり夢…」


『なわけあるかいッ!!』


 あくまでも夢オチで押し切ろうとしたはるきの両肩を、どこからともなく現れた男子生徒と女子生徒が左右からガッチリ拘束する。

 片や腰までの長い黒髪を太い三つ編みに束ね、前髪パッツンのスラリと長身な女生徒。

 片やその三つ編みをショート化しただけの、少し背が低い男子生徒。

 女子と男子の違いこそあれど、その顔立ちはななみ&へぼみさながらに瓜二つ。

 スマートな立ち姿に凛々しさ漂う美男美女だが、日本人形のようなその髪型ゆえに、綺麗というよりは愛嬌のある可愛さが際立つ感じだ。


「見ておったぞ。朝っぱらからの女子生徒への狼藉…生徒会長として見過ごせんわっ!

 のぉさじ…風紀委員長?」


「うん…いやハイ、姉さ…いや生徒会長。

 春本くん、キミの変態的な言動は今に始まったことじゃないし、これまで実害報告は皆無だったから見逃してあげてたけど…こんなコトになってガッガリだよ」


 速やかにはるきの連行に取り掛かる生徒会長&風紀委員長コンビ。

 今さら説明不要だろうが、実の双子で、俺たちの一年先輩の三年生だ。

 会長の方は姉の左右田そうだみぎこ。

 委員長の方は弟のさじろう。

 いつでもどこでも常に二人一緒の仲良し姉弟で、生徒会役員選挙にも二人一緒に立候補して同点当選した。

 が、生徒会を身内ばかりが独占するのは好ましくなかろうとの配慮から、弟の方は役員入りを辞退し、次点の委員職では最重要ポストの風紀委員長に就任したという経緯がある。


「そっちのインスタントな双子ちゃんも気になるが、詳しい話は後で聞かせて貰うからの。

 …引っ立てぃ!!」


「お、お代官様、オデは無実だァ? 見逃してくんろォーッ!!」


 こちらに一瞥くれた会長たちは、喚き散らすはるきを引きずって校内へと消えて行った。

 メンドイけど、あの二人には何かと恩があるから、俺も後で顔を出しておくか。

 …未成年のななみがエロ同人を続けられるのも、彼女たちの尽力の賜物だしな。


「わ、私も行かなきゃダメ…かなぁ?」


 一方、さよりは渋り顔。学校イチの才女と噂に名高い彼女には、当然のように生徒会や各委員会からスカウトが相次いだものの、そのことごとくを断り続けてきたからなぁ。


「けど、もう断る理由は無くなったんだし、力を貸してやるくらいなら良いんじゃねーか?」


「だけど、そしたら…ななおくんと一緒にいられる時間が減っちゃうし…」


 くぅ〜っ、カワイイこと言ってくれるじゃねーか!?


「それに…私の本当のぶきっちょぶり、知らない訳じゃないでしょ?」


 …確かに。てかそーやって見栄を張り続けてるさより自身が招いた罠なんじゃ?


「もっと自分に素直になりなよ…さより?」


「これ以上素直になっちゃったら…きっと私たち、もう学校にいられなくなっちゃうけど…それでもいい?」


 それは困る(どキッパリ)。

 せめて学校くらいはちゃんと出とかないと、後々苦労するぞって、さるお方にも忠告されてるしな。

 にしても、優等生のあんたがそこまでの事態に追い込まれるだなんて…いったいナニをおやらかしになるつもりなんスかいいんちょ? ドキドキ☆


「へぇーへぇー、朝っぱらから総入れ歯になりそうなくらい甘ったるぅ〜いパカッポーコントはそのへんにして…

 そろそろ教室入んないとマジ遅刻しちゃうわよ、お二人さん? ほら、ロボ子も!」


 ななみに急かされてハッと我に返った俺たちは、いまだお掃除ロボのように落ち着きなくあちこちさまよい歩いてたへぼみを回収すると、慌てて教室へと向かうのだった。





 うーむ…予想以上の難敵だな、アレは。

 言われるままに此処まで来てみれば、嫌でも人目を惹く珍集団だったから発見は容易だったものの…

 あれだけ取り巻きが多い輩に、果たしてどう取り入ったものか?

 しかも、あの隣にいた眼鏡の女は…たしかクラス委員長だったか?

 一度うちに担任と一緒に尋ねてきたことがあったし、何故だか無意味な伊達メガネを掛けていたのが少し気になって記憶に留めておいたが…


「どうして…彼奴とあんなに親しげなのだ?」


 む。思わず口に出てしまったか。

 …何だろうな、この胸のモヤモヤは。

 こんな気持ちは初めて味わうが…私にもまだ、こんな未知の感情が隠されていたのだな。

 それはともかく…他にもちんまい連れが二人いたが…

 その内の一匹は、恐らくHWMだろうな。

 何故にもう一方の子にあそこまで似せる必要があったのだろうか?

 う〜むむむ…ダメだな、情報が足らなすぎて皆目不明だ。

 ともあれ、この短時間でここまで興味を抱かせるとは…フッ。やはりあの男、只者ではないな。


「…なぁ、誰だよあの美人?」「あんな上玉、ウチの学校にいたか?」「…ゲッ、アイツは確か…!?」「知ってんのか?」「あぁ…悪いことは言わねーから、アレには関わんじゃねーぞ!?」「何でだよ、もったいねーな…」


 …イカン、周りが騒がしくなってきたな。

 わざわざ出向いてやった途端にコレだ。

 まったく気が滅入る。

 …だが、あのぶんでは教室に顔を出さねば、彼奴の視界には入るまい。

 せっかくここまで来たんだ、もう一踏ん張りしてみるか…気は向かんがな。





『HWM!?』


 はるき達が揃って素っ頓狂な声を上げると、クラス内外にどよめきが巻き起こった。


「そ、そゆことですぅ…もじもじ。」


 興味津々に覗き込んでくる三人に気圧されつつ、へぼみはたどたどしい自己紹介を進める。

 どうやらコイツは彼らのように押せ押せな相手が苦手らしい。初めて弱点が見えたな。


「なるほどのぉ…こうして見ててもにわかには信じ難いが、ともあれ納得は出来たのぉ。

 わちき達のようにクリソツな双子には滅多にお目に掛かれんから、のっけから興味はあったがのぉ」


「だね。でも七尾兄妹は二人だけのはずだし、春本くんの供述がどうにも理解不能だから、直に本人に訊いてみれば…と思ったら、予想以上に面白い事態だね!」


 息もピッタリに頷き合うモノホンな双子の左右田姉弟。

 てかそんだけ目立ちまくりの生徒会長&風紀委員長が揃い踏みでうちのクラスにいるせいで、登校中以上の大騒ぎになってるんだが。

 クラスメイトだけじゃなく学校中の野次馬がひしめき合い、足の踏み場もない状況になってるぜ。


「とゆーことは…春本くんもお咎め無しにせざるを得ないね」


「うむ。うちの女生徒どころか人間ですらない相手をどうしようと、法には問えんしのぉ」


「ハハーッ、ありがたやありがたや!」


 無罪判決を下した女帝姉弟に涙ながらにひれ伏すはるきを指差して、


「ってコトはぁ、あたしはこれからもこの人におぱーい揉まれまくりってコトですかぁ〜!?」


 いやさすがにそこまでは…とすっかり被害妄想気味なへぼみに、当事者のはるきは優男モードにトランスフォームし、


「大丈夫、今度は優しくしてあげるから。

 どこがいちばん感じるのか、お兄さんに詳しく教えてごらん?」


 まだ揉むつもりなんかいっ!?


「いやいやはるきさん、それはあたしもさすがにドン引きかも…。

 男前に言ってみても変態発言は変わりませんからね?」


 たまらずななみが猫被りモードでフォローに入るが、


「大丈夫、ななみちゃんには指一本触れないと誓うよ…揉むトコ無いし。」


「ンッだとコノヤロウッ!?」


 あ、素に戻った。続けざまに繰り出されたななみの殺人パンチをヒラリとかわしてへぼみにスイッと近づいたはるきは、


「教えてくれないか?…ふーあーゆー?」


「あ、あたしはぁ…へぼみともーしますぅ。

 マスターに名付けて戴きましたぁ〜♩」


『『『へ』『ぼ』『みぃ?』』』


 その場に居合わせた者すべてが、お経のごとくその名を大合唱した。

 うをを、数百チャンネルサラウンドの臨場感だとなおさら破壊力が増すな!?


「…ななお?」


「いや解っちょる、解っちょるんだ!

 俺もいくら何でもどうかと思ったんだが、本人が気に入っちまったんだからしゃーねーだろ!?」


 はるき他数百名x2の白い目に責め立てられ、俺は慌てて釈明に追われたが、


「あたしはぁ、あ〜素敵だなー素敵だなー、マスタースゴイなスゴイなー、と思うんですけどぉ〜、皆さんなんでかお口にしづらいみたいなんですよぉ〜…どぼぢでぇ?」


 という本人の稲川淳二めいた弁により、説明の手間が大幅に省けた。

 嗚呼、これは国会議員に頭を下げさせるのと同程度に言うだけ無駄なヤツだな…と、満場一致でご納得頂けたことだろう。


「う、うむ、名前はちとアレだが…これほどまでに見事な出来映えのHWMは初めて目にしたぞぇ。そちは何処のメーカーのモノか?」


 女帝に問われたへぼみは鼻高々に、


「秘密結社ゴ」「親父たちの会社で只今絶賛開発中のヤツなんで、詳細は明かせないんですわアハハハハーッ!」


 馬鹿正直に答えかけたアホHWMの声を遮って、俺は当たり障りのない事柄だけを伝えた。

 それでも嘘偽りは一切無いけどな。


「七尾くんの御両親は…あぁ、マタンゴグループにお勤めだね?」


「ほぉ、あの? ならばこれほどの完成度も頷ける訳じゃのぉ…」


「あー、それで愛娘のななみちゃんに似せて自宅で比較試験中だった訳か!」


「で、今度は社会実験先としてウチの学校を選んでくれたのかな?」


「ほぉほぉ、これはまた光栄の極みよのぉ…!」


「HWMの行動には常にマスターが必須だっていうから、それでななおか…」


 ををっ、ろくに説明もしてないのに勝手に理解してくれたぞ。さすがハイスペックな連中は話が早い。

 てかうちのバカ両親、表向きはそう説明してたのか…知らなんだ。


「それでそれでへぼみたん、ちみの基本スペックは!? 具体的には何がどう出来るの!?」


「はぁ〜基本スペックですかぁ〜? そぉーですねぇ〜…」


 相手が開発中HWMと判った途端、矢継ぎ早に質問をぶつけるオタクはるきに、へぼみがちんたら答えようとしたところで、


「OSは!?」「発売時期はいつ頃!?」「定価は!?」「その外装ってユーザーカスタマイズ出来るの!?」「性格設定も可能!?」「その…アッチ方面の機能については…?」


 溜まりかねたギャラリーから怒涛のごとく質問が飛び交う。お前らの気持ちは解らなくもないが、まぁ落ち着け。


「…ぁぅぅ…はぁあうぅう〜〜〜〜っっ!?

 びえーんっますたぁ〜っ! あたし、この人たち苦手かもしんないですぅ〜〜っ!!」


 ほらみろ、質問攻めに遭ったへぼみが大号泣しちまったじゃねーか。

 コイツじゃなくても根掘り葉掘り訊かれるのは誰だって嫌だろ?

 ところがその泣き顔を目の当たりにした連中はさらに色めき立ち、


「をを〜っ、なんてリアルな感情表現!?」「ここまで人間臭いHWMがいまだかつてあっただろうか!?」「いや、無い!!」「こいつはもぉ決まりだな、オレ買うッ!!」「俺も俺も!!」「親に借金してでも、サラ金に走ってでもッ!!」「こんな子を我が物にできるなら、何も怖くないサァーッ!!」


 もはや手のつけようもない大パニックに。一般大衆コワッ。


「…そのへんにしといてやれよ。てかお前らもたいがいオタだよな…」


 って、誰も聞いちゃいねーし。

 オメーら庶民ごときがどんだけ人の道を踏み外そうと、おそらく絶対コイツを手にすることなんて出来っこないだろーぜ。

 …てことは…俺はいま、トンデモネー幸運を満喫してる最中なのか?

 いや、そもそも幸運なのかコレ?

 …などと思わず考え込んでいた、その時。


「…オイお前ら、始業チャイムとっくに鳴ってんぞー。聞こえなかったのか?」


 ひしめくギャラリーを掻き分けて…ちうか強引に踏み潰して、ジャージ姿の女性教師が教室に入ってきた。

 うちのクラス担任の『先生さきおいていち』だ。うむ、名は体を表しまくってるネーミングだな。

 学生時代にはバレーボール選手だっただけあって、2メートル近い高身長で体格もすこぶる良い。

 顔もそこそこ美人だから、ちゃんとしてればモテそうなのに、ボッサボサの髪を無造作に束ね、ガサツでズボラな性格がすべてを台無しにしてる。


「オラどけどけー。あたいが教壇に着くまで残ってた他クラスの奴は全員停学なー?」


 行く手を阻む生徒を手にした出席簿でバンバン叩きつけつつ、無茶苦茶な脅しをふっかけたせいで、あれだけ周囲にたむろってたクラス外の連中は一瞬で蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。

 …と思ったら。


「先生、提案があるのじゃが?」


 まだ残ってた生徒会長&風紀委員長コンビが果敢に手を挙げた。


「ハイお前ら停学ー。」


『んなぁっ!?』


「つーかあたいを呼び捨てにするたぁイイ度胸だな、あ゛?」


「いえいえちゃんと『せんせい』って呼びましたよ姉さんは!?」


「ルビ振ってくんなきゃ判らん。ムカつくからお前退学ー。」


 横暴にも程があるだろ。生徒会長が停学したり、風紀委員長が退学したりなんてシャレにならんぞ。


「…あ、あたしも停学ですかぁ…?」


 そこでオドオド手を挙げたのは…


「ななみ? お前なんでまだいんの?」


「コイツのせいだよぉ! 間違えてあたしまで羽交締めにされてたんだからぁ!」


 と、ななみは涙目でへぼみを指差す。

 確かにあんだけ揉みくちゃにされたら、どっちがどっちか見分けがつかんわな。

 すると担任はななみを一瞥するなり、


「…お前はいい。せっかくだからゆっくりしてけ。」


 ポポっと頬を赤らめて、信じられないコトを口走った。


「って何じゃそのエコ贔屓はッ!?」


 生徒会長がキレるのも無理はないが…

 実はこの担任、ななみにだけは激アマだ。

 どーやらこの人、自分の高身長にコンプレックスを感じてるらしく、それとは真逆なチビッ子には目がないらしいのだ。


「ほぇ〜…ってことはぁ、あたしもよろしいんでしょーかぁ〜?」


 ホッと洗濯板…いや胸を擦りおろ…撫で下ろしてるななみを見て、へぼみも担任に問いかけると、


「…ぬあっ!?」


 クラス内に紛れ込んでた異物にようやく気づいた担任は雷に打たれたようにのけぞり、同じ顔の二人を交互に見比べて…


「…どっちかお持ち帰りOK?」


『アカンに決まってんだろッ!?』


 クラス全員+αのツッコミが見事なハーモニーを奏でた。





「てな訳で出欠取るぞー。右ー。左ー。」


「…ハイ。」「すんごいゾンザイですね…」


 かろうじてクラス残留を認められた左右田姉弟が不満タラタラに応答する。

 へぼみの存在について担任に手短かに説明し、生徒会としてその様子を見定めたいと申請して、やっとOKして貰えたらしい。


「七尾ななみたーん♩」「ハーイ♩」


 どうよ、このあからさまなエコ贔屓?

 やっぱ若干イラッとするわな。


「七尾へぼ…み…たん? マジかコレ。」「ハイハイですぅ〜♩」


 抵抗を感じるのは無理もないが、いい加減スルーしておくんなまし。

 その後は通常通りの出欠が続いた…かと思いきや。


「仙石さよりー。」「は…」「委員長、お前ん家から住所変更の申請があったが…アレ、マジか?」


 さよりが挙手するよりも早く、担任がさらに問いかけた。


「今後しばらくは七尾ん家と同じ住所…で、良いんだな?」


 どよよっ!? 当然のごとくどよめく教室。

 おのれ先公ッ、何故このタイミングで公開処刑に晒す!?


「は、はい…マジで〜す♩」


 さらにはさよりがポポッと頬を染めて肯定してしまったため、俺たちの仲は周知の事実と化した。


「まさか委員長が…」「マジかよ!?」「俺、密かに狙ってたのに…!」「あたしも七尾くん、いいな〜って思ってたのにィ」「大人しそうな顔して、ヤルときゃヤル子ね〜」


 ヒューヒュー☆ クラス中に囃し立てられて、さよりはイキイキピチピチしてるけど…

 居心地悪っ。俺的には活け造り寸前のまな板の鯉の心境だぜ…。


「なんだよお前ら、結局そーなっちまったのか? おめっとサン♩」


 俺たちの仲に薄々勘付いてたはるきは素直に祝福してくれたけど、


「がるるる…調子コキゃーがってクソアマぁ〜〜〜〜…っ!!」


 離れた席からでも聞き取れるくらい歯軋りギチギチ状態で、さよりに呪詛を送り続ける我が妹が、お兄ちゃんはテリブルテリブルねー。


「まさか優等生の仙石さん自ら風紀を乱しに来るとはね。風紀委員長的に言いたいことは色々あるけど…」


「カタイことは言いっこナシじゃぞぇ。そういうお主も、ウチにおる時にはわちきに結構…のほほほほ♩」


「ね、姉さん…っ!?」


 なんだかな〜この思わせぶりなおじゃる丸姉弟は?

 教室内に流れる生温か〜い空気を、担任は鬱陶しげに出席簿でパタパタ仰いで、


「…ま、親の承諾済みならあたいもとやかく言わねーけど、未成年の間は避妊だけはしっかりなー。」


 いえいえ、まだナマ乳揉んだり指を詰めただけっスよ?…お尻の穴に。

 ハラミとかサガリとかハチノス以前の段階ですから!


「え〜? でもでも、親には早く孫の顔が見たいって言われちゃってるんですケドぉ〜♩」


 ビキビキッ! ここぞとばかりにノロケまくるさよりに、担任の青筋が音を立てて引き攣った。あ〜この人、そろそろ三十路だしな…。


「…七尾ななお。」「ウス」「当面欠席。」「なんでだよっ!?」


 とんだとばっちりじゃねーか!


「どーせガッコ来ても寝てるだけだし、いてもいなくても同じだろ?

 あたいの判定が不服か、ア゛ア゛!?」


 生徒会長以上の暴君がここにいた。

 …と、そこでななみがおずおず手を挙げて、


「お願いせんせ、お兄ちゃんを許してあげて? そこの腹黒メガネにそそのかされただけなんですぅ!」


 腹黒メガネ。


「マスターは遅刻や欠席の累積ポイントがもぉ限界ですから、これ以上欠席しちゃうと留年確定なんですぅ〜!」


 と、へぼみも援護射撃。って、え? 俺ってそんなギリギリだったの?


「こりゃ〜ていちゃん、下手したらへぼなみちゃんから一生恨まれちゃうかもな〜♩」


 はるきも味方してくれた…つもりだったんだろうが、


「どわぁれぇがぁ『へぼなみ』ぢゃゴルァーッ!?」

「こんな野良猫と一緒くたにすんなやヴォケェーッ!ですぅ〜♩」

「『ていちゃん』ゆーなっ!! 可愛すぎて照れてまうやろー☆」


 ちゅどどどぉ〜〜〜んっ!!

「ぐぅえぶぉわっハァーッ!?」


 怒り狂った面々からの三方同時攻撃をモロに食らって血の海に沈んだ。


「…春本、お前明日から自宅謹慎なー。」


 深海から引き揚げられた一斗缶のようにひしゃげたはるきの頭上から、暴君の非情宣告が降り注ぐ。なーむー♩


「ささ、出欠続けるぞー…って、最後はいつものアイツか。まぁ決まりだしな…」


 出席簿を見た担任は面倒臭そうに頭をポリポリ掻いて、


雫石しずくいしあゆかー。…は欠席っと」


「…ハイ。」


「コラ誰だー? 代返は不可だって言ってあるだろー?」


「…本人です。」


 そこでようやく異常事態に気づいたクラス全員が、一斉に真後ろを振り向いた。

 これまでずっと空席だった最後列中央の座席に…いるはずのない女生徒の姿。


「…雫石あゆか、出席してます。」


 自身に注がれるクラス中の驚愕の視線に若干たじろぎつつも、彼女は涼しげな声で応えた。


「んな…っ?」


 それまで二日酔いみたいな死んだ魚の目をしていた担任も、思わずシラフに戻ったくらいの衝撃だった。

 途端に教室は朝から何度目かのどよめきに包まれる。ただし今度は明らかにあゆかの存在に気を遣っているような、シーン…としてるのにどこか耳障りな矛盾に満ちたざわめきだ。


「…マジかよ」「どうして今さら…」「何の用があんだよ?」「今日は厄日か?」「オレ、初めて顔見たぜ」「結構可愛くね?」「カワイイもんかよアレが…」「噂を知らねーのかバカ…」


 うーわ、こいつはキツいな…。

 俺はすでに何度か顔を合わせて、雫石がそこまで悪い奴じゃないことを知ってるからか、聞いてて胸くそ悪くなってくるぜ。

 本人だったらなおさらだろうな…。


「……。」


 と思った矢先、雫石は静かに立ち上がった。

 周りの連中は露骨に身をすくめ、室内が水を打ったように静まり返る。


「…ど、どしたー?」


 腫れ物に触るように恐々尋ねた担任に、彼女は落ち着き払って答えた。


「あまり居心地が良くないようなので、他で自習してきます」


「お…おいおーい?」


 自分の心境とも、他人を気遣ったともとれる摩訶不思議な日本語とともに、雫石は担任の制止を無視してそそくさと教室から出て行った。


『…はぁ〜〜〜〜…っ』


 ややあって、クラス中から安堵の溜息が洩れ聞こえた。


「…何しに来たんだアイツは…?」


 暴君ですら教壇にへたり込む始末。その呟きが聞こえたのかどうかは知らないが、


「…忘れてた。」


 雫石はまたもや唐突にフラッと教室に舞い戻ってきた!

 予測不能な気まぐれぶりに、クラスの緊張は一気に最高潮!

 そして最も理解し難いことに、奴は俺めがけて一直線に近づいてきた! なんで!?


「…よ、よぉ。久しぶりだな?」


 真正面に立ちはだかった雫石の、あたかも武術の達人のような殺気に気圧されつつ、俺はとりあえず挨拶を交わす。

 すると奴はほんの一瞬、表情を和らげた…ような気がしたが、周囲の視線を気にしてか、すぐに元の仏頂面に戻り、


「…昼休み、屋上で待ってる」


 まるで果し状のようなニュアンスでポツリと用件を伝えるなり、今度こそスタスタと何処へともなく立ち去った。

 …あ〜ビビった、マジで生きた心地がしなかったぜ。クラスの連中がなんで奴をあんだけ煙たがるのか、やっと解った気がする。


「…今度は何やらかしたんだよ、ななお?」


 はるきが前の座席から肩越しに訊いてくる。ななみたちの他、クラス全員が俺の答えに聞き耳を立てているが、


「な〜んも? こないだから商店街で何度か出くわしただけだぜ?」


「それだけであそこまで目ぇ付けられるか?

 お前のことだから、なんかエロいことでもヤッタんじゃねーの?」


 エロいといえば…二回目に会ったときのピッチリノーブラノースリーブシャツとムチムチホットパンツの格好は眼福だったな〜エヘエヘ♩ 写真撮っときゃよかったぜ。


「…ヤッタんだな?」


「ヤッテませんヤッテません! ただ、エッチい格好してたからもっとエッチくなるようにアドバイスしただけ…あ。」


 ぅをっ、しまった!? はるきを筆頭にクラス全員の視線が深々と俺を抉り倒してくる。


「ななおクン…」「兄貴…」『ブッコロ。』


 とりわけさよりやななみのはもぉ、視線だけで俺を射殺いころせるレベルだぜ。


「…七尾、お前も謹慎するかー?」


 ヒィッ、暴君またもや強権発動!?


「ってのは冗談だが、ありゃあヤベーな…。

 そんときゃあたいも立ち会うから、くれぐれも勝手なコトすんなよー?」


 釘を刺されてしまった。こーゆーときはホント頼りになる担任だけど…はてさて、どーしたもんかなこりゃ?

 あの程度で機嫌を損ねて、わざわざお礼参りに来るようなタマとは思えねーけどな…。





「…ム? なんだか今日の顔ぶれはずいぶんバラエティーに富んどるな?」


 教壇に立った教師は多かれ少なかれ、教室を見渡すなり口を揃えて同じことを言った。

 そりゃ〜ななみの隣に同じ顔のへぼみが座ってる上に、一年上の生徒会長&風紀委員長姉弟まで同席していればな。

 これで雫石のお嬢様がいれば、別の意味でさらに賑わってたかもしれないが…彼女は宣言通り、何限目になっても戻ってはこなかった。


 そして授業中のへぼみはまさに天下無双だった。ななみの方は当てられないようにノートの陰にコソコソ隠れていたが、こっちはやけに活き活きしてるもんだから、


「じゃあそこの、あー…君は誰だね?」


「ハイハイあたしはへぼみちゃんですよぉ〜!」


「へぼみ…ふむ…そんな妙な名前の生徒はおらんようだが…まあいい、答えてみたまえ」


「ハイハイですぅ〜♩

 この問題はこの公式にハメハメしてぇ、あーしてこーしてぬっぷりズブズブしてぇ…とゆーことになるですぅ☆」


「…正解。完璧だな…教科書に載っとる解法通りだ」


 をを〜っ!?とクラス一同どよめきまくりだが…頭ん中でネット検索しながら同時進行で答えられれば、そりゃ最強で完璧だろうぜ。

 そして次の英語の授業でも…


「じゃあ…そこのプリチーガァー。この例文を翻訳してみてぇ?」


 ガァー?…あ、ガールね。聞こえないんじゃない、最初から言ってないんだ。


「ハイですぅ〜ビューリホーレイディー♩

『こんにちはタロスケ』『こんにちはヘレン』」


 ほう、登場人物ごとに声色を変えてるのか。器用だな。

 HWMなら誰にでも出来る簡単なお仕事だろうけど、それを目の当たりにした教室内はさっそくザワついてるな。

 …さよりがなんでかめっちゃ青ざめてるのが少し気になるけど?(※第三話参照)


「『昨夜はどちらへ?』『ちょっと買い物に』

『嘘だッ!!!!』」


 おっ、なんか始まった?


「『貴方が行ったのは、別の、オンナの、ハウス…ね!?』『まいがっ!? 何故それを!?』『貴方は常に私の支配下にある。ホーホー♩』『りありぃ!? いつの間にそんなモノを…?』」


 …高校英語の教科書だよな? そんなモノってどんなモノだよ? そして何故ときどき片言?


「『…おけ、ざっつらいっ。実は…彼女に脅されてるんだ。堕ろして欲しかったらカネを払えって…!』『なんたる性悪っ、許すまじっ!』」


 別の女を孕ませたことは許すんだ…。


「ドカッバキッメキョッグッチャグッチャ!

『…とゆー訳で、サクッと殺ってきた♩』」


 展開メチャ早っ!?


「『あの女、やっぱり嘘ついてた。掻っ捌いて調べたけど…中に誰もいませんヨ♩』」


 ないすぼぉと。


「『ありがとう。やっぱり僕にはキミだけさ、ヘレン』『嗚呼タロスケ…やっと気づいてくれたのね』」


 何このヤンデレバカポー?


「ギシッ…『ん…あん…ダメよタロスケ…』『ヘレン…もうキミしか見えない…』『じゃあ見て…もっと見て…全部見てタロスケあはぁそっ☆』」


 洋モノには必須な濡れ場に突入したな。

 てかさっきの数学の授業といい、隙あらばエロネタぶっ込んでくるなコイツは。


「『かまぁんぬタロスケ…』『ヘレン…れっつ・じょいなす♩』『あ〜はンッ、セシボーン! セシボーンぬ!!』パンパンパンパンッ!」


 なんで急にフランス語?

 クラス全員が一様に赤面し、男子は席上で身をかがめ、女子はスカートの裾を押さえてモジモジ…。

 さながら、映画館で予想以上に激しいカラミに突入したときの、場内が一気に静まり返り、気まずい空気が立ち込めるアレだ。

 …さよりが今度は悶絶寸前になってるのが少し…いやかなり気になるけど?(※第三話参照)


「『こうして僕らは結婚した。そして逃げた。あらゆる追手から…』

 ブロロロロロ…キキィーッ!」


 ん? 急ブレーキ?


「『共に末長くこの愛を育み続けよう…』

 ギィィィ…ガッチャン!

 『…この、閉ざされた檻の中で。』」


「結局捕まっちゃってんじゃんッ!?」


 思わずツッコんでしまったが…

 教室内を見渡せば、誰も彼もが皆、感動の涙に暮れていた。

 …今ので泣く要素どこにあった!?


 スタッフ


 タロスケ:へぼみ

 ヘレン:へぼみ

 ナレーション:へぼみ

 音響効果:へぼみ


 エンドロールが始まった。へぼみお得意の目からビーム…ではなく目からレーザーを黒板に照射し、ゆっくりスクロールさせていく。

 時々フィルムに傷が付いてたりゴミが挟まってたりと、無駄に凝っている。

 人間には到底不可能なこの演出により、へぼみがHWMであることを疑っていた一部の生徒も納得せざるを得なくなった。

 それに合わせてエンディングテーマも流れる。へぼみ自ら歌い出したときには「お前が歌うのかよ!?」とずっこけたが…


「もぉ〜〜ねぇむりぃなさぁい〜♩」


 洋画なのに何故だかサスペンス劇場っぽいのはさておき、オリジナル歌手の歌声を完コピしてるため感情移入度ハンパない。

 またしても全米…いや全クラスが泣いた。


「こぉのぉ〜〜街はぁ〜〜♩

 ウゥ〜ファンファンファンファン…

 『班長…彼らはこれで本当に幸せになれたんでしょうか?』

 『さぁな、それは俺には判らん。

  だが…少なくとも、これで二人は永遠に結ばれ続けるんだ。…誰にも邪魔されずにな』」


 出た! サスペンス名物、デカ長の強引なまとめゼリフ!

 さながら柳沢慎吾の一人芝居の完成度をより高めたようなへぼみの独演会状態。


「ちゃんちゃんちゃ〜〜〜ん♩」


 制作/著作 ゴタンマ


 この作品はフィクションです。実在の人物・事件・団体・組織などとは一切関係ありません。


 細部までこだわりまくったへぼみの英文翻訳…だったんだよな本来は?が終わるや否や、


『ヒューヒュー!!』『ブーラボォーッ!!』


 場内総立ちで、割れんばかりの拍手喝采。

 気づけば、うちのクラスの騒がしさに様子を見に来た他クラスの教師や生徒までもが立ち見客と化し、廊下の端まで埋まっていた。

 件のへぼみはクラスの中心で椅子の上に立ち上がり、カーテンコールよろしく何度もお辞儀を繰り返している。


「まぁーーーーべらすっ!!

 大変素晴らしかったですよぉへぼみサン!

 正直、何がどうしてこーなったのか不明なポイントだらけですケドォ!」


 ですよねマイティーチャー!?

 へぼみの熱演のせいで授業時間終わっちゃったし。


「うっっっひょ〜へぼみチャンやるぅ♩」


 はるきのアホは惜しみない拍手を送り、


「あうぅっ…たかがロボ子の些細なデモンストレーションに、何故だかいたたまれないあたくち…」


 同じ顔でこれほどまでの性能差を遺憾なく見せつけられたななみは成すすべなく打ちひしがれている。


「…教科書たった1ページ分の原文をここまで深く考察できるだなんて…っ!?」

 

 てことは大半が意訳ってことじゃん。道理で長ったらしいと思ったぜ。

 思わぬライバルの登場にさよりも戦々恐々だけど、ムキになるのも程々になー。


「いやはや凄まじい限りよのぉ…」「僕ら人間がAIに駆逐されちゃう日も、そう遠くはないかもね…」


 左右田姉弟も愕然としてるが…遠くないどころか、今そこにある危機。

 俺たちはへぼみが来てからというもの、それを矢継ぎ早に目にしたばかりだからな。

 たぶんへぼみの奴は、まだ本気出してないだけ。このぶんだと他にも色々隠し持ってやがるに違いない。

 明日から本気出された日にゃ、マジに地球終わっちまうかもな…。





「…ゲ。オレ、マジで明日から自宅謹慎になってるわ。正気かていちゃん…?」


 スマホで学校の掲示板を確認した春本くんがガックリうなだれてる。それはお気の毒さま。


「連休中は学校に来なくていいようにって配慮だったりして?」


「オレはななおのアホと違って、学校にカワイイ子を見に来るのが生きがいなんだよ!」


 確かに、いったい何のために学校に出て来てるのか皆目不明なななおくんよりは目的意識がハッキリしてるけど…だからって褒める気は微塵も起こらない。

 ま、そんな些細なことよりも。


「ハイ皆さん、着替え終わったらこっちに集合〜♩」


 委員長の私が呼びかけると、クラスメイトが続々とグラウンドの一角に群がってきた。

 三〜四時限目は体育。

 かつては男女別々に行われていたこの授業は、少子化の昨今ではいささか非効率的なことと、男女間の体力差がほぼ無くなったことにより、現在では他教科同様に合同で行われるのが普通だ。


「という訳じゃから、わちき達もご一緒させて貰おうかの?」「別に見学でも良かったけど、せっかくだからね」


 今日は一日うちのクラスでお預かりの左右田姉弟も、先輩ながら参加するようだ。

 ちなみに体操服は、男女同じデザインのシンプルなTシャツに短パン。男女で色違いな時代はとっくに過ぎ去った。

 が…顔立ちが非常によく似た双子であっても体格差は男女で歴然。

 姉のみぎこ先輩は、身長もスラリと高くてスタイル抜群なモデル体型。いつもはその立ち振る舞いからおっとりした印象だけど、意外と引き締まった身身体付きだ。

 対する弟のさじろう先輩は、男子的には少し背が低いけど…よくよく見れば露出した腕周りや足腰がしっかり鍛え込まれている細マッチョ体型。何らかの格闘技でも経験してるのかな?


「ぅへぇ〜メンドっちぃ…」「なんだかパッツンパッツンで動きにくいですねぇ〜この服?」「どわぁーからいちいちケンカ売るなしッ!」


 もう一組のエセ双子、ななみさん&へぼみさんも早速ギスギスしたやり取りとともに現れた。

 まんまお子様体型なななみさんはさておき、彼女から借りた体操服を無理やり着込んだへぼみさんは…もう目のやり場に困り果てる状態。

 なんなの、あのアニメキャラをそのまんま立体化したよーな風船おっぱい!?

 あれだけピッチピチでムッチムチだと、もぉ服を着てる意味なくない?

 実際脱ぐとさらにスゴイし…お姉様…♩(※脳幹レベルで深刻な洗脳ダメージ)

 それに引き換え…ななみさんよりはマシとはいえ、ただそれだけの自分の貧相なボディと見比べてしまったら最後…もう溜息しか出てこない。

 それでもななおくんのお気には召したようだし、男性的にもしっかり反応してくれたからイイけど♩

 それはともかく、グラウンドのあちこちで男子は不自然にうずくまり、女子は倒れ伏して黄昏れてたりと被害甚大。どーすんのコレ?


「はへへひへへふへへほへへへぼみっちゅうわぁ〜〜んっ♩」


「ひょええーっ!? また出たですぅ〜っ!!」


 ついさっきまで私の後ろで死んでたかと思えば、忽然と復活してそばに湧いて出た春本くんに、へぼみさんは台所でGを発見したにわか主婦のように取り乱してる。

 ちなみに私は見つけ次第、そこいらの得物で直に引導を渡す派だ。Gごときに臆してるようじゃあ台所の天下は守れない。

 なお殺虫剤は食べ物を扱う場所だし、場合によっては人間も弱るから使わない。

 でもこの場合はむしろ積極的に使用するべき場面だ。完全確実に死滅させるべく、背負式ポリタンクくらいの規模で。


「お、おっぱいはもぉダメですよぉ〜?」


「ジョブジョブ、もう充分ゴチになったし、見てるだけでもうお腹いっぱいだからネ♩」


「はぁうぅ〜…っ」


 最近の痴漢のように直に手は出さず、間近から邪悪な視線を注ぐだけの、嗜みを心得たエロ紳士ぶりに、へぼみさんは胸を両手で隠して赤面至極。やっと人並みの羞恥心が身についたらしい。


「んなコトより、兄貴は?」


 視姦には免疫なさげなへぼみさんの前に立ちはだかりつつ、ななみさんが問う。

 もう春本くんごときに猫を被るのはやめたようだけど、なんだかんだで頼りになる子だ。


「あーそうそう、アイツから伝言。

 ななお、体育サボるってよ」


 どっかで聞いたよーなフレーズだけど、ななおくんのサボりは教科を問わず今に始まったことじゃないから別段驚かない。

 …と思ったらななみさんが小首を傾げて、


「サボリぃ〜? 超不安材料のへぼみがいるのに?」


 …言われてみれば、今日に限っては少し違和感がある。

 なによりも、いつもなら朝礼後さっそく居眠りを始めるはずのななおくんが、今日はまだ一睡もしてない。

 そして今朝の…突発的に登校してきた雫石さんとの、あのやり取り。


”昼休み、屋上で待ってる”


 私の知らないところで、何の関係性もなさそうな二人に接点があったことにも驚かされたけど…

 いちばん驚いたのは、あの何事にも無関心な彼女が、わざわざななおくんを自ら指名したことだ。

 かくいう私も雫石さんについての認識は他のクラスメイトどほとんど変わらない。

 ただ、新学期が訪れる度に消息確認のため、担任と一緒に彼女の自宅を訪問しているだけで、それはクラス委員長としての責務に過ぎない。

 それだけの繋がりでも、彼女の空虚な人間性を窺い知るには充分だった。

 そんな『厄介者』が、よりにもよって自分の将来の旦那様にちょっかいをかけようとしてるだなんて…見逃さずにいられようか!?


「けど、約束は昼休みだろー? 今はまだ三限目だぞー?」


 授業開始時刻ギリギリになってやっとグラウンドに現れた担任の先生さきおい先生が、興味があるのか無いのか判らない口調で会話に絡んできた。


「でもでもぉ…あんなに大勢の前で約束しちゃったら、興味がある人なら皆んな野次馬になちゃーうからメンドいですよねぇ〜?」


 のほほんとした口調ながら、常に的を射てるへぼみさんの言葉に皆が考え込む。


「それならぁ〜、あたしだったら時間前でもその相手を探しちゃいますけどぉ〜?

 他の皆さんが確実に他の場所にいて、邪魔者が現れないと判ってるうちにぃ〜…」


『…!?』


 へぼみさんの鋭すぎる洞察に皆が息を呑む。

 つまり、私たちはななおくんに…

 まんまと出し抜かれたんだッ!!


「あんにゃろ、勝手に動くなって言っておいただろーが…ッ!」


「ていちゃんはななおのヒネクレぶりをアマく見すぎてんだよ!」


 戦々恐々な担任を春本くんが嗜めてるけど、そんなコトやってる場合じゃない。

 厄介者の雫石さんに、トラブルメーカーのななおくん…。そんな二人を放っておいたらどうなるか、誰にも予想がつかない…

 けど男女の仲がどう縮まるのかってコトにかけては容易く予想できる!!


「でも、探すって何処をよ!?」


 ヒステリックに叫ぶななみさんに、私は思わず挙手して助言した。


「雫石さん、最初から言ってたでしょ?

 昼休み…何処で待ってるって?」


 あまり口数が多くない彼女なだけに、その言葉は概ね有言実行だ。

 他の場所で自習する…と言ってたんだから、校外には出ていない。

 自習というなら通常は図書室、あるいは保健室とかだろうけど…人目が苦手っぽい彼女が、他に利用者がいそうな場所に自ら出向くことは考えにくい。

 ならば…唯一考えられるのは、指定した場所でひたすらななおくんを待ち続けること。

 すなわち…





「…約束は昼休みだったはずだが?」


 予定より早く屋上に現れた俺に、雫石あゆかは一瞬ビクッと肩を躍らせてから、内心の動揺をごまかすように俺を睨んだ。

 コイツ、案外ビビリだな? 日頃からななみの超高速殺人ビンタをかわし慣れてる俺の目は、そう易々とは騙されねーぞ。


「俺の騒がしい取り巻きどもを見ただろ?

 お前さんみてーなべっぴんさんと二人っきりで会うと聞いて、放っといてくれると思うか?」


 最も説得力のある説明から入ったのに、彼女は何か言いたげに口を尖らせる。

 ちゃんと美人だと褒めてやったし、だからこそこうして会いに来てやったんだが?


「褒めてくれるのはありがたいが、自分で望んでこの顔になった訳じゃないからな。元がそうだっただけだ」


 うわっ、自分が美人だって肯定しやがった!

 でも…なんかおかしな言い方だな?

 顔が選べないのは誰だってそうだろうに…。


「あと…お前さんならたぶん、昼休みまでずっとここで時間潰してそうな気がしたからな」


「…私にはお前のような取り巻きはいないからな。孤独な代わりに気ままなもんさ…」


 自分で言って自分で黄昏れちまいやんの。元々そうだったけど、今日はいつにも増してメンドクサイな。


「んで? 来たくもない学校にわざわざ出向いて、わざわざクラスメイトの眼前で俺を呼び出してまで、いったい何の用だ?」


「来いって言ったのはお前だろう?」


 …そうだっけ?


「それに、あの場でしか呼びかけるタイミングが無かったのだ…察しろ」


 あ〜なるほど、コミュ障の奴が目立たないように気を回し過ぎて、かえって悪目立ちするパターンか。難儀なやっちゃな。


「お前に見せたかったのは…コレだ」


 やっと本題に入ったかと思えば、雫石は制服のボタンをポチポチ外して…ってオイオイ!?

 解き放たれた胸元から、真白き乳房がポヨンちょとまろび出る。本当に純白だった。

 さすがにナマ乳ではなかったものの、その形がハッキリ判る薄手のホルターネックタイプのスポブラに包み込まれた巨乳の先端の突起と目が合った。


「先日、黒より白の方が耐熱性が良いと言っていただろう? ついでに布地面積もより少なくして排熱効果も高めてみたのだが…お前の意見はどうか?」


 どうか?と問われましても…この状況下じゃ「イイーッス☆」としか答えようがないだろ。

 だってあーた、まさしく水風船な膨らみが目の前でふよふよフヨフヨ…大昔にこんなアイス売ってたよね〜♩

 言葉通り、先日のはシャツだったが今日のはスポブラだから当然ヘソ出しで、脇乳が今にもこぼれ落ちそうなほどハミ出てて…ほとんどブラとしての機能を果たしていない。


「…なんなら触って確認しても良いぞ」


「ってマジ!?」


「前回も触りたそうにしていただろう?」


 うはっ、バレてーら♩

 あの時は街中だったし、下手すりゃ警備ドローンに包囲されかねないからグッと我慢の子だったけど…

 ここは日頃ほとんど人が立ち入らない校舎の屋上。昼休みともなれば何人かは訪れるかもしれないけど、授業中に来る奴なんている訳がない。

 と、ゆーことは…お触り放題♩

 誘惑に負けて手を伸ばし…かけたところでハッとする。


「…何が目的なんだ?」


 雫石ほどの美女が、こないだ初めて出会ったばかりでさほど親しくもない相手にサービス大盤振る舞いだなんて…そんな都合の良すぎる話がある訳ないだろ?

 一見無害に思えたさよりですら色々ありまくった挙句、将来的には多大な代償を伴う前提で、やっとこさ手に入れられたんだ。

 おまけにコイツはただでさえ何かと黒い噂の絶えない女なんだ、きっと罠に決まってる!


「目的? ふむ…強いて言えば…お前が欲しい。」


 ほら見ろ、そら見ろ! ますます妖しさ満載になってきたじゃないか!


「七尾ななお。私はお前に興味がある」


 なんたるダイレクト!?

 コレほとんど告白じゃね?

 ソレをこの女、顔色ひとつ変えずに…

 俺との間合いをジリジリ詰めながら…

 その割には、興味津々な眼差しを隠そうともせず…あからさまに下心丸出しじゃねーか!

 どいつもこいつも、なんで目の色変えて俺に群がるんだ!?(※漫画オタクのななおは、現実女子の自身への潜在人気に気づいていない)


「ときに七尾、お前はあの委員長と交際中だそうだな? あまつさえ同棲中だとか…ちんまいオマケ二匹とともに」


 そういや朝礼まではコイツも教室にいたんだったな。


「…まあな。色々あって、なし崩し的にそうなっちまったんだよ」


「まぐわったか?」


 またしても超ドストレートな質問に息が詰まる。そんなん答えられるか!?


「意味が理解できんか…セックスはしているのか?と訊いているのだが」


「言い直さんでもイイッ!!」


 よく真顔で言えるな、そんなコトが!?

 しかもこのエッロい状況下で!


「ししし…してねーよ、まだ!」


 質問がダイレクトすぎるとごまかしようがない。万引き犯が盗品片手に「盗ってない」と言い張るようなもんだ。

 なので躊躇した挙句、結局素直に答えた。


「ふぅむ…薄々そんな気はしていたがな。あの伊達メガネからは処女臭がプンプン漂っていたし」


 言い方!! そしてここにもさよりの秘密を知っている者が!?


「だが、お前のことだ。まったく手を出していない訳でもあるまい。せいぜい接吻や乳繰り合う程度はしておるだろう?」


 何なんだコイツ、エスパーか!?

 そして何故ことごとく古典的表現?


「判ってんならわざわざ訊くなよ。

 さよりがウチに来てからずっとバタバタしてたし、俺は気持ち的にまだそこまで盛り上がってねーし…そこまで行けりゃ上出来だろ?」


「フッ…思いのほか可愛い奴だな」


 鼻先で笑い飛ばしやがったァーッ!?


「だが…その分ならまだ、私が入り込む余地もあるだろう?」


 は? 何言ってんだコイツ?

 俺にもうカノジョがいるって知ってて…それでもまだグイグイ来んのかよ!?

 などと不覚にも考え込んでしまった俺の両脚を、雫石は柔道の足払いの要領で、片足一本で器用に薙ぎ払った!


「痛てっ…って、ちょっおまっ!?」


 尻餅ついて倒れ込んだ俺の上に、雫石はすかさず馬乗りになって抑え込んだ。

 重力に任せて垂れ下がったたわわな乳房が、俺の胸板にかなりの重量を伴って水袋のように横たわる。

 押し付けられる…ではなく、上から来たものが途中で折り畳まれて寝そべっている。滅多にお目にかかれない光景だ。


「大概の男は大きい方が好きだと思ったが…お前はあんな小振りなので満足できるのか?」


 なん…だと? それって、さよりのことか?

 さよりの胸のことかァーッ!?

 …などとブチ切れる程でもないが、仮にもカノジョを悪く言われりゃ多少はカチンとくる。


「乳目当てで好きになったんじゃねーよ。

 確かに流れでそうなっちまった感はあるけど…あんな不器用な奴は、俺が守ってやんなきゃ誰が守るんだ?」


 ついつい本音を覗かせてしまった俺に、雫石は珍しく少し苛立った顔をしてみせた。


「…しくじったな。もう少し早く出会えていれば…」


 俺のカノジョはお前だったかも…ってか?

 自惚れてんじゃねーよお嬢様。大昔の社交界じゃあるまいし、数日前に顔合わせたばっかの女に情なんて湧くか!

 さよりとはもう1年以上はつるんでるし、お互い腹のうちを知り尽くした仲なんだ。にわかのお前とは違うんだよ!


「…ならば、無理やり奪い取るか」


 んがっ!? 意外と諦め悪いなコイツ!

 しかもサラッとコワイことを!


「私なら…いつでもお前の要求に応えられるぞ?」


 人形のように端正な美貌を湛えつつ、いまだ表情を微塵も変えない雫石の顔が、至近距離で俺に囁きかける。


「この身体も…お前の好きにすればいい」


 なす術なく垂れていた俺の右手を取って、ブラの隙間からナマ乳へと誘う。

 予想だにしなかった展開の連続に、俺はされるがままになるしかない。

 柔らかい…なんて表現が陳腐すぎるほどの肉厚な衣が、俺の右手をすっぽり包み込む。


「感度は良い方だと思うぞ?」


 俺の右手にあてがわれた柔肉の中心にポツンと感じたシコリが、見る間に硬く尖っていく。

 柔らかさと硬さのコントラスト…どんな極上のメニューも敵わない、究極にして至高のアクセントだ。


「…お前の方もそうらしいな」


 Oh No!? ここまでされちまったら俺の俺も無反応ではいられず、股間にまたがる雫石のデカ尻を真下からツンツン突き上げている。


「…私の方は、いつでもお前を受け入れてやれるぞ。薄情なお前と違ってな」


 恨み節を口にしながら、股間をグリグリ押しつけてくる。お嬢様の割にはしたなさすぎねーか?


「って…なんかヌメってね?」


「異性を受け入れるために形状変化トランスフォームするのは、男性だけじゃないからな」


 …エッッッッッッロ!!


「な、なんで俺にばっかそんな執着すんだよ?

 お前ほど美人でエロエロなら、言い寄る男はよりどりみどりだろ?」


「昔ならそうだったかもしれんが、最近は相手が私と判った途端に逃げていく輩ばかりでな」


 コイツの悪評もずいぶん広まったとみえる。


「それに…私にも好みや選択権くらいはあるだろう。中でもお前はなかなかの素材だ」


 素材て。


「もう他を当たるだけの余裕もないようだし…

 やっと見つけた恰好のネタを、そうみすみす手放してなるものか…!」


 なに訳わかんねーコト言ってんだコイツ?

 さっきから人をモノみたいに…!


「もう一度言おう。

 七尾ななお…私のモノになれ。」


 さらに身体を密着させて、耳元で囁く雫石。

 常に上から目線な物言いがコイツ流の物の頼み方なんだって、そろそろ解ってきた。

 おおかた、人に頭を下げたことがほとんど無いんだろう。

 たしかにコイツが言うように、もっと早い時期から知り合って親交を深めていれば…あるいはその希望を受け入れていたかもしれない。

 だけど…今日は場所が悪かったな。


 ゴキャメキョッ…

 ズドバッコォーーーーンッ!!


 唐突に轟音を立てて、出入り口の鉄扉がひしゃげたアルミ缶みたいに弾け飛んだ。

 …やれやれ、やっと来たか。

 予想よりは早かったけどな。





「マスタぁーっ!?」「兄貴ッ!」「ななおくんっ!?」


 続けざまに屋上になだれ込んできた体操服姿のへぼみ、ななみ、さよりの血相変えた様子に、俺は逆に安堵の息を洩らした。


「ををぅ…これはまた…」「凄まじいパワーだね…」「うっほーへぼみんスゲー☆」


 一足遅れて姿を現した左右田姉弟と、へぼみへの態度がどんどん馴れ馴れしくなってるはるきは、俺たちよりもむしろへぼみが一撃で破壊した鉄扉の方に注目してる。


「派手にやりやがったな…この責任はやっぱ、飼い主の七尾に取ってもらうかー?」


 最後にのっそり出入り口をくぐってきた担任は、修復不能なほどメキョメキョに捻じ曲がった鉄扉に苛立ちを隠さない。

 そのままの顔で俺と雫石の方を見て…ますます眉間に深ぁ〜いシワを寄せた。

 はるきのアホも雫石のあられもない痴態に「をっほ〜♩」と喜んだ直後に、それがあの悪名高き雫石であることに気づいて慌てて目を逸らす。エロ魔人のはるきもコイツはさすがに対象外か。


「教師の面前で正々堂々と不純異性交遊かー。

 …ソレ、挿入はいってんのかー?」


 誰もが一見して訊くことを躊躇った俺と雫石の密着部分について、担任の単刀直入すぎる尋問! そこに痺れるあ以下略。


「はは挿入ってません挿入ってませんッ!」

「でも今、腰を上げると色々大変なコトになっているから勘弁願えないだろうか?」


 雫石!?

 担任をはじめとする全員のこめかみにビキィッと太い青筋が走った。

 そして今さらのように、


「ま、ままますたぁが…っ!

 雫石さんを襲ってるですぅ〜〜〜〜っ!?」


 人聞きが悪いにも程があるへぼみの大絶叫が屋上じゅうに驚いた。


「パータレッ、襲われとるのは俺の方だッ!!

 この体勢見りゃ判んだろがいッ!?」


 俺の反論に皆一様に「なんですと…!?」とおののいたが、へぼみは怯まず、


「そーゆー体位がお好みな人も多いですぅっ!!」


 その反論にましても皆「なんですと…!?」


「いや、私はどちらかといえば正常位派だが、今回は成り行き上こうなっただけだ」


 雫石ィーッ!?

 そしてまたまた皆「なんですと…!?」

 ってそれはもうイイっちゅーねん!


「とゆー訳で僕たちはヤッてません!

 てゆーか僕が雫石さんに押し倒された被害者ですが何か?」


「…なら、そっちのナマ乳に突っ込んだ手はー?」


 苛立ち度マックスな担任の再三のツッコミに、


「ここコレは不可抗力でしてハイッ!」

「こちらも今、手をどかすと主に私が大変なコトになっているのだが?」


 雫石ィイ〜〜〜〜ッッ!!!!

 ビキビキィーーッ!!

 またしても顔面のそこかしこに青筋を立てて、こちらにツカツカ歩み寄ってきたのは…

 意外にも担任ではなく、さよりだった。


「ななおくん…浮気は許さないって言ったよね…?」


 伊達メガネの下から氷のような視線で俺たちを見下ろして、さよりは物静かに念を押す。

 こっっっわ…こりゃマジ怒ってはるわ…!


「雫石さんも…朝礼に出てたんだから、ななおくんと私の仲を知ってるでしょ?」


「…無論だ。が、私が此奴と知り合ったのは、お前たちか付き合い始めるよりも前だ。

 第一、恋人以外の者が呼び出してはならんという道理はあるまい?」


 おいおい雫石、なんでわざわざ修羅場らせるよーなコトを? ここは穏便にだなぁ…


「…確かに、そこまでは正論ね。でも…それじゃあその手は何なの?…ななおくんッ!!」


「ぁひぃッ!? サーセンまぢサーセンッ!!」


 さよりに怒鳴りつけられて本能的に怯えた俺は、思わず力任せに雫石のスポブラから手を引っこ抜いた。


「むぉっ?」


 だが雫石の乳圧はハンパではなく、抜かれた手を追いかけるように柔肉がブラからペロんちょとこぼれ落ちて…!


先生せんせいッ、ジャージッ!!」


「ぅおっ!? お、おお…っ!」


 しおりの怒声に圧倒された担任が慌ててジャージの上着を脱ぎ、雫石めがけて投げ掛けた。


「ななみさんっ、へぼみさんっ!!」


『ハハハイィーッ!?』


 水戸黄門の鶴の一言に従う助角コンビがごとく、飛び出した二人が担任のジャージで雫石の身体を包み、そのまま俺から引き剥がした。

 すげーなしおり、この状況下でも的確な指示で皆を有効にこき使ってるよ。さすがは委員長!


「…よし。先生は雫石さんの方の処分をお願いします。私はななおくんの方を始末しますので…!」


 なおも指示を飛ばしながら、俺の胸ぐらを鷲掴んで強引に引きずり立たせるさより様。


「つ、つかぬコトをお伺いしますが…

 『処分』と『始末』の違いとは?」


「『公的な処罰』か『私刑』か、という違いです。…覚悟しといてね♩」


 私刑て。ようやく雫石から解放された俺にさよりはニッッッコリ微笑みかけたけど…眼鏡の奥の眼は微塵も笑っていなかった。怖っ。


「…だとよー雫石。超久々に顔出すなり、最速でやらかしてくれたなー?」


 向こうでは、ななみーズから引き渡された雫石を抱きかかえた担任が渋々お灸を据えている。

 ジャージを雫石に貸したから、下に着ていたタンクトップ姿になってるが…アレ? ブラ線が見当たらない…まさかノーブラ…?


「先生…良いところに来てくれた」


「…あー?」


 雫石の思いがけない感謝に、担任のみならずその場の全員の目が点になった。

 なんかサスペンスドラマのラストシーンで、真犯人が刑事にとって付けたように自らの犯行を自白するパターンみたいだ。


「私としたことが…ずいぶん無理してしまったらしい。悪いが…もうすぐ…落ちる。」


 さっきまで顔色一つ変えずにあれだけエロエロ三昧だった奴とは思えないほど、今の雫石はなんだか急に具合が悪そうだ。

 元々ぜんぜん日に焼けてなくて生っ白い肌色だし、元から無表情気味だしで、顔色の良し悪しは判断できかねるが。

 言葉通りなら、コイツなりにずいぶんテンパった状態で俺にあれこれ仕掛けてたってことか…?


「…委員長。すまないとは思う。が…己の気持ちに嘘はつけない」


 もはや死んだ魚のようにぼやけた目でさよりを見やって、雫石は独り言のように呟く。


「悪いが…これだけは譲れな…い」


 事実上の戦線布告をするなり、雫石は糸が切れた操り人形のようにカクンッと崩れ落ちて担任にのしかかった。


「ぅおっ!? な、なんか急に重くなったぞコイツー? 七尾、春本、左右田弟、手を貸せー!」


 雫石をプルプル震えながら全身で支えつつ、担任は居合わせた男子ばかりに救助要請を送った。

 体育教師ともあろうものが何を大袈裟な…と思いつつ、言われた通りに雫石のジャッキアップに参加してみれば…


「ふぬおっ!? な、なんだこのハンパない重量感…?」


「じ、女性にこういうのは失礼って解っちゃいるけど…おっおお重い…ねっ!?」


 フェミニストの風紀委員長がよろけながら公言するくらいだから相当なモンだろう。雫石のやつもこんなんでよく普通に歩けてたな?

 そんなこんなで皆が悪戦苦闘する中、


「わーホントだー重ぉ〜い♩ やーらか〜い♩」


 はるきの野郎だけは気絶した雫石と担任の背後に回り込んで、まっっったくジャッキアップに加わることなく二人のナマ乳を存分に堪能してやがった!

 神輿を担ぐふりして「左手は…添えるだけ」的なフザケた野郎だな…上手くやりやがってコンチクショウッ!


「んんっ…春本ぉーお前あとで覚えとけよー!?」


「むひょひょ…ていちゃんも素直になりなよ〜。考えるな、感じるんだ…!」


 真っ赤な顔した担任に睨まれても、すでに謹慎処分を食らってるはるきは逆襲とばかりに動じない。

 …が、そんな奴の天下も長くは続かなかった。


 ぐしゃドカばきゲキョごきゃグチャッ!!


「…悪ふざけはTPOをわきまえてね〜? 春本くぅ〜ん…あ゛あ゛ん?」


「いえす・まむ…げはぁっ」


 聖母のごとき微笑の陰に般若の憤怒を忍ばせたさよりの華麗なる連携技により、哀れはるきは一瞬で血の海に沈んだ。

 ただでさえ雫石にカレシを略奪されかけて怒り心頭なところにアホな真似するからだぜ。


「…この女も案外侮れないわね…」


 はるきの亡骸をなおも追撃中のさよりを、ななみ達が脂汗を滴らせて遠巻きに眺めている。

 さよりの奴、こりゃ本格的に武道か何かの心得があるな…あんまし怒らせないようにしよ。

 …って、今しがたこれ以上ないほど怒らせたばっかだった…!


 ちなみに、俺たちが散々苦戦していた雫石の取り扱いは、へぼみ一人で充分間に合った。

 ま、屋上の鉄扉をアルミホイルみたいに吹き飛ばす奴だしな。

 子泣き爺のようにクソ重たい雫石の身体を軽々と背負ったへぼみは、


「あ〜…こりゃ〜皆さんの手には負えない訳ですね〜♩」


 と一人で納得して、以降の運搬役を買って出てくれた。





 保健室に担ぎ込まれた雫石を診察した保険医の見立ては、


「う〜ん、正直よく判んないけど…寝不足じゃない? あとたぶん、ろくに食事も摂ってないみたいね…」


 あんだけクソ重たかったのに腹ペコだったとはな…。見た感じ、無茶なダイエットしてる様子も無いんだが…?

 呼吸や脈拍や体温は正常とのことだが、一向に目を覚まさない雫石はそのまま放課後までベッドで寝かされ続けた。

 それでもなお起きなかった彼女をへぼみに担がせて、俺たちは雫石の自宅まで見舞うことになった。

 ったく、世話の焼けるお嬢様だぜ…。


 見舞いのメンツは屋上のときと同様、俺、ななみ、へぼみ、さより、はるき、左右田姉弟に担任の壮々たる顔ぶれ。

 皆それなりの立場にありながら、目の前で雫石が倒れるまで辛く当たってしまったことに責任や罪悪感を抱いていたらしい。


「…けど、仮にもお嬢様ともあろう者が、寝不足だの腹ペコだのあり得るのか?」


 校門を出たところで、高層ビルの谷間に垣間見える小高い丘を見上げながら、俺は誰にともなく問う。

 その丘のてっぺんに建つ、城みたいに馬鹿デカいヤツが雫石財閥の豪邸だ。

 あれだけの規模なら使用人も漫画みたいにわんさかいるだろうし、お嬢様にそんな不摂生をさせるはずがないだろうに…。


「ぁー…勘違いしてるところ悪いが、コイツん家ならソコじゃないぞー」


 頭をポリポリ引っ掻いて面倒臭そうに応えた担任は、俺たちの「へっ!?」と驚いた顔に溜息を洩らすと、


「委員長、バトンタッチー」


「…今のお住まいはここからすぐだから、歩いて行きましょ?」


 雫石に対していまだ釈然としない思いを抱えたままのさよりは、俺と目が合うなりサッと逸らすと、先頭きってスタスタ歩き出した。

 …やれやれ、こっちのフォローも考えないとな。


 やがてたどり着いた先は…街の裏通りに面した旧市街の一角。

 目の前には、築何十年かも不明な年代物の、二階建てのボロアパートが小ぢんまりと佇んでいる。


「…え? まさか…」


「うん、此処で間違いないよ」


 信じ難い事実に愕然とする俺の言葉を折って、さよりは一階の角部屋を指差す。


「あたい達はついこないだ来たばっかだけど…いまだに信じらんねーよなー」


 毎年様子を見に来てる担任が言うなら間違いないだろう。あれだけの豪邸に住んでた超ブルジョワお嬢様が、なして…?

 ここからでも見える丘の上のソレとの落差に軽い眩暈を覚えた。

 先日出くわした商店街からは目と鼻の先にあるにもかかわらず、今まで全くといって良いほど顔を合わせる機会が無かったことから考えて、日頃はほとんど此処にこもりっきりだったんだろう。


「…ってことは、一人暮らし…だよな、当然?」


 案内された部屋のドアを見上げながら問う。その表札には確かに『雫石あゆか』の名前しかない。


「…だからって、変な気起こして一人で通い詰めたりしないでよね…?」


 雫石の持ち物から見つけたドアの鍵を解錠しつつ、さよりは若干赤らんだ頬で俺を睨む。

 カノジョ様にあんな痴態を目撃されちまった今となっては、素直に了解するしかない。

 さて…部屋の造りは典型的な安アパートだ。

 ドアを開けるなり畳敷きの居間。今どき畳敷きは相当レアだし、部屋が一間きりというのも田舎町なここでは珍しい。

 ドアの横には流し台があり、反対側にはトイレ兼ユニットバス。間取りとしてはこれだけ。

 洗濯機は無いようだから、近所のコインランドリーでも利用してるんだろう。

 角部屋だが、窓は居間の奥の大窓と、流し台上の小窓のみ。窓の外は塀で遮られてるし、そもそも一階だから見晴らしは皆無。

 壁や天井は見るからに薄そうで、他の部屋の物音が筒抜けだし…。

 う〜む…居住空間としてはこれ以上ないほど最低最悪だな。おそらく家賃は付近の物件中でも最安値だろう。


「邪魔するぞー…っておいおい、あたいでもコレはねーわ」


 室内にズカズカ踏み込んでいった担任は、床のあちこちに無造作に散らばっていた衣類や下着を足で部屋の隅へと蹴り込み、


「相変わらず、恥じらいってものが微塵もないし…昼間だって、あんなんだし…っ」


 それをさよりがブツクサ言いながら手際良く折りたたんで片している。この部屋には洋服棚の類が一切ないから、そこに置いとくしかない。


「うーわ、飲み物すら置いてねーし。お前ら、すまんが茶は帰ってから各自で飲めー」


 流し台脇の冷蔵庫を勝手に物色した担任が、空っぽな庫内に落胆している。てか生徒ん家の食糧を勝手に漁るのはイイ大人としてどーなのか?


「お布団敷いたら皆の居場所が無くなっちゃうし…へぼみさん、そのままその辺に寝かせてあげて。畳敷きだから大丈夫でしょ」


「ハイハイですぅ〜♩」


 さよりの指示通り、担いでいた雫石を居間の片隅にそっと横たえるへぼみ。その声が、この部屋に入ってから担任とさより以外の者が発した初めての言葉だった。

 既に何度かここを訪れていた二人以外は、この部屋の予想以上の殺風景ぶりにすっかり放心状態だった。

 なにしろ室内には先程の衣類以外、まったくと言っていいほど物が無い。

 あるものといえば、窓辺に置かれた小さな座卓と、その脇に転がる一冊の漫画雑誌のみ。


「…漫画雑誌?」


 思わず手に取ってしげしげ見つめてしまう。

 雫石が漫画を描いてることは知ってたが、お嬢様の部屋に漫画雑誌なんて異質なモノが転がってたのが気になって仕方がない。

 数年前に発行された、今はもう休刊してる雑誌だな。かつては俺も毎号欠かさず購読して、投稿も何度かした憶えがある。

 ずいぶん読み込んでるのか、ページの端が擦り切れてバタバタになっているが…う〜ん? なんっかどっかで見覚えがあるなぁ。

 俺も持ってたから当然っちゃ当然だけど、そーゆーことじゃなくて…。

 …ま、気にするほどのことでもないか。

 ついでに室内を見回してみたが、コレの他には本の類は一切見当たらない。教科書類も含めてな。

 他に何か目ぼしいモノは…


「…あっ。コレって…!?」


 座卓の上に目を留めたななみが、急に声を上げて駆け寄った。

 俺もその先を目で追ってみれば…


「へぇ…コイツはまた…!」


 そこに積み重ねられていたのは、描きかけの漫画原稿だった。しかも今日びでは極めて貴重な直筆。同じく手描き派のななみが反応する訳だ。しかも…


「…上手い…!」「あぁ…スゲェな…!」


 ななみと一緒に感嘆してしまう。

 一切の迷いなく一気に引かれた、流麗にして繊細な線。しかも下描き跡が見当たらない。

 通常はスクリーントーンで処理するテクスチャーや背景効果まで全て手描き。

 コマ手前のキャラクターは勿論、背景の微細な箇所に至るまで手抜きすることなくキッチリ描き込まれている。

 画面構成は言うに及ばす、コマ割りに白黒のバランスに吹き出しの位置や大きさに至るまで…何から何までカンペキだ。

 そして、肝心要のキャラクターの魅力がこれまたスゴイ。流行りの線を押さえつつも、他の誰にも似ていない独自の絵柄は古過ぎず、新し過ぎずで…いつまでも見飽きない。


「てか、このキャラって…お前に似てね?」


「あ、やっぱり? あたしも一見してそう思った」


 いつの間にか俺たちの背後から覗き見てたはるきが、主人公と思しきメインキャラを指差すと、ななみも大いに賛同した。

 そんなに似てるか? 自分の顔なんてじっくり見たことねーからワカラン。

 そういや、ななみの漫画にも時々似たよーな顔立ちのキャラが出てくるけど…こーゆーのがイマドキなのかと思ってたぜ。


「…あたしより上手く描けてる…悔しい…っ」


 漫画にかけてはいつも自信満々なななみが、珍しく素直に負けを認めて唇を噛んだ。

 これはマズい傾向だな…と俺が声を掛けるよりも早く、


「そーかのぉ? お主の方が小慣れておる感じがするのぉ」


 思わぬところから援軍が。生徒会長こと左右田みぎこが、ななみの震える右肩にポンッと手を置いて元気づけたのだ。


「毎回、新作を出すたびに着実にレベルが上がってるしね。スゴイことだと思うよ♩」


 と、左肩に手を置いた双子の風紀委員長こと左右田さじろうもフォロー。

 並み居る生徒たちの頂点に君臨する女帝姉弟の援護射撃に、ななみの応えは…


「…へ!? な、なんで知ってんの?」


 そりゃそーだろうな。ななみが漫画を描いてることは表向き秘密だし。何故なら、


「だって、あたしの漫画って…」


 顔を赤らめて言いにくそうに口ごもるななみに、左右田姉弟は「しまった、つい…」とでも言いたげな顔で脂汗ダラダラ。

 ななみよ、お前が知らんのも無理ないが…この二人はお前の同人誌のヘビーリピーターだ。

 今はそんな場合じゃないから詳細は端折るが、新作は毎刊欠かさずトップで二冊ずつお買い上げ戴いてるし、お前が何処からもお咎め無しでエロ漫画を描き続けられるのは、二人の御尽力のお陰だ。


「ほぉー? 妹もかー。血は争えんなー」


 ななみはともかく、俺の方は高校入学前から寝ても覚めても漫画、漫画と言い続けてた筋金入りだから、担任が知ってるのも無理はない。

 だが、これは…


「…マズくない?」「あぁ…ヒジョーにマズイ。」


 こっそり耳打ちしてきたさよりに、俺は静かに頷き返す。ななみの件がこれ以上広がるのはなるべく避けたいところだが…

 と、ここでさらに予想外の助っ人が。


「おいおい、漫画ってのは絵柄だけで読むもんじゃねーだろ? 肝心なのは中身だろーが中身!」


 はるきにしては極めてマトモなことを言いつつ、座卓の上の原稿をササッとまとめて順番通りに並べ直して、


「つってもオレは流行りの漫画しか読まねーんだけどな。どれどれ?」


 と、読み進めていくらもしないうちに、はるきの目が作品に釘付けになっていくのが手に取るように判った。


「…ぶはっ…いいなコレ…おもしれーよ!

 特にこの、ななおにクリソツな主人公がメチャ笑かしてくれるっ!」


 俺似だという例のキャラを指差して、満足げに笑う。


 漫画ってのは情報量の塊だから、読み進めるにはそれなりのスキルが必要となる。文章を読むには語学力が必須なのと同じだ。

 だから巷で流行ってる漫画を、ほとんど読まないという奴に勧めても「うーん…なんかゴチャゴチャして読みにくいねぇ」で終わってしまうことがままある訳だ。

 しかも、生まれながらに漫画に囲まれた生活に恵まれている俺たち日本人は、いわば漫画の英才教育を受けて育ってきたが…それは海外ではいまだに極めて特殊な環境だ。

 そもそも普通の書店では漫画を扱っていないところが大半で、ネットにでも頼らなければ入手すら困難だったりする。


 …話が盛大に脱線してしまったが。

 つまり、日頃それほど漫画を見ないはるきが素直に面白いと認めるくらい、雫石の漫画はホンモノだってことだ。

 ともかく、アイツが俺にやたらと執着した理由はこれで判った。

 だからといって現状では何も解決してないし、下手すりゃますます拗れそうなんだが…。


「……っ」


 人知れず悔しさに耐え忍ぶななみの横顔をしばし見つめてから…俺は改めて、この何もない空間に目を配った。

 超がつくほどセレブなお嬢様のはずの雫石が、どうしてこれほどまでに侘しい生活を送っているのか…俺には知る由もない。

 けれど…それが彼女の望んだ日々じゃないことは、この部屋の有様から如実に伝わる。

 部屋にはその所有者の個性が嫌でも滲み出るものだが…此処にはそれが何もない。

 漫画の中ではこんなにも活き活きと動き回ってるキャラ達も、こちら側の世界には何の影響も与えない。

 つまり…雫石の世界は、この漫画の中だけなんだ。


 現実の世界には…彼女の居場所は、何処にもないんだ。


「…気づいたんだね…やっぱり?」


 いつの間にかそばに立ってたさよりが囁いた。

 かつて、自分の居場所の危うさに脅かされ続けてきた彼女も、俺と同じ印象を抱いたに違いない。

 俺は深く頷き返してから、


「…さすがに、このままにはしておけねーよな」


 いまだ部屋の隅に寝転がったまま、意識が戻らない雫石を見つめて呟いた。

 そんな俺に、さよりはやれやれと被りを振って、


「…だから言ったでしょ。変な気を起こさないでって…」


 今さらさよりの忠告の真意に気づかされた、その時。


「…今日はずいぶん賑やかだね?」


 耳慣れない声色に、全員ハッとして振り向けば…部屋の戸口にこれまた見慣れない男が立っていた。





「…やっぱりか。朝からずっと連絡がつかなかったから、もしやと思って寄ってみれば…」


 部屋の隅に横たわる雫石に目を留めた男は、眼鏡の奥で険しい目つきを作ると、誰に断ることもなく部屋に上がり込んできた。


「あー? なんだお前…どちら様でしょうかァ☆」


 不躾な男の態度に声を荒げかけた担任だが…その端正な顔立ちに気づくと、一瞬で態度を豹変させやがった。

 高級ブランドではなさそうだが仕立ての良いスーツを着こなし、肩まである長髪を首の後ろで結えた、どっかのホストクラブにでもいそうな優男。

 眼鏡はどこぞの委員長のような伊達ではなく本物で、それがなくとも颯爽とした身のこなしから知性が滲み出ている。

 年齢はおそらく、アラサーの担任と似たようなもんだろう。

 なーるほど、ていちゃんのお好みはこんなタイプだったか…なかなか結婚できない訳だわ。

 ある意味まるっきり真逆の存在だしな。


「ああ、担任の先生とご学友の方々ですね。初めまして。僕は名乗るほどの者ではありませんが…」


 いや名乗れよ、部屋に上がるくらいなら!


「あゆか…雫石家の関係者で、そうだな…彼女の主治医みたいなものです」


 寝そべる雫石の容体をテキパキ検診しながら、自称主治医は背中越しに曖昧すぎる自己紹介を交わす。

 てか今、呼び捨てにしやがったな雫石を?  しかも何だよ『みたいなもの』って?

 何もかもがアヤシイ…!

 いや、それ以前に…主治医がこうして様子を見に来るってことは、雫石のヤツ…どこか具合が悪いのか?

 なら、なんでますます一人暮らしなんてさせてんだよ…?


「はぁ〜そーですかー♩ 私は雫石お嬢様の担任のぉ…」


 ダメだこの担任使えねー!!

 などと茶番劇か繰り広げられていたところへ…


「あのぉ〜…貴方はぁ、もしかしてもしかしたらぁ〜?」


 意外なことに、割りかし人見知りが激しいことが判ったへぼみが、自ら謎の男に近づいていった。


「…キミは…まさか…?」


 忙しそうに動いていた男の手がピタリと止まり、信じられないモノを見たような顔でへぼみを凝視している。

 なんだ?…ひょっとして、へぼみがHWMだと一目で見抜いたのか?


「今は御挨拶はそのへんにしときましてぇ〜」

「…ああ、そうだね。あゆかが倒れたのは?」

「三時限目が始まったばかりだと記憶してますのでぇ、ひとひとまるまる時前後かとぉ〜」

「結構経過しているな…その後の容体の変化は?」

「特にお変わりなくぅ、呼吸や脈拍も安定してぇ〜…」


 …スゴイな。あのへぼみとフツーに会話が成立してる! 

 というか、へぼみの方がいつになく素直に応じてるんだ。この男を信頼しきってる感じで。

 何者なんだコイツ…?

 とにかく医者が出てきたなら、俺たち有象無象の出番はもう無い。

 それでもしばらくは皆、所在なさげにその場に留まっていたが…


「…申し訳ないが、ここからは少々デリケートな治療になるので…」


 デリケート…あ、脱がすってことね?

 露出狂気味とはいえ現役JKを得体の知れない男に任せるのもどうかと思うが、知らない仲でもなさそうだし…。


「ホラお前ら、聞いただろー?

 …では、何かありましたら学校までご連絡下さいね〜♩」


 そうこうしているうちに、清々しいほどのギャップを見せる担任に尻を叩かれて、俺たちは雫石の部屋をあとにした。

 けど…俺の釈然としない気持ちはなかなか晴れない。

 身体のことは医者に任せるのが一番だとして、問題はメンタル面のヘルスケアだ。

 あんだけヤバイ奴を、あ〜んなヤバイ部屋に一人で置いといたら、ますます拗らせまくってヤバヤバになっちまうのは目に見えてる。

 …ならば、どうすべきか?

 実は、解決法は既に思いついてるし、割り合い簡単に実現可能だが…

 それ言うとさよりは間違いなく嫌がるだろうし、ななみもさっきの様子だと難しそうだ。

 肝心な雫石も素直に応じるとは思えないし…う〜むむむ…。


「…ハァ。ななおくんって何だかんだでお人好しだよね…」


 隣で俺の様子を窺っていたさよりが、溜息混じりに呟いた。


「それで私も助けられて、今ココなんだし…

 その調子で雫石さんにもちょっかい出したら、どーなっちゃうかがアリアリと目に浮かぶんだけど…」


 ゔゔっ…なんか恋人同士になった途端、一気に遠慮が微塵もなくなったな。


「でもね…私がななおくんを好きになったのは、たぶん…そーゆートコ♩」


 仕方なさそうに苦笑しつつも、さよりは温かい目で俺を見つめる。


「私も雫石さんのことは、このまま放っとけないと思う。…あくまでも委員長としてだけど」


 なんだかずいぶん回りくどいが…

 つまりは、俺に任せたってことだな?

 それならもう、迷うことはない。

 善は急げだ!


「…お前ら。一つ相談があるんだが」


 俺は早速、帰り支度を進めていた連中を呼び止めた。





 真っ暗闇に急に稲妻が走ったように、突然意識がハッキリした。

 身体に力が入るまでもう少し掛かるようだが、何処にも異状はなさそうだ。

 どうやら今回も助かってしまったらしい。

 毎回毎回けっこうシンドいから、そろそろ終わりにしたいんだが…幸か不幸か、周囲にいるお節介焼きが、なかなかそうさせてはくれない。


「…気がついたようだね、さより」


 とっくに聞き飽きた男の声が私を呼び覚ます。

 渋々瞼をこじ開ければ…見飽きた奴の安堵顔がそこにあった。

 その背景には、見慣れた自分の部屋の天井が見える。ということは…今回はどうやら大勢の者に迷惑をかけてしまったらしい。


「倒れた時の状況は憶えてるかい?」


「学校の屋上にいた。三時限目の開始早々に倒れた。それ以降の記憶はないが…周囲に大勢いたから、おおかたそいつらがここまで運んでくれたんだろう?」


「ご名答。聞いた通りだから、記憶の混乱はないようだね。

 友達はついさっきまで大勢いたけど、お帰り願ったよ。

 …その格好を見せる訳にもいかないからね」


 言われて自分の身体に目をやれば…文字通り身ぐるみ剥がされて素っ裸だった。

 この男にはとっくに全身くまなく見られているし、そうしなければ復活は叶わないことを知っているから、別段抵抗はない。

 …が、何も身につけていない状態はやはり心許ない。

 ちょうど四肢に力がこもるようになったので、のっそり起き上がって、付近に散らばっていた下着を身につける。


「…珍しくブラを着けてたね? いつもはもっと無頓着なのに。脱がせてみて思わずドキッとしたよ」


「…久々に登校するのに制服だけという訳にもいくまい。せめてもの嗜みだな」


 しれっと変態チックなことを言う奴だが、いつものことなので気にしない。

 どうして男という生き物は、女性の下着にこうまで異常な興味を示すのか理解し難いが…

 少なくとも、今回のターゲットには効果テキメンだったらしいから結果オーライとしよう。

 惜しむらくは、途中で不覚にも落ちてしまったために取り逃してしまったことだが…

 アイツのことだ。何だかんだ言って、これで私を無碍には扱えなくなったことだろう。

 そういった意味では、今回のミッションは成功といえるだろうか。


「…あんなに大勢の友達がいたなんて知らなかったよ。この部屋を訪れた人数の最多記録更新だね」


「だろうな。私も知らなかった。

 …正確に言えば私ではなく、わざわざ会いに行ってやった奴に、あんなに知り合いが多かったことが…だがな」


「へぇ?」


 目を丸くする彼に、なんだか小馬鹿にされたような気がしてそっぽを向く。

 よくよく考えてみれば、それまで他人にまったく興味を示さなかった私が『わざわざ会いに行った』ということに関心を持ったのだろう。

 …そのまま、ふと窓に目をやれば、外はだいぶん薄暗くなっていた。


「ギリギリ間に合ったよ。…酷いものさ。

 呼吸や脈が安定していたからまだ良かったものの、どちらかが止まっていれば処置なしだった」


「そうか…」


 今回は意識障害だけだったから苦痛はさほど伴わなかったが、呼吸器系や循環器系にまで支障をきたすようになってきたらしい。


「だからといって、打つ手はないのだろう?」


「…ああ。このままではね」


 そして二人して黙り込む。

 奴が言うには、これ以上は専門設備が整った施設でなければ対処不能らしい。

 だが、元いた古巣の方はもう使えない。此奴が怒りに任せて飛び出してしまったせいでな。

 父上に勘当を言い渡されたのは私だけだし、必要とあらばいくらでも使わせて貰えただろうに…早計なことをしたものだ。

 奴が言うには、それが男としてのケジメなのだとか…。

 なんとも不合理で厄介なものだな。


「…ああ、そういえば」


 急に思い出したふうを装って、奴は興味深げに私に尋ねた。


「さっきの学友の中に、面白い子が混ざってたね。へぼみくん…だったかな?」


 そらきた。やはり此奴が気づかない訳がなかったか。本当は最初からそれを訊きたくてウズウズしていたクセに。


「あの子はいったい何処から来たんだい?」


「アレの飼い主の親は、マタンゴグループに勤めているらしい。そこの試作品だというが…見え透いた嘘にも程があるな」


「だよね。マタンゴにそこまでの技術力があるとは思えないし…第一、各種の規制や規定に抵触しまくりのあんな代物が国内メーカー単体で作れる訳がない」


 私の身体の心配をしていたかと思えば、HWMとはいえ、もう他の女にうつつを抜かしている。

 あの七尾ななおという男も、ちゃっかりカノジョがいたにもかかわらずお盛んらしいが…どこの男も多少は浮気性らしいな。


「けど…あれだけのモノを開発できる処なら、あるいは…」


 どうやらまた此奴の悪い癖が出たようだが、今回ばかりは相手が悪すぎる。

 あんなモノを作り上げるような連中がマトモなはずもなかろうに…。


「…うちのへぼみに用があんなら、紹介してやらなくもないぜ?」


 出し抜けに部屋の戸口で上がった第三者の声に、私たちは二人揃ってギョッとなった。

 しかも、この声…!


「おっと、着替えがまだだったか? でももう学校であらかた見せて貰ったから、別にいいだろ」


「…まだ帰ってなかったのか? 七尾ななお。」


 確かに奴の言う通りなのに、何故だか急に気恥ずかしくなってきた私は、周りに散らばっていた制服を手繰り寄せて身体を覆い隠しながら問い返した。


「もういちいちフルネームはよそうぜ、雫石…いや、あゆか。まだるっこしくていけねーや」


 いきなり名前を呼び捨てにされて、思わず手にした制服をパサリと取り落としてしまう。


「…ずいぶん無作法なご学友だね。キミがへぼみくんのマスターなのかい…七尾くん?」


 あからさまに不機嫌な様子の連れが、私に代わって問いただすも、


「その通り。そっちの要求はへぼみだろ?

 俺の要求はそっちのあゆかだ。

 ここらで一丁、等価交換といかねーか?」


 …なんだかとんでもないコトを言い出した。


「と、言うと…?」


 察しの悪い、あるいはあえて念押しした連れではなく、私の方に手を差し延べて…ななおは言った。


「あゆか…ウチに来い!」




【第五話 END】

 前回あとがきの予告通り、今回から第一話以来久々に再登場の雫石あゆか編に突入します。

 第二話以降ずっと七尾家内で話が進行していたので登場人物が限られていましたが、再び学校に通学ということで新キャラ続々登場。


 まず、学校モノには欠かせないクラス担任で体育教師の先生さきおいていち。名前は完全にダジャレです(笑)。

 ガサツでズボラでぶっきらぼうだけど割りかし生徒思いでそこそこ美人という、作者の理想をまんまカタチにした感じですね。

 実は当初の予定では男性版も考えてましたが、男女比率が予想以上に男性偏重気味になったので、華を添えるつもりで中性的に仕上げました。

 今後はどんどん可愛くなる予定(笑)。


 次に、生徒会長&風紀委員長の双子、左右田姉弟。名前は他に合わせてひらがな表記に統一してますが、姉は右子、弟は左次郎という漢字です。テキトーですねー(笑)。

 これまた裏設定では当初、生徒会長は前作『はのん』の主人公・潮リョータが務める予定でした。が、時代設定を近未来にしたため世代が合わなくなったので、現役首相に回して(!)新たにキャラを起こしました。

 姉は感情的かつ突発的に動き、それを理性的な弟がフォローする具合ですかね。

 二人とも多少のムチャ振りはするものの、校風を体現するかのようにゆるフワで、全然厳しくない感じ。


 あと…ラスト付近に出てくる謎の優男。名前は故あってまだ伏せてあります。

 あゆかの主治医を自称してますが…まあとっくにネタバレでしょうかね?(笑)

 コレとあゆかがキーパーソンとなり、ななお達の認識がガラリと変わる…予定です。


 とゆー訳で今回は新キャラの紹介がてら、謎と伏線ばかりになりましたが、もちろん次回以降、次第に解明されていきますので。

 あと件のゴタンマ首領こと金ちゃんと、お供のシロちゃんは、前回活躍させすぎたので今回はお休みです。てゆーか入れる余裕が無かった(笑)。

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