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孤独炉理。

【前回のあらすじ】

 本編開始から二十年前…

 ゴタンマの実験体として生み出された精神操作能力を持つ少女・やまぶきは、首領の息子『若様』の養育係に抜擢される。

 それから十年の歳月を経て、好青年へと成長した若様との間に必然的に愛情をはぐくんだやまぶき。

 ある日、外の世界に憧れる彼の希望で施設からの脱走を企てるが、首領の弟であり、過去の経緯から彼女を憎む副首領の妨害に遭いあえなく失敗。

 副首領の凶弾により絶命した若様を甦らせるため、首領と共に秘密地下施設を訪れたやまぶきは、そこで若様が首領のクローンである事実を知る。

 首領の助力で見事に若様の再生に成功したやまぶきだったが、直後にまたも副首領の邪魔が入り、激昂した彼によって首領を殺害されてしまう。

 果たして二人の運命は…?





「…何!? 今の音…?」


 部屋の外から聞こえてきた発砲音に、若様が弾かれたように顔を上げる。

 でも私にはもう解ってた。離れていても感知できるほどの急激に増大する禍々しい憎悪と、それとは相対的に薄れ行く『彼』の生命の灯火に気づいたから…あえて目にしなくても。


「…首領が撃たれました。…叔父様に」


「え…えっ? 父さんッ!?」


 と一瞬驚いたものの…若様も私の嘆きぶりからすぐに状況を察して唇を固く結んだ。

 彼の記憶上では、相手は先ほど自分(実際には別人だけど)を撃ったばかりの輩だし…

 私の瞳に浮かぶ涙から、父親(実際にはクローン元だけど)の死を悟ったらしい。

 それだけの反応で済むのは、元々親子というほどの触れ合いはなかったし…本物の父親ではないことが本能的に解っていたからか?

 それでも私達の良き理解者だったし、若様のオリジナルだと判ってからは親近感も湧いてきたのに…こんなにもあっけなく別れが訪れるだなんて…。

 …けど、いつまでも悲壮感に浸ってる余裕はない。


「…逃げましょう。叔父様がここに来ます!」


 もはや御しきれないほど邪悪なドス黒い感情がこちらに向かってくるのを察知して、私は若様の手を引いて立ち上がった。


「でも逃げるって、何処へ? 出入口は他にないし…僕、こんな格好だし」


 言われてみれば、このクローン培養室の扉口は、今まさに副首領の気配が立ち込めている正面の一箇所のみで、通行を許可された者以外は往来できない。私が入ったときには隣に首領がいたけど…その彼はもういない。

 しかも若様は水槽から出てきたままのスッポンポン状態で、もう散々見慣れてるしお子様体型に逆戻りしたとはいえ目の毒だ。

 室内には身体を覆えそうな物は何も用意されてないし…ううっ、万事休す…


「…おいおい、いくらなんでも早すぎねぇか?

 『決して諦めるな』って忠告されたばかりだろう?」


 出し抜けに繰り返された首領の言葉に、私達は慌てて室内を見回した。明らかに彼とは別人だけど…どこかで聞き覚えのある声色…?


「…よっ、また会ったな?」


 こんな状況下には似つかわしくない陽気な口調と共に、物陰から二人の人影がひょっこり顔を出す。

 そのうちの一人は、しょっちゅう顔を合わせていた…少し前にも私達の門出を祝ってくれたばかりの見慣れた存在だった。


「守衛さん…!?」


「というか、こっちが『本業』さ…本来はな」


 いつもの警備員スタイルではなく、どっかの現代風忍者漫画に出てくるような格好をした彼の笑顔に、驚きつつも一安心した。


「えーっと…誰?」


 私と違って若様は初顔合わせだろうから、戸惑うのも無理はない。そんな彼に守衛さんはうやうやしくこうべを垂れて、


「お初にお目にかかります、若様。

 我らは首領様直属の御庭番…まあ、忍者みたいなモノだと思って頂ければと」


「ゥワーオ、じゃぱにぃず・にんじゃ!? まぁべらす、ふぁんたすてぃっく! ゲイシャ、フジヤマ、ハラキーリ!」


 なんでカタコトかは知らないけど、実在した忍者に大興奮の若様に、


「そのままでは何ですから、まずはコレを。

 時間がありません、詳しい話は後ほど!」


 彼が子供の頃に着ていた普段着を手渡した守衛さん…いや忍者さんは、もう一人の仲間と二人がかりで手早く若様の着付けを済ませると、私達を伴って部屋の一角へと。

 一見なんの変哲もない壁だけど…彼らがあちこち触れた途端に音もなくバクンッと口を開けて、隠し通路が出現した!


「このような秘密の抜け道が、この建物には縦横無尽に張り巡らされてございます。

 ささっ、お急ぎください!」


 と、彼らが私達を通路に押し込んで、再び壁を閉じたのとほぼ同時に慌ただしい靴音が響いて…副首領が室内に雪崩れ込んできた!

 隠し通路には気づかれない程度の小窓が付いてて、外の様子を観察できるようになってた。忍者さん達はさっきもこうやって私達を見守っていたのだろう。


「クソッ、いないぞ!? 逃げ場は無かったはずだが、ムゥ…」


 なんで追い詰められた人は皆こうなるのか、でっかい独り言を呟きながら辺りを見渡した副首領は…やがて、さっきまで若様が入っていた培養槽が空っぽになってることに気づくと、


「素体がない!? 一足遅かったか…チキショオーッ!!」


 癇癪を起こした副首領は、手当たり次第に暴れ回って周囲の培養槽を片っ端から破壊していく。

 水槽が割れて培養液が溢れ出し、室内が水浸しになっていく。

 中から転がり出た素体を力任せに踏んだくって、成育状態が不完全なモノはへし折り、引きちぎり…目も当てられない暴れっぷりだ。

 しばらくしてやっと気が済んだかと思いきや、部屋の片隅に設置された通信機器に飛び付いて、どこかに連絡し始めた。


「…俺だ。いいか、よく聞け。

 『前被験体』の死亡後、クローン室にて再生作業を行なっていた『魔女』が、『新被験体』を操って逃亡した!

 首領は、被験体に攻撃され…死亡。

 繰り返す…首領は死亡ッ!!」


 やっぱり私達に責任をなすりつけたか。

 首領は明らかに銃殺されてるのに、目覚めたばかりのクローンのせいにするなんて無茶苦茶にも程がある。どうせ巧く隠蔽するんだろうけど。


「よって只今より副首領の俺が暫定的に全権を引き継ぐ。

 被験体は制御不能とみなし、殺害許可を出す。魔女も同罪だ!

 …いや、待て。可能な限り生け取りにしろ。トドメは俺自身が刺す…フハハッ!

 動ける者はすみやかに追跡し、発見次第捕縛せよッ!

 いいか? さっさとやらんと…お前らも皆殺しだァーッ!!」


 半狂乱で怒鳴りつけると、乱暴に通信機器を叩き切った。


「…よぉ〜し、これでいいんだ…これで。

 ハ…フハハ…フヒャア〜ッハハハァッ!!」


 完全に常軌を逸した高笑いと共に、副首領は勝ち誇ったようにふんぞり返って部屋から出て行った。

 その一部始終を私達全員が青ざめた顔で覗き見ていたとも知らず…。


「…やれやれ、相変わらず困ったお方だ」


 やっと静寂が戻ったのを見計らって、忍者さんが溜息とともに被りを振った。


「もうじき此処は騒がしくなるようだな…別の場所に移動しよう」





 薄暗い隠し通路を手探りで移動して…しばらくすると、やっと広くて明るい場所に出た。

 周囲が高いコンクリート壁にぐるりと取り囲まれた円形の広場だ。

 壁の前にはこれまた高いフェンスが中心を取り囲み、その上にはガラス張りの監視塔が張り出している。さながら小型の競技場かコロシアムだ。

 ずっと閉鎖された施設内にいたから時間の感覚がズレまくってたけど、頭上には眩い太陽が燦然と輝いてるから屋外で間違いない。


「外だ…初めて出られた! 風が吹いてる! スゴイ!!」


 陽射しや頬に吹きつける風の冷たさに、いちいち大げさに驚く若様が愛らしい。

 壁に遮られて風景が一切見えないから、場所の特定はできないけど…これだけ風が強いってことは、地表じゃなく高い建物の屋上だろうか?

 ということは…無事逃げおおせるには、まだまだ先が長そうだ。


「ここは俺たち御庭番が特訓場として使ってる。今は緊急事態でみんな出払ってるから、ここまで来る奴はそういないだろう」


 という忍者さんの説明に、ようやくみんな安心して警戒を解いた。

 ちなみに彼の口調は、若様の「僕にもやまぶきと同じ態度でいいよ」というリクエストにより、普段通りに戻っていた。


「では改めて…我らは首領様直属の御庭番だ。

 首領様は来たるべきこの日に備えて、若様の逃走をお助けすべく施設内の要所要所に我らを配置しておったのだ」


 それでやっと長年の謎が解けた。あの警備室に取り揃えられていた凄まじい冊数の漫画本は、決して偶然ではなく…若様が所望したから、だったんだ。

 脱走を企てた私達をすんなり通してくれたのも、首領の指示だったからか…。


「だがさすがの首領様も、副首領があそこまで露骨な態度に出ることは予想できなんだのか…身内には割とアマいお方だったからな」


 皆、再びしんみりしてしまう。

 私はたぶん、こんな展開もすべてあの人の計算の内だったんじゃないかと思う。


『必ず道は開ける。決して諦めるな』


 彼の最期の言葉が頭の中でリフレインする。

 どうせならもっと解りやすく教えてくれたら良かったのに…バカ。


「…それで…そっちのオッパイ大っきい子は?」


 切り替えの早さだけは人一倍な若様はすぐに立ち直って…私もさっきから気になってた、もう一人の御庭番に声を掛けた。


「…お初。」


 異様に少ない口数、しかも独特なイントネーション。ゴタンマじゃ珍しくないけど異国人風の顔立ち。

 衣装は忍者さん同様の現代風忍びスタイル。

 一見美男子風の切れ長の瞳に、不思議な髪色のショートカットがよく似合ってる…けど、妙に盛り上がった豊かな胸元から女の子だと判る。若様が気になる訳だドチクショウ。

 そんな塩梅でスタイルも良いし背も高いから、私達よりも少し年上だろうか?

 大人びた顔立ちは日本人離れした彫りの深さで、金髪碧眼の私とは違ってどこの人種だかよく判らない。

 この子は今まで一度も見かけたことが無いけど…?


「だろうな。コレには今まで厨房でお前たちの食事を用意して貰っていた」


 という忍者さんの説明で、今まで私が所定の場所に行くと必ず置いてあった美味しい御飯の数々を思い出した。

 あれだけバラエティーに富んだ、しかも家庭的な味を、こんなに若い子が作っていただなんて…!

 トップシークレットな存在の若様に料理人を用意するのは至難の業だ。職業柄、守秘義務には疎い人が多いし、外部の人間を雇うと暗殺等の危険が増すし。

 なので彼女のような存在は重宝がられる。


「お姉ちゃんのお料理、とっても美味しくて大好きだったな♩

 でもここを出たらもう食べられないのかぁ…残念…」


 わざとらしく寂しがる若様を、彼女はそっと大きな胸に抱き寄せて、


「…可愛くてイイ子♩」


 愛犬を可愛がる飼い主みたいに頬擦りしてるけど…その子、中身はエロ青年ですよ。鼻の下伸びてるし。


「お料理は得意だし好き。今まで家族みんなに作ってた…けどもう、私しかいない」


 かつての私みたいに無表情ながらもしょんぼりした様子のその子の肩に、忍者さんはポンッと手を置いて、


「この子の出身地はいまだ内戦中でな。家族全員が爆撃に巻き込まれて死亡し、一人生き残ったこの子は売り飛ばされ、巡り巡ってゴタンマにたどり着いた」


 想像を絶するワイルドで悲惨な生い立ちだった。


「本来なら遺伝子操作により『実験体』へと生まれ変わるところだったが…技術主任の逃亡により改造は免れた。

 そしてまた他所に転売される寸前で…その類い稀な身体能力の高さを買って、俺が引き取った」


 私も関わったしおり先生の逃亡により、幸か不幸か私達のお仲間にはならずに済んだのか。

 つまり今は忍者さんの娘さんって訳だから…今後はクノイチさんとでも呼ぼっかな。


「外国籍だしそんなはずはないと思うが…職務中に殉職したかつての相棒にして俺の女房に、面影がよく似ていたのも理由の一つではあるがな」


 忍者さんも悲しい過去を耐え忍んで今日へとたどり着いてたんだね。

 でも、他人の空似だと思い込んでるみたいだけど…

 かつてゴタンマでは優秀な人材に提供させた精子や卵子を人工授精で掛け合わせてさらに優秀な人間を生み出し、適材適所に売却するという非人道的な商売もフツーに行われていたみたいだから…あるいは?


「リーダー…厳しい。けど優しい…好き♩」


 相変わらず無表情ながらも、どことなく嬉しそうな雰囲気で、肩にあった忍者さんの手を強引に自分の胸元へと引き寄せるクノイチさん。

 『当ててんのよ』をさらに上回る『揉ませてんのよ』だ。


「コラコラ、俺ぁもぉそんな歳じゃねぇって言ってんだろ?」


「むぅ…リーダー、お堅い…残念」


 おんやぁ〜? 少なくとも彼女はいつまでも養女の立場に甘んじるつもりは無いみたいだけど…?

 なんてアットホームな空気が流れたのは、ほんの束の間に過ぎなかった。


 シュタタタタタッ…


 いったいどこからよじ登ってきたのか、視界の片隅を黒い影が横切ったかと思った直後…


「んニャアーッ!!」


 突然、頭上でカワイイ雄叫びがこだました!

 …えっ、『カワイイ』?

 皆一斉に弾かれたように顔を上げれば…

 そこにはやっぱり美幼女の姿が!?

 競泳水着かレスリングのようなコスチュームに身を包んだ、私達よりもずっと幼い印象のおかっぱ頭の小柄な女の子。

 その頭には猫耳みたいなセンサーが付いてて、鳴き声からしてもぉまんま仔猫ちゃん♩


『ぅわぁ〜カワイイ〜〜〜ッ☆』


 思わず見惚れてしまった私と若様が、こっちゃ来ーいと手招きすると、


「キシャアーッ!!」


 それを挑発と受け取ったのか、仔猫むしゅめはギョロリと大きな瞳と歯を剥いて、猫が背中の毛を逆立てるような臨戦ポーズをとった。


「アレは…!? おいおいマジでここまでやんのか…っ!」


 忍者さんが珍しく余裕を失った口調で顔を歪めた。あんなにカワイイのに、どうしてそんなに…?


「見てくれに騙されてはイカン。アレはコードネーム『キャット』…れっきとした対人用殺戮兵器だ!」


 忍者さんによれば、私達『実験体』とは別部署で研究中の、人間と猛獣の遺伝子を掛け合わせた合成人種…すなわち『怪人』だそうで。

 ネーミング通り、太古から人間社会で共存しつつも決して野性の本能を失わない『猫』のしたたかさや獰猛さが色濃く出ている。

 確かに…子供に見えても、高層階のここまで外壁をよじ登って来られるほどの並外れた運動能力を持ってはいるけど…。


「おそらく功を焦ったどっかのアホ幹部が、見切り発車的に投入しやがったんだな…。

 まだ生育途上の幼体で助かった。成体なら今頃全員とっくに挽肉にされていたところだ」


 ウソ…そんなにヤバイのアレ?

 なのにますます怒らせちゃった…。


「頭上の耳みたいなセンサーでコントロールされてるらしいが…あの年齢では制御しきれるかどうか甚だ疑問だな」


 成体なら、命令に従い続ける限り苦痛を与えられないことを悟り、こちらの指示に従うようになる。

 けど幼過ぎるとそのカラクリを理解できないため、なおさら暴れ回る危険性があるそうな。


「第一…あの見た目ではさすがに攻撃しにくいしな…」


 見てくれに騙されるなと言っておきながら…やっぱり忍者さんは子供好きってことで。

 さらに悪い事は重なるもので、アレだけでも手一杯なこの局面で…


「…ヘッ、やっぱり居やがったぜ!」「お前ら早く来い! こっちだ!」


 にわかに騒然となった場内に、ドヤドヤと何人もの人影が現れた。

 全員軍服姿で小銃を持ってる…ゴタンマの私設軍隊…!

 私達がはしゃいだせいで、たまたま近くを通り掛かった部隊を呼び寄せてしまったらしい。

 考え得る限り、最低最悪のゲストだった。





「…マズいな、全員素人だ。しかもこの人数は…火器を持ってる分迂闊に手出しできんぞ」


 連中を一目見ただけで忍者さんが歯噛みする通り、さほど知識のない私にも、軍隊とは名ばかりのガラの悪い武装集団にしか見えない。

 なのに頭数ばかり多くて、ざっと十人以上はいる。これだけの銃口を真正面から相手にするのはラ◯ボーでも無理だ。

 正規軍ならちゃんと統率が取れてて、相手が何者だろうと陣形を崩したりはしない。戦地の傭兵部隊でももう少しマシだろう。

 けれども彼らは…


「おぇおぇ何だよこりゃ? いったいどんなバケモンが相手かと思やぁ、カワイコちゃんばっかじゃねーか!?」

「パツキンにショタにクノイチに猫娘…よりどりみどりだぜヒャッハー!!」


 私達を一瞥して、年寄りと子供ばかりと判断した途端に、あからさまに油断しきった態度を見せた。なかにはろくに銃も構えずプラプラ遊ばせているナメきった輩までいる。

 所詮は金目当てで寄せ集められただけの、ろくでなしなチンピラ集団だ。

 それだけになおさら予測不能な行動を取る恐れがあるし…


「ケケッ、こりゃーそのままブッ殺すのは惜しいな…少し遊んでやろうぜ?」「ならパツキンはオレが頂くぜ!」「オレはやっぱ猫娘かな?」「スキモノだなお前ら…オレはクノイチが好みかな」「それだってガキだろ」「そういう隊長、あんたは?」「…ショタ。」「…あんた、そーゆー趣味?」


 う〜わサイッテー。どうやら端から私達を生かして帰すつもりは無さそうだ。

 副首領が「可能な限り生け取りにしろ」という指令を下したにもかかわらず。

 連中は金さえ積めば何でもやるし、常識も倫理観も皆無だからどんな悪逆非道な行為もなおさら大喜びでやらかす。

 相手が私達みたいな子供でも容赦なしだ。


「…だが、むしろコレはチャンスかもしれんぞ?」


 忍者さんがボソリと私達に耳打ち。それってどういう…と訊き返すよりも早く、


「ほらほら猫ちゃん、遊んだげるからこっちおいでヒャヒャ♩」


 隊員の一人が不用心に頭上のキャットちゃんに呼び掛けた。あっ、それマズイ…


「グルルッ…フギャアーッ!!」


 ホラ言わんこっちゃない。バカにされたと思ったキャットちゃんは牙を剥くなり、隊員めがけて飛びかかった!


「え? なっ…ぅぎゃぐぼべォアッ!?」


 鋭い爪と牙で喉を掻き毟られた隊員は鮮血を噴き上げ、なす術なくその場に倒れ伏した。その間、わずか数秒。


「おいヤベェぞこのガキャアバァーッ!?」


 慌てて銃口を向けた隣の隊員も、通りすがりに喉笛を引き裂かれてジ・エンド。発砲する余裕すら無かった。


「クソッ! まずはアイツを狙えッ!」

 ズドバガガガガッ!!


 完全にあなどっていた相手の予想外の攻撃力に騒然となった兵士達は、もはや作戦もヘッタクレもなく仔猫ちゃんめがけて闇雲に撃ちまくった。

 けど異様にすばしっこい上に身体が小さいため、なかなか当たらない。

 コンクリート壁がえぐれ、フェンスの支柱が傾き、頭上の監視塔のガラスが割れて降り注ぐなかを、キャットちゃんは余裕で縦横無尽に飛び回りながら、手頃な獲物から確実に仕留めていく。


「うぎゃあらばべっ!?」「や、やめろ、来るな…来るなぁげぼぉッ!?」「イヤだ、まだ死にたくねぇよぉ…お母ちゃがはァッ!!」


 人数の多さだけがウリだった私設軍隊は瞬く間に数を減らし、残りわずか数名。

 私達が戦わずとも勝手に自滅してくれるのは正直ありがたいけど…。

 とばっちりを食らわないよう物陰に身を潜めた私達は、その様子をつぶさに観察していたけど…キャットちゃんの一方的な圧勝だった。

 見たところ彼女の手足にはさすがに猫のような肉球や鋭い爪はなく、人間と同じ素手に素足で、壁やフェンスを器用に掴んだりよじ登ったりしてる。純粋に運動神経がズバ抜けてるんだ。

 けれども、それとは逆に…


「チキショウッなんでオレ達を襲うっ!?

 オレ達はお前の仲間だろがぁあぁアァ〜〜ッ!?」


 ごもっともな断末魔の悲鳴を残して、最後に残った隊長が倒れ…私設部隊は全滅した。


「アホか。あんなチビスケに敵味方の区別などつく訳なかろうが。

 おそらく『目の前の相手はすべて倒せ』などという単純明快な指令を受けているのだろう」


「ぅニャオ〜〜〜〜ンッ!!」


 フェンスのてっぺんによじ登って勝利の雄叫びを上げるキャットちゃんを見上げて、忍者さんが言う。

 つまり…厄介なチンピラ軍団が自滅しただけで、私達はますますピンチに陥った訳ね。


「…ぐるるぅ…っ」


 ホラさっそく目が合っちゃったし。


「先手必勝…!」ズババババッ!


 意を決して物陰から飛び出したクノイチさんが、全滅した部隊の小銃を拾い上げるなり真横に跳びつつ連射して応戦。

 こうすることで被弾面積が増えるという、どこぞの戦争アクション映画さながらの動きだけど、わずかながらキャットちゃんの回避速度のほうが速かった。


「さすがはつい最近までドンパチやってた現役だな。俺も負けてはおれんっ!」


 やたら大ぶりなコンバットナイフを引き抜いた忍者さんも戦列に加わる。

 クノイチさんの弾を避けて跳ぶキャットちゃんの行く先々に先回りして刃先を閃かせる…も、驚異的な運動性能を誇るチビッコにはかすりもしない。

 しかもあの子、大勢の兵士を相手にあれだけの大立ち回りを繰り広げておきながら、まったく息が上がってない。体力的にはもうとっくにバケモノだ。

 たった二人で寄せ集め軍隊以上の戦闘力を持つ御庭番をもってしても大苦戦を強いられるなんて…!


「でも…なるべくなら、戦いたくないよね…」


 この期に及んでまだキャットちゃんを気遣う若様の優しさには感服するけど、このままじゃ私達が倒されるのも時間の問題…

 とはいえ。

 相手が本当に野生動物なら、真っ先に狙われるのは間違いなく、私や若様のように簡単に倒せそうな相手。野性の世界には慈悲などなく、ただひたすらに効率優先だから。

 けれどもあの子は、一向に手出しをしないこちらには目もくれず、まずは武器を持った相手から優先的に攻撃してる。

 もしかしたら…自分と同じ背格好の相手とは、なるべく戦いたくないという理性くらいは持ち合わせているのかも?

 いずれにせよ、あの子をなんとか無力化できないことには…餌食になるのは私達の方だ。

 …と、その時。降り注ぐ陽光に照らされた何かが、視界の片隅でキラリと煌めいた。

 さっき兵士が銃撃で粉々に粉砕した、監視塔のガラス片だ。それが床一面に散らばってる。

 裸足で走り回るキャットちゃんの足裏が分厚い皮膚に覆われてるようなら効果は無いけど…

 生まれたばかりの幼体なら、あるいは…!


〈忍者さん、クノイチさん、私です!〉


『!?』


 突然脳裏に響いた私の『声』に驚いた二人が、チラリとこちらに目を向けた。けれども動きを休めることなく応戦し続けているのはさすがプロだ。


〈床を見てください。ココにあの子を誘導できますか?〉


《…ほぉ、なるほど!》《面白い…!》


 私の意図はちゃんと二人に伝わったらしく、にわかに動きが変わった。

 今度は忍者さんが率先してキャットちゃんと対峙し、その刃先を避けようとした先にクノイチさんが弾丸を送って、少しずつキャットちゃんの行動範囲を狭めていく作戦だ。

 咄嗟にこんな連携が出来るなんて、きっと日頃から強い信頼関係が築けているのだろう。


「ゔにゅう〜〜〜〜っ!」


 一方のキャットちゃんは、体力も攻撃力も圧倒的に上回ってる驕りからか、はたまた戦闘に不慣れな幼体だからか…無駄な動きが目立ち、攻撃モーションも大振りだからすぐに見抜ける。

 それ故なかなか決定打を与えられなくて、次第に冷静さを欠いて苛立ってきてる…

 これならイケる!


「あれ…なんかあの子、ガラスの方に寄ってってない? 裸足なのに…」


「…それが狙いです」


 若様には、あえて作戦を伝えてなかった。

 言えば絶対、


「えっ、ちょっ…なんでそんな酷いコトすんの!?」


 …こうなるのが解りきってたから。

 だから…そんな若様を、さらに利用させてもらう。


「ダメだっ!! キミ、こっち来ちゃダメだっ! ここはアブナイッ!」


『んなっ!?』


 急に飛び出してきた若様に、忍者さんとクノイチさんは慌てて攻撃を中止。


「んにゃあ〜っ!?」


 キャットちゃんも予想外の乱入者に驚いてバランスを崩し…ザクッ!!


「ふぎゃあぁあ〜〜〜〜ッ!? イタイイタイイタイーッ!!」


 いつもなら余裕で避けられるだろう床一面のガラス片をモロに踏んづけると、悲鳴をたなびいて転げ回った。

 よし…予定通り、うまくいった。

 予想通り、キャットちゃんには非力な若様を襲う気は元から無かった。

 けれども幼体とはいえ最新鋭の殺戮兵器、自らガラス片を踏むほどおマヌケじゃない。

 そして御庭番の二人もプロだから、あの子を殺害して無力化するまで攻撃の手を休めない。

 だから…若様もキャットちゃんも両方救うためには、コレしか無かった。


「…本当はこれが狙いだったんだね?」


「…ごめんなさい」


 怒ったような、それでいて悲しそうな目を向ける若様に、私はうなだれるしかなかった。

 これで彼の心を無理やり操って行動させてたら、私は完璧に嫌われていただろう。

 こうして私達と殺戮兵器との戦いはあっけなく決着した。





「でも…これでもう、あの子は戦えません」


「…ふにゅうぅう〜っ」


 ガラス片でズタズタに裂けた足の裏を抑えて泣きべそを掻くキャットちゃんからは、戦意が完全に喪失していた。

 成体なら、この程度の痛みは問題とせず攻撃を止めなかっただろう。つくづく出くわしたのが幼体で本当に良かった。


「うぅ…っ」


 先程までの剥き出しの敵意から一転して、キャットちゃんは怯えたような眼差しで私達を警戒してる。


《…殺せなかった…っ》


 彼女の悔しげな思念が、私の脳裏に流れ込んでくる。思考が単純な分、人間の心の『声』よりもハッキリ聞き取れる。


《…殺される…》


 …え?


《殺さないと…殺される。ヤダ…まだ死にたくない…っ》


 なんてことを…! 人間だったら、このくらいの年頃には絶対考えないことだし…そう考えさせるような大人もいないのに…っ。


「…どうかした?」


 思わず涙ぐんでしまった私に、若様が心配そうに尋ねた。その気遣いを少しでもあの子に分けてあげたくて…


「怯えてるんです…あの子。殺さないと、殺されるって…なんてヒドイ…!」


 ついに耐えきれなくなって、私はその場に泣き崩れた。


「…………」


 呆気にとられた顔で、そんな私とあの子を交互に見つめた若様は…

 やがて意を決すると足を踏み出した。

 …キャットちゃんの方へと。


「待て、迂闊に近づくんじゃない! 相手は猛獣なんだぞっ!?」


 忍者さんが慌てて止めに入ろうとしたけど、若様は「僕に任せて」とばかりに片手で制止し、どんどんあの子に近づいていく。


「ぅがっ!?」


 キャットちゃんもこれには驚いたように目を丸くした。この場でいちばん弱いと思ってた相手が、自ら目の前に来たのだから。


「…大丈夫、何もしないよ。ただ、手当てをさせて欲しいんだ」


 そう囁きかけて懐からハンカチを取り出し、何も仕掛けがないことを見せて安心させようと彼女に差し出す…と、


 ガブッ!!


 …案の定、思いっきり指を噛まれた。

 若様は激痛に顔をしかめ、それを見守っていた御庭番の二人も血相を変える。

 あの子の心を逐一モニターして、こうなることが判ってた私も、思わず悲鳴を上げかけた。

 けれども若様はすぐに優しい笑顔を浮かべて、


「ほら…大丈夫でしょ。ね?」


 痛みに顔を引き攣らせながらも穏やかに語りかける。


「が…ぅ…」


 彼にはまるで敵意がないことが判ったキャットちゃんは、そっと口を離すと、鮮血が溢れ出す若様の傷口をペロペロ舐め出した。

 謝罪というよりも野性の本能からの行動らしいけど、少なくとも仲間だとは見做してくれたようだ。


「…ありがとう。キミの傷も見せて…?」


 身振り手振りで問いかける若様の心が通じたらしく、キャットちゃんはおっかなびっくり、血まみれの足の裏を彼に向けた。


「…良かった、ガラスは刺さってないね」


 ホッと胸を撫で下ろした若様は、ハンカチをその傷口にあてがって縛ろうとしたけど…上手く結べない。

 噛まれた指の傷が予想以上に深くて力が入らないんだ。


「…ゴメンね。後でちゃんとやってもらお?」


 そこでいよいよ激痛に耐えかねた若様は、キャットちゃんを抱きすくめるように倒れ込んだ。

 私達も慌てて駆け寄るけど、キャットちゃんはもう逃げない。仲間をこのまま放ってはおけないと観念したのだろう。


「…一緒に行こう…よ」


 もはや息も絶え絶えな彼の口から、誰もが予想だにしない言葉が洩れた。


「はにゃ?」


 何を言われたのか解らない様子でキョトンとするキャットちゃんの耳元で…若様は囁く。


「僕が…キミを守る…から。誰にも殺させたりなんて…しないから。

 だから…一緒に行こう。

 これからは…ずっと一緒…だよ」


「ふにゃ…あ…っ」


 キャットちゃんのつぶらな瞳があっという間に潤んで…大粒の涙がポロポロ溢れ出す。

 今まで誰にも、そんな優しい言葉をかけて貰ったことがなかった…どころか、人間扱いされたことさえなかったんだろう。


「うにゃあ〜〜〜〜んっ!!」


 若様にしがみついて泣きじゃくる彼女の姿は…やっと年相応の子供そのものだった。

 こうなればもう、誰も異論を挟める訳がない。

 幸い彼女はまだ幼いし、人間の中で暮らせばちゃんと人間らしく育っていくことだろう。

 こうして私達の逃避行に新たな同行者が加わった。





 忍者さん達が携帯していた応急処置セットで若様とキャットちゃんの怪我を治してから…

 私達はまた秘密通路に潜って、ひたすら歩き続けた。

 地下から屋上、そしてまた地上へと、物凄い高低差で遠回りしてる感じだけど…

 どうやら忍者さん達は当初、屋上から敷地外までパラシュートで一気にダイブして逃走するプランを立てていたらしい。

 けれどもトップシークレットのキャットちゃんまで投入してきた敵の本気度…てゆーかマジに後先考えないトチ狂いぶりに危機感を覚えた彼らは、大幅にプランを変更し、地道に通路を這う安全策を採択した。

 そりゃ、万一降下中を狙われちゃったら身動き取れないし、若様とキャットちゃんの二人も負傷者抱えちゃったしね…。

 とゆー訳で今は、若様は忍者さんがおんぶ、キャットちゃんはクノイチさんが抱っこしてる。

 二人ともかなりお疲れなご様子でウトウトし始め、キャットちゃんに至っては寝ぼけてクノイチさんのおっぱいをチューチュー吸い出す始末。


「一応お聞きしますけど…お乳、出ます?」


「出るわけない。私はまだ子供。歯が先っぽに当たって痛い…けど、なんか幸せ♩」


 ぬぅっ、私にはおそらく一生縁がないオンナの幸せってヤツですか…ぐっすん。


「できれば本当に出したいし吸われたいし赤ちゃんも産みたい…」


 トンデモナイ願望を吐露しながら忍者さんに熱視線を送るクノイチさん。見た目は私よりちょっと年上なだけなのに、オトナだなぁ♩


「だから俺は…

 …まあ、ここから無事脱出できたら考えてやらん事もない」


 おっとぉ!? 忍者さん、まさかの根負け。

 でもそれって、逆に言えば此処から逃げ出すのはそれだけ困難ってことだよね…。


「あの…今さらだけど、どうしてここまで私達に協力してくれるんですか?」


 という私の問いかけに、忍者さんは「悟られちまったか…」と苦笑して、


「それが『彼』の指示…いや、意志だからな」


 忍者さんの家系は先祖代々、首領に仕えてきたそうで、彼とも旧知の仲だった。

 幼い頃には彼と副首領の兄弟の武術教官も務めるなど、かなり信頼されていたらしい。


「彼の格闘センスはなかなかのもので、すぐに教えることも無くなった。

 …まあ、生まれつきチートすぎる能力に恵まれていたからな」


 とはいえ、いくら未来が予測できたとしても、それに即応できるだけの高い判断力や身体能力がなければ活かしようがない。

 それを首領は人知れず地道な努力でモノにしていたんだろう。…彼はそういう人だ。


「それに引き換え、弟の方は…

 と、幼い頃から比較され続けてきたせいで、あのお方はすっかりコンプレックスの塊になっちまってな」


 副首領…。若様にお仕えするようになってから、私は彼を便宜上『叔父様』と呼ぶようになった。

 でも彼の方は終始、私を敵視して…人間扱いすらしていない。

 そうなった原因を作ったのは私だけど…そうするように懇願したのは、しおり先生…ゴタンマの生体技術主任。

 そして…叔父様の恋人。

 私は…彼女の要望通り、彼女のすべての記憶を消し去って、ゴタンマから逃した。

 そこにどんな意図があったのか…当時の私には興味も関心も無かった。

 ただ、言われたままに従っただけ…。


「叔父様…副首領は、その、そんなに…?」


「ダメダメなのかって?」


 あ、言っちゃった。


「んにゃ、そんなことないぞ。頭脳も運動神経も人並み以上だし、見た目だってそう悪かないだろ?」


 ですよねー。さもなきゃしおり先生がなびくはずがない。あの人、相当な面食いだったし。

 でもそれ以上にイケメンな首領のことは、全部見透かされてるみたいで怖いって言ってたっけ。

 …あれ? でも、そう言えば…?


「首領のあの能力って、遺伝じゃないんですか?」


「ああ。どういう経緯かまでは知らんが、後天的なものと聞いてる。現に先代にも無かったし、副首領にも…その子にも無いだろ?」


 確かに忍者さんが言う通り『未来予測』は若様には受け継がれていない。

 じゃあ、どうやって発現させるつもりだったんだろ?

 

「とにかく副首領は、極々フツーの組織なら充分トップに着けるだけの素質を持っている。

 ただ、ココがフツーとはかけ離れた場所で、比較対象がバケモン過ぎたってだけだ。

 ココにはアレくらいのレベルの奴はゴロゴロいるしな」


 え〜と、地元校じゃ神童扱いされてた優等生が東大に入った途端に埋もれてグレた挙句、色々やらかしてニュース沙汰になって、別の意味で神呼ばわりされるよーなもんスか?


「そーそー、そんな感じ。

 …まさか本当にそーなっちまうとは思いもしなかったがな」


 首領はいつその時が来ても良いようにと前々からお膳立てしてたから、さほど驚かずに済んだという。

 そこまでして若様や私をゴタンマから逃したかった理由って…いったい何なんだろう?


「その首領が身内に殺られたとあっちゃ…こんなトコ、俺達もそろそろ潮時だからな」


 忍者さんが仕えるのは首領の『家柄』ではなく、あくまでも『首領』そのもの。なので正統後継者ではない副首領に仕える義理はないんだとか。


「だからお嬢ちゃん達には悪いが、俺達は協力ってより、むしろそれを利用して逃げようって魂胆なんだ…自分達のためにな。

 これで余計な恩義は不要だろ?」


 まったく、この人は…いつも清々しくて気持ちがいい。クノイチさんが惹かれるのも解る気がする。


「…ダメ。浮気。絶対。リーダーは私の。」


 盗りませんよクノイチさん、私には若様がいるし。どっかの標語みたくなってるし。

 てゆーか心理操作のプロの私の心理読まないで!


「…はて、おかしいな? とっくに中枢を突破してもいい頃合いだが…いつもの通路と道順が違うぞ?」


 やおら忍者さんが首を捻った。私が与太話を持ちかけたせいで道を間違えた…りする訳がないよね、プロなんだから。

 するとクノイチさんが冷静に、


「さっき、いつもは閉じてる隠し扉が開いてて、代わりにいつもの道が閉じてた。

 …誘い込まれた」


「…なんで早く言わん?」


「言ってもムダ。この周辺はアレのテリトリー。

 それに…危害を加えるつもりは無いっぽい」


 私にはサッパリ要領を得ない話だけど、忍者さんにはそれで通じたようで、やれやれと被りを振って、


「…『ニャオスリー』か。」


 あ、ソレなら聞いたことがある。ゴタンマの施設を一括管理し、なおかつ各種事業や実験計画など…ゴタンマの活動意思にも深く関わっている万能生体AI…それがニャオスリー。

 たいがいのコトはトップシークレットなゴタンマ内でも、その存在はさらなる厳重機密で、極一握りの人間しか実態を見たことがないという噂だけど?

 なにしろこの私や若様、キャットちゃんも相当なトップシークレットだというのに、今まで一度もお見かけしたことないし…。


「それなら丁度いい。アレが会いたがってるのは間違いなく…お嬢ちゃん達だぜ」


 ですよねー。三人勢揃いしちゃってますしね〜。


「…という訳なので、私からお会いしに来ました」


『ッ!?』


 突然…本当に唐突に、間近から呼びかけられた私達は文字通り度肝を抜かれた。

 いつの間にか通路脇の物陰に忽然と立っていたのだ…その『少女』が。

 御庭番の二人でさえまったく気配に気づかなかったほどの、まるで幽霊みたいな現れ方で。

 まず目を引くのは、紺碧のチャイナドレス。

 背丈はスラリと高いけど、東洋人風の顔立ちはまだ幼くも見えるし大人びても見える。

 頭髪を左右で大きなオダンゴに結って。

 いかにも利発そうな切れ長の瞳を、フレームレスの丸眼鏡で覆って。

 そんな感じの、どこから見ても典型的な中華美人だけど…どこかで見たことあるような?


「まさか…コレが…?」


「はい。あなた方が『ニャオスリー』と呼称するのは、紛れもなくこの私です」


 …人間だったんだ…!?





「いえ、正確には人体をベースに、脳髄を量子コンピュータ化した一種のサイボーグです。

 …冷めないうちにどうぞ」


 隠し通路のさらに先にあったニャオスリー専用の隠し部屋に案内された私達は、なぜだか中国茶道の接待を受けていた。

 量子コンピュータ化か…道理で心が読めない訳だ。私の精神操作能力は通常の生体にしか効果が及ばないから…。


「すやすや…」「んにゅにゅ…」


 部屋の奥の仮眠用のベッドには、まだ熟睡中の若様とキャットちゃんが仲良く並んで寝かされてる。こうして見てると本当の兄妹みたい。

 …カワイイ♩


「先代…母が台湾生まれですので。こういった環境の方が落ち着きます」


 生体コンピュータなんていうから、もっとSFチックでメカニカルな部屋を想像してたけど…

 室内は一言で言って中華街の料亭みたいな造りで、家具から調度品から照明から…何もかもが中華風だ。


「へぇ…って、母!? あ、あの…生体コンピュータなのに母親がいるんですか?」


「いますよそれは。私、元は人間なので。

 ちなみに母は『本業』の方が忙しくなってきたので、このほど娘の私が任務を引き継ぎました」


 本業?…と聞いて、やっと思い当たった。

 先代って確か、現日本国総理大臣・美岬首相…あれ、涙音はのん首相だっけ?の第一夫人にして、台湾の大手企業グループ総帥・福海鳥フーハイニャオ女史じゃない!?

 グループ内では何でか『ニャオツー』って呼ばれてたらしいけど…その一人娘だから『ニャオスリー』か…割と単純なんだ。


「…って、あの、じゃあ…首相の娘さんが人体改造されて、ゴタンマで働かされてるってコトですか!?」


 仮にも一国の代表者の御家族になんてコトを!?


「というよりも、私は元々そんな目的で、母の遺伝子を九十九パーセントコピーして作られた人工生命体です。とはいえ出産や生育過程は人間と大差ありませんが」


 なぜ完コピではないのかというと、この世界のシステム上まったくの同一個体の同時存在は認めらず、先に存在した方が死滅する恐れがあるからだそうで…。うん、よく解んない♩


「父はゴタンマのスポンサーの一人ですし、私がここに居るのは私自身の意志です。

 愛する父のためなら、私はすべてを投げ打っても構いません」


 ぅわぁおぅ。波音首相って、それまで一夫多妻制を認めてなかった日本の法律変えちゃってまで何人もの奥さんを娶ったことで有名だけど、愛娘にまで溺愛されてるだなんて…。


「なので日本国民であるあなた方にエライコトやらかしてるのは、むしろ父の方ですが…国民の義務だと思って諦めてください。

 すべては世界の未来のための尊い実験ですので」


 まんまどっかの悪の組織みたいな歪んだ正義感に取り憑かれた誇大妄想じみた弁明だけど、実際ゴタンマってそんなトコだから仕方ないか。


「世界の未来…ですか?」


「はい。有り体にいえば、世界はとっくに進化の極みに達しており、後は滅びを迎えるのみ…。

 それをせめて少しでも引き延ばそうという悪あがきですね」


 具体的な話は、おそらくこの場の誰も理解できないだろうとして説明しては貰えなかった。

 波音首相は学生時代にこの事実を知ってトチ狂っ…いやいや、自分の生涯をかけて取り組もうと、今日の地位にまで登り詰めたそうな。

 なんか、若かりし頃にどハマりした新興宗教から足抜けできないまま今日まで来ちゃった人みたいな…。


「ココで行っている『超人創造計画』もその一環です」


 あーもー聞かなくても想像できる。どっかのアメコミの読みすぎだってば…。

 そこでの先代ニャオツー及び現ニャオスリーの担当は『遺伝子操作』。

 その結果生み出された私達が持つ特殊能力は、もちろん生物本来の正統な所有能力ではなく、言ってみれば『バグ』みたいなモノだそうで…それ故にどこをどういじくればどんな能力が発症するのかは、いまだによく判ってないという。

 最初は末端の一研究員としてゴタンマに入ったしおり先生は、それらを初めて体系的にまとめ、能力の発現傾向を予測した功績が認められて、研究部門の最高責任者に大抜擢されたんだとか。

 私はその分析を元に開発され、初めて狙い通りの能力を得られた貴重な成功例なんだそーで…道理で先生が可愛がってくれた訳か。


「しかし、その彼女も今はもういません」


「…………」


「私がもっと実験研究に専念できれば、解明の機会も早まるかもしれませんが…両親からは『学業を疎かにするな』と強く言われておりますので、たまにしか顔を出せないのが難ですね。

 ちょうど私の出社日にあなた方が脱走を決行してくれたのはグッドタイミングでした」


「はぁ、それはどうも……ってアレ?

 もしかしてニャオスリーさん…学校に通ってるんですか?」


「はい。只今中学生です。学校生活も大切だから、飛び級は認めないとの父の方針で」


 愛娘の将来をちゃんと考えてる割には、人体改造は施しちゃうのね…首相。

 でもいいなぁ、ちゃんと外の世界に出られてるだなんて…首相の子だからってエコ贔屓…。


「そして…やまぶき。貴女は母の任務期間中に生み出された最高傑作と聞いてます。

 今までの貴女は施設内に幽閉されていたため、顔を合わせる機会に恵まれませんでしたが…こうして実際に会えて光栄に思います」


 まったく嬉しそうには見えない無表情を貫きつつ、今さら握手を求めてくるニャオスリー。この人もずいぶんマイペースに生きてるってゆーか…。

 じゃあ私を此処に招待したのも、単に会いたかっただけ…?


「いえ。貴女には、少々忠告を…と思いまして」


 そこでニャオスリーは、傍らのベッドで眠る若様に目を向けた。…なんだか嫌な予感。


「…彼にはこれから外の世界で色々学んでもらう必要があります。これは私の父と、彼の『父』…先代首領の共通見解です」


 首領はもちろん、首相まで?

 ということは…若様の逃亡は以前から織り込み済みだったってコト!?


「ですが…やまぶき。そこに貴女の存在は良い影響をもたらしません」


「…ッ!?」


 た、確かに若様を甘やかしすぎたかなーって自覚はあるけど…そんなにハッキリ言われてしまうとショックでしかない。


「貴女の役割は、彼に生涯の目標を与え、自立のきっかけを作ること…。

 貴女は見事にそれを果たしました。正直に言って、予想以上の効果でした」


「…だからもう、私は用済みってコト…?」


「いいえ。それだけの潜在能力を秘めた貴女を放っておく手はありません。

 貴女には、これから新たな職務に就いてもらい、ココを…ゴタンマを変革して貰わねばなりません。

 …次期首領。」


 な、何? 彼女は何を言ってるの?

 私が…次期首領!?





「…ということは…僕とやまぶきは一緒には行かせない、ってことかな?」


「若様!?」


 いつの間にか目を覚ましてニャオスリーを睨みつけていた若様が、ゆっくりベッドから起き上がる。


「悪いけど、それは聞けないよ。僕はこれからやまぶきと、ずっと一緒に暮らすんだ…!」


「…貴方がどんなに成長しても、彼女は永遠に今の姿のままですよ。世間一般では明らかに不自然な存在です」


 それは私も若様も最初から解ってる。けれども…!


「故に長期間一箇所には留まれず、絶えず居場所を転々とし続ける流浪の生活を送らざるを得ない」


 …っ!? そ、そうか…たとえゴタンマから出たとしても…私達は、安定した生活とは無縁なんだ…。


「そして、彼女よりも貴方のほうがずっと先に寿命を全うするかもしれない…。

 それでもですか?」


 若様がいない世界…。

 先ほど、一時でもそれを実感して、どうにも耐えられなかったというのに…。

 いざ。そうなってしまったら…私は…。


「…そんなことは覚悟の上さ!」


 若様…?


「それでも僕はここから出ていく!

 そして外の世界で、やまぶきと、この子と…みんなで一緒に暮らすんだ!

 先のことなんて判らないのに、今から考えたってしょうがないだろッ!!」


 やっぱり…彼は首領とは違う。

 未来なんて判らない。それでも…

 …ううん。だからこそ、その先を恐れずに進んで行けるんだ。

 私は、そんな彼のことが…。


「それでも邪魔するってんなら…キミみたいにカワイイ子を傷つけるのは不本意だけど、仕方ないよね…?」


 自らに言い聞かせるように唇を噛んだ若様の言葉を汲んで、忍者さんがナイフに、クノイチさんが小銃に手を掛ける。


「あらかじめ言っておきますが、私にはあらゆる物理攻撃は無効ですよ。自動防御機能オートガードシステムが働いてますから」


 何そのどっかで聞いたよーな便利機能!?

 ズッコ!


「電脳化されてますから、やまぶきの精神操作も効かない…ですよね?」


 くっ…見抜かれてる…っ。

 たぶん彼女、まともに戦ったらゴタンマ最強だ…!

 というよりも…彼女自身が『ゴタンマ』そのものなんだ…!

 もう少しというところで、満を持してのラスボス登場とか…いつになくオーソドックス過ぎない?


「そこまで警戒しなくても、邪魔するつもりはありませんよ。行くならさっさとどうぞ。

 …行けるものなら、ですけど。」


 そこはかとなく悪意に満ちた言葉尻と同時に、眼鏡の奥の鋭い眼がギラリと冷たい光を放つと…いきなり周囲の景色が変わった!?

 直前までニャオスリーの自室にいたはずなのに、急に開放的になって…というか、屋外!?

 いったいどういうカラクリなのか、私達は一瞬で外に放り出されていた!

 屋上にいたときは真上にあった太陽もずいぶん西に傾いて、辺りはそろそろ暮れなずんでる。

 私達がいま立っている場所は広々としたロータリーになってて、その外周には背の低い樹木が植えられ、背後には巨大なビルが聳え立ってる。典型的な大企業の社屋の風景だ。


「まさか…物体転移テレポーテーション…!?」


「おいおいバカ言うなって。そんな映画じみた技術が確立されてるだなんて聞いたこともないぞ!」


「映画じみた存在なら、もうソコに」


 クノイチさんに指差された私や若様と一緒に、忍者さんも「ゔ。」と言葉に詰まる。

 でもさすがにそんな物理法則を捻じ曲げるほどのオーバーテクノロジーは…


「ニャオスリーならやりかねない。

 …ホラまた」


 と、クノイチさんがまたもや指差す方を見れば…ワンテンポ遅れて、残るキャットちゃんが忽然と虚空に出現したところだった。

 それまで眠り呆けていたフカフカベッドが急に消えて、地べたにビタンッと叩きつけられた彼女は「ふみ゛ゃっ!?」とカワイイ悲鳴を上げて跳ね起きた。

 なんで一人だけ遅れたのかは知らないけど…一度に転送可能な人数に上限でもあるんだろうか?

 そして肝心のニャオスリーの姿はない。

 逃げられたのか、こっちが見逃してもらったのか…?


「それはさておき、ここは…?」


「ゴタンマ社屋の真正面だ。表向きはマタンゴグループとなっているがな」


 ここが…!? 長いこと棲んでたのに、自分の居場所を生まれて初めて外側から見た。

 そして若様は…もはやそんなモノに興味はなく、正反対の方向をキラキラお目々で見つめて、


「…街だ…!」


 え? あっ、本当だ…街並みが見える!

 社屋は人里離れた小高い丘の上に建っていた。道理で屋上の風当たりがかなり強かった訳か。

 そこから街は割と離れてはいるけど、歩いていけない距離でもない。

 …こんなに近くに…私達が望んだものがあったんだ…!


「お喜び中のところ悪いがな…あの性悪チャイナ娘が、そうすんなり行かせてくれると思うか?」


 若様と二人して目を輝かせていた私に、忍者さんの無粋な横槍が飛んだ。

 えっ、親切に逃してくれたんじゃないの?

 だってホラ、すぐソコに正門が…


 ビー!ビー!ビー!ビー!

《不穏分子発見! 不穏分子発見! 総員速やかに出動せよッ!》


 唐突にけたたましい警報が鳴り響き、社内放送が大音量で乱れ飛んだかと思いきや、にわかに場内が騒然となり…


「…いたぞー!」「ターゲットだ!」「拘束しろ! どんな手段を使ってでも構わん!」


 ぅわーっ!? 蜂の巣つついたみたいに警備員や私設軍隊が大量に湧いて出た!


「ホレ見たことかッ!」


「ラスボスを取り逃した後の怒涛の雑魚ラッシュ…無理ゲー。」


 あんっのチャイナ娘! 邪魔しないとか言ったくせに、思っきし邪魔してくれちゃってんぢゃんっ!!


「ど、どーすんですかコレぇ!?」


「判りきったことを訊くなッ! 逃げるんだよダッシュでッ!!」


「はにゃにゃあ〜〜〜〜っ!?」


 忍者さんの号令一下、一目散に逃げ出す私達!

 しかし…


「ぇえいっ…構わんっ、発砲を許可するッ!!」


 不穏な怒号が聞こえたかと思った直後、パンパンチュンチュンと耳障りな音が背後で轟き始め…間近の樹木が葉っぱを撒き散らして弾け跳んだ!

 実弾ッ!? こんなの躱わせっこない…!


「とにかく走れ、なるべく身体を大きく左右に揺さぶりながら! 連中は大半がド素人だから、よっぽど運が悪くなけりゃ当たらん!」


 そ、そんなこと言われたって…ゼェハァ…私、駆けっこは大の苦手…!


 チュインッ…ズブァッ!!


「あ゛…っ?」


 またも間近に着弾する音が聞こえた瞬間、突然激しい衝撃と痛みが脚を貫いて…急に力が抜けた私はその場に倒れ伏した。


「え…あれ…?」


 恐る恐る痛みの原因を探れば…脚の肉が大きく抉られて骨が見えていた。

 どうやら私はとことん運が無かったらしい。

 たまたま付近に着弾した弾丸が跳ねて、私の脚に見事に命中したんだ…。


「やまぶきっ!?」「にゃにゃあっ!?」


 若様たちが驚いて振り返る…その光景がにわかに曇り始めた。

 私は泣いていた。どうして私だけこんな…?


「イカンぞ坊主、立ち止まるなッ!」


「そんなこと言ったって…!」


 忍者さんと若様が言い争ってる。私のせいで。

 でも、私はもうこれ以上は走れない。

 このままじゃ、若様まで…。


「…若様…行ってください」


「やまぶき…?」


「残念だけど…ここでお別れです」


「…い、嫌だ…ダメだよそんなのっ!」


「私の分まで…生きて…!」


「そんなこと…出来るかァッ!! キミがいなゃ何の意味もないんだよ、やまぶきッ!!」


 嗚呼…若様はいつだってお優しい。

 そして…いつも私の言うことを聞いてなんかくれない。

 それなのに…いつも私のことを一番に考えてくれる。自分のことなんて二の次にして。

 なるほど…確かにニャオスリーの言う通り…


 …私は彼の足枷にしかならないんだ。


 それならもう…私に出来るコトはこれだけ。

 今まで若様には一度も使ったことが無かったけど…使いたくなんて無かったけど…仕方ない。


「…若様…ごめんなさい。」


 私は彼に在らん限りの念を送った。

 彼が無事にここから逃げられるように。

 彼が他の皆と幸せに暮らせるように。

 彼のそばに私がいなくても大丈夫なように。


 彼が…私を忘れるように。


「やま…ぶ…?」


 …効いた。

 直立不動で呆然と佇む若様を、駆け寄ってきた忍者さん達が羽交締めにして抱き上げる。


「嬢ちゃん…いいのか?」


「はい…もう定員いっぱいみたいだし」


 若様もキャットちゃんも、屋上で負った傷がまだ癒えていない。それを忍者さんとクノイチさんがそれぞれ抱きかかえたら…やっぱり私が余る。

 第一、こんな重症の私を背負って逃げようとしたら、皆んなの負担になるだけだ。

 それに…どうせニャオスリーは意地でも私を逃さないだろう。


「…さようなら」


 涙ながらに別れを告げた私に…忍者さんとクノイチさんは深々と頭を下げて、くるりと背を向けた。

 ただ一人…彼らに背負われた若様だけが、不思議そうに私を見つめ続けている。

 そして…


「…ねえ、父さん。あの子……誰?」


 …っ。

 解ってる、自分でそう仕向けたのだから。

 それなのに…どうしてこんなに悲しいんだろう?


「知り合い? どうしてあんなトコで寝てるの、危なくない? ねぇ、父さんってば…」


 私の方をしきりに振り向きながら、忍者さんを質問攻めにして…若様たちはどんどん遠ざかっていく。

 銃弾の雨が降りしきる夕暮れ時の景色の中を、どんどん…どんどん小さく…。


「さようなら…若様。」


 怪我の痛みと出血で次第に朦朧とする意識のなか…私は静かに呟いた。





「…起きろッ!!」


 怒鳴り声と共に頭から冷水をぶっかけられて、私は驚いて跳ね起きた。

 途端にガシャンと大きな金属音が鳴って、手首と足首、そして撃たれた脚の傷に痛みが走る。


「ぅあ…っ」


 苦痛に悲鳴を上げつつ周囲を確認すれば…薄暗く埃っぽい小部屋の中。

 その天井から鎖で吊るされた手枷に私は繋がれていた。足首にも同様に鎖が繋がれてる。手足が完全に封じられれば、自力ではまず逃げられない。


「やっと起きたかね寝坊助魔女」「フヘフヘフヘ…」


 狐目で痩せぎすな、いかにも狡猾な警備員と、それとは真逆に筋骨隆々で髭むじゃらの、いかにもおツムユルめな警備員コンビが、私に嘲笑を送っていた。

 狐目の手には鞭、髭面の手には水滴したたるバケツ。水を掛けてくれたのはコイツか。

 そして傍らの机の上には太い針やペンチ、メスや注射器が並んでいる。

 一見して理解した。ここは取調室…ううん、拷問部屋だ。

 私はこれから彼らに尋問されるらしい。


「さあ答えろ。他の連中はどこへ逃げた?」「ゴフゴフゴフ?」


 叩き起こされるなり質問攻めか。

 尋問役は狐目だけで、髭面は終始不気味な笑いを浮かべてるだけ。てかマトモに話せるかすらアヤシイ。戦争アクション映画でよく見かけるパターンだ。


「…知らない」


 嘘じゃなく本当に知らない。街に出たところで何処へ行くべきか解るわけないから、御庭番たちに案内してもらうつもりだったし。


「フム…もう一杯シャワーするかね?」


「いえ結構ワプッ!?」


 謹んでご遠慮申し上げたのに、言語が理解不能な髭面がさっそくブッカケてくれた。


「ククッ、水も滴るイイ女とはよく言ったものだな」


「それはどーも」


「いや本当さ。幼い割にはなかなかにそそる身体付きだな」「ゲヘゲヘゲヘヘ♩」


 言われてよくよく自分を確認すれば、ずぶ濡れの衣類が身体にピッタリ張り付いて透け透けだった。

 下着は下しか履いてないから、若様にしか見せたコトないわずかばかりの胸がブラウス越しにハッキリくっきりと…!

 クッコロ…じゃなくて、こんな奴らは…!


「おっと、精神操作は使わせんぞ?」


 ふにょっ。狐目の骨ばった手が無遠慮に私の乳房を鷲掴んだ!


「ひぃっ!?」


「フフフ…幼いクセに感じてるのか淫乱魔女?」「ムハムハムハ〜ッ?」


 不快すぎる感触に身震いしただけで、何やら盛大に誤解してくれちゃってるし!


「貴様が精神操作を行うには多大な集中力を要することぐらいお見通しだ。この状況で使えるものなら使ってみたまえ?」「ゲラパッハー!」


 くぅっ…悔しいけどその通りだ。こんな不快な目に遭わされたら、それどころじゃない。

 しかも私の能力は基本的に個人が相手だから、一度に二人は対応不能。

 さらに言えば…一般的には髭面みたいに単純な相手の方が操り易いと思われてるけど、実際は真逆だ。

 ロッククライミングを想像すればよく解るだろう。ツルツルで掴み所がない単調な絶壁よりも、適度に凸凹がある岩肌の方が攻略し易い。

 その登り易い方が、今まさに私に狼藉を働いてくれてるから、取っ掛かりすら見出せない…さすがによく研究してきてる。


「だが、この私にも好みというものがあってだね…こんなお子様然とした不毛で無毛な肉体を弄ぶよりも…」「ハァハァ…♩」


 もはや尋問は何処へやら、ひたすら無礼な不満を口にしつつも(てか誰が無毛よ!?)、ちゃっかり私の身体をムカデのように這い回ってた狐目の指先が…次第に銃弾を受けた脚の傷へと向かう。ヤバイ…!


「子供の頃のカエルの解剖の興奮が甦る、こっちの傷の方が好みだねぇ…!」


 ぢゅぷ…っ。狐目の伸び過ぎな手の爪が、いまだろくな治療もなく放置されっぱなしな脚の傷を掻き乱す!


「◯△⬜︎☆◇%〒@〜〜〜〜ッ!?」


 言葉にならない悲鳴をたなびき暴れ回る私の姿に、狐目の不快な高笑いと髭面の豪快な馬鹿笑いが重なり合って、凶悪に耳障りなハーモニーを奏でた。


「ヒャハハハ泣け!喚け! いくら騒ごうがもう、お前に救いの手は差し伸べられんぞ!」


 その通りだ。ここにはもう、若様はいない。

 忍者さんもクノイチさんもキャットちゃんも…首領も…

 もう、誰も…助けてくれないんだ。


 …私…また…

 独りぼっちになっちゃった…。


「…ぅ…ぁぁ…ひっく…ひぃっく…」


 ズキズキ痛む傷口に、なんともいえない悔しさや悲しみや切なさが渾然一体となって…

 さっきまで一緒にいたはずの皆んなの優しい笑顔が、もう…遥か昔に見た儚い夢のように思えて…

 涙が後から後から、堰を切ったように止めどなく溢れ出てきた。


「ヒャヒャッ、今さら泣き落としかね? 泣いて許されるのは子供だけだぞ、ナンチャッテ幼女!」「ギャラバハハハァーッ!」


 目の前で泣いてる女の子にさらに追い討ち。

 コイツら絶対モテないだろ…地獄に堕ちれッ!


「…やれやれ、悪趣味だねぇ。こんないけずなオッサン達にはお仕置きが必要だにゃ♩」


 そんな私のドス黒い祈りが神か悪魔に届いたのか、突然どこからともなく耳慣れない猫撫で声が高らかに響き渡った。


「ムゥッ誰だッ!?」


 狐目の怒鳴り声に呼応するように、いきなり天井にビキビキッとヒビ割れが走ったかと思うと、私の腕を吊り上げていた鎖の留め具がボコっと崩れ落ちた。


「いかんっ、オイッ!」「フンガァッ!!」


 慌てて指示を飛ばした狐目に従って、落下する留め具をナイスキャッチした髭面は、それを力尽くで天井に刺し戻そうと両腕を振り上げた。

 イヤどー考えても無理でしょ、さすが頭のネジゆるゆる!

 するとその両手首を…ゴガァッ!と天井に空いた大穴から突き出た細腕が掴み取るなり、その華奢な腕っぷしからは信じられないほどの怪力で引っ張り上げた!


「ふぬがグギャゴベェア〜〜〜〜ッ!?」

 ベキバキグシュゴキャッ!!


 髭面の図体ではそんな細穴を通り抜けられるはずもなく…天井に叩きつけられた彼の身体は、深海に沈みゆく一斗缶のようにひしゃげ、断末魔の悲鳴とともに形を歪に変えていく。

 やがて…排水口に溜まったゴミのようにグシャグシャになった髭面の身体はボロっと天井から剥がれ落ちて…ぐちゃっ。

 無様な人間お好み焼きとなって床にへばりついた。


「ヒヒヒィ〜〜〜〜ッ!?」


 目の前で変わり果てた仲間の姿に顔面蒼白となる狐目に、謎の声はなおも、


「そっちのオッサンはカエルの解剖が大好きなんだニャ?」


「あ、いや、そこまで好きという訳では…」


「遠慮しなくてもいいニャアッ!!」


 ゴバアッ!!と天井が大きく崩れて、何者かがコンクリート塊でサーフィンしながら上階から降ってきた!

 そのままの勢いで瓦礫に押し潰された狐目は…プチャッ☆

 悲鳴を上げる間もなく、まさに解剖されたカエルのように身体を引き裂かれて、車に轢き潰された死骸のように床にぶち撒けられた。こっちは人間の原形すら残らず、まるでもんじゃ焼きだ。


「ひ、ひぃ…っ!?」


 引き攣った息が洩れる。

 確かにこんな奴ら、死ねばいいのにとは思ったけど…ここまで惨たらしい死に様は願ってない。

 と、そこへ、天井からヒラリと小柄な人影が飛び降りてきて…


「大丈夫だった…訳ないにゃ?」


 いきなり現れた謎の銀髪少女が、初対面だというのにやたらフレンドリーに話しかけてきた。

 忍者さん達と同じ御庭番の格好はしてるけど、常識外れな怪力にモノを言わせた力任せな戦い方には戦慄しか覚えない。

 キャットちゃんとはまた違う、仔猫みたいにつぶらな瞳が眼前に迫る。


「ぴっ!?」


 助かった…なんて思える訳がない。直前まで憎たらしい笑いを浮かべていた警備員たちを一瞬で八つ裂きにした相手なのに…!

 緊張が一気に限界を超えて…私の下腹部から生温かい感覚が滴り落ちるのを実感した。


「えっちょっ!?…あ〜ぁ、やっちゃったにゃ?」


 慌てふためいた少女が苦笑するのを見て、やっと緊張はほぐれたけど、今度は失禁を見られたことへの恥ずかしさと情けなさと、やっと助かったらしいと思えた安堵感がごちゃ混ぜになって…


「ふえええぇぇぇ〜〜〜〜っ!」


 私は年甲斐もなく大声を上げて泣いた。見た目こそ同じくらいの年齢だけど、精神的には私の方がずっと年上だというのに。


「あっあっ…参ったにゃあ…」


 今度こそ本気で困り果てた様子の彼女は、私が泣き止むまでずっとそばについててくれた。





「あー、この格好は『(仮)』だにゃ。一番動き易そうだったからテキトーに選んだだけで、ボクは御庭番じゃにゃいにゃ」


 お人形さんみたく愛らしい見た目に反してボーイッシュで活発な性格の銀髪少女は、やっと泣き止んだ私の質問に答えながら、私の手足を繋ぎ止めていた鋼鉄製の鎖を、雑草のように素手でブチブチ引きちぎっている。

 小柄な体格を勢いでカバーしていたキャットちゃんとは真逆に、パワフルすぎる身体能力を華奢な見た目でカモフラージュしてる感じだけど…キャットちゃんといいニャオスリーといい、猫属性多すぎない?


「…よし、全部外れたにゃ。それじゃあ行こっか、やまぶきちゃん?」


 そして当然のように私のことを知っている。偶然ではなく最初から私の救出に来てくれたらしい。

 床にへばりついてる二塊りの挽き肉をあっさり殺害したところを見ると、半副首領派で間違いないと思うけど…御庭番じゃないなら、何者?


「…あ、自己紹介がまだだったかにゃ?

 ボクはしろがね。営業部所属にゃ♩」


 ハイ予想外すぎる答えキター!

 どー考えても営業の仕事の範疇超えちゃってるでしょコレ!?


「今回はさる人から、やまぶきちゃんが壊されちゃう前に連れ戻してくるよう依頼されたにゃ」


 壊され…。確かにあのままだったら色んな意味でメチャクチャにされちゃってたかもしんないけど。


「あ、代わりのパンツも持ってきたから、ちゃちゃっと履き替えちゃって♩

 汚したのがやまぶきちゃん自身で良かったにゃ☆」


 ううっ、なるはやで忘却の彼方に追いやろうとしてたのに…。

 しかもこのパンツ、本当に私の愛用品だし…。もう私にプライバシーは無いのね?


「さぁ履こう今履こうすぐ履こうにゃ♩」


 ずるぺろりんちょ☆

 何の前触れもなく私のパンツが引きずり下ろされた。


「ひょえいっ!? ひひ一人で履けますからっ!」


 そして今また大切なモノを奪われました…。

 若様にしかお見せしたコト無かったのにィーッ!!…ぐっすん。


「見た目は幼いのに、ソコだけけっこーオトナにゃ♩ いっぱい愛して貰ったにゃ?」


「おだまり♩

 で、あの…『さる人』って?」


「副首領。」


 …もう少しでせっかく履き替えたパンツを引きちぎってしまうところだった。

 あの男ッ…私達を本気で殺しにかかったかと思えば、今度は恩着せがましい真似を…っ!

 一体全体どーゆーつもりなのッ!?


「ああうん、言いたいコトはよく解るにゃ。

 でももう安心にゃ、ニャオスリーに怒られて殺すのはやめたらしいから♩」


 憤慨ブリバリな私の様子に気圧されて、しろがねちゃんは慌ててフォローを試みたけど…もはやどこにも一ミリたりとも安心材料が無いんですケド!?

 しかもニャオスリーの名前があっさり飛び出したし…本当にいったい何者なの、このしろがねって子は!?


「…その点についてはご安心を。彼女の身元はこの私が保証します」


 ビリッ。またしても何の前触れもなく忽然と背後から出現したニャオスリーに、私の代わりに履きかけのパンツが悲鳴を上げた。

 ううっ、お気に入りの一枚だったのに…。


「をっ、ニャオスリーお久にゃ♩」


「さっき顔を合わせてから小一時間も経ってませんが」


「…出たな中華饅頭。頭のお団子捻り潰してアンコ搾り出しちゃろかい!?」


「…そう言う貴女こそ、下着の布地がほつれて具が見えてますが?」


「具ってゆーなッ! 誰のせいですか誰の!? よくもまあ臆面もなく…っ!」


「では、コレはお詫びということで。」


 …ん? パンツの履き心地が良くなった…

 って、破れた箇所が直ってる!?


「…相変わらず魔法みたいな能力を使いますね」


「魔法と科学は同一ですよ。単に破損箇所の時系列を巻き戻しただけです。無機物の場合は構造が単純ですから。

 ですが覆水は盆には返りませんので。流体の計算は結構手間ですし」


「覆水ってゆーかオモラシにゃ♩」


 やかましわぃっ!


「その調子で、こうなるまでの状況ももう一回やり直させてくれます?」


「私があと四千九十五人くらい居れば、ある意味可能かもしれませんが…スタンドアローンではこれが限界ですね」


 つまり頭数さえ揃えば歴史も生死も超越できるってサラッと言っちゃってるし。


「わざわざここまで出向いてきたってことは…本気だったんですね?

 私を首領に…って話。」


「はい。前首領なき今、ゴタンマはいとも容易く崩壊してもおかしくない危機的状況にあります。

 その瀬戸際を、後先顧みない癇癪で全てを台無しにするような輩に任せてはおけません」


「…そこまで御立腹なら、どうして副首領をあのまま野放しにしておくの!?…ですか?」


「敬語はもう結構ですよ。これから立場的には貴女が上司になりますし」


 沸々と沸き上がる私の怒りを知ってか知らずか、ニャオスリーは自分をへりくだらせて、


「…あのような者でも今後の重要なファクターに成り得る可能性があるのです。

 今回の経緯共々、何卒ご容赦を…」


 一切頭も下げず表情も変えず、訳わかんない擁護に終始するニャオスリーだけど、これは…謝罪と受け取って良いんだろうか?


「無論、貴女を首領に推挙した責任とフォローは最大限担わせて頂きます。

 前首領の絶大なカリスマに匹敵するだけのポテンシャルを持ち合わせた者は…やまぶき。貴女以外に有り得ません」


「でも私、大勢の人前に立ったことなんて無いし、たぶん叔父様よりも気が短いけど?」


「でしょうね。そこは致し方ないかと」


「ムッ…」


「うわホントに怒りっぽいにゃ!」


 ケタケタ笑うしろがねちゃんにはますますムカつくけど…ここまで言われてしまえは、もう後には引けないんだろうな〜と思わざるを得ない。


「じゃあ、その前に…この脚の傷をなんとかしてくれる? けっこう痛いん」「治しました」


 全部言い終わらないうちに、脚の傷が跡形もなく消えていた。何なのこの人、万能じゃない…!


「この程度であればお安い御用です。

 身近に手頃な素材も転がっていましたし」


 素材…?

 何気なく床にへばりついたままの警備員の死骸を見たら…少し欠けていた。

 まさか…いやいや、もぉ何も考えない!


「それから…ううん、何でもない」


 言いたいことは山ほどあったけど、寸前で言葉を引っ込めた。


"若様に会わせて"

"若様が幸せに暮らせるようにして"

"若様の夢を叶えてあげて"


 全部若様に関する願いばかりだったから。

 そして…それはきっと、人任せにするようなことじゃなくて…

 私と若様が、それぞれ自分で実現させるべきものだから。


「では、首領の件は了承ということで。」


 しまった、拒否る機会を逸した!

 でもどーせ断っても強引に就任させられるだろうし、使い物にならなきゃ諦めるだろう。


「ゴタンマの長い歴史において、貴女は史上初の女性首領となります」


「え゛。それってやっぱりナメられたり…?」


「めっちゃナメられるに決まってるにゃ♩」

「この組織で、見た目がソレなら当然かと」


 ううっ。なんでそんなにハードル上げまくるの?


「ですので貴女には、就任式のついでにちょっとした『イベント』をこなして頂きます」

「ソレでナメる奴は人っ子一人いなくなるはずにゃ」


 うーわーなんかメンドイこと言い出した…。


「御心配なく。貴女は基本的に座っているだけでOKです」

「他のことはボクらに任せるにゃ!」


 とか言ってる時に限って実際めちゃシンドイのは、もぉフラグだし…。


「それでは、私からアドバイスを。

 貴女は貴女。前首領の方針を無理に継承する必要はありません。

 …どうせ出来ないでしょうし」


 ゔ。


「貴女に期待するのは『変革』です。

 ご自分が思うように、存分にやってみてください。先ほど申し上げた通り、フォローは私共が致しますので」


 私の思い通りに…。


「はい。ゴタンマの全ては…やまぶき。貴女のものです。」


 …そう、私はもう独りぼっちじゃない。

 ニャオスリーがついてるし、まだ信用はできないけどしろがねちゃんだっている。

 他にも味方が必要なら、自分で増やせばいいだけだ。

 だから、私は…


「…わかった。私、やってみる!」


 ゴタンマの首領に…私は、なる!!


「モロパクにゃ」「モロパクですね」


 ううっ…最後まで締まらない…っ。




【第十話 END】

 前回えらいこっちゃなトコで終わってた過去編第二弾です。

 もちろん今回もさらにえらいトコで終わります(笑)。

 さりげに新キャラも登場してますしね。存在をコロッと忘れてたので、慌てて引っ張り出しました(笑)。

 プロットとか書かないもんで。全部頭の中に入ってるので、こーゆーコトはよくあります。…結局入っとらんやんけ!

 ニャオスリーの先代がニャオツー…ってことは初代もいるの?と勘繰った人は、世界観が共通している前作『はのん』をどーぞ。

 てな訳で、あまり内容に触れるとネタバレしてしまう要素が多々あるので多くは語れませんが、一見カワイイだけに思えてその実かな〜りヒネクレてる首領様がいかにして形成されていったのかがお解り頂ければ幸いです。


 実は過去編は今回で終わる予定でしたが、思いの外というか案の定というかボリューム過多につき次回も続きます。無計画にも程がある(笑)。

 サブタイトルのネタも尽きたし、どーしましょ?

 ちなみに前回の『黄昏炉理』は大昔の深夜アニメから。

 その当時には深夜アニメなんてほとんど存在せず、のっぴきならない事情の作品のみが深夜帯に放送されとりました。つまり、そゆコト(笑)。

 それから十数年後に制作された、アイドルものになってしまった続編とはだいぶん違います。

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