第一話-満月-
高校生の妄想です。
本の勉強などは一切していません。
暖かい目で見ていただけると幸いです。
不定期ではありますが、たくさん続話を出す予定です。
満月が浮かんだ夜。
空気も澄んでいて、雲ひとつない、最高の夜だ。
しかし、彼はそんなことは気にしない。
基本的に、自分に直接関係する事以外には興味がないのだ。
少し前、いや、大分前までは、そんなことは無かったのだが、ある出来事を境に、そうなってしまった。
ただ、そうなっていなかったとしても、今の状況ではどの道、夜空のことなど気にかける暇はないだろう。
彼はある組織に所属している。
人数は少なく、これといった目的があるわけでもないし、メンバーは全員、ただの寄せ集めと言っても過言ではない。
そんな組織は今、慌てふためいている。
まだ実害が出たわけではないが、いつ出てもおかしくはないだろう。
「今夜は月が綺麗ね」
彼こと、黒羽 霞の隣を歩く小柄な女性が話しかけた。
背丈は中学生ぐらいで、ショートカットの髪、背中にはギターケースを背負っている。
彼女も組織の一員だ。
「そうだな。たしかに綺麗だ」
黒羽は空を見上げずに、そう答えた。
「せめて上を向いてから言ってちょうだい」
彼女こと、惑 蓮華は、頬を膨らませ、拳に少しだけ力を加えた。
「っ…あいつだな」
足取りを止め、目の前を通る男に視線を移す。
この男こそ、組織に悪影響を及ぼしかねない存在なのだ。
年齢はおそらく、30代後半〜40代前半といったところだろう。
「Aで行く?Bで行く?」
Aとは、プランAの事だ。
プランAは、できる限り友好的に接触し、穏やかなまま話を終わらせるというプラン。
プランBは、限りなく敵対的に接触し、手っ取り早く話を終わらせるプランだ。
一応この2つのプランを用意しているが、2人とも、選択肢は最初から決まっている。
「もちろん、Bだ」
そういうと黒羽は、物凄いスピードで男の下へ走り出した。ように見えたが、実際はジャンプをしただけだ。
距離は十数メートル離れているが、一瞬にしてその距離をゼロにした。
「っ!なんだおまえは-」
「黙れ」
黒羽は容赦なく、男の腹に拳を殴りつけた。
「ぐはっ!!」
ジャンプをしてから着地はしていない。
そのため、かなり勢いのついた拳が男の腹に沈んだ。
普通の人間なら、この時点で気絶、運が悪ければ死んでいただろう。
しかし、この男は黒羽と同じように、普通の人間ではなかった。
「このやろう!!」
怒号を浴びせ、殴りかかってきた腕を掴む。
「うおらぁぁ!!」
男は腕を掴んだまま半回転し、そのまま黒羽を投げ飛ばした。
しかし、黒羽は音もなく地面に着地し、即座に片手で銃を構えた。
「っ、お前、メドレーか!?」
黒羽はそれに答えることなく、銃のトリガーに指を掛け、力を込める。
予想外なことに、銃声はほとんど聞こえなかった。
聞こえたのは、男の悲鳴と、悶える声だけだった。
「まずはこちらの質問に答えてもらおう」
「くそがっ…」
「お前、どこの組織に所属している」
「り、リベリオンだ」
[リベリオン]とは、黒羽たちが所属する[メドレー]と同じように、超能力者のみで構成された組織だ。ただ、共通点はそれだけで、規模や活動内容は全く違う。
細かいことは分からないが、少なくとも、1万人以上の人間が所属している。かなり大規模な組織だ。
「嘘をつくな。リベリオンは基本、単独行動をしない」
「き、今日はたまたま、単独任務だったんd-」
黒羽は、男の嘘に呆れてもう一発銃弾を撃ち込んだ。
「うがぁぁ!!!」
「急所は外してある。そんなに叫ぶな。せっかく静音性能の高い銃を使ってるんだ。意味がなくなる」
「お、お前とは違って、俺にはちゃんと痛覚があるんだよ!!」
それを聞いた途端、黒羽はさっきまでとは比にならないほどの、重い空気を纏った。
「なぜ、それを知っている?」
「っ…」
「俺の能力を知るのは、第1〜第3世代までの人間だけだ」
「…」
男は顔を伏せ、何か考え事を始めた。
かと思った瞬間、男は手のひらサイズの「何か」を黒羽に投げつけた。
が、しかし、宙を舞う「何か」を惑は見逃さなかった。
いつのまにか構えているスナイパーライフルのトリガーを、一切の躊躇なく引いた。
撃ち出された銃弾は的確に、宙を舞う「何か」を貫いた。
「ば、化け物が!」
「次はあなたの番よ。でも安心して。痛みは一瞬、即死だから」
「そろそろ吐く気になったか?」
「ぐっ…」
男は顔を青ざめ、葛藤している。
「わ、分かった。話すから、銃を下ろしてくれ」
「…いいだろう。ただし、少しでも怪しい動きを見せたら殺す」
そういうと、黒羽と惑は銃を下ろした。
「お、俺たちは-」
そこで言葉は途切れた。
「おい、どうした」
明らかに様子がおかしい。
言葉が途切れたと同時に、男は白目を剥き、そのまま倒れ込んだのだ。
「蓮華、念の為銃を構えておいてくれ」
「分かった」
男の容態を確かめるため、黒羽は少しずつ歩み寄る。
「…ダメだ。死んでいる」
「っ、どういうこと?」
「さぁな。毒ではないだろう。ただ、それしか分からない」
「近くに能力者はいるか?」
惑はそっと目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませる。
「…いないわ。何らかの能力による他殺だとしたら、一定の条件下で発動するタイプの能力ね」
「そうか、分かった。とりあえず、この死体を持ち帰って死因を調べよう」
黒羽はようやく夜空を見上げた。
しかし、あまり心地は良くなかった。
男の原因不明の突然死と因果関係があるかは定かではないが、寒気を感じた。
特に首筋と、胸の辺りに。
黒羽くんの好物はコーヒー。
惑ちゃんの好物はラーメンとクレープ。




