Epilogue
『久し振りだったね、サユ。とっても美味しいお肉をありがとう。言わなきゃいけないことがあるんだ。実は急な用事が出来てしまってね、一時的に〈黒犬〉を辞めることになった。既にサキには話は通してあるし、実は予てからサキにお願いされていたことなんだ。だから、本当に急で悪いけどこれからはサユ、君がキャップだ。それと、ずっと見ていたけど新入りの子も強そうじゃないか。私のことは探さなくてもいい、必ず帰るからね。それじゃ、また』
通信が途絶えた。
夕衣さんの声だった。そして、夕衣さんはなんと〈黒犬〉を辞めたと言う。これからは私がこの部隊のキャップとして皆を引っ張っていかなければならない。
「聞こえてるか、分からないですけど言わせてください。──絶対に帰ってきてください」
恐らくもう、私の声は彼女に届かないのであろう。泣きたい気持ちを堪えて、私はニコちゃんの所へ歩き出した。新しいメンバーと、新しい自分。
ガラガラっ──。
「痛っ……」
何かを後頭部に投げつけられた。地面に落ちたそれは、エキサイティングストロベリー味のガムのボトルだった。蓋にマジックで文字が書かれていた。──『当たり前! 藍なら出来る!』と。
全く、どれだけガムを投げつければ気が済むんだよ。
空を見上げると、雲がこの街から昇っている煙と同化して仄かに赤みを帯びていた。
決して綺麗とは言えないトリウォールの空に、私はふっと溜息を吐いた。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
このお話は長編作品を賞用に改訂した読み切り版ですので、長編版はまたいつか投稿できればいいなと思っています。
その時はまた、よろしくお願いします。