3.リスエテ州南ネーブルにて
今のこの命は、恩人である総司令官に捧ぐもの。
だから、仕事は完璧にこなすねん。
「お前らが〈緋熊〉か。監禁してる少女はどこだ」
敵のアジトはあの副隊長のデータをジャックすればすぐに見つかった。
予想通りその場所には、大勢の屈強な男たちがたむろしていた。
「誰だよお前」
「〈黒犬〉や。監禁してる少女を早く差し出せ。さもなくば殺す」
相棒のフェイトアスタを構える。
この銃は崖っぷちの銃である。一度その引き金を引けば、引いた本人が望んだ人間を一発で殺すことができる。しかし意図せず引き金を引いてしまったとしても、相手は死んでしまう。生かすことも殺すことも、この銃がその運命を司っている。
「新入りか。黙れ」
男の一人がそう言って、ウチと鏡写しのように銃を構えたので、セーフティを外して躊躇なく引き金を引いた。
しかし――。
気が付けば、ウチは男たちに捕らわれていた。手に縄をかけられ、猿轡で口も塞がれて。
頭が真っ白になった。
スクールで主席だったウチがこんな醜態を晒すなんてこと、これまでに一度だってなかった。
「あれあれ、ニコちゃん? もしかして捕まっちゃったの~?」
――なんで、お前がここにいるんだ?
「助けに来たよ」
バカみたいな笑顔で、副隊長は私に告げた。