3話 少女、際会す
「でさー、やっぱり今1番熱いのは獣の魔法少女だと思うんだよねー」
「わたしはやっぱり麗人の魔法少女のスクレ様が…」
…
「あ〜、あの男装の?真央ずっと好きだよねあの人」
「うん、今は親が厳しいけど…大人になったら、いつかあの人の担当地区に住みたくて」
…
「ねえ真央、あれさ…」
「仕方ないよ、だってアフリニャードさんとのツーショットが手に入ったんだもん」
ツーショット、そうツーショット。アフリニャードはその知名度から広報にも引っ張りだこだが、忙しさのためファンサービスなどに割く時間はとても短い。そのため会話するのでさえ大変珍しいのだ。それが、今私の手元にはアフリニャードとのツーショットがある。
「あ、またにやけてる」
「早く食べないと昼休み終わっちゃうよ〜」
「もう少しだけ〜」
「まったく…」
もう3度ほどこのやり取りをした気がするが仕方ない。そこまで人を笑顔にできるアフリニャードが凄いのである。
「でももうすっかりファンだね」
「それなー。昨日「ファンになっちゃったかも!」なんてメッセージ見た時には、まさか!と思ったのに」
「確かに。翼芽ちゃんって魔法少女は好きだけど、誰か一人を単推しするってイメージはあんまりなかったから、ちょっと意外」
「まぁあの魔法少女のカリスマに助けられたら仕方ないけど」
「アフリニャードさんだもんね」
その通り。確かに私は魔法少女を全体的に好きだったが、単推しというような雰囲気ではなかった。そのため2人の会話は逆に興味深く、魔法少女業界の魅力の幅広さを楽しんでいた。しかし、昨日の鮮烈な経験をしてしまえば、そんなスタンスは取れない。それほどまでにあの光景は眩かった。脳に焼き付き、離れない。そして、いつか私も…
「うわっ、どうしたの!?」
今、何を考えた?思わず勢いよく顔を上げ、真央を驚かせてしまった。何か言わなくては。
「2人は、さ、魔法少女になるのってどう思う?」
「「え?」」
つい口走ってしまった。このタイミングでは恐らく
「まさか、魔法少女になりたいの!?」
「確かにアフリニャードに憧れて始める人は多いけど、でもそんな」
やはり思われてしまった。
「違う違う、今朝隼陽にからかわれたの!魔法少女なればいいのにって、もちろん私はなる気ないけど、もしなるとしたら、もしもの話!」
そう、隼陽が全部悪い。こんなこと言われなければ、あんな気の迷いなんてしなかったのだ。
「あ〜、なるほど?」
「もしもかぁ…それこそわたしはクオリちゃんみたいに、可愛い服で魔法少女したいなぁ」
「あたしは絶対ゴツイ武器持ちたい!バカでかい武器ぶん回して、ロスター共をなぎ払う!」
「ほえー、みんな具体的」
「翼芽ちゃんは?」
「私、は………人を笑顔にできる魔法少女になりたいかな」
「…なんか、抽象的すぎて逆にガチ感あるな」
「ちょっと小紀ちゃん!」
「あはは…あんまり個人単位で魔法少女に詳しくないから」
「まぁ、でも実際魔法少女は厳しいだろ」
「やっぱりそうだよね、わたしの家も親の許可が出ないと思う」
「真央の家はまず無理だろうな。ウチは…どうだろう、月給70万って言えば納得してもらえるかも」
「え、そんなに貰えるっけ」
「おう、しかも最低70万だからアフリニャードの年収なんか計り知れんな。まあ死亡率20%に比べちゃ安いと思うけど」
「それだよね…しかも魔法少女になったら忙しくて学校も行けないし」
「アフリニャードとか私たちと同年代だよな?3年前だから、小6から魔法少女やってて…それであんだけ戦ってるって、何もんだよって話だな」
「でも魔法少女って10歳からなれたよね、ほとんどの人が高校生や大学生から始めてるけど」
「魔法少女になるための試験自体は難しくないから、もしかしたら受験落ちたやつ等が魔法少女で食ってこーってなったのかもな」
「それは有り得そう。なんなら私もそれになるかも…」
「翼芽はどーせあたしより頭いいだろ。むしろあたしの方が先になると思うぞ、来年とか」
「もぅ、2人とも勉強頑張ろうね」
そんなことをしている間に昼休みの終わるチャイムが鳴る。急いで残りのお弁当をかきこみ、5時間目の体育に向けて準備をする。更衣室で着替えを済ませ、グラウンドへと足を運んだ。
「あ、やば。私グラウンドジュース教室に忘れてきた。ダッシュで取ってくるから、2人は先行ってて!」
「分かった、先生に遅れるって言っておこうか?」
「お願い!」
再度教室へ向かうと、案の定誰もいない教室にグラウンドジュースの入った袋がかけられていた。
「よし、と」
ジュースを取った瞬間、窓ガラスが吹き飛んだ。
鳴り響く轟音とガラスの割れる音、ガタンガタンと音がするのは吹き飛ぶ教卓と机達だ。風圧で壁に激突しながら何とか頭を守る、轟音に遅れて、校内放送が流れてきた。
【ロスター発生、ロスター発生。学校内にいる生徒は直ちに校庭へ避難してください。繰り返します。ロスター発生…】
ロスターは、私の目の前で、半分吹き飛んだ教室の代わりに浮いていた。




