2話 少女、魔法少女を語る
何とか余裕を持てる時間に校門前へたどり着くことができ、見慣れた後ろ姿の2人組を見かけて声をかける。
「真央ー!小紀ー!おはよー!」
「翼芽ちゃん」
「おはよー」
小柄な真央と高身長な小紀が振り返る。間違っていなくて良かった、と心の中で息を吐くが顔には出さない。
「今日も遅刻ギリだったよー」
「まぁ間に合ったし、気にしなくていいでしょ」
「ねぇ…それよりさ、昨日送ってきたメッセージ!アフリニャード見たってマジ!?」
小紀は、興味んしんしんといった顔でこちらを見てくる。彼女は写真部兼魔法少女ヲタクなので、きっと生で会ったというのは、人一倍気になることなのだろう。
「うん、凄かった!ふわっふわのドレスをバサッて羽みたいにまとって、真っ白の衣装を少しも汚さずロスターを圧倒してた!」
「い〜な〜いーな!!写真は!写真とかないの!?」
「その時はぼけーっとしちゃってて、とりあえず記念に戦った後の現場の写真を…」
そう言って2人に今朝見た写真を見せる。
「いやこれただの事故現場の写真じゃん!」
「だって助けられた後話しかけられたんだよ!?そんな本人にカメラ向ける余裕なんてないよ!」
「まぁ、最近だとあんまり戦闘後の現場は見ないし、珍しいと思うよ」
真央がフォローを入れてくれる。確かに、最近では技術の発展で、戦闘後の現場も1時間もあれば元どうりになる。そのためテレビぐらいでしか跡地は見なくなってはいるのだが
「いやそれでもアフリニャードの写真のが見たいわー」
当たり前である。そもそも需要が違う。跡地を見て喜ぶなど、よほどマニアックなファンでないと無理だろう。
「あれ、でも隼陽これみてテンション上がってたな…」
「隼陽って、翼芽ちゃんの弟だっけ?」
「うん、まぁアイツは漫画とかもバトルシーンが好きなタイプだから、こういうのも好きなんだろうけど」
「はーあ、あたしも会いてー。そしたらこの一眼レフで絶対最高の1枚を撮るんだから」
「小紀ちゃんならほんとにやりそう。ウチの地区だと、はぁとの魔法少女のクオリちゃんとか会えるかも」
「クオリちゃんって確か真央の推し魔法少女だったよね。私あんまり詳しくないんだど、どんな子?」
「えっと、衣装が量産型をモチーフにしてて、とにかく可愛いの!メイクとかもめちゃくちゃ参考になるし、憧れって感じだな〜。あ、所属会社の公式サイトにプロフィールもあるから、興味あるならぜひ!」
「確かにクオリあたりは頑張れば会えんことなさそう。確か真央、チェキとかサイン持ってたろ」
「うん、クオリちゃんはファンをほんとに大事にしてくれてて、アイドル的なイベントも多いの。だからあんまり会うのは難しくないと思うよ」
「そこなんだよなー、やっぱり中々会えない人ほど撮りたい欲が疼く…的な?だからこそ、アフリニャードに会うなんてそうそうないんだけど」
そう言われてまた顔がにやけてくる。普通魔法少女というものは、担当する地区が決められており、1つの地区あたりに3人の魔法少女が担当するのが理想的とされている。
しかし魔法少女は憧れる人数に対していつだって人手不足だ。理由はその仕事の圧倒的な危険度にある。本人がやりたくても親の同意が得られないなど、危険な仕事はそれだけ多くの弊害が付きまとう。そのため、単独で多くの戦闘をこなせるアフリニャードに決められた地区はなく、人手の少ない場所を毎日回ってロスターを倒している。
昨日出会えたのだって、私達の地区には件のハートの魔法少女しか担当が居ないためなのだ。
「やっぱ教室騒がしいな、まあ昨日他にもアフリニャード見た人が居るんだろうけど」
小紀は躊躇無く教室の扉を開けた。
「あ、翼芽じゃん!なあなあ、お前昨日アフリニャードに話しかけられてただろ!?」
教室に入るなり、遠慮なく話しかけできたのはクラスメイトの谷口くんだった。臆する私に、すかさず小紀が前に出て助け舟をくれた。
「おい谷口〜、教室入って開口1番それはないだろ〜。もっと段階踏め段階」
「あ、ごめん翼芽。おはよ!」
「お、おはよう谷口くん」
「いや俺昨日ロスターが街へ来てたじゃん?実は俺その場にいてさ、やべぇって思ってたらアフリニャードが来て!ロスター倒したと思ったら誰かに話しかけてたから覗いたら、お前っぽい人がいたーって話をしてたんだ。あ、これ証拠の写真!」
写真には確かに昨日の場所で、アフリニャードが私へ話しかけている写真があった。
「な、これお前じゃね?」
「うん、それ私だ。ね、良かったらその写真送ってくれない?」
なんということだ、偶然にも私とアフリニャードの写真を持っている人がいたなんて。
「え、別にいいけど。お前写真撮らなかったの?」
「緊張して撮るの忘れちゃってて…」
なんせこっちは本物のアフリニャードと話していたのだ。緊張でそんなことは忘れてしまっていた。
「アホだなー。でも本物のアフリニャードだし、仕方ないか」
そう言うと谷口くんは「クラスのグループの入ってるよな」と確認して写真を送ってくれた。
「良かったね、翼芽ちゃん」
「うん、アフリニャードとツーショットだ、嬉しい…!」
帰ったら隼陽に自慢してやろう。そんなことを考えながら、思わずスマホを胸に抱きしめた。今日は1日笑顔でいられそうだ。そんな気がする。




