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魔法少女のお勤め  作者: めこめこさん
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1話 少女、魔法少女を想う


ジリリリリリリリ


めざまし時計の音ではね起きる。時計を止めながら、携帯のアラームよりもやはり古き良き目覚まし時計の音の方が、緊迫感があり目が冴える…などと考え、あることを思い出し、携帯を確認する。


「夢じゃなかった…」


覚醒してきた意識の中、昨日のロスターとの邂逅。そして魔法少女、アフリニャード・ウェールズに助けられ、話したこと。事細かに思い出せるそれらは、あの後記念に撮った崩れた現場の写真が現実であることを証明していた。


今思い出しても顔がにやける、まさかあの、あのアフリニャードが私に顔を向けて、「大丈夫?」なんて、そんな


翼芽(つばめ)ー!早く降りてきなさーい!」


美しい回想は、母親の怒号でかき消された。まあ朝の時間は少ない。学校の準備をしないといけないのは最もなことなのだけれども。


自分の部屋を出て、階段を降りていくと、いい匂いがしてきた。


「姉ちゃん聞いてよ、朝ごはんお蕎麦だって」


「いいじゃんお蕎麦、美味しいし」


「いや、でも朝から蕎麦だよ?なんて言うか、フツーお昼に食べるもんじゃない?」


隼陽(はやひ)!文句言わず食べる。ほら翼芽も顔洗ってきなさい」


「はーい」


私、堀澄翼芽(ほりすみつばめ)の、当たり前の朝の光景。ただ1つ違うのは、私はいつもより少し、いやかなり浮かれていた。



食卓はかけそばが出ていること以外はいつも通り、父は新聞を見ながらそばをすすり、弟はテレビを見て食べる手が止まっている。母は自分の分の椀を下げ、食卓から見えるキッチンでお弁当の制作に取り掛かっていた。


「ほら、隼陽。早く食べないと遅刻しちゃうよ」


「食べてるって、言われなくても」


「テレビばっか見てたでしょ!食べないならお姉ちゃんが食べちゃうぞ〜」


「姉ちゃんもう俺の3倍はあるじゃん!太るよ!」


「女の子に太るとか言わないの!」


「それにしても食べ過ぎだよ!」


「まぁ、翼芽はよく食べるから見てて気持ちいいじゃないか」


「お父さんいいこと言う!」


そう言うと父は立ち上がり、流しへと椀を下げた。


「美味しかったよ、毎朝ありがとう」


「お粗末さまでした」


毎日きちんと礼を伝える父はしっかりしていると思う。私もお蕎麦ををかきこみ、先に食べていた隼陽よりも早く椀を片付ける。隼陽はと言うと、私の注意も無視してまたテレビを見つめていた。


「姉ちゃんさ、アフリニャードに会ったんだよね」


再三うるさく注意しようとするとそんなことを聞かれた。昨晩、あまりの興奮に家族全員に自慢して何があったか事細かに話したのだ。父と母は魔法少女に対し、あまり詳しくないのでぼんやりとした態度だったが、隼陽はアフリニャード・ウェールズの凄さをよく知っていた。


「俺も見たかったなー、戦ってるアフリニャード」


「翼芽も話してたけど、そんなにすごい人なの?その、アフリニャードさんって」


「ちょっとお母さん!昨日も話したじゃん!アフリニャード・ウェールズっていうのは、魔法少女ランキングで、ずっと1位をキープしてる人なの!」


魔法少女にもランキングがある。町中の監視カメラに記録された映像から、AIが自動で戦闘の貢献度を測り、ポイントを割り振るそうだ。更に、市民の投票から得たポイントも合わせ「週間ランキング」「月間ランキング」「総合ランキング」が決められていく。他にも地区ごと、全国、全世界と細かな区分けがされるのだが…


「アフリニャードは魔法少女制度が始まって以降、全世界の総合ランキングに長い間不動の1位とて降臨してるの!しかも基本1年半で引退する魔法少女に対して、アフリニャードは3年!最初の魔法少女として現れて、ずっと魔法少女業界を引っ張ってる、超、超超すごい人なの!」


「合ってるけど、姉ちゃんってそんなにアフリニャードのファンだっけ」


「昨日気になって調べてて…調べれば調べるほどこんなにすごい人に助けられたんだなーって」


「まぁでも、翼芽は小学生の頃から魔法少女が好きだったからね」


「ちょっと!お母さん」


「俺も覚えてる、姉ちゃん目キラッキラさせてさ、私も魔法少女になるんだーって」


「いや私もう中学2年生だから!そりゃ、すごいなーって思うけど、受験とかも考えないといけないんだし。今は憧れって言うよりかは、ファンだよファン。見て応援したいの!」


「ふーん、なればいいのに。魔法少女」


「え?」


「だってアフリニャードって姉ちゃんと同い年じゃん?なれると思うんだけどな」


固まる私を背に隼陽は「ごちそうさま」と椀を下げる。


「まあ姉ちゃん鈍臭いしムリか」


「は〜や〜ひ〜!」


「早く準備しないと遅刻するよー」


煽るだけ煽って部屋へ戻ってしまった。全く、無理だと思うなら最初から言わないで欲しい。しかしテレビには出発10分前の時刻が表示されており、ムカつく気持ちを抑えて慌てて部屋へと戻る。


パジャマを脱いで、セーラー服に袖を通しながら先程の会話を思い出す。


「なればいいのに…なんて」


無責任だ。魔法少女になるということは、それだけ昨日のような死線と隣り合わせになる。魔法少女の死亡率は全職業の中でもトップクラス、20%だ。土曜日にお昼のワイドショーなんかみたら、必ずと言っていいほど魔法少女の存続について話し合われている。そのため魔法少女はいつでも人手不足だ。だからといって、魔法少女がいなければ私たちは生きてはいられない。


「昨日のあれも、『ロスター』だよね」


テレビでは散々やっているが、実際ロスターに襲われたのは初めてだ。


3年前、突如として現れた高密度のエネルギー体。地球上のいたる所から現れ、周りの全てを破壊していく。そんな、物語の敵キャラのような存在。初めて現れた脅威に、警察などの既存の平和維持制度では太刀打ちできず、自衛隊を待っていれば被害は拡大していく。絶体絶命のその状況、突如として現れたのが


「アフリニャード・ウェールズ…」


何度思い出してもため息が出る。もちろん感嘆のだ。きっとその時も昨日のように人々の希望となったのだろう。今でも思い出せる。日本を起点として突如現れたロスターに対抗するように魔法少女が生み出され、世界中がアフリニャードと魔法少女に夢中になった。小学6年生の頃はテレビでその姿を何度も見て憧れたものだ。


「でも今は…」


教科書を鞄へ詰めていき、時計を確認して自分の置かれた状況を再確認する。


「時間やば!」


ドタドタと慌ただしく階段を下り、「行ってきまーす!」と残して家を出た。鞄を両手で抱え、前屈姿勢で学校へかける。

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