閑話‐ミーアゼルクの神、ルナシェナ
カズキがポポイの訓練を必死で受けている頃、ミーアゼルクの神界では.....
「ルナ様?どうしたんですか?急にひっくり返ったりして?.....後、下着が丸見えですよ?何ですか?私に見せてるんですか?痴女なんですか?私にそんな趣味はないので少しも嬉しくないのですが?むしろさっさとしまってくれません?」
「違うわよっ!ってかあんた、仮にも私の眷属でしょうがっ!助け起こすなり心配するなり少しぐらいはしなさいよっ!!何でサラっと主を痴女扱いしてディスってんのよっ!!私だってそんな趣味ないわよっ!」
ルナと呼ばれた女性はそう言いながら立ち上がると、乱れた衣服を整えながら倒れた椅子を引き起こした。
「心配ですか?当然してるの決まってるじゃないですか?ルナ様が痴女に目覚めたらどうしようって」
「そういう心配じゃないわよっ!」
ルナは机をバンッと叩きながら天使族の女性に少し強く言葉を投げつける。
「ハァ~.....もういいわ.....全く、何でマイエルはこんなに口が悪いのかしらね?」
ルナはため息を吐きながら椅子に座る。
「さぁ?私を創造したのはルナ様なので、ルナ様のせいでは?.....それで?突然ひっくり返って、何があったんですか?」
「ぐぬぬっ.....その通りなんだけど何か納得出来ないわね.....コホンッ。別に大した事じゃないわよ.....突然私の信者から邪悪な気配の祈りが届いたから驚いただけよ.....」
その祈りの主の正体はニーナである。
このルナ、ルナシェナは今のミーアゼルクを管理している女神であり、ミリアからミーアゼルクの管理を押し付けられた女神でもある。
そして何を隠そう、ミリアの妹でもあるのだ。
「ほらっ、この娘よ」
ルナがそう言うと、机の上にホログラム映像のようにニーナの姿が映し出される。
「この娘が.....ですか?一体どのような邪悪な思想を?」
「う~ん、祈り自体はそこまでじゃないのよ?ただ兄と仲良くなりたいって普通の祈りだったし.....」
「別に問題ないのでは?至って普通の祈りでは?」
「そうなんだけど.....何て言えばいいのかしらね?もっと、こう.....ドロッとしたような、深淵に引きずり込まれるような、よく分からないけどとても強い邪悪な波動を感じたわ。まるで関わっちゃ駄目なような気配が凄くしたのよ」
「.....ハァ?」
「私だってよく分からないわよ!とにかく、それでビックリしてひっくり返っちゃたのよっ!」
「よく分かりませんが.....ならその信者を切ってしまえばいいのでは?」
マイエルはルナの言ってる事の意味は理解出来なかったが、問題のある者であれば信者から切り捨ててしまえばいいのでは?と思ったのだ。
「そんな事出来る訳ないでしょ!私の大切な信者なのよっ!未だに姉さまの信仰が強いこの世界で私を信仰してくれる信者はとても貴重なのよっ!それなのに、ちょっと気持ち悪いってぐらいで切れる訳ないでしょ!」
「それもそうなのでしょうが.....そもそもこの娘の何が問題なのですか?見た感じ、普通の神官のようですが?それに祈りも兄と仲良くなりたいって可愛いらしい祈りじゃないですか?」
「.....その娘が手にしている布、その兄のパンツよ?」
「.....えっ?」
マイエルは驚き、まじまじと映し出されたニーナの姿を眺める。
そこには兄のパンツを顔に当て、思いっきり深呼吸して光悦とした表情を浮かべる変態の姿が映っていた。
「な、仲良くとはそういう意味なんですかね?」
「.....多分そうだと思うわよ?並々ならぬ執念を感じたわ.....」
「こ、この年頃の娘が兄に想いを寄せるのは珍しい事ではないですよね?」
「.....そうね。よくある話だわ.....ここまでの子はちょっと見た事ないけれど.....」
「そ、それで?この娘の願いを聞き届けるのですか?」
「まさかっ!マイエルも知ってるでしょ?私は姉さまとは違うからそんな事する訳ないじゃない。まぁ.....一応私の信者な訳だし?運の巡りが少し良くなるぐらいはしてあげるけど.....それ以外はどうなろうが知ったこっちゃないわね」
ルナシェナはこの世界の管理者である。
この『星』の管理者である為、彼女は基本地上の人々に興味は無い。
自分の信者達には多少程度は気に留めるが、他は絶滅しようがどうなろうが興味すらないのである。
神とは本来、ルナシェナのような考えが普通であり、地上でせっせとアレコレしているミリアの方が神の常識からすれば変わり者なのだ。
「しかし.....そんな事を言ってよろしいのですか?ミリアーナ様は地上で何やら人々の為に活動なされておいでですが?」
「姉さまが変わり者なのよ。ってか昔は姉さまもそうだったわよ?結婚して子供が出来てから姉さまは変わったわ。いえ.....変わりすぎね。完全に別人よ?別人。何であんなに人が変わったのかしら?」
「当然、愛よ~?」
2人だけの静かな空間に、突然ミリアの声が響き渡る。
「あら?姉さま、どうしたの?今日はどんな用事で来たのかしら?」
「ミリアーナ様、いらっしゃいませ。紅茶で宜しかったでしょうか?」
ルナシェナもマイエルもその事に驚く事すら無く、淡々と返事を返して挨拶をする。
ミリアはちょくちょくこうしてここを訪れる為、2人は最早慣れているのだ。
「ありがとね~、マイちゃん。あっ、お砂糖は1つでミルク抜きでお願いね~」
ミリアはお茶の準備をしてくれているマイエルにそう注文を入れ、そのまま椅子へと腰かけた。
「ルーちゃんも愛する人と結婚して、子供が出来たらきっと私の気持ちがわかるわよ~?」
「ふ~ん、私はそういうの興味はないかなぁ~。好きとかって感情もいまいち理解出来ないし」
「フフッ、ルーちゃんはまだまだ子供ね~」
「失礼ねっ!私が興味ないだけよっ!.....それで?今日は一体どうしたの?」
「うっうっうっ!ルーちゃぁぁぁんっ!聞いてっ!ジンったら酷いのよ~?」
またか.....
ミリアの様子で大体の要件を察したルナシェナは内心でため息を吐く。
このミリアの様子からして、またいつものようにジンに対する愚痴を延々としゃべり続けるのだろう。
おまけにその愚痴の後半には、ほぼ惚気に変わるというおまけ付きである。
何が悲しくて延々と姉の惚気話を聞かされないといけないのか.....
しかしルナシェナはミリアには逆らえない。
姉というのも大きいのだが、そもそも神としての神格が違い過ぎるのだ。
神の世界は完全な縦社会なので、ルナシェナにミリアの用事を断る事など出来る訳もない。
こうしてルナシェナはミリアの愚痴を黙って静かに聞き、適当に相槌を打ちながら時間が過ぎるのをただ待つのであった。
次から新章突入です。




