閑話‐温泉に行こう!浮気?いいえ、目の保養です
「って訳で温泉に行こうぜ!」
ジンはタカシに会うと、開口1番にそう言い放った。
「.....いや、どんな訳なのかサッパリ分からんのだが?突然何を言い出すのかと思えば.....そもそも何で急に温泉なんだよ?」
「いや、俺が行きたくなったから。ついでにどうせなら男同士でのんびりしようと思ってな!」
「気持ちは嬉しいが.....無理だ」
「え~、何でだよ?行こうぜ行こうぜっ!」
「やかましわっ!そもそもmお前が何の連絡も無く突然俺に難民を大量に押し付けたせいだろうがっ!!」
「いや、ちゃんと連絡したじゃね~か?今から連れて行くぞ~って」
「遅すぎるんじゃボケェッ!!そういうのはもっと前もって、行動を起こす前に連絡してくるもんだろうがっ!何で行動起こしてから連絡してくるんだよっ!少数ならまだしも、1万を超える人数に対応出来る訳ないだろうがっ!!」
「メンゴメンゴッ!」
「.....よしっ!その喧嘩買った!ぶん殴ってやるっ!」
タカシは勢いよく立ち上がると、腕を捲ってジンへと詰め寄って行く。
「へ、陛下っ!落ち着いてください!.....えぇいっ!お前たちも見てないで陛下をお止めしろっ!」
「「「あっ、ハッ!」」」
今にもジンへと飛び掛かりそうなタカシを、ガインと兵士たちは必至に抑える。
「離せガインッ!そこの馬鹿は1発殴らんと俺の気が済まんっ!!」
「そんな事より早く温泉行こうぜ、温泉」
そんなタカシ達を見ても、ジンはどこまでもマイペースである。
「お前.....俺の話を聞いてたのか?だから無理――」
「.....混浴だぞ?」
尚も無理だと言おうとするタカシにジンはボソッと小声で呟いた。
タカシはその言葉を聞くと、小さくピクッっと反応し大人しく元の椅子へと座る。
「.....詳しく聞こうか?」
机の上に両肘を乗せ手を組み真剣な表情でタカシはジンに尋ねた。
「最近トメ達と散歩してる時に見つけたんだがな、この大陸の北の方の国.....え~っと、まぁ名前は忘れたけどそこで見つけたんだよ。俺も実際にまだ入ってはないんだけどな、男湯と女湯、それと混浴の露店風呂みたいなのがあったぞ?結構人気らしく人もそこそこ集まってたかな?特に美容効果の高い湯って事で女性人気が高いらしい」
ジンからそんな説明を受けたタカシは、椅子から素早く立ち上がる。
「何をしてる?さっさと行くぞ?丁度疲れも溜まってたし温泉にでも行きたいと思ってた所だ。流石我が親友。素晴らしいタイミングだな!」
混浴と聞いた途端に物凄い掌返しである。
「へ、陛下っ!?執務はどうなされるおつもりですか!」
「丁度いい機会だ。ヒロキに経験積ますいいチャンスだろう?ちゃんと補佐も付けるし心配するな!.....そうだ!ガイン、お前も一緒に行くぞ!」
「へっ?あっ、いえ.....陛下の護衛として付いて行くのは構いませんが.....今からですか?」
「そうだ!そうと決まればさっさと準備して行くぞっ!って訳でジン。ちょっと準備してくるから少しだけ待ってろ!」
「おうっ!さっさとしてくれよ?」
こうしておっさん達は温泉へと向けて行動を開始したのであった。
☆☆☆
「おお~、ここがその温泉か!.....確かに賑わってるな」
「だろう?やっぱ日本人としては見過ごせねぇよな?」
タカシは立派な建物を眺めながらジンへとそう漏らす。
日本の温泉のように旅館等は無い、入浴の為だけの建物なのだが、その外観は立派だ。
外に居ても硫黄の強い匂いがタカシの鼻を突き、タカシはどこか日本を思い出して懐かしくなる。
「よしっ!じゃあ早速入ろうぜっ!」
ジンはそう言うと、意気揚々と建物の中へと入って行く。
タカシとガインはジンの後は追う。
「本当にガインは男湯に入るのか?」
「ええ、妻以外の婦女子の裸体を見る訳にはいきませんからな」
男湯、女湯、混浴と別れる入り口の前でタカシはそう聞く。
「いや、別に混浴とかやましい気持ちで入るもんじゃないんだぞ?日本には裸の付き合いって言葉もあってだな.....」
タカシはそのような事を言い始めるのだが、やましい心全快のタカシが言っても説得力は皆無である。
結局ガインはそのまま男湯に行き、ジンとタカシの2人で混浴に突入する事となった。
ジンとタカシは混浴と書かれた暖簾を潜ると、そこには複数の女性の物と思わしき衣類が綺麗に畳まれて籠の中に入っているのを確認する。
それと同時に温泉の方からは、キャッキャッと女性らしき声も聞こえたきた。
.....居るっ!
ジンとタカシは無言でアイコンタクトを取ると頷き、素早く服を脱ぐと腰にタオルを巻き温泉へと向かって行った。
.....いざっ!
ガラッと勢いよくドアを開いたジンとタカシは鼻息荒く温泉の方へと視線を向け.....そして固まった。
そこには、エリーゼを始めとするタカシの妻達とミリアが居たのである。
彼女たちは全員水着を着用しており、ジンとタカシが入って来たのを確認するとニッコリと笑顔を浮かべていた。
.....口元だけで目は冷え切っている。
「あら?あなたも温泉?こんな所で奇遇ね?.....所で執務はどうしたのかしら?」
「え、エリーゼっ!?皆っ!?何でこんな所にっ!?」
「私たちは普通に温泉を楽しんでいただけよ?ミリアさんに誘われてね.....ここの温泉はとても美容に良いそうよ?.....それで?あなたはどうして混浴にいるのかしら?」
「そ、それはお前たちもじゃないのかっ!?」
「私たちは広い温泉に入りたかったからよ?それにちゃんと結界も張ってもらってるから、他の男性は来ないわよ?」
「い、いや、違うぞ?違うんだっ!コレには深い、深~い訳があってだな!」
「えぇ、そうでしょうとも。それはあっちでじっくりと聞かせてもらいますからね?」
タカシはジンに助けを求めるような視線を向けるが、あちらはあちらでそれ所ではないらしい。
自分が助からないと悟ったタカシは、そのまま妻達に大人しく連行されて行った。
「あなた~?どういう事かしら~?男同士の裸の付き合いだから、私を連れて行けないって言ってたのはこういう意味だったのかしらね~?」
「ち、違うぞっ!?ミリアっ!コレはだな、その.....そうだっ!これは浮気じゃないぞ?ただの目の保養なんだっ!」
「.....言い残す事はそれだけかしら?覚悟しないさいっ!」
「待っ!?俺が悪かったっ!だから許し、ギャァァァァァァァッ!?」
こうして人気の温泉に2人の男の悲鳴が響き渡るのだが、ミリアの結界のおかげで騒音が外に漏れる事もなく、温泉に悪評が流れたりといった被害は出なかったのである。
そして1人男湯に入るガインは、ゆっくりと温泉の堪能するのであった。




