魔王様からの招待
「で?あんたは誰なんだい?何の用で俺に近づいた?それとリロロの姿をしてたのは何でだ?」
「大変失礼致しました!私は魔王様から使いである、ドッペル族のミシャミと申します!リロロ様のお姿に偽っていた意味は特にございません!しいて言うなら趣味でしょうか?」
魔王の使いと名乗ったミシャミはすごい勢いで俺の前に跪くと、その姿がドンドンと変形していきノッペリとした起伏のない顔となった。
「お、おう?魔王の使い?」
「はいっ!此度のローグンのダンジョン攻略の件で魔王様が是非ともお礼をと!なので宜しければ1度王都にご招待を差し上げたいと.....私はその使いであります!」
何でもうダンジョンの事知ってんだ?流石に情報を聞いてから使者が来るまで早すぎないか?
魔王の使いってのは嘘か?いや.....シャルミナがこっちに居る以上、そんな嘘はすぐバレるしな。
.....あっ!情報は母さんかっ!確か魔王の傍に母さんの眷属が居るんだっけ?ならこの早さも納得.....なのか?
俺は少し混乱している。
「しかし、まさか私の変身を一瞬で見破るとは.....恐れ入りました!」
「えっ?あぁ.....そういや趣味とか言ってたけど、なんでそんな事を?」
「ミシャミはの、変身して他者に成りすまし、ビックリさせるのが趣味って変わり者なんじゃよ」
いつの間にか近くに来ていたシャルミナがそう教えてくれた。
「いやいや、迷惑な趣味だなっ!?下手すると相手を怒らせるどころか敵対するんじゃないか?ってか使者に向いてないだろっ!?」
「妾もその悪趣味な癖は直せと言うておったのじゃがな.....一向に言う事を聞かぬのじゃ.....久しいの、ミシャミ」
「シャルミナ様もお元気そうで何よりでございます。しかし、変身は私の生きがいでもありますので.....それで倒れるならば本望でございます!」
ミシャミは力強くそう宣言する。
何かはた迷惑な人だな.....
「それにしてもポポイの奴め、妾達を呼びつけるなぞどういうつもりじゃ?礼ならばそちらから来るのが礼儀じゃろうが?」
「あ、あの.....その件に関しましては魔王様というよりもユリエル様の命なのです.....」
「あぁ~、ユリエルがのぉ~.....なら納得じゃな.....」
「えっと.....なんで納得してるんだ?」
「何と説明すれば良いかの.....ユリエルはの、物凄く生真面目なんじゃ」
「ますます意味が分からん.....」
「つまりじゃな、今回のダンジョンの件でお礼をするのは国として当然、しかしその国のトップである魔王がそうホイホイと気軽に出歩くのは許可出来ない。それに人の目が多い場所で頭を下げるのもよろしくない。じゃから城に招待しようって事を大方ユリエルは思っとるんじゃろ?招待すれば城で人目も限られておるしポポイが頭を下げても問題ないからの」
「ええ、シャルミナ様のほぼおっしゃる通りかと。仕事が多くて出歩けないって理由もありますね」
な、なるほど.....どこかの自由奔放な王様と違うらしい。
おじさんはどこでも気軽に出歩きすぎなんだよな.....
「まぁ、招待されるのは構わないんだが.....俺ってかシャルミナとミラーカがどうしたいかだな。正直今回のダンジョン攻略のほとんどはこの2人の功績だしな。2人はどうしたい?」
俺は2人訪ねてみた。
「僕?僕は別に行ってもいいよ?それにポポイさんにも会ってみたいしねっ!」
「妾も別に構わぬぞ?久しぶりにポポイに顔を見せておくかの」
「って事でOKみたいなんで招待に応じますよ」
「ありがとうございます!」
「じゃあ出発はいつにしようか?その王都?にはどれぐらいで着くのかな?」
「我が国の王都『パンデモニムウ』にはここから馬車で5日ほどです。車だともう少し早くて3日と少しぐらいでしょうか?」
『パンデモニウム』じゃなくて『パンデモニムウ』なのね.....
それにしても結構遠いんだな.....なら少し早めにこの街を出発した方がいいか?
「カズキ様、カズキ様」
俺が悩んでいるとネルが話しかけてきた。
「朝に出れば夕方には着くっすよ?走ればっすけど.....」
.....いやぁ~3日以上かっ!これは入念に旅の準備をしなくちゃなっ!
「聞いてるっすか?走れば直ぐっすよ?」
聞こえないっ!俺には何も聞こえないぞっ!!
「あ、あの.....流石にそれは私が不可能なのでご遠慮いただければと.....」
「そうか!じゃあ仕方ないなっ!ここは車で向かうとしよう!いや~、使者さんに無理はさせられないからねっ!うんうん!仕方ないっ!」
ナイスだミシャミさんっ!
あぁ、やっと俺の異世界の旅が始まるんだ!
.....今までの旅?マラソンは旅とは言わない!絶対にだっ!
「凄く嬉しそうじゃな」
「凄く嬉しそうっすね」
「.....凄い.....ニヤけてる.....」
「あっ!ミシャミさんを誰かが背負っ.....モゴモゴッ!」
「ミラーカちゃん、しっ!それは駄目です!」
「そうですわね。あのカズキ様の嬉しそうな顔.....リロロさんのいう通り、流石にそれは残酷ですわ」
んっ?何やら嫁さん達がコソコソ話してるが何だろう?
「よしっ!じゃあ準備して明後日の朝出発しよう!皆準備を怠るなよっ?ミシャミさんも一緒にって事でいいのかな?」
「どうか私の事はミシャミとお呼びください。もし同行させていただけるな是非お願いしたいのですが.....」
「分かった。じゃあ明後日の朝出発だから、ミシャミもそのつもりで準備しておいてくれ」
「畏まりました。それとカズキ様、1つお聞きしたい事が.....」
「ん?なんだ?」
「なぜ私の変身を見破れたのでしょうか?私は変身には自信があったのですがカズキ様には人目で見破られました。後学の為にも是非とも教えて頂けないでしょうか?」
あぁ、今後も変装は止めないのね?変身か?まぁどっちでもいいや。
「まぁ、それは構わないんだけど.....そうだな.....先ずは毛の質感?」
「毛.....ですか?」
「そうだ!リロロの耳と尻尾の毛はモフモフで最高だっ!ミシャミの変身した毛はモフモフ感が足りないっ!」
「寸分違わぬようにしたつもりなんですが.....」
「チッチッチッ!甘いな!見た目だけ似せても俺には無駄だ!」
「な、なるほど.....」
「それにな、走り寄ってくる時も頂けない」
「走り寄る.....何故でしょう?」
「リロロは俺に寄ってくる時は尻尾がブンブンと振れている!それはもう、そのまま回転させたら空を飛べるんじゃないかってぐらいブンブンだっ!」
「尻尾の揺れ加減が足りなかったと?」
「全然足りないなっ!もっとこう、その尻尾のブンブンで周囲の物を破壊するような勢いだっ!」
「そ、そこまでですか?」
「あと、最後に1つ.....これが1番の問題点だ!」
「そ、それは何でしょうか?」
ゴクリとミシャミは唾を飲み込む。
「それはな.....おっぱいの躍動感が全然足りないって事だっ!!」
「....,へっ?」
『奥様聞きました?(ヒソヒソ)』
『こんな昼間からこんな場所で.....(ヒソヒソ)』
「いいか?リロロが走った時のおっぱいの躍動感はそれはもう凄い魅力の波動を放つんだ!バルンバルン踊るんだよっ!」
「あ、あの.....出来れば声を抑えて頂けると.....」
『ママ~?あの人たち何言ってるの~?』
『しっ!聞いちゃいけません!』
「それをお前は何だっ!せいぜいブルンブルンぐらいじゃねぇかっ!リロロのおっぱいの良さを全然引き出せてないじゃねぇかっ!」
「わ、分かりました!分かりましたからもう勘弁してください!」
「それになっ!.....ヘブッ!?」
「こんな場所で大声で何を言うとるんじゃっ!!」
俺はシャルミナからスパーンッ!っと叩かれる。
「い、いや、ミシャミにリロロの魅力をだな.....」
「時と場所を考えぬかっ!それに声も大きすぎじゃ!見よっ!リロロが羞恥で真っ赤になっておるわっ!」
シャルミナに言われ、リロロに視線を向ける。
「あうぅぅ.....は、恥ずかしいです.....でも、カズキ様にそこまで思われてて嬉しいですぅ.....でもでも、こんな場所で大声で.....はぅぅぅ.....」
顔を真っ赤にして目をぐるぐる回しながらリロロが悶えていた。
正直スマンかった.....でもさ?こんな反応してるくせに夜は誰よりも猛獣なんだぜ......
こうして俺達は逃げるように店を出ると、出発の日に備えて準備を進めていくのであった。




