ローグンのダンジョン⑧
「さて.....どうすっかね.....」
俺達は昨夜、5層まで下りて来て日も沈み切っていたのでそのまま下りて来た場所で1泊する事となった。
そしてそのまま1晩を明かし、朝食も食べて攻略再開だ~っ!って行きたい訳なんだが.....
辺り一面、海!海!海!である。
俺達が1晩明かした狭いスペースの砂浜以外、見渡す限り海であり島等は見えない。
「島とか何かあればまだそこを目標にして目指せたんだが.....こうも海しかないとどこを目指していいのやらって感じだよな?」
「「「えっ?」」」
.....何でそこで揃って驚かれるんですかね?
コ~レ、嫌な予感がしますよ。
「何を言うておるんじゃ?あそこに島が見えるじゃろう?」
「何か扉?みたいなのが見えるね?あそこなんだろう?」
「何で階段じゃなくて扉なのでしょうか?あそこが最奥なんですかね?」
「えっ?どこに?全く見えないんだけど?」
「あそこじゃ」
俺はシャルミナが指指す方へと目を凝らすが何も見えない。
ただ海が広がっているだけである。
.....何で皆普通に見えてんだよっ!その視力どうなってんのっ!?
「カズキ様、昨日も言いましたけど、こう目にグッっとしてグワーッって感じですよ!」
だからそれじゃ分からないんだってばっ!
俺はミラーカとシャルミナに縋る用な視線を向ける。
『タスケテ』
っと.....
「.....アハハッ.....リロロちゃんが言いたいのは、魔力を目に溜めるって事かな?」
「じゃな.....目に魔力を溜めて、そこから全体を覆うように圧縮して広げるんじゃとリロロは言いたいんじゃろうな」
「何でミラーカちゃんとシャルミナお姉ちゃんは私の言った事を繰り返すんですか?ちゃんとそう言ってるじゃないですか?」
全然言ってないからねっ!?
リロロの基準ではあの擬音でちゃんと説明した事になってんのかよ!?
.....キミの頭の中身は一体どうなっているんだい?
コレが天才と呼ばれる者の感覚の標準なんだろうか?
「.....いや、リロロが特別じゃからな?」
そんな事を考える俺に、シャルミナが小声で話しかけ来る。
.....人の脳内と会話するのはやめないか?何か怖いんだけど.....
まぁいいや.....
俺は早速説明された通りに目に魔力を集め、そこから目を覆うような感じで広げていく。
「う~ん.....こうか?.....難しいな.....」
「いきなり両目でやろうとしても無理じゃと思うぞ?」
「そうだねっ!結構難しい技術なんだよ?コレ」
「カズキ様はまずは片目、神眼に集めてみればいいんじゃないでしょうか?」
「分かった。そうしてみる」
俺は3人に言われ、神眼に集中して魔力を集めてみる。
「.....何となくイケそう.....つか.....めっちゃシンドイ.....」
俺が思ってた以上にキツイ。
魔力を目と言う小さい部分に集めて圧縮するって繊細な作業は俺の精神をゴリゴリと削る。
それに魔力も想定以上にゴッソリと使うし.....
「んぎぎぎっ.....こうかっ!?」
「おっ?そうそう。それで向こうを見てみ?島が見えるじゃろ?」
俺は再びシャルミナに言われた方向へと目を凝らした。
「.....見えたっ!.....でも島ってぐらいしか分からないぞ?扉とか見えないんだが.....」
「まぁ初めてでそこまで見えれば十分じゃろう」
「だね~っ!コレって普通は結構練習しないと無理だからねっ!」
「流石カズキ様ですっ!」
「いや.....褒めてもらえるのは嬉しいんだけどさ.....3人共いつもこんな状態でいんの?めっちゃシンドイんだけど?」
俺は出来た事よりも3人がいつもこの状態でいる事実の方が驚き過ぎて素直に喜べないんだが?
「慣れじゃな。慣れ」
「そうだねっ!慣れた割と平気だよ?」
「カズキ様もきっとすぐに慣れますよ!」
そうか~、慣れなのか~.....コツとか期待してたんだけど、慣れかぁ~.....
もう少し楽に出来るコツとかあるのかと思えば慣れと言われてしまった。
そうそう都合よくそんな事はないらしい.....コレも頑張るしかないか.....
「.....島があるのが分かったのは良いんだけどさ、コレ普通はどうやって攻略するんだ?無理じゃね?」
「う~む.....イカダになりそう木とかも生えておらんしのぉ」
シャルミナの言う通り、5層には木が生えていない。
少しの砂浜と見渡す限りの海である。
「でもダンジョンなら攻略する方法はあるって事だよね?」
「そうですね。何か方法はあると思います」
ミラーカとリロロの言う通り、ここはダンジョンだ。
ダンジョンは攻略出来ない構造にはなっておらず、必ず何かしらの攻略方法は存在すると習った。
「別に妾達が飛んで運べば良いし、どうでもいいじゃろ?」
元も子もないが、確かにシャルミナの言う通りである。
「って事は空が飛べればダンジョン攻略って凄い楽なんじゃ.....」
「いや、普通は無理だと思うよ?」
「うむ、体力が持たないのもそうじゃが、竜族は別として普通は人を抱えて飛べる程の力のある種族は居らぬからな?」
「そうですね。普通の人には厳しいと思います」
「抱えて少し浮くぐらいは出来ると思うけど、僕達みたいに抱えて自由に飛べたりはしないよね~っ」
そ、そうなんだ。世の中そんなに甘くはないか.....
魔族とか空を飛べる種族も多いのに何で苦戦してるんだろう?って思ったんだが、俺の嫁さん達が規格外なだけなのね.....
「じゃあ早速行ってみる?」
「そうじゃな。こんな所に突っ立っておっても仕方ないしの」
「はい!シャルミナお姉ちゃん、またお願いしますね」
「うむっ!妾に任せよっ!」
「カズキ様どうしたの?僕達も行くよっ!」
「あぁ、何でもない.....お願いするよ」
規格外過ぎる嫁さん達に少し引いてた訳じゃないんだからね?ホントウダヨ?
こうして俺はミラーカに抱えられ、また空へと旅立って行った。
「もしかしてアレがここのボスなのかな?」
「あんなのに船とかに乗ってる時に襲われたらどうしようもないだろうな.....」
ミラーカに言われ、俺は視線を下の海へと落とす。
そこには長くて巨大な影が水面をウネウネとしていた。
「多分サーペント系じゃな。ちとサイズはデカいが.....」
「あのボスを倒さないと扉が開かないとかなんでしょうか?」
「だとしたら少し面倒だね~っ。僕、あんまり濡れたくないなぁ」
ミラーカが2人の会話を聞いて愚痴るのだが、面倒ってのは濡れる事なのっ!?
「いやいや、そもそも戦うとなったら大変なんじゃないか?足場も無いし、相手は水の中だし」
俺がそう言うと、3人はキョトンと俺を見つめてきた。
「いや、別にあの程度問題ないんじゃが?」
「そうだねっ!上から魔法でドーンッで終わるんじゃない?」
「そうですね!あっ、少し水しぶきで服が濡れちゃうかもしれませんね!」
そうだね。服が濡れてスケスケになったら少し困っちゃうよね!特にリロロは胸も大きいから周りの視線も気になっちゃうよね?.....周りに誰も居ないけどさ。
.....って、違っが~うっ!!
「そうじゃないよっ!魔法とか効かなかったらどうするんだよっ!物理で殴るにしても海中だと手も足も出ないんじゃないのかっ!?」
「いや、そうでもないぞ?妾は勿論、リロロやミラーカでもあの程度の水深におる魔物ならば問題無く物理も通じるの」
「うんっ!任せてよっ!」
「はいっ!あの程度の水深なんて事ありません!」
.....ソウナノ?
何だろう.....ここまで来ると俺の常識と言うか、心配する方が間違ってんのかな?
フフフッ.....もう分からないや.....
「?急に目が死んどるんじゃが.....?」
「どうしたんだろう?」
「何か具合でも悪くなったんでしょうか?大丈夫ですか?カズキ様?」
俺は返事を返す気力も無く、そのまま大人しくミラーカに抱えられて運ばれて行く。
こうして俺達は、特に戦闘をする事も無く島にたどり着き、その島にある扉の前へと降り立ったのであった。




