ローグンのダンジョン⑥
「これからどうする?」
俺達はロックを保護した後、そのまま車に乗り込み今後について相談している。
「あの人達だけじゃ上まで戻れないんじゃない?」
「私達に付いて来るのも厳しいと思います」
ミラーカとリロロが言う通りどちらも難しそうだ。
助けた魔族の冒険者ロック達は、総勢20人の複数のパーティーで組んでこのダンジョンを攻略していた。
4層までなんとかたどり着いたロック達は、無理をせずに周囲の探索を軽く済ませて今回は戻る予定だったらしい。
しかし、その戻る時にジーポーン側の用意した賊に襲われパーティーは崩壊してしまう。
賊をまとめていた男はローグンでもそこそこ名の通ったジーポーンの冒険者だったらしく、疲弊しきっていたロック達は徐々に削られていったらしい。
.....あの1人だけやけにデカくてムキムキしてた、ボスって呼ばれてた奴かな?
一瞬でリロロに粉砕されてたからあんまり印象に残ってないな.....
このままでは全滅しそうなロック達だったが、仲間の1組が身を挺して囮となりロック達を逃がしてくれたのだそうだ。
何とか賊から逃れたロック達だが、3層では全員その内凍死してしまうので少しでも生き残れる可能性のある4層に潜る事を決めたのだそうだ。
そして4層に下りる時にボスによって更に人数が減った訳か.....
4層まで戻ってきたロック達は、とりあえず暑さを凌ぐために比較的安全そうな場所に穴を掘ってそこで救助が来る可能性に賭けてじっと身を潜めていたらしい。
相当分の悪い賭けだったようだが.....
ロック達は、しばらくの間は持ってきていた食料や水などで耐え忍んでいたのだが食糧や水は直ぐに尽き、自分達で何とか調達しようと周囲を探索していたらしい。
その時に魔物に襲われ、仲間2人が怪我を負ったのだそうだ。
何とか仲間を庇い必死に逃げている時に、ミラーカとシャルミナがその場を偶然見つけ助けたと言うの今回の事の顛末らしい。
「やっぱり1度俺達が連れて上に戻るしかないか?」
俺は3人を見渡しながらそう聞いた。
ちなみにロック達は、無事なロックともう1人が『見張りは自分達がやりますっ!』って言って聞かなかったので魔法で眠らせてある。
気持ちは有難いのだが、無理はして欲しくないのでゆっくり休んで欲しい。
「俺が転移で連れて戻ろうとも思ったんだが.....何か使えないんだよな?」
何となく感覚的に分かるってしか言えないのだが、1度試そうと思ったけど何故か発動しなかった。
「それはダンジョンだからじゃない?僕は戻ってもいいと思うなっ!」
「でも.....時間を掛けたらジーポーン側が何か手を打ってくるんじゃないですか?」
ミラーカは戻るのに賛成、リロロが言う事も分かる。
時間を相手に与えれば情報も届くだろうし何かしら対策を練ってくる可能性は高い。
だから相手に知られていない今がチャンスなのは分かるのだが.....
「いやいや、迎えに来てもらえばよかろ?.....ミリア様に」
「「「アァッ!?」」
シャルミナの言葉に俺達3人は揃って声を上げた。
そうか、その手があったか!
「いや、でも母さんも転移出来ないんじゃないのか?まぁ.....普通に出来るとは思うんだが.....」
「ラナードのダンジョンをジン様が攻略した時には、御飯の時間には毎回呼びに行っておったそうじゃぞ?ご飯を食べたら元の場所まで送り届けておったそうじゃから、別に問題ないと思うんじゃが.....」
何でそんな方法で攻略してるんだよっ!!そんな非常識な攻略されるダンジョンが可哀想だよっ!!
俺は頭痛を堪えるようにコメカミに手を当てた。
「.....くそっ.....まぁいいや.....考えたら負けな気がする」
俺はそう言って魔道具を取り出し、母さんへと連絡を入れる。
『は~い?カズちゃんの大好きな~ママですよ~?どうし―――』
「いや.....何で切っとるんじゃ?」
「イラッとしてつい.....すまん」
俺は再び母さんに連絡を取り直す。
『もしもし~?カズちゃんったら~、照れてるのね~?』
我慢だ.....我慢するんだ俺っ!
俺は速攻で通話を切りたくなる気持ちを必死で抑える。
『それで~?急に連絡してきてどうしたの~?』
「あぁ、ちょっとな。母さんにこっちに来て貰いたいんだけど.....出来る?」
「来たわよ~」
早ぇよッ!!まだ何も説明すらしてないんですけどっ!?
ってか普通にすんなり転移してくるなよっ!
俺の転移魔法と比べて少し悲しくなってくるだろっ!
「それで~?どうしたの~?あら~?その人達は~?」
「あぁ、用ってのはこの人達を地上まで連れて行って欲しいって事なんだけど....頼める?」
「お安い御用よ~」
「ザザさんの依頼を受けて攻略してた人達だから、ザザさんの所へ連れて行ってあげて欲しい」
「分かったわ~」
「.....あと、コレも一緒に届けてくれないか?」
俺そう言って被害者だと思われる人達の冒険者プレートと遺品を取りだした。
そんな俺の悲痛な表情を見て、母さんは俺を優しく抱きしめながら言った。
「カズちゃんのせいじゃないわ.....だからそんなに悲しい顔をしないで?ねっ?」
母さんは優しく俺の頭を撫でながら言葉を続ける。
「後はママに任せなさい?カズちゃんを悲しませた人達にはちゃんとママがお仕置きしておくから」
「.....いや、それはちょっと.....絶対に止めろよ?」
何でえっ?って感じで意外そうな顔してんだよっ!!
「えぇ~?普通、そこはママに任せてカズちゃんは甘えるシーンじゃないかしら~?」
「やかましいっ!いいか?絶対に余計な事をしなくていいからな?絶対だぞっ!?」
母さんが動けば相手は簡単に終わりなんだろうが.....
母さんが動けば、どう考えても俺が後で苦労する未来しか見えねぇんだよっ!!
「カズちゃんに迷惑は掛けないわよ~?」
「そんな台詞は今までの行動を振り返ってから言ってくれませんかねっ!?」
俺の言葉に母さんは心底分からないと言った様子で首を傾げる。
「何でそこで首を傾けてるんだよっ!!自覚ねぇのかよっ!!」
「カズちゃんが言ってる事がよく分からないわ~?とりあえずこの人達を連れてママは戻るわね~?攻略頑張ってね~、ばいば~い」
そう言ってロック達と一緒に母さんは手を振りながら戻って行った。
「あっ!オイッ!頼むから本当に大人しくしててくれよっ!?」
俺は慌てて叫ぶ。
見かねたのか、3人が俺に慰めの言葉をそれぞれ投げかけてくれるが.....
「流石にミリア様でもそこまで無茶はせんじゃろ?.....多分」
「ネル達も止めるんじゃないかな?.....多分」
「えっと、あの.....きっと大丈夫ですよ!.....多分」
全員半信半疑じゃねぇかっ!!
くそっ!さっさとこんなダンジョン攻略して戻るぞっ!
多分それが今の俺に出来る最善だ!
こうして俺は、出来るだけ早く地上に戻り母さんを監視する為にもこんなダンジョンはさっさと攻略してしまおうと気合いを入れるのであった。




