ローグンのダンジョン⑤
ミリアによって留守番組に黒歴史が披露されているなどとは微塵も思わず、カズキ達はダンジョンの4層へと来ていた。
「この4層からギルドの情報も無いが.....どう動く?」
カズキ達は4層へ来て1泊した後、出発する前に今後どう動くのか相談していた。
「そうじゃなぁ.....やはり妾とミラーカが空を飛んで階段を探すのが1番手っ取り早いんじゃないかのぉ?」
「やっぱそうなるか.....でも大丈夫なのか?」
カズキはそう言って車の窓から外を眺めた。
4層は焼け焦げた大地に所々ボコボコッっとマグマが湧き出ており、まるで地獄のような光景であった。
遠くに見る火山と思わしき山からは、黒い煙がもうもうと立ち上っている。
たまに噴火しているのか地震もそこそこの頻度で起こり、空からは焼けた岩が降ってくる事もしばしばあるようだ。
「あのぐらいなら簡単に避けれるし大丈夫だよっ!」
「うむ、あの程度喰らってもダメージにもならぬしのっ!」
カズキの心配をよそに、2人は自信満々で答えた。
こうして当初の話のように、ミラーカとシャルミナによる空からの偵察を任せる事となり、カズキとリロロはこの場で待機する事となった。
車の中で2人が戻るまで待機する事も考えたのだが、狭い密室でリロロと2人なのは少し危険な気がしたカズキは外で2人を待つ事を決めた。
当然理由をリロロに馬鹿正直に言う訳にはいかないが.....
こうしてカズキ達に見送られながらミラーカとシャルミナは、羽を広げて空へと飛び立って行ったのであった。
「あっ!カズキ様!あそこにフレアリザードがいますよ!」
「えっ?どこどこ?」
俺はリロロに言われ、リロロの指さす方へと目を細めた。
.....何かめっちゃ遠くに黒い粒みたいなのが見えるけど、もしかしてアレの事かな?
「遠すぎて俺には黒い粒にしか見えないんだけど.....良く見えるね?」
「そうですか?こう、目にギュッと魔力を込めてグワーッて感じで見るとカズキ様にも見えると思いますよ?」
見えない俺に対し、リロロが説明をしてくれるのだが.....
うん、分からんっ!
「それにしても.....暇だなぁ~」
「そうですね。3層と違って魔物も襲ってきませんね?」
「数が少ないんじゃないのか?」
「そうかもしれませんね。その変わり1匹1匹の強さはありそうですね」
3層だとワンサカと襲ってきていたのだが、4層ではそんな事はなかった。
たまに遠くの方にチラホラと闊歩する魔物を見かけるだけだ。
.....いや、全部リロロが見つけて俺には分からないんだけどさ.....
俺は退屈を紛らわすように口を開いた。
「フレアリザードってどんな魔物なんだ?強いの?」
「私も図鑑でしか見た事はないんですけど.....何でも昔に1匹で国を滅ぼした事もあるそうですよ?」
「へぇ~、なら4層を進む時は慎重に行かないとな.....隠れながら進んだ方がいいか?」
「えっ?何でですか?」
「えっ?だって危険な魔物なんだろ?見つかったら面倒じゃない?」
「大丈夫だと思いますよ?見た感じそこまでじゃなさそうですし.....私は勿論、シャルミナお姉ちゃんやミラーカちゃんでも余裕だと思います」
そ、そうなんだ.....
俺の嫁さん達マジパネェっす.....
「流石にマッシュ様やポテチ様クラスが相手だと厳しいですけど.....」
リロロは少し難しい顔をしながらそんな事を言ってくる。
アハハッ!もしそんな化け物が出たら俺はさっさと逃げるぞ?
だって死にたくないし.....
「それにしてもミラーカ達遅いな.....何かあったんだろうか?」
「2人なら大丈夫ですよ、きっと」
「それでも心配なもんは心配なんだよなぁ~」
「フフッ、その言葉を聞けば2人も喜びますよ」
2人が朝出て行ってから数時間、すでに時刻はお昼に差し掛かろうとしていた。
こちらから探しに行こうにも2人がどこへ居るのか分からんし、そもそもあの2人が怪我を負うような事はないだろう。ならば何かトラブルでもあったのでは?っと不安に思うのだが、現状俺に出来る事はない。
大人しく2人の帰りを待つ事しか出来ないのだ。
「あっ!戻ってきましたよっ!」
俺はリロロの言葉に素早く空を見渡す。
「.....どこだ?見えないんだけど.....」
「いえ、違います。空じゃなくて歩いて戻って来てますね。誰か一緒みたいですよ?」
んんっ?何で歩いて?それに誰がこんな所に居るんだ??
俺は2人が戻って来ているという方角に向かい、目を細めた。
最初は遠くに何か見えてるぐらいだったのだが、徐々にその姿は大きなってきており、確かにミラーカとシャルミナの2人だった。
一緒に歩いている人が2人、そしてその2人の背に抱えられている人が2人。
ミラーカとシャルミナは、その人達を守るように周囲を警戒していた。
やがて2人は俺達の前まで来ると口を開いた。
「遅れてすまぬ。途中でちと面倒な事があっての」
「うん、この人達が襲われてたから助けてたんだっ!それで2人が怪我しちゃって.....だから僕達が護衛に付いてここまで一緒に来たんだよっ!」
なるほど、それで時間が掛かってた訳か。
「よくやった!それで?怪我人の様子は?2人が居て治せなかったのか?」
「いや、怪我は完治しておるが血を失い過ぎての.....まともに歩けるような状態ではなかったのじゃ」
「それでカズキ様が持ってる増血剤を貰おうと思って連れてきたんだ~」
あぁ、アレね。
「いいよ。沢山あるし俺はもう使わないからな.....え~っと.....あった!はいっ、あの人達に渡してやってくれ」
俺はゴソゴソとマジックボックスから増血剤を取り出すと、ミラーカに手渡した。
「ありがとうっ!早速飲ませてくるねっ!」
ミラーカはそう言って怪我人に方へと駆け寄って行く。
「んで?あの人達は何でこんな所に居たんだ?」
「どうやら賊共に追いやられたらしくての.....」
「はぁっ?賊ってあの2層にいた奴等の事か?」
「うむ、そやつ等じゃな」
「それで何で4層に?」
「戻る時に襲われてそのまま3層へと引き返したらしい。しかし3層は極寒じゃからな.....3層では眠る事も難しかった故、4層まで下りてくるはめになったらしいのじゃ」
「いやいや、食糧とか水とか大丈夫なのか?襲われたって言っても結構前だろ?よく生きてたな?」
「魔族は元々頑丈な者が多いからの。多少食料や水が無かろうが人族よりは耐えられるのじゃ」
スゲェな魔族.....
「あ、あの.....この度は助けて頂き、ありがとうございます!」
そう言って俺とシャルミナにお礼言って頭を下げる魔族の青年。
「いえいえ、どういたしまして.....って言っても、俺は何もしてないのでお礼はシャルミナとミラーカの2人に言って上げてください。私はカズキ、冒険者やってます」
「それは勿論です!ですが貴方には仲間の為に増血剤を頂きました!その事に感謝を!.....申し遅れました、私はワーウルフ族のロックと申します。同じく冒険者をしております」
俺がそう言ってロックに手を差し伸べると、ロックはそう返事しながらガシッと俺の手を握ってきた。
「まぁ、まずはゆっくり休んでください。ロックさんも大分お疲れでしょう?水も食料も十分ありますから遠慮しないでくださいね?あっ、私の事はカズキって呼んでください」
「私もロックでいいですよ。助けて頂いたばかりか貴重な水と食料まで.....本当によろしいのでしょうか?」
「勿論ですよ。リロロっ!水と食料ってどれぐらいある?」
「そうですね.....この人数だと3年分ぐらいはありますよ」
「さんっ!?本当にそれ程の量がっ!?」
俺がリロロに確認をすると、リロロの返事を聞いたロックは目を丸くして驚く。
「本当ですよ。なので遠慮はいりませんよ」
俺はロックを少しでも安心させる為、そう言いながら笑った。
「ありがとうございます.....ありがとうございます.....」
ロックはそう言いながら両の目からボタボタと涙を流した。
(さて.....攻略は一旦ストップだな)
俺はそう考えながら車をマジックボックスから取り出すと、ロック達を車の中へと案内するのであった。




