ローグンのダンジョン④
「くそっ!次から次へと鬱陶しいっ!」
「カズキ様っ!まだ来ますっ!」
俺とリロロは今、3層の雪原で次々と襲い掛かってくる狼の魔物と戦っている。
白い毛皮に鋭い牙と爪を持ち、集団で襲ってくる魔物は『スノーウルフ』と言ってとてもしつこく獰猛な事で有名な魔物らしい。
3層へと来た俺達は、4層への階段を探す為にミラーカとシャルミナに空を飛んで偵察に行って来てもらい、その間に俺とリロロはお留守番として下りて来た階段近くで待機していたのだが、その時にスノーウルフ達が襲い掛かってきたのである。
このスノーウルフ、俺達にとっては大して脅威でもないが、とにかく数が多い。
「デカい群って言っても限度があるだろうがっ!!それに動物型の魔物ならちゃんと脅威を感じて逃げやがれっ!」
既にスノーウルフを100匹以上は倒しているのだが、それでも一切怯む事なく俺達に突っ込んでくる。
「雪に足を取られて思った以上に動けませんね!」
リロロの言う通り、雪に足を取られて思ったように動けないのだ。
そのせいもあって、この程度の魔物相手に少し手間取っているのである。
しばらく戦って30分ぐらい経過した後、ようやくスノーウルフを全部退治する事に成功した。
真っ白な雪原はスノーウルフ達の血で真っ赤に染まっていた。
「コレ、他の魔物とか血の匂いで寄ってくるんじゃないか?」
「でも、まだシャルミナお姉ちゃんやミラーカちゃんが戻って来てませんよ?」
「そうなんだよなぁ~.....勝手に動くのは流石に拙いよな.....」
水魔法で洗い流そうとしても水は直ぐに氷るし、土魔法で埋めようと思ってもダンジョンだから穴が掘れないし.....
俺とリロロはどうしたもんかと頭を悩ませる。
っと、その時。
「ただいま~って、何コレ?凄い事になってるね?」
「待たせたのじゃ!しかし、見事に真っ赤に染まっておるのぉ~」
丁度戻ってきたミラーカとシャルミナは、辺り一面に広がる真っ赤な景色を見て驚く。
「おかえり、ってかスノーウルフの団体さんに襲われてな.....」
「数が多いし足場は悪いしで少し面倒でした」
「それより、階段は見つかったのか?」
「うんっ!バッチリ見つけてきたよっ!」
「うむ、あの方角じゃ。階段の前にはボスらしき魔物もおったぞ」
シャルミナはとある方向を指さし、そう言ってくる。
「へぇ~、どんな魔物なんだ?」
「マンモスみたいなやつじゃな。ソレの群が陣取っておったぞ?その中でも一際デカい奴がおったから、多分そいつがボスじゃろうな」
「なぁ、そいつらって無視出来ないのか?別に戦う必要ないんだったらそっちの方が早くて楽だろ?」
俺はそんな事を聞いてみた。
「それは無理じゃな。ダンジョンは次の層へ下りる為にはボスを倒さねばならん。倒すまで不思議な力で下に降りる事が出来ないのじゃ」
「それって誰かがボスを1度倒したら誰でもその後は通れるって事か?」
「それは違うの。通れるのはその時のパーティーだけじゃな。しばらくするとボスも復活して階段への不思議な力も元通り発揮されるようになるんじゃ」
よく分からんが不思議な構造してるって事か.....う~ん。
「そう言えば、戻る時ってどうするんだ?その不思議な力に上るのを邪魔されたりしないのか?それに上れたとしてもボスのど真ん中に戻ってくる訳だろ?」
「戻る時は別に問題ないのじゃ。それにボスは帰りにも倒すぞ?」
やっぱそうなんだな.....ハッ!帰りにもヘラクレス君に出会えるって事じゃないかっ!!
次こそは君を捕まえてみせるぞっ!!
「何かカズキ様が変な事考えてる顔してるよ?」
「アレはロクでもない事を考えてる顔ですね」
「放っておけ.....どうせあの2層のボスの事でも考えてたんじゃろ」
「別に帰りだからって飼える訳じゃないのにね~?」
「はいっ!帰りもキチンと処分します!」
お、俺のヘラクレス君がぁぁぁぁッ!!
「そんな事よりもさっさと次の層へ向かうのじゃ!」
「少し遠いから僕達が抱えて飛んで行くよっ!それなら直ぐに着くと思うしねっ!」
そうして俺はミラーカに、リロロはシャルミナに抱えられ、空の散歩を少しの時間堪能するのであった。
抱えられて空を飛んだリロロは、その辺り一面の銀景色を見てワァッ.....っと感動を漏らしていた。
アレかな?やっぱ犬だから雪の中を走り回りたくなるんだろうか?
俺がそんな事を心の中で思っていると.....
「カズキ様?ただ綺麗な景色に感動していただけですからね?」
っとニッコリと微笑まれて言われた。
(何も言ってねぇよっ!何で嫁さん達は俺の思考をナチュラルに読んでくるんだよっ!!)
俺は心の中でツッコむ。
「カズキ様は分かりやすいと前に言うたじゃろう?」
「だね~、顔を見れば大体分かるよね~」
「フローラちゃん並に分かりやすいですよ?」
.....迂闊に変な事を考えたらソレもバレるって事?
ナニソレ?怖いんですけど?
そんな会話をしながらしばらく空を進むと、遠くに何やら黒い塊の集団が目に入ってきた。
「あそこじゃ!あの魔物の集団の真ん中に階段がある」
「じゃあ次は僕がやろうかなっ!カズキ様にカッコいい所見せないとねっ!」
えっ?あの数をミラーカ1人で戦うつもりなの!?
俺は驚いて思わずミラーカを見上げるのだが、リロロろシャルミナは全く動じていない。
その魔物の集団から少し離れた場所で俺達を下ろすと、ミラーカは意気揚々と魔物へ向かって行った。
「なぁ?ミラーカ1人で大丈夫なのか?俺達も手伝った方が良くないか?」
「あの程度の魔物ならミラーカ1人で十分じゃろ?カズキ様はミラーカを信じられぬのか?」
「違うよっ!ミラーカが負けるとは思ってないさ!ただ、それでも怪我とかしないか心配するのは当然だろう?」
「大丈夫ですよ、カズキ様。あの程度でミラーカちゃんは傷1つ負いませんよ」
心配する俺に、シャルミナとリロロは全然心配いらないと言ってくる。
そんな俺の心配を他所に、ミラーカは巨大なマンモスの魔物の集団へ近づくとズビシッ!!っと魔物を指指した。
「さぁいくよっ!僕のカッコいい所を見せる為に君達には悪いけど倒させてもらうからねっ!」
ミラーカがそう言って両手を左右に大きく広げると、ミラーカの影が広がっていく。
その広がった影からは、ドンドンと黒い獣が湧き出して来る。
「ほうっ.....影の眷属達か.....ミラーカも腕を上げたもんじゃな」
シャルミナがそう言うと同時に、ミラーカは魔物達に向かって腕を振り下ろした。
その瞬間、ミラーカの影から出てきた黒い獣達は次々と魔物へ向かい突進して行く。
その黒い獣、ミラーカの影の眷属達は1体1体が相当な強さを持っており、魔物達はなすすべなく蹂躙されていく。
その時、一際大きな魔物がズシンッ!ズシンッ!っとミラーカ目掛けで迫って来ていた。
「君がボスかな?恨みはないけど覚悟してもらうよっ!」
ミラーカはそう言うと自身の影を鋭く変化させ、そのまま巨大なマンモスの魔物を貫いた。
貫かれた魔物は、そのまま力なく倒れると霧のように消えていった。
ミラーカ自身、ほぼ動く事なくボスを含めた魔物を全滅させたのだ。
まさに圧勝である。
「カズキ様~っ!!見ててくれた~っ?」
ミラーカは遠くから大声で叫び、こちらに手を振ってくる。
「見てたぞ~っ!カッコよかったぞっ!!」
俺も大声でミラーカへそう返しながら手を振り返した。
「ミラーカっ!良い影魔法であったぞっ!腕を上げたもんじゃ!」
「ミラーカちゃん凄いですっ!」
「そうかなっ?えへへ.....」
シャルミナとリロロもミラーカを褒めると、ミラーカは嬉しそうに、恥ずかしそうに身をモジモジと捩る。
その姿は先ほどまでの凛とした姿とは違い、とても可愛らしい。
「じゃあ4層へ下りようか。下りたら休めそうな場所を探して今日はそこで1泊かな?」
「そうじゃな。とりあえずまずは下りてからじゃな」
「そうですね。そろそろいい時間だと思います」
「今日は少し張り切ったから、僕はお腹空いたなぁ~」
「フフッ、じゃあ今日はミラーカちゃんの好きな物を作りますね?」
「本当っ!?わぁ~、楽しみだなぁ~!」
「食べ過ぎて体重が増えぬといいがの?」
「ムッ?僕は沢山動くから沢山食べても太らないのっ!」
そんな会話をしながら俺達は笑い、4層への階段へと近づいて行く。
こうしてミラーカの活躍により、俺達は無事に4層へと降りて行くのであった。




