ローグンのダンジョン③
ローグンのダンジョンに潜り、賊を討伐した翌日.....
俺は辛うじて生きていた。
あぁ.....生きてるって素晴らしい.....
「全く、リロロは少しは手加減せぬか」
「そうだよね~、激しかったよねっ!.....カズキ様、大丈夫?」
「うぅ.....ごめんなさい.....抑えられなかったです.....」
シャルミナとミラーカに攻められてリロロはシュンとしている。
耳はペタンと頭に伏せられ尻尾も足の間に垂れ下がっており、明らかに落ち込んでいる様子だった。
「.....いや、シャルミナとミラーカも同罪だからな?共犯者だぞ?」
俺がジト~っとした目で2人を見つめながらそう言うと、2人はサッと俺から目を逸らした。
昨夜、俺は風呂に入って疲れを癒そうと思ってたんだ。
そしたら3人に襲い掛かられてそのまま喰われたのである。
普段、リロロ1人でも持て余すのにそこにシャルミナとミラーカが加わったのだ。
俺は久しぶりにミラーカの爺さんから貰った薬を飲み、何とか耐え凌ぐ事に成功したのだ。
.....いや、本当にありがとうございます!貴方は命の恩人です!
人生どこでどんな物が役に立つか分からないもんである。
人生に無駄な物など無いとはこの事かと強く実感させられたのだった。
何でこんな事で実感してるんだよ.....
「リロロは本能みたいなもんだから多少は仕方ないにしてもだな.....キミ達はここがダンジョンの中だと言う事を理解してるのか?幸い何事も無かったからいいけど、もし敵が襲ってきたらどうするつもりだったんだ?」
「面目ないのじゃ.....」
「うっ、ごめんなさい.....」
「あの.....すいませんでした.....」
少し怒る俺に対し、3人は素直に謝ってきた。
「今日からダンジョンの外に出るまで、俺は1人で風呂に入ります!」
「なっ!?それは横暴じゃろっ!?」
「反対っ!反~対っ!!僕達も一緒に入りたいよっ!」
「カズキ様っ!流石にそれは駄目ですっ!カズキ様のお身体を洗うのは私の仕事ですっ!」
そう言う俺に猛反対してくる3人。
「駄目です!これはもう決定事項です!.....ってか一緒に入ったらまた今日みたいになるじゃないか!なので3人が何と言おうともこの決定は覆りませんっ!」
俺は3人にキッパリとそう言った。
しかし、ネルが居なくて良かった.....
リロロとネルのコンビを同時に相手するとか、完璧に死んじゃうっ!
俺の決定に3人は不満タラタラな様子だったが、それ以上の反対は口にしなかった辺り自分達でも我慢出来る自信はないのだろう。
こうして俺達は3層を目指す為、出発の準備を進めて行く。
「しかし、こんな森のど真ん中だってのに全然魔物が来なかったな?」
俺は不思議そうにそう言った。
「あぁ、それはの.....よっと!これのお陰じゃ」
シャルミナはズボッと地面から何かを引き抜き、俺に見せてくる。
それは少し大きな白い羽だった。
.....何かめっちゃ見覚えあるわぁ~.....
「なにそれ?」
俺は一応聞いてみる。
「これはアリアの羽じゃな。地面に刺すと半径50mぐらいの結界を張ってくれるんじゃ。魔除けにピッタリじゃぞ?」
「アリアの羽ってそんな効果あんのっ!?初耳なんだけどっ!?」
「アリアは自分の抜けた羽に魔法を込められるのじゃ。コレはアリアから貰ったものじゃな。何でも『カズキ様が旅に出られると言う事は、安全に寝泊り出来る空間を必要とする事もあるでしょう』って言うて沢山くれたのじゃ」
マジかよっ!アリアが有能だとっ!?
「アリアと同格かそれ以上の魔物には効果はないが、まぁ心配はいらぬ。もしそんな魔物がおるならば妾以外は全滅じゃろうな」
アリアと同格かそれ以上の魔物?そんな魔物が存在するならすでにこの世は滅びてるんじゃないかな?
そんな事はどうでもいいか。
とりあえず今度会ったらアリアにお礼を言わないとな。
俺は心の中でそう決めると、準備を進める為に作業に戻った。
「よし!車もマジックボックスに戻したし、準備も完了だ!そろそろ行こうか!」
俺がそう言うと、俺達は3層を目指して森の奥へと進んで行った。
しばらく進むと、何やら他の魔物より大きな魔物を俺達の目は捉えた。
「どうやらあの魔物が2層のボスみたいじゃな。3層への階段は恐らくその先じゃろう」
シャルミナはそう言うが、今の俺の耳にその言葉は入って来なかった。
(ま、まさかっ.....あの見た目.....間違いない.....)
俺はその魔物を見つめながらワナワナと震える。
小さな男の子達のヒーロー、ヘラクレス君ではないかっ!!
俺がまだ小学生の頃、近所に自然が少なく虫や動物なんてのはペットショップにしか居なかった。
その為、小学校にカブトムシやクワガタを捕まえて持って来る子はそれだけでヒーローのような扱いを受けたのだ。
当時、俺のクラスにヘラクレスオオカブトを持ってきた勇者が居た。
当然ペットショップで買って来たヘラクレスなのだが、俺達にそんな事は関係なかった。
俺を含め、クラスの男子達は見事にそのヘラクレスの虜となったのだ!
.....女子はキモ~いって引いてたけどさ.....
「なぁ.....あの魔物って飼えないかな?」
「.....何を言うとるんじゃ?飼える訳なかろ?」
「虫系の魔物はテイム出来ないし、無理なんじゃない?」
「あの、カズキ様?それは流石にどうかと思いますよ?」
俺の言葉に3人は『コイツ何言ってんの?」って目を向けながら反対してくる。
くそっ!諦めてなるものかっ!
「ちゃんと面倒みるからっ!餌も散歩も巣箱の掃除もちゃんと自分でやるからっ!」
「いやいや、駄目に決まっておろうが。それにあの魔物.....肉食じゃぞ?」
「確か.....生きた生物の血肉しか食べないんだっけ?」
「それに性格も獰猛でよく人にも襲い掛かるそうですよ?」
えっ?マジで?餌は樹液とかじゃないの?
「ハァ~.....まぁよい。さっさと倒して先へ進むのじゃ」
「どうする?僕がサクッと殺ろうか?」
「いえ、ここは私が行きます!」
そう言ってリロロがスッっと前へ出る。
リロロの動きに反応し、ヘラクレス君は大きな羽を広げ威嚇の体勢を取る。
「行きますっ!」
そう言ってリロロが踏み込むと、次の瞬間ヘラクレス君は跡形も無くバラバラに砕け散ってしまった。
あぁぁぁぁぁぁッ!!ヘ、ヘラクレスくぅぅぅぅぅぅんッ!!!
「相手にもなりませんね」
リロロはそう言って自分の手をパンパンと払う。
俺のヘラクレス君が一瞬でバラバラにされてしまった.....シクシク.....
「ねぇ.....何かカズキ様凄く落ち込んでない?」
「あ、あの.....何か拙かったでしょうか?」
「放っておけばよいのじゃ.....全く.....妾達には大した魔物ではないが、他の者にとっては危険な魔物なんじゃぞ?それを外に連れ出して飼いたいなんぞ言われても駄目に決まっておろうが!」
アッハイッ.....ごもっともです。
シャルミナの言う事は分かる。分かるんだが.....
それでも俺にとっては憧れの昆虫なんだよ!サイズは少しデカ過ぎるけど.....
こうして俺は、バラバラになったヘラクレス君を名残惜しそうに見つめながら3人に引っ張られて3層への階段を下りて行くのであった。
出てきたのがGであれば、迷わず即殲滅なんだけどね!




