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突然!異世界ライフ~とりあえずのんびり生きていこうと思います~  作者: おる・かん
第1章・ミーアゼルクの浮遊大陸
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俺の知ってる農業と違う②

ジャガイモが列を成して歩いて自ら籠にダイブしていくという目の前の異常な光景。

ハッキリと言おう!少しどころか物凄くドン引きだよっ!

えっ!?もしかして普段、あんなキモイの食べてたの!?

こっちの世界じゃこれがありふれた農業の正しい姿というものなんだろうか....

いやぁ....異世界怖いわぁ.....何か一気に地球に帰りたい気持ちが強くなってきたぞ。

周りを見渡してみれば、カイエンはさも当然とばかりの顔をして収穫を見つめていたが、リロロとミラーカは若干顔を引き攣らせながら苦笑いしている。

ん?これが普通って訳じゃないのか?

2人の態度からそう判断し、2人に聞いてみる事にする。


「リロロ、ミラーカ、この収穫の状況って....これがこっちの世界じゃ普通なのか?」

「いえ、全然違います....私もここに来て初めて見た時は、あまりにも異常な光景に言葉を失いました」

「僕もです....僕の知ってる農業と全然違ってて茫然としました....」

「あぁ....やっぱ今、目の前で起こってる事は異常なんだな....なんでこんな事になってんの?」

「それは私からご説明させて頂きます!」


アリアがそう言って一歩前に出てくる。

気のせいか若干テンション上がってない?


「ここの野菜達は皆、ミリア様の魔力と神力をふんだんに含まれた土を使い作られております」


んっ?何か不穏なワードが聞こえた気がする....

オラ、嫌な予感がしてきたぞ....


「ミリア様の素晴らしいお力のおかげで、ここの野菜達はほぼ放置しておいても自分達で勝手に育ちます。

ああ、お水だけは新鮮なお水しか飲まないのでこちらが交換する必要はありますが、それ以外はほぼ手が掛かりません。時期が来るとあのように妖精族達が歌って起こし、収穫の時を知らせているのでございます」


説明されたはずなんだけど何一つ理解できねぇ....

唯一分かった事といえば....

母さんのせいって事だけだ。一体何やらかしたんだよっ!!


「ごめん...イマイチ理解できなかったから、もう少し砕いて、分かりやすくお願い」


こんな頭のおかしい話を理解できる奴がいるなら見てみたいわ!

あっ....やっぱ今のナシ。

目の前にいたわ....理解しそうな奴....


「畏まりました。では、元々この場では普通の土を使い普通に農業を致しておりました。保護した者達の仕事の斡旋という目的もございましたが、自給自足は必須でございましたので。それである日、ミリア様が美味しい物が食べたいという事でお力をふるわれました。そうしました所、ミリア様のお力に触発されたのか、野菜達が自我を持ち始めたのです。そのおかげで雑草や害虫等は自力で排除し、水分が必要な時には土から出てきて水を飲み、また土の中に戻って行く行動をするようになりました。各野菜達で多少の違いはございますが、ここの野菜達は概ねそのような野菜達なので、この広大な範囲の畑を今の人数で問題なく回せるようになったのでございます」


....どうしよう。何となくわかったけど理解したくないんだけど....

前から思ってたけど、アリアって母さんのやらかした事を素晴らしい偉業みたいに捉えるよね?

やっぱ眷属だから母さんのやる事=素晴らしい!

って図式でもあるのかね??


「そのおかげで味や品質は最高級品でさえ上回り、偶然ですが副次的効果に食べた物の身体能力や魔力を微増する効果も持つようになりました。まぁ、こちらは上昇の限界に個人差もございますが....」


皆がやけに強いのもそのせいかよっ!!

つまり話をまとめると....

母さんが美味し物食べたいから頑張ったら野菜が不思議生物に変わった。美味しくなった上に何故か食べたらパワーアップするようなドーピング食材になった。

こういう事か?

何やってんだよ....頭痛ぇな。


「あぁ、うん、そうなんだ....よく分かったよ。ありがとね」

「お役に立てたようで光栄でございます。また何かあればなんなりとご質問くださいませ」

「あっ、じゃあ早速いくつか聞いていい?この野菜達って逃げたりとかしないの?」

「それはございません。美味しく食される事が野菜達の目標でございます。ミリア様のお力を下賜して頂きながら、その目的に沿わぬ物など....存在する価値はございません」


そう言いながらアリアがチラリとジャガイモの方を視線を向ける。

心なしか、ジャガイモ達が強張ってるように思えるが、気のせいだろう。

気のせいって事にしておこう。


「そういや、親父の友達の人の国と交易してるんだろ?こんな不思議食材とか出して大丈夫か?色々パニックになるんじゃないのか?」

「ご心配ございません。交易で卸す分は、あちらに御座います品質管理棟にて魔力と神力を抜いた物を使用しております。若干味は落ちるのですが、それでも地上では高級品レベルの品質となっております」


なるほどねぇ~。そこら辺りはちゃんと考えてるのか。

どうやって魔力とか神力を抜いてるんだろう?って少し気になるけど、なんか怖いから別に知らなくていいや。

世の中には知らない方がいいって事もあるのだ....


「ん?なんだ?カズキは見るの初めてなのか?」


今まで静かに作業を見ていたカイエンがそう聞いてくる。


「初めて見たよ。正直想像もしてない光景でビックリした」


そんな俺の言葉に、カイエンは笑いながら


「まぁ、ここに来て初めて見る奴はみんな同じように驚くからな!俺みたいにここで生まれた奴らはこれが普通だからなぁ....逆に地上の農業の様子ってのは学校で習っただけで実際に見た事ね~からなぁ」

「へ~、まぁ、全然違うぞ?こっちが同じか分からんけど、俺の住んでた所だと野菜は勝手に動かないし、手入れも人がしないといけないからな」

「大変なんだなぁ....あっ、そろそろ収穫も終わりそうだけど、この後はどうするんだ?品質管理棟の方も見学するか?」

「うーん...今日はやめとこうかな。それより収穫した後の畑ってどうするんだ?」

「?普通に次のジャガイモ育てるけど?次の種イモを植えたら勝手にまた育つぞ。ミリア様のおかげで温度や湿度もその野菜に適した環境を維持してるし、土も痩せる事ないからな」


母さん....そんな事までしてんのかよっ!

食べ物の為にちょっと本気出し過ぎじゃないですかね?


さて、収穫も終わったしどうしようかと考えていると、ソウカがこちらに向かって歩いきているのが目に入る。

ソウカは俺の前でくると


「カズキ様、いかがでしたか?」

「いや、すごかったよ。ホントにね.....あっ、皆に見学させてくれてありがとうって伝えといてね」

「はい。そのお言葉で皆も喜ぶでしょう。それで、もし宜しければ収穫したジャガイモを使って昼食などはいかがでしょうか?皆もカズキ様に料理を振るまいたいと張り切っておりますので」


いやぁ~...あの光景を見たらキツイっす....

って言いたいんだけど、流石に皆の気遣いを無碍には出来ない。


「じゃあ、お言葉に甘えてご馳走になるよ」

「はい。では準備して参りますのでそれまではごゆっくりとお寛ぎください。カイエン、カズキ様をご案内してさしあげなさい」

「分かった!こっちだカズキ!」

「あなたって子は.....ハァー...」


カイエン...君も学ぼうよ....

ソウカか小声で『模擬戦はもっと厳しくしないといけないわね...』って呟いてるぞ....


カイエンに案内され、少し開けた場所にあるテラスみたいな場所に移動する。

へぇ~...良い場所だなぁ。開けてて景色も良いし、木造作りの落ち着ける場所じゃないか...

ここでキャンプとかしたら楽しそうだなぁ。

それにしてもどんな料理が出てくるんだろう....

まぁ、見た目はアレでも、普段食べてる物は美味しいからな....

そんな変な物とかは出ないだろう!うん、美味いは正義だ!深く考えるのはやめよう!

思考を切り替え、リロロにお茶を入れてもらい、みんなと他愛のない会話をしてのんびりと料理が出来上がるのを待つ。


しばらくすると料理がどんどん運ばれてくる。

ジャガイモのバター焼き、コロッケ、ポテトサラダ、ジャガイモのポタージュ、グラタンなどジャガイモをたっぷり使った料理が俺達のの目の前に並ぶ。

料理を作っていたソウカや収穫をしていた人達も続々集まり、場は軽い宴会みたいな雰囲気になった。

妖精族の子達が楽器を手に、演奏や歌声を披露してくれ大盛り上がりだ。

俺の近くにいた牛系獣人のおっちゃんはとても気さくでいい人だった。

おっちゃんの話だと、昼からはトマトと大根も収穫にいくらしい。

あ....やっぱり時期とか関係ないのね....

それはいいんだけど、笑いながら背中をバシバシと叩くのはやめてほしい....

おっちゃん、デカいし力も強いから痛いんだよ....


昼食も終わり、皆にお礼を言って、俺達はソウカの屋敷に戻る。

道中、衛生管理棟の中も見学するかと聞かれたが、遠慮しておいた。

....だって近づいたら、何か悲鳴みたいなの聞こえたんですけど?一体中で何してんの!?

だから俺は見ないぞ!見ないったら見ないのだ!

あっ!やめろっ!無理矢理引っ張っていこうとすんなっ!!


なんとか回避し、ソウカの屋敷に戻れた時の俺のこの達成感よ...

....何かこっちで暮らすようになって心労がドンドン溜まっていってる気がするけど、気のせいだよな?


帰宅に向け、リロロとミラーカが準備してくれている中、俺とアリアはソウカとカイエンに挨拶をしている。

まぁ、アリアは控えてくれてるだけなんだが。


「今日はありがとう、おかげで楽しかったよ。皆にもお礼と料理美味しかったって伝えといてね」

「こちらこそ、今日はわざわざ起こし頂きましてありがとうございました。皆には間違いなく私から伝えておきます。皆も喜ぶでしょう」

「うん、ありがとね。じゃあそろそろ帰るよ」

「カズキ!俺も付いて行くぜ!明日は休みだからな!へへっ、戻ったら模擬戦しようぜ模擬戦!」


分かれの挨拶を終え、帰ろうとした俺にカイエンがそう言い付いてこようとする。


「カイエン?どこへ行く気なのかしら?あなたはこれからたっぷりと私と模擬戦ですよ?さぁ、行きますよ。時間はたっぷりとあるみたいですからね。今日という今日はしっかりとお灸を据えるので覚悟なさい!ではカズキ様、どうかお気を付けて御帰りくださいませ」


そう言ってカイエンはソウカに首根っこを掴まれ、引きずられて行く。


「えっ!?ちょっ!?母ちゃん待ってっ!カズキ!助けてくれっ!!」


カズキ~!っと叫びながらズルズルと引きずられて遠くなっていくカイエンを見つめながら


「....帰ろっか...」


と呟き、帰路に着くのであった。










帰宅してから深夜、俺は中々ベッドの中で寝つけないでいた。

ずっとある事が気になっているのである。

....皆が強い理由は今日なんとなくだけど分かったけどさ...

皆は復讐しようとか考えないんだろうか?

カイエンみたいにこっちで生まれた人以外は、保護されてここにいるのである。

つまり辛い思いをしてきた者達だ。

力が無く虐げられてきた者達....

でも今は力を持っている。得てしまったのだ。

そうなると憎悪を募らせ、復讐心に捕らわれる者が出てきてもおかしくないはずだ。

しかし普段、自分の周りにいる人達や、今日出会った人達も皆、幸せそうに、楽しそうに笑っていた。

もうとっくに復讐を終えているのだろうか?

復讐心に蓋をして、耐えてるのだろうか?

それとも既に気持ちを切り替えて忘れる事にしたんだろうか?

そんな疑問が頭に浮かんでくる。

ただ...別に彼等が、彼女達がどんな答えを持っていようとも自分は構わない。

復讐したいのであれば、出来る範囲でなら力を貸したいとも思っている。

忘れたいのであれば、極力触れないように振る舞うつもりでいる。

我慢しているのであれば、その思いを自分にぶつけて楽になれるのならそれも受け止めようとも思う。

本当にほんの少し気になっただけ、ただそれだけの事である。

....皆を守れるように、俺にも出来る事、探さないとな....

徐々に遠のく意識の中、俺は改めて決意を固めたのであった。

~キャラ設定メモ⑥~

本名:リロロ

種族:獣人(犬系)

性別:女

身長・体重:148cm・46kg

年齢:18歳

好きな食べ物:肉類、スイーツ

嫌いな食べ物:たまねぎ、辛い物

戦闘スタイル:愛用の大槌を手に身体能力を武器に戦うパワータイプ

容姿:黒味掛かった茶色の髪色で耳としっぽも同色。可愛い顔とは裏腹に胸部装甲は凶悪、いわゆるロリ巨乳である。

性格・その他:ヒロインの内の1人。大人しくて真面目。鼻や耳はとても良い。

村が戦争に巻き込まれそうになり、村が助かる見返りとして村人や両親から裏切らて貢物として差し出される。手枷を嵌められ、檻に入れられて絶望状態の中で街まで運ばれている途中に情報収集班の面々に助け出されて保護される。

天賦の才を持ち、メキメキとその才能を発揮させるが、魔法は苦手である。

秘密は匂いフェチであり、実はコッソリと隠れてカズキの脱いだ衣服の匂いを嗅いでいる事がある。

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