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精霊神ティターニア

「ここが祈りの間です。」


祈りの間は神殿の入り口付近にあった。


(こんな入り口の近くにあって大丈夫なのでしょうか?賊が来たときに一番やられてはいけないところは祈りの間だと聞いたことがあるのですが・・・。)


ユリアが心の中で心配していると振り返ったアヴィオがまるでユリアの心の中を読んだかのように言った。


「こんな入り口付近にあって大丈夫なのかと思われるでしょうがご心配はいりません。この祈りの間には精霊神ティターニア様の結界が貼られているので、この神殿を奪おう、乗っ取ろうと考えている者は絶対に入ることができません。」


「そうなんですね。」


ユリアはうなずいた。


「それでは中へどうぞ。」


アヴィオは両開きの扉を開けてユリアたちを中に招き入れた。


「わあ!」


ユリアは思わず声をあげた。


それほどまでに祈りの間は幻想的な雰囲気で美しかった。


精霊神ティターニアの象徴と言われる銀色がいたるところにちりばめられている。


反対に精霊神ティターニアと真逆の神と呼ばれる暗黒神ディアルの象徴である黒や赤はどこにもなかった。


「ユリア嬢、この銀の絨毯の上に靴を脱いで正座してください。」


アヴィオはユリアに言う。


「わかりましたわ。」


ユリアは部屋の前方の祭壇の前に敷いてある銀の絨毯に正座した。


「精霊神ティターニア様にお祈りを。どうかここにあらわれ我々にお導きをくださるように。」


アヴィオはユリアに指示を出す。


「わかりました。」


ユリアは胸の前で手を組む。


そして心の中で精霊神ティターニアに呼びかけた。


(精霊神ティターニア様。どうか私の前にあらわれ我々にお導きをください。)


ユリアが祈り始めてから少し経つと祭壇が淡く光り始めた。


「あら、やっぱり少し透けているのね。」


不意にどこからか鈴を転がしたような可愛らしい声が響いた。


「精霊神ティターニア様?」


声の主の女性はユリアの目の前に立っていた。


「初めましてユリア・・・私の愛し子。やっと会えたわ。」


女性・・・精霊神ティターニアは心底嬉しそうに微笑んだ。


「ティターニア様・・・ですか?」


アヴィオが震える声で尋ねた。


「ええ、そうよ。貴方が今代の大神官なのね。会うのは初めてよね。」


精霊神ティターニアはアヴィオを見て優しく微笑んだ。


「はい。お初にお目にかかります。大神官のアヴィオと申します。」


アヴィオは深々と礼をする。


「うふふ。そんなに固くならなくて大丈夫よ。私はもう精霊王ではないのよ。私を崇める意味が分からないのよ。まあ崇められて嬉しくない神はいないけれど。」


「それは精霊神ティターニア様が初代精霊王であったということが大切なのです初代精霊王であせられたティターニア様がいなければこの世はなかったでしょう。精霊達を生み出したのが精霊神ティターニア様なのですから。」


アヴィオは言う。


「そんなに言われると照れるわ。」


精霊神ティターニアは頬を染めた。


「それで、何のようなのかしら?」


不意にティターニアは真面目な顔になって言った。


「ヴィ―ルヘミア王国にいるはずの私の愛し子はなぜラピスラズリ大帝国にいるのかしら。」


「それは私が説明いたします。」


ユリアは顔をあげた。


「あら、愛し子自ら説明してくれるの?うれしいわ。」


ティターニアはユリアをたたせる。


「私はヴィ―ルヘミア王国で偽物と呼ばれ国外追放されたのです。そして死の森で皇太子殿下に拾っていただき、怪我をした殿下の傷を治した術が治癒術ではなく精霊術であったことで私が本当に精霊の愛し子なのか精霊神ティターニア様に教えていただきたかったのでまいりました。」


ユリアが言うとティターニアは目をつり上げて怒った。


「まあ!そんなことがあったの?私最近忙しくて下界の様子を見ることができなかったの。愛し子がそんなことになっているだなんて・・・気づけないだなんて・・・本当にごめんなさい。」


ティターニアはしょんぼりとして言う。


「やっぱり貴女はラピスラズリ大帝国に産まれさせるべきだったかしら?ラピスラズリ大帝国とヴィ―ルヘミア王国の戦力の差、国力の差を少しでも埋めようと思って私の愛し子をヴィ―ルヘミア王国に産まれさせたのよ。」


「そう・・・だったのですか・・・。」


ユリアがつぶやく。


「それにあなたはラピスラズリ大帝国の第1皇家の血筋の者なのよ。」


ティターニアの言葉にユリアはもちろん皇太子も驚いた。


「わ、私が皇家の人間・・・ですか!?」


「ユリア嬢が第1皇家の血を引いている?」


ティターニアは二人の驚きようにクスクスと笑った。


「ええ、そうよ。ユリアのお父様、貴方は知っていたのよね?ユリアが帝国の血を継いでいると。」


ティターニアはロバートを見つめた。


「はい、存じておりました。」


ロバートは静かにうなずいた。


「整理した方が速いわね。ユリア、貴女の父方のおばあ様はどこの出身だったかしら?」


「あ・・・ラピスラズリ大帝国の第1皇家の本家本流だった気がします。」


ユリアが言うとティターニアはうなずいた。


「そうよ。あのクリムゾン家の長女だったのよ。それで貴女のおじい様と大恋愛して、敵国であるにも関わらず嫁いでいったのよ。だから貴女はラピスラズリ大帝国の第1皇家の本家本流、クリムゾン大公家の血筋を継いでいるの。確か今の当主はハル・クリムゾンではなかったかしら。当代の精霊王の契約者よ。」


「つまり私は当主様のはとこということですか?」


ユリアが尋ねた。


「ええ、そういうことになるわね。きっと行けば保護してくれると思うわ。そんなに冷たい子ではないと思うわ。」


ティターニアは提案する。


「王国への復讐もやりやすいと思うわ。なんせクリムゾン大公家は軍のトップなのだから。頼めば戦争も起こしてくれると思うわよ。」


ティターニアは面白そうに笑う。


「わかりました。クリムゾン大公家に行ってみます。ありがとうございましたティターニア様。」


ユリアが頭を下げるとティターニアは嬉しそうに言った。


「愛し子の呼び出しだなんて何年ぶりかしら。うふふ。また何かあったら遠慮なく呼んでちょうだい。」


その言葉を最後にティターニアの姿は薄れて消えていった。










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