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怪我の行方と治癒の精霊術

本日二話目です。

「ここがわが軍の駐屯地だ。」


シオンに連れてこられたのは死の森の南はじだった。


「あの、ここはまだヴィ―ルヘミア王国領だと思うのですか・・・。こんなところに駐屯地だなんて大丈夫なんでしょうか?」


ユリアが尋ねるとシオンは言った。


「ヴィ―ルヘミア王国側は死の森を嫌っている。ユリア嬢とロバート殿のように死の森にいること自体が驚きだよ。何かしらの事情があることはわかった。とりあえずこっちに。」


シオンは駐屯地の中を進む。


すれ違った軍人たちが次々と振り返った。


「誰?」

「あの皇太子殿下が女を連れてるだとっ?」

「死の森でドレスって。どんな罪でこんなところに来たんだろ。」

「勝手に保護したら総帥閣下に殺されるっていうのに。」


ひそひそと軍人たちが話す。


「ここが私のテントだ。中に入って。」


シオンは駐屯地の奥の方にあるそこそこ大きなテントに入った。


「お帰りなさいませ、殿下。・・・そちらの女性と男性は?」


テントの中央にある大きな丸机に地図えお広げて思案している5人組のうち1人がシオンの帰りに気づいて顔をあげた。そしてユリアとロバートの存在に気づいて顔を顰めた。


「・・・レイ。そんな顔をするな。私の命の恩人に対して失礼だろう。」


シオンが顔を顰めていた男性、レイに言う。


「・・・殿下。弱みでも握られましたか?」


レイは真顔で尋ねた。


「そんなわけあるか!私が運悪くAランクの魔物、グリフォンに遭遇して怪我をしてしまったときに助けてくれたのだ。グリフォンを倒すことが出来る精霊術師だ。」


「精霊術師ですか!?それは貴重ですね。・・・それはそうと怪我をした・・・とおっしゃいましたよね?どこを怪我したのですか?すぐに治癒術師を呼びましょう。」


シオンの言葉に慌てたレイにシオンは言った。


「悪いがその必要はない。」


「はい?」


振り返ったレイが目を丸くする。


「なにを言っているのですか?怪我をしたんですよね?治してもらわなくては悪化しますよ。」


レイが言う。


「私の言葉が足りなかった。安心しろ。もう傷はない。」


「は?」


シオンが言うとレイはシオンに掴みかかった。


「いや、ふざけてるんですか?さっき怪我をしたって自分で言いましたよね?」


「落ち着けレイ。殿下が苦しそうだ。」


丸机を囲んでいた残りの4人が慌ててとめに入る。


「説明するよ。私は今日の夕方からBランク相当の魔物を狩りに死の森に行った。そこで悪運の強い私はグリフォンと会ってしまった。」


「ほんと殿下って運悪いですよね。この前のこと、総帥閣下も笑ってましたよね。笑ってる総帥閣下って初めて見たな。」


シオンの話に1人が茶々を入れた。


「黙っててくれるかなエル。話の途中なんだけど。」


「すみませんでした!」


シオンが怒るとエルと呼ばれた騎士が笑いながら謝る。


「グリフォンと会った・・・というのは悲劇だったが私の実力はAランクにぎりぎり届くぐらいだから何とかなるだろうと甘く見ていた。」


「自信過剰ですよね。」


レイが口をはさむ。


「・・・レイ?」


シオンがにっこりと笑いレイを見る。


「な、何でもないです。」


レイは震えあがり縮こまった。さっきまでの様子が嘘みたいだ。


「グリフォンと遭遇して、最初の一撃を腹に食らってしまってね。ろくに戦えなくなってしまったんだよ。」


シオンの言葉にさすがの5人も黙り込む。冷静に見極めればグリフォンの最初の攻撃くらいは運動神経が相当悪くなければ避けられるはずだ。・・・とユリアは内心思った。


「・・・それで、湖のところまで何とか逃げて来たんだけど・・・草に足をとられて転んじゃってね。そこをユリアに助けてもらったんだ。」


「・・・話はよく分かりました。ですがこの話のどこにも傷が治ったという話はなかったですよね?」


レイが威勢を取り戻す。


「それはまだ話していないよ。そのあとにハイヒールで傷を治してくれたんだ。傷がなくなったんだから正直言って驚いたよ。」


シオンが言う。


「殿下のおっしゃることですから嘘はないと信じたいのですが・・・あまりにも荒唐無稽な話ですね。治癒術師でさえ腹を掻っ捌かれたような傷は完全に治すことなど不可能だというのに。こんなどこの家の令嬢かすらわからない女に治されたと言われても・・・信じられるわけがないでしょう。」


エルが真顔で言う。


「・・・ユリア嬢。エルたちが信じてくれないから実演してくれないか?」


「私は構いません。」


シオンはユリアに尋ねた。ユリアは笑顔で了承した。


「救護テントに行きましょうか。」


エルが言うとシオンはうなずいた。








「・・・怪我人の数が半端ないですね。」


救護テントに到着し中を見たユリアが思わず言う。ロバートにいたっては顔を背けている。それが当然の反応だ。


「この中から1人選んで傷を完全に治してください。」


エルが言う。


「1人だけでいいんですか?全員治すこともできますが・・・。」


ユリアが言うとエルたち5人とシオンが驚く。


「全員!?」


「まさかいっきにという意味ではないよね?一人ずつという意味だよね?」


シオンが確認する。


「全員いっきにいけますが・・・?」


ユリアが不思議そうにそれが当たり前かのように言う。


「そ、そうですか。大口を叩いておいて失敗するということは許しませんからね。」


エルが顔を引き攣らせながら言う。


「はい、もちろんです。」


ユリアはうなずいた。


「それではいきます。」


ユリアは深く息を吸った。


手を部屋の怪我人達に向ける。


範囲は部屋全体だ。


『ハイヒール』


ユリアが唱えた瞬間苦しんでいた怪我人達が静かになった。


皆寝息をたてて寝ている。


「さすがだ!」


全ての怪我人達の傷がないことを確認したエルは感嘆する。


「これで貴女が殿下の傷を治したという話に納得できました。素晴らしい治癒術です。」


「いえ、これは治癒術ではありません。精霊術です。」


ユリアが否定すると、エルはさらに驚いた。


「精霊術ですか?治癒術ではなく?」


「はい。」


ユリアはうなずく。


「殿下。これは精霊神ティターニア様に直接確認しなければ!もし精霊術で治癒を使うことが出来るのならば彼女は精霊の愛し子ということになります。」


エルが進言する。


「そうだな。ユリア・シェーラと聞いた時から思っていたのだ。そなたヴィ―ルヘミア王国の精霊の愛し子ではなかったか?」








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