VRMMOの物語
永久とも感じられる淡い時のなか抱き締めあっていたアラヤとユエはリネイシアの花々に囲まれる様に寄り添いながら座わり此までの歩みを話した。
アラヤはシドやクレスとの特訓。
五大ギルド会議に乗り込んだ時のこと。
現実での木戸健哉や真田守との出逢いから和解。
母親の事やその時自分が抱いた想い、父親とのすれ違いと和解。
ユエは事故に遭う前の自分。
事故に遭ってからジェネティクノーツで意識を取り戻してからの感情。
今までのジェネティクノーツでの生活。
二人はお互いの話を決して忘れないように心に刻むように真摯に聞いて喜怒哀楽の感情を表しながら時には相槌をうちながら聞いていた。
話し終わったアラヤとユエだがまだお互い言ってないことがある。
それは
「ユエ俺は…」
アラヤが隣に寄り添って座っているユエに
(君のことが好きだ)
お互いのお互いに対する感情つまり好意だ。
アラヤが自分の気持ちをユエに告げようとした瞬間
「アラヤ君私決めたよ」
アラヤに告げる。
「ユエ…」
アラヤはユエの突然の宣言にユエの名を溢すとユエは立ち上がった。
立ち上がったユエは後ろで手を組むと数歩先を歩くと立ち止まった。
アラヤも立ち上がり前で立っているユエを見ていたら
「私ね、ログアウトするよ。
前まではねジェネティクノーツが終わるその日まで居ようと思ってたの。
終わる事になるとしてもできるだけ長い時間生きたいと思っていたから。
確かに70%の確率で成功するのだとしてもやっぱり絶対ではないし怖いから。
でもね」
そこまで告げるとユエは手を後ろに組んだままクルリと振り向くと眩しい笑顔で微笑んだ。
「逢いたいんだ」
「逢いたい?」
(誰に?)
疑問に思うアラヤに
「私ジェネティクノーツ内のアラヤ君だけじゃなく現実のアラヤ君にも逢いたいから」
(現実の俺…)
アラヤは目を瞑り軽く息を吐き目を開けると
「ユエ俺は…」
ゲームと現実とは違う、現実の俺を見た失望するかもしれないそう伝えようとた。
それはそうだ幾ら現実の自分を話そうと変わらないものがある。
それは……自分の容姿だ。
ゲーム内のアバターはあくまで自分が作製した理想のものである。
アラヤのアバターはまったく現実と違うかと云うとそうではない。
細かな細部や顔つきは違えどほとんど現実の容姿と同じだ。
だが、人の気持ちとは難しいものだ、自分の理想や想いと少し違うだけで簡単に変わってしまう。
アラヤもアバターの自分は知っているが現実の自分は知らないユエが現実の自分を見た時失望するかもしれないと。
ユエがそんな人間ではないとユエと接して分かっているがそれでも不安に思ってしまうのは人として仕方のないことだ。
だからこそ、そう口にしようとしたアラヤに
「しないよ。
例え君の姿が今のと違うとしても私は絶対に失望なんてしない」
まるで心を読んだように告げる。
その表情は笑顔で微笑んだままだが嘘偽りを感じさせない。
「私ね欲張りなんだ。
ゲームの中だけじゃなくて現実でもアラヤ君と手を繋いだりカフェに行ったり散歩したり海や山色んな所に行ったり喜んだり喧嘩したり哀しんだり、笑いあったり一緒の時を過ごしたいんだ。」
恥ずかしげもなく気持ちを真っ直ぐ言葉にして紡ぐユエ。
ユエの言葉を聞いたアラヤは目頭が熱くなった。
(ああ、涙が出そうになる)
悲しみからではない嬉しさから涙が出そうになった。
「ああ、ああユエ俺もだ!ゲームの中だけじゃなくて現実でも君と一緒に色んな事を経験を思い出を積んでいきたい」
アラヤの言葉にユエは頷いた。
「だからねアラヤ君此れは諦めからではない自分で、未来を信じ決めたうえの選択だよ」
その時まるでユエの決意を祝福するかの様に風が吹きリネイシアの花弁が宙を舞いユエを包んだ。
それは正に幻想的な美しさだった。
その姿を見たアラヤの瞳からは涙がツーと伝った。
「分かった。
俺はユエ、君の覚悟を尊重するよ」
見合っていたアラヤとユエ。
アラヤはユエにそういえばまだ現実での名前を言ってなかったと思い
「ユエ俺の名前だが…」
口を開いたらユエがアラヤに近寄りアラヤ口を塞ぐように唇に人差し指を当てた。
驚き目を見開くアラヤに
「アラヤ君約束しよう」
下から見上げるようにし告げた。
「お互いの名前は次に逢った時に言おう」
それはつまり必ず無事に意識を取り戻しアラヤに会いに来ると信じていると云うユエからの宣言だった。
アラヤの唇から人差し指を離したユエに
「いいのか」
それはそんなので名前でいいのかと思うアラヤの問いだった。
問うアラヤにユエは淡く笑い
「アラヤ君、後にご褒美があると分かっていると頑張ろうと云う気になるでしょう。
だから次に逢った時のご褒美ね」
と無邪気に告げるユエに
「分かったよ、ユエ次逢った時の約束だ」
アラヤは無邪気に笑い応えた。
「じゃおまたねアラヤ君」
「ああまたなユエ」
その後アラヤとユエは何ヵ月、何年経とうと必ずまた逢おうと誓い分かれた。
リネイシアの花園でユエが手を振り去っていく姿を手を振り返し見送っていた。
ユエの姿が見えなくなるとアラヤは手を下げた。
(ユエ、待ってるよ。
例え何年何十年経とうと必ず君が無事に戻ってくることを)
暫く立ち尽くしていたアラヤはストレージを操作しメッセージを開くとそこにはクレスやシド、ルビィ、ハルアキ、やフレンド交換しているプレイヤー達からメッセージが届いていた。
励ましや称賛からかう様な迄様々な内容のメッセージに苦笑しながら見たアラヤは返信をしメッセージを閉じリネイシアの花々を周りを見ながら
「此で俺のやるべき終わった。
いや始まりか。
しかし皆には大分苦労を掛けてしまったな」
呟くアラヤはある決意をしていた。
それはラインハルトとのPVPを終えユエに逢い気持ちを伝えた後は暫くジェネティクノーツにログインはしないと。
やっと父親とも分かりあ得たのだ今までの分を埋めるぐらい共に色んな場所に行ったり過ごそうと決めていた。
これは父親だけではなくクレスやシド、先程話していたユエには伝えていた。
クレスやシド、ユエは賛同するなか父親は気を遣わなくていいと遠慮したがアラヤがそうしたいと伝えると了承した。
此からの父親やクレスやシド、ユエとの未来様々な想いをはせながらアラヤはログアウトをした。
それからのアラヤこと荒木連夜の日常は以前とはまったく違うものに変化した。
父親は相変わらず寡黙なままだが昔と違いよく話すようになり共に山に海にテーマパーク等行ったりもした。
俺には寡黙な表情の父親が内心喜んでいるのが分かった。
学校では木戸や守と過ごすことが多く生徒、教師も含め周りからは意外な三人だと目を丸くし不思議そうにしていた。
木戸と守については学校だけじゃなく休日に三人で遊んだりもした。
まぁ、だいたい俺に木戸が勝負を挑み買ったり負けたりそれを見て笑う守といった風だ。
勿論現実だけではなくジェネティクノーツでも三人でクエストを受ける事が多くなった。
一回木戸…シドにはオリュンポスギルドの方は大丈夫ぶかと聞いたがラインハルトからは許しは出てるとのことだ。
ちなみにそのラインハルトからは三回目のPVPを何時にしようかと催促がくるしあのPVPを観た他の五大ギルドのギルド長達からもPVPをしないかとくるようになった。
後特別な事と言えばジェネティクノーツによる各国のサーバーが代表の10人を選出し団体戦で戦うWGGに日本サーバー代表の10人の内の一人に選ばれ出たことか。
まさか五大ギルドのギルド長とチームを組むとは思わなかったが。
そうした昔とは違う充実した日常のなか想うのはユエのこと。
雪が降り積もるように雨が降り溜まるようにユエへの想いが溢れ積もっていく。
逢いたい・話したい・手を繋ぎたい・共に歩きたい・食事をしたい・笑い逢いたい様々な想いが願望が溢れていく。
(ユエは君は無事に意識を取り戻したのだろうか、今はリハビリ中だろうか、笑って生きてるのだろうか、ユエ君に話したいことが沢山ある)
ラインハルトに勝ちユエと別れたあの日から二年がたち俺は高校三年生になった。
高校三年からは大学への進学を決めていたので勉強の日々で前の様に頻繁にジェネティクノーツにログインすることはなくなった。
大学合格するまでの我慢だ……とはいってもたまに息抜きでログインするが。
それでも木戸や守との付き合いは変わらず続いている。
そんななか守から久しぶりにログインしようと話しになりジェネティクノーツにログインしたら一通のメッセージが届いていた。
俺は差出人を見ると勢いよく駆け出した。
メッセージには
fomeユエ
約束の場所で待ってるよ
俺がリネイシアの花園に着くとそこには一人の少女が俺に背を向け佇んでいた。
少女の姿を見た俺は涙が溢れそうにいや、溢れていた。
少女に近寄り名前を呼ぶと少女は振り返り俺の名前を呼ぶ。
俺達はリネイシアの花々に彩られながらお互い見合い笑った。
最初は只の偶然の出逢いから始まった。
ユエに出逢い
オリュンポスのギルドメンバーと戦い
オリュンポスギルドに因縁を付けられ
ユエとグランドクエストを挑み勝利し
ユエの真実を知り
悩みながらシドと戦い勝利し
ラインハルトに敗北し
父親との語らいで己の心意を知り
ルビィとの語らいで覚悟を顕にし
クレスこと真田守を助け
シドこと木戸健哉に言葉を選択を投げ掛け
五大ギルド会議に乗り込み宣戦布告をし
真田守とシドと真に分かりあい
ラインハルトともう一度戦い勝利し
ユエと語らい答えを出し
二人の未来を誓った。
ああハッピーエンドの物語ようだ!
だってそうだろ
悩む主人公の元に現れる少女を救い共に巨大な敵を倒し少女の悩みを知り自分に因縁を持つ男と戦い勝ったと思えば最強の男に敗北し自分の弱さを自覚し最強の男と再び戦う決意をし仲間と共に特訓を重ね最強に勝ち少女の心を救う。
正に物語だ、それも出来すぎた、アラヤを主人公としたアラヤの為だけの物語の様だ。
やっぱりラインハルトに勝利しユエに合った後の展開は決まった様なものだったな、アラヤはクレスやシドと現実でもゲームのなかでも時には喧嘩することもあるけども仲良く過ごし再選に燃えるラインハルトやPVPを観たプレイヤー達に勝負を挑まれたり現実のなか父親と親子の絆を深ながら時を過ごし無事に意識を現実に戻したユエが現れ二人時を過ごしていく。
此が此がよくあるVRMMOだけの幸福なハッピーエンドに繋がる物語ならね
だが非情にも現実は違う。
「ゴフッ…」
街灯の光だけが照らす暗き路地に腹と口から血を流し吐きながら連夜はうつ伏せに倒れていた。
ラインハルトに勝ちユエと別れた後ログアウトした俺は暑さからアイスが食べたくなり近所のコンビニに行った帰りに前から歩いていた男に刃物で腹を刺され倒れていた。
痛みすら過ぎ身体中が動かなく意識も朦朧としている。
辺りには人の気配すらなく静寂に包まれるなか連夜に聞こえるのは自分の静まっていく心臓の音と近付いてくる死の音だけだ。
「い…だ…死に……た…くない」
連夜の心中にあるのは死にたくないと云う想い。
やっとここまできた母親の死を受け止め父親と分かりあえ木戸や守ると云う友達もできた
そして好きな人にユエに出逢えた。
共に歩むと誓いまた逢う約束をした。
それなのに終わってしまう。
「……」
もう声すら出ない。
(ユエ…ユエ)
薄れゆく意識のなか動かない身体を手を動かし前を幻影に浮かぶユエの姿を掴もうとするが身体はピクリとも指一つとて動かないまま荒木連夜の意識は闇の中に消え去り息を引き取った。
暗闇のなか荒木連夜は意識を取り戻すがまだ意識が朦朧としていた。
そんななか荒木連夜は自分の後頭部に何かは分からないが暖かで柔らかい感触を感じていたら誰かに撫でられている感触を得た。
なんだと思い身体を動かそうとすがピクリとも身動ぎ一つできない。
暗闇のなかその感触に意識が朦朧としているなか不思議に思っていたら
~~~~~~♪♪
(歌が聞こえる)
魂にまで浸透するような歌声が聞こえてくる。
荒木連夜にはその歌声に聞き覚えがあった。
(この声は夢の中に出てきたあの少女の声に似ている…)
歌声は鎮魂歌の様に清廉でありながらバラードの様に切なさを感じさせるなか子守唄の様に安心感を与える不思議なものだった。
初めて聞く曲であるにも関わらず何故か荒木連夜はどことなく懐かしさを感じ涙が出そうになった。
それと同調するかの様に身体を少しだが動かせる気がした。
荒木連夜はゆっくりと瞼を開けたらそこには荒木連夜に膝枕し荒木連夜の頭を撫でながら歌っている夢の中の少女がいた。
「きみ…は…」
まだ意識が朦朧としているなか荒木連夜が掠れる声で問い掛けると少女は歌と撫でるのを止めて
「ふっふふ」
と笑った。
そんな少女を下から見上げてるにも関わらずベールに包まれてるからか意識が朦朧としているからか少女の顔は分からない。
「荒木連夜君、あなたは死んだの」
少女は笑うのを止めると荒木連夜に死んだことを伝えた。
死の宣告にも関わらず荒木連夜には不思議と少女が嘘をついてないと確信を感じた。
「そ…うか……きみ…は」
荒木連夜は再度少女が誰か聞こうとしたら
「私はね神、悪魔、人間、幻影、世界、概念、魂何でもあり何でもない存在よ」
荒木連夜には少女の言葉に理解が追い付かない、いやそもそも言っている意味すら分からない。
そんな荒木連夜を見て再び笑う少女は告げた。
「貴方の大切な人だけどこのままじゃあ終わりを迎えてしまうよ」
「た…いせ…つな…ひと?」
その言葉に荒木連夜の脳裏には一人の少女、ユエが浮かんだ。
「その少女は現実に意識を戻す覚悟を決めてログアウトしたんだけど30%の確率が勝ってしまい意識が戻らず電脳空間をさ迷っているわ、このままだと永久に電脳空間をさ迷い続けるか消えてなくなってしまうよ」
先程と同じ様に少女の言葉からは嘘偽りは感じられない。
ユエが消えてなくなってしまう事を知り涙を流す荒木連夜に少女は
「大丈夫」
と告げると
「貴方に2つの選択を与えます。
一つは貴方という代償を払い願いを一つ叶える。
もう一つは願いを叶えず元に戻るか。
さぁ貴方はどちらを選びますか?
どちらにしろ選択するのは貴方です。」
二つの選択を突きつけた。
荒木連夜は突然の選択だがこの少女の言葉にも嘘偽りは感じず逆に救いを感じた。
(俺は…………)
荒木連夜の脳裏にユエとのだけじゃなく父親、木戸、守、ルビィ、ラインハルト今まで関わってきた全ての人との時間が過ぎていくなか今だに朦朧としている意識のなか思案を重ねるどころか即決で答えがでた。
「た…のむ…ユエ…を…たす…けてく…れ」
何故なら荒木連夜にとっては自分の命を差し出してまでも生きて欲しい大きな存在だからだ。
(ごめん皆。ごめん父さん。ごめんユエ俺は君に生きて欲しい。
この二年常に恐怖と死と隣り合わせだった君に不安に震えていた君に例え側にいることが出来なくても笑っていて欲しい。
君が俺の事を知り泣くことがあろうともいつの日かきっと乗り越えてくれると信じているよ………ああ、きっと母さんも父さんも俺と同じ気持ちだったんだろう)
涙を流しながら皆を思うアラヤに
「それが貴方の回答ね」
「ああ」
確認する少女に返事をすると
「自分の命を差し出してまでも思われているなんて羨ましいわね」
微笑ましそうに言う少女だったが荒木連夜には一瞬だが何故かその声に憎みが混じっている様に思えた。
少女は自分の膝から荒木連夜の頭をそーと優しく降ろすと立ち上がり荒木連夜から距離を取る様に歩くと膝を付き両手を組み祈るような体勢になると少女の下から中心に純白な巨大な魔方陣が現れた。
「今!選択はなされた!
虚世の世界は終わりを迎え新たな世界へと変貌する!
讃えよ変化を!讃えよ変現を!
神の理を持ち世界を塗り潰し創世する!
創世魔法変幻する創世世界!」
少女が正に天に宣言するかの様に詠唱を唱えると魔方陣はその大きさを広げ荒木連夜と少女がいる空間全体に広がると同時空間全体が震えだした。
その様子を理解出来ずにいた荒木連夜だったが突然自分が寝ている床が水の様に変化し荒木連夜の身体を飲み込んだ。
身体は今だに自由に動けず自分の身体が沈んでいくの感じる荒木連夜に何時の間にか側まで近付いてた少女が告げる。
「大丈夫だから心配しないで直ぐに何もかも忘れてしまうから。
ああ、やっとやっとだよ。
やっと荒木連夜君いいえアラヤ貴方を貴方がいえ私達が待ち望んだ切望し憧れた英雄にすることが出来る」
少女は荒木連夜に向かい告げているが荒木連夜自身はまるで自分を通し別の誰かに告げているように感じると同時に少女の言葉を聞いて何故か悲しくなった。
何処まで続くか分からない底の見えない漆黒の水の中沈みゆくアラヤの身体から光る泡のような物が出ていた。
朧気な意識のなか荒木連夜は光る泡を見るとその光る泡にはクレスとシドとの特訓、小さい頃の自分、ラインハルトとのPVP、父さんとの会話
様々な荒木連夜の記憶が写し出されていた。
最初はこの現象が何なのか分からなかった荒木連夜だったが光る泡が破裂し消滅すると記憶が消えていくのを感じ自分が選んだ選択の意味をユエを助けるため支払った代償の意味を悟った。
(ああ、そう云うことか)
消えていった記憶が何なのかもう荒木連夜には分からない。
次々と出ては破裂し消滅していく記憶の泡はとうとう最後の一つになった。
そこに映し出されていたのは初めてユエと出逢った時のもの、そうモンスターに襲われ不安に恐怖に震えていたユエを助けた、ユエが荒木連夜に興味を憧れを持つ切っ掛けとなった始まりの日の記憶。
(ああ、そうか俺は覚えていなかったがこの時の少女が……だったんだな)
荒木連夜には既にこの少女の名前すら思い出せないだが、例え記憶がなくともこの映し出された少女が自分にとって掛け替えのない大切な存在だと感じた。
それを最後に最後の記憶の泡も破裂し消滅すると同時に荒木連夜の意識は完全になくなった。
リグール村の外れ草原地帯で一人の男がラビーラビットを狩っていると突然草原の一角に光の繭が現れた。
驚く男を他所に光の繭は徐々に光をなくし消えてなくなった。
驚いていた男は光の繭があった場所に行くとそこには
「人…男か」
黒色のTシャツに短パン、男には見たこともない変わった服を着た少年が倒れていた。
さぁ、始まったよ。
今までのは私が語りアラヤが過ごしたVRMMOの物語は今から始まる物語或いは神話或いは伝説の序章、プロローグ、前置き閑話でしかない本編は本筋は今ここから動き出す。
つまりはVRMMOの物語は今から始まる異世界物語の踏み台でしかなかったと云うことだよ。
語り手はそう周りで語り手の話を聞きアラヤの荒木連夜の歩みを観ていた大勢の人々に告げる。
親愛も友情も愛情も全ては無に期した。
だが悲観することも嘆くことも絶望することもしなくていいVRMMOの物語、踏み台でしかなかったこの物語にも意味はあるのだから。
取り敢えずこの物語の第1章VRMMOの物語は此にて終了です。
次は死んだ荒木連夜ことアラヤが謎の少女によって送られた異世界の話しになります。
ここまで読んでくださった皆さんありがとうございます。
物語は引き続きますのでどうかよろしくお願いいたします。




