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ユエの心意とアラヤの選択

時間にしたら10分にも満たない僅かな時間。だがアラヤとラインハルトも含めPVPを観ていた全てのプレイヤーからしたらまるで一時間いやそれ以上にまで感じられた激しい激突!

お互いの全てを出し尽くし最強に!ラインハルトに!勝利を修めたのアラヤ!

ラインハルトに勝つことだけに捧げた1ヶ月、たかが1ヶ月と思う者もいれば1ヶ月もと思う者もいるだろう、人の感じ方はそれぞれだ。

だが勝利を修めた今どんな想いを抱かれようがアラヤが成した事は事実は何も変わりはしない。

誇るがいいアラヤ君は不可能と言われた男に打ち勝ち不可能な事はないと証明したんだ!君が勝者だ!

勝利を修めたアラヤが向かったのはユエの待つリネイシアの花園。

言葉を交わす二人。

そんななか、全てはこの時の為ユエにあの時何も応えることが出来なかった事を悔やみ後悔していたアラヤはユエに告げる。

だがそれは選択を強いるものでも助言でもアドバイスでも救いの言葉でもなくユエの心意を問うものであった。

さてさて、二人の結末はどうなるのか。


「ユエ、君の心意を聞かせて欲しい」

俺の言葉にユエは俯き黙っていた。

ユエが俺の言葉に何を思っているのかは分からない、そう分からないんだ。

相手の表情を見て感情を察することはできる。

だが、察するだけでありその人が心の中で本当は何を考えているか気持ち、心意は分かりはしない。


俺が思うユエの心情はあくまで俺がそう感じただけでユエ自身から聞いたものではない。

俺が聞いたのはあくまでユエの過去と今おかれている現状、差し迫っている選ばなければならない2つの選択のみだ。

つまり俺はユエ自身がどうしたいのかユエ自身から聞いてはいない。


俺が何を言おうといや、俺も含め誰が何を言おうと最後に選択するのはユエである。

それがどんなに悲しく辛い選択だとしても。

()()()()()()()()()()()()()()()()

(だからこそ、俺は君の気持ちを心意を抱いている感情を知りたい)


「アッハハ」

ユエは俯いたままから笑いした。

俯いたユエの表情は俺には分からない。

「驚いたなまさか、私の心意気持ちかな、知りたいなんて予想外だよ」

「ああ、俺は君の心意が知りたい」

「………」

問い掛ける俺の言葉に呼応する様に俯いていたユエの顔からポタポタと雫が落ちていた。

「ユエ」

俺はユエの様子に驚かず優しく名を呼ぶと

「ヒグッ…ヒグッアラヤ君…私…私」

嗚咽を漏らしながら声を紡いでいたユエは顔を上げた。

その顔は恐怖からか悲観からか俺が今まで見たユエの表情の中で一番悲痛に歪めていた表情だ。

「怖いよ!…怖くて不安で…どうしたらいいのか分からないの」

目から涙を流しながらユエは初めて自分が抱いていた想いを感情を吐き出した。

身体を震えさせ泣きながら嗚咽を漏らすユエ。

「だって半年だよ!半年迄に決めなくちゃならないなんて……でも、でもねそれでも不安で悲しくて苦しくて押しつぶれそうになりそうでそれでも精一杯考えて頑張って決めたんだよ決めたはずなんだよ、だけど此で本当にいいのか今でも不安に思う気持ちは消えなくて時間が過ぎる度にゲームの中なのに身体が凍えそうになりそうで暗闇の中に陥りそうで怖くて」


それは当然のことだ幾ら強い人間であろうと未来がハッピーエンドと決まっているなら迷わず揺らがないだろう。

だけど未来が不確かで不明よな限り幾ら自信を覚悟を決めようが確定ではない限り揺らがないわけがない。


俺は身体を震わせ泣きながら嗚咽を漏らすユエに無言で近付きユエに両手を伸ばし強く抱き締めるでもなく壊れ物を扱うように優しく抱き締めた。

突然の抱擁に涙も引き驚いて身を捩るユエだったが次第に落ち着き身を預けた。


腕の中で落ち着きを取り戻したユエに対し

「ユエ、俺はユエがどちらの選択を選ぼうとも構わない、どちらを選んだとしてもその先の未来なんて分からないんだから。

だが此だけは誓うよ君の選択がどんなものであろうと俺は君を否定せず君の側に居続けると」

抱き締めたまま告げる。


それはユエ自身の想いを省みないなんと酷い独善的で独り善がりの誓いだろうか。

二人は家族でもなければ恋人でもない。

所詮アラヤが言っているのは一方的な想いからでしかない。


普通の人からすればこんな一方的な想いは 気持ち悪いと嫌悪感を抱くだろう、そう好きでもなんでもない只の人から言われた普通の人なら。

だが、ここに、今まさにアラヤに抱き締められ告げられたのは

「アラヤ君…辛くなるのはアラヤ君の方だよ、私がどっちを選ぼうがきっと一番苦しむんだよ」

「そうかもしれないな」

「分かってないよ…分かってないよアラヤ君は」


ゲームの中に残る選択をするなら現実では逢えず何時終るかそれこそ一週間か一年かそれとも10年いや、それ以上か突然訪れるその日を恐怖し共に過ごすか70%の確率に賭け少しでも長く共にあることを捨て意識が戻ることを祈るか、どちらにしろメリットもあるがそれ以上にデメリットが大きい。

ユエが言っているのはアラヤに告げているのはそういう事である。


「ああ、俺は本当の意味では分かってないだろう、今ユエに言っているのは今俺が抱いている想いでしかない」

「後悔するし泣くかもしれない」

「だったら……」

「でもな、それでもここに今ある想いは本物だ」

なんと難しいんだろう、上手く伝えられたらいいのにと思う。

今俺がユエに言っているのは本能のまま言葉に出しているだけで倫理も理論もないしっちゃかめっちゃかな言葉の羅列でしかない。

だが、それでも伝えたい言葉は伝える。

「だからユエ、決して諦めた選択だけはしないで欲しい、これしかないからこれでいいやでもなく、未来を選んだ道の先を想い決めて欲しい」

「ユエが諦めたうえではなく未来に選択した道の先に希望を持ったうえで選んだものならそれがたとえ苦しく辛いものであったとしても俺はユエを尊重するよ。

それが俺が選んだ選択だ。

だからユエ信じてくれないか、たとえ後悔し絶望することになろうともきっと俺ならいつか乗り越えることができると。

ユエがそう想い笑ってくれるなら俺は大丈夫だから」

それはアラヤに対するユエへの意思表示である。

ユエがどれを選択しようと俺はそれが未来を希望したものなら後悔を抱こうが構わないと云うもの。

アラヤはユエに言いながら思った。

(きっと父さんも母さんや自分を嫌悪し塞ぎ込んだ俺に対し似たような気持ちだったんだろう。

いや、父さんだけではない。

いつか前の木戸が戻ってくると信じていた守やボロボロの守を見守り続けた守の家族

自分の父親に怒りながらも心の底では想っていたシド。

皆抱いた想いや感情は違えど誰かを大切に想う気持ちは一緒なのだろう)


ユエは俺の言葉を聞くと再び泣き始めた。

それが怒りからでも悲しみからでもないのは抱き締めたユエから充分に伝わってきた。

俺は只泣くユエを決して離さないように優しく抱き締めた。


これはアラヤ達だけの特別なものではない、誰の身にも起こり得ることである。

家族、恋人、友達、仲間誰しもが誰かを想い生きている。

しかしお互いがお互いを分かりあう事は難しい。

何故なら誰もが自分の気持ちに蓋をし本当の心意を伝えようとしないからだ。

アラヤ達の様に誰かに嫌われるのが疎まれるのが重荷に思われるのを拒んでいる。

だからこそ、踠いたり、怒りをぶつけたり、気丈に振るまい、耐え続けたり様々な違う在り方を振るう。

だがそれではいつか器以上の水を注ぎ耐えきれず溢れてしまう様に限界が訪れてしまう。

だが、もしアラヤ達の様に一つでは溢れてしまう水でも二つあれば溢れることはない、更に二つでも溢れてしまいそうなら三つあれば溢れることはない。

難しいことかもしれない、だが例え一人では壊れそうな挫けそうな絶望の選択だろうが自分の心意を知る誰かがアラヤとユエの様に自分の感情を心意を吐き出せる分かりあ得る家族、恋人、友達、仲間がいれば怖く震えそうになりながらも絶望だけじゃない未来を信じ一歩一歩亀の様に緩やかでも歩み出すことができる。

未来はまだ不確かで不明よなままで決まってはいないのだから。


アラヤとユエは風になびくリネイシアの花々の中でお互いの存在を温もりを確かめる様に抱き締めあった。

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