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心望


やぁ、こんにちは語り手だ

ルドラとの戦い、ユエの真実、シド、ラインハルトとのPVP凝縮した濃密な1日を過ごした連夜は精神が疲れはて熱に倒れた。

精神の暗闇の中惑う連夜。

嘆き哀しみ絶望のかいな連夜を救ったのは連夜の父親。

連夜と父親お互いの思いを語り氷が溶ける様に二人を遮る長年の壁がなくなった。

ああ、親子の絆とは素晴らしい事だ。

そんな中連夜は自分が今抱えている苦悩について父親に語り始める。


連夜は母親の死から今まで自分が感じ抱えている事について父親に打ち明ける。

母親が自分のせいで死んだことに深い恐怖や後悔を抱き過ごしていたこと。

そんな中フルダイブゲームジェネティクノーツが発売されると立ち向かう事もせず只現実から目を背けるためにゲームにのめり込んでいたこと。

ジェネティクノーツの中でさえも結局は現実の様に人と関わるのを避けていたこと。

そんな中でも連夜を気に掛け或いは興味からか触れ合ってきたプレイヤー達。

それでも変わらぬ自分に嫌気を失意を感じていること。


そして自分の心を揺さぶり掻き立てる一人の少女と出会った事。

その少女と三日間、時間にしたらもっと少ないが共にグランドクエストと呼ばれる高難度クエストに挑戦し一人では勝てなかった絶望的強靭な敵に二人力を合わせ打ち勝ったこと。

少女と勝利の喜びを分かち合うなか少女の真実を知ったこと。


少女の絶望の真実を知り心が暗く堕ちていくなかジェネティクノーツ最強の男と戦い敗北したこと。

そして連夜は思ってしまった、いや現実を突き付けられた。

もし最強の男と同等もしくはそれ以上に強大な敵に出会った時自分は少女を護ることが出来ないことを。


連夜はユエについてはユエ自身の事情は暈しあくまで自分以上に苦悩しながらも前を向き歩んでいる少女がいるとだけ話した。

連夜はユエ自身の事を親類でもない自分が勝手に誰かに話していいものじゃないと部をわきまえていた。

ユエだけではない人の人生、過去、現在、未来に関わる全てはその人にとって掛け替えのない歩みの軌跡であり大切で決して他人が気軽に触れていいものではない。


「そうか」

連夜の話を聞いた父親は寡黙な表情のまま頷いた。

「父さん、俺どうすれば良かったんだろうか。

彼女は俺を信用し悩みを打ち明けてくれた。

それなのに俺は彼女に何も応えることができなかった。

俺が彼女に何かを言うことで、俺のせいで傷つけてしまうんじゃないか取り返しのつかない事になるんじゃないかそう思うと怖くて彼女に何も言えなかった」

連夜は言いながら思う。

(俺は彼女を傷つけてしまうことが怖かったんじゃなく、自分自身が傷つくことが怖かったんだ)

その事に今になって気付いた連夜は自分が心底情けなく愚かだと感じ項垂れ両手で布団を握り締める。

そんな連夜に父親は連夜の内心を見透かしたようにゆっくりと諭すように語りだす。

「なぁ連夜。

自分が傷つくことが怖いのなんて誰しもがそうだ。

人には感情があるし些細なことで揺れ簡単に傷付いてしまう。

父さんだって自分が傷つくことが怖かったりするなんてよく有ることだ」

連夜が父親の言葉にゆっくりと顔を上げると其処には連夜を失望した表情ではなく真っ直ぐ見る父親がいた。

「連夜。

傷つくことを恐れる事自体は駄目なんかではない、駄目なのは傷つくことを恐れ諦めてしまうことだ。

諦めてしまったらそこで終わりになってしまう。

だが傷つくことを恐れたとしても進むか立ち止まるかすれば道は閉じずまだ道は選択の余地は現在する」

「…選択」

「そうだ。

選択した未来が正しいかなんて誰も分かりはしない選んだ先が笑うことができるか、はたまた悲しむことになるのかそれは選んだ先に進んでいく事でしか分からないんだ」

父親の語る事は数有る真理の一つである。

だがそれはあまりにも残酷な真理である。

希望があり笑うことができる未来ならいいだろうだけどもし絶望しかない悲しみだったならば二度と立ち直ることさえできなくなるかもしれない。

そしてその真理こそがユエに迫られている選択である。

一生をジェネティクノーツの中で過ごすか可能性を信じログアウトするか。

(俺はそんなユエに何て言えばよかったのだろうか)

「父さん俺は一体どうすればよかったんだろうか」

希望を求め縋る様に聞く連夜に対し父親は

「連夜それは父さんにも分からない。

私は連夜が語る彼女の事は何も知らないし

どんな言葉を掛ければいいかなんて分かりはしない。

だからこそ連夜私の言葉、意志ではなく彼女が信じ話した他の誰でもない連夜自身が考えなければならない。

最終的に決めるのは連夜自身なのだから」

「つっ!」

父親の言葉は以外にも答えを希望を求む連夜を突き放すものであった。

だが父親はそれだけでは終わらず続けて言葉を紡ぐ

「父さんがここでああしろ、こうしろと助言をしたとこで其処に正解が有るなんては父さん自身にも分からない。

父さんにも何が正しいかなんか分かりはしない。

だがこれだけは言える。

連夜が何を選択しその先に何が待っていようと父さんは必ず連夜の味方だ」

「……父さん」

連夜は父親の言葉を聞き胸の奥から熱いものが込み上げてくるのを感じた。

「さて、連夜まだ体調は万全ではないだろう。

今はゆっくり寝ることが大事だ」

語り終えた父親は連夜の体調を気遣いベッドに横に成るよう連夜を促す。

連夜は父親の言う通りにしベッドに横になると父親は氷水に浸したタオルを絞り連夜の頭に乗せた。


父親はこれ以上此処に自分が居たら連夜が自分に気遣い眠れなくなると思い立ち上がり部屋から出ようとした。

連夜はそんな父親の背中を見ながら

「ありがとう父さん」

小さく呟いた。

小さな声だったが父親には聞こえたみたいで連夜に背中を向けながら

「ああ、おやすみ」

言うと部屋の電気を消して連夜の部屋から出ていった。


連夜はベッドに横になり少したつと熱で体力が削られたからかそれとも父親と話して安堵したからか眠くなり始め次第に瞼を閉じていく

(まだどうしたらいいのか何て分からないしそもそも正解なんて分からない。

正直ユエに会うのが怖くもある。

彼女の苦悩に何も言えずラインハルトにも負けた。

そんな情けなく愚かな俺が彼女に会う資格があるのかも分からないが…)

(でもそれでも彼女に、ユエに会いたい。)


その思いは知る人が見れば一目瞭然なお想いである。

実際連夜の父親も連夜の言葉の端からユエへの想いが友人に向けるものではなく自分が連夜の母親に向けていたものと同種のものだと感じ取っていた。

だがそれは自分が連夜の母親への気持ちを自覚した様に連夜本人が気付くべき、自覚すべきものだと思い触れなかった。

連夜がユエと出会ってクエストをクリアするまで掛かったのは僅か三日間、時間にすればもっと短いものである。

そんな短時間で好意を愛情を抱くのかと思う人もいれば単純だと笑う人、呆れる人、馬鹿にする人もいるだろう。

だがそもそも人の感情その中でも一番厄介で複雑で解明出来ないのが恋である。

その人を見て一瞬で恋に堕ちる一目惚れがあるように何ヵ月、何年の時を一緒に過ごさなくとも例えその人の事を深く知らなかったとしても恋とは感情とは複雑で未知なもの堕ちる時には堕ちるものである。

そう、例えそれが本人の現実の姿ではなくゲームの作られた仮初の体であるアバターであったとしてもだ。


そしてユエに対して思っている感情を気持ちを連夜が自覚するのはそう遠い話ではない。


完全に瞼が閉じる直前連夜の脳裏に写し出されたのは初めて会った時と同じ輝く様な笑顔を見せるユエであった。



眠りに就いた連夜を待っていたのは何時もの暗い空間に星が散りばめたような不思議で神秘的を感じさせる空間てありそこにいたのは何時もの様に光の粒子が集まった人間の輪郭を型どったもの………ではなかった。

「…だれ…だ」

何時もと変わらず意識だけの連夜の見る先にいたのは均整の取れたスラリとした華奢な体を肩や腕、背中がむき出しになっているきらびやかにして神秘さを感じるまるで神衣な純白なウェディングドレスを着て、足は靴など履いてなく裸足の少女である。

少女のドレスから見える肌は血の気を感じさせない透明な白さで頭にはドレスと同じ純白なヘッドドレスを着けていて顔は分からないが神秘的な雰囲気を感じさせた。


その少女は連夜の声が聴こえてないのかはたまた聴こえないふりをしているのかは分からないが連夜の声には応えず

「選択して」

透き通るような冷たい鈴の音の声を発した。

まるで直接心に浸透する様な声に連夜は背筋を振るわせた。

何時もより進化した夢、普通は恐怖や不安を感じるだろうが何故か連夜には恐怖も不安も微塵も感じずその声に何故か安心感を感じていた。


「選択して」

「選択して」

「選択して」

少女は同じ事を繰り返し言うばかりであった。

連夜も只少女を黙って見続けていた。

何秒、何分、何時間たったのかは分からないがその少女は急に黙り静かになると

「またね」

小鳥が囀ずる様に声を発したと同時連夜は自分の中から何かが抜ける感じを感じた。


顔は見えない筈なのに何故か連夜には少女が自分に微笑んでいるような気がした。


連夜が目を覚ますと電気を消した暗い部屋に一筋のカーテンの隙間から漏れる明かりが指していた。

連夜はベッドから起き上がると窓に進みカーテンを一気に開けた。

「うっ、」

カーテンを開けた瞬間連夜の体を日の光が直撃した。

連夜は日の光の眩しさに目を遮るように眼前に右手を持ってきた。

どうやらいつの間にか朝になっていたみたいである。

連夜は現在の時刻を確かめるべくベッドのとこまで戻ると置いてあるスマホを手に取った。

スマホに写し出されたのは時刻は07:00っあった。

「もう7時か…それよりも…うん。体の怠さはなくなったな」

あんなに怠さを感じていたのにまるで元からなかったの様に連夜はすっかり元気になったみたいだ。

ぐうぅぅ

「腹は減ったけど、ああ。汗が気持ち悪いな」

連夜は体力を削られ腹が減ったのを感じていたがそれよりも汗で体がベットリして不快感を感じていたので先にシャワーを浴びそれから飯を食おうと思い着替えの服を持つとシャワーを浴びに風呂場へと向かった。


連夜は風呂場に向かっている最中先程の夢で出た少女の事を考えていた。

(それにしてもやけに体の調子がいいが、あの時の何か抜ける感覚は……いやまさかな、あれは夢だしな。

それにしても人の輪郭だったものが少女に変わるうえにノイズまみれだった何故の声が選択と言う言葉だったのは分かったが相変わらずなんの事を言っているのかは分からないな。

…だけど最後にまたねと言った時の表情は…)

そう考えているうちに風呂場に着いた連夜は取り敢えず考える事を止めると汗が纏わりついた体をさっぱりさせるためシャワーを浴びた。




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