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ラインハルトの戦告


やぁ、こんにちは語り手だ


遂に衝突したアラヤとシド。

森林エリア都市フォレストパレスでPVPを行う二人に興奮し熱狂するプレイヤー達。

オリュンポスギルド幹部であるシドの勝利を疑わないプレイヤー達の前で起きたのは予想外の圧倒的な強さでシドに迫るアラヤの姿だった。

全く歯が立たない現状にシドは赫灼太火(アポロン)神威開放(アルティマ)を使用するが其それすらも圧倒しシドを追い詰めたアラヤ。

勝負を決めようとシドに剣を振るうアラヤの前に現れたのは以外や以外オリュンポスギルド長にしてジェネティクノーツ最強のプレイヤーラインハルトだった。



突然のラインハルトの登場により驚きのあまり言葉を失くし静寂に包まれた森林エリア都市フォレストパレス中央広場であったが徐々にラインハルトの姿を認識していくと一気に静寂が熱狂に変わった。

「ラインハルトだ!」

「マジかよ!本物だぜ!」

「キャー!ラインハルト様!」

中央広場はライブドームの様に歓声に包まれた。


仰向けに倒れていたシドが起き上がりアラヤと自分との間にいるラインハルトを認識すると今にも射殺さん張りの目で睨みながら

「なんで邪魔しやがった、ゼウス」

ラインハルト目掛けドスの効いた声で問うた。

シドを背にアラヤの方を向いていたラインハルトはシドに振り向いた。

「シド。私は二人の捜査は打ち切ると伝えたはずだが」

ラインハルトはシドの睨みなど意にも介さず冷静に淡々と告げる。

しかしシドも問いながらラインハルトが介入した理由自体は分かっていた。

「うるせぇ。だから俺一人で探したんじゃねぇか。あんたの言うとおり他の奴等と揉め事も起こしてないだろが」

シドも自分が言っていることが理屈の通らない言い訳だと分かっていながらも今更引き下がれないとラインハルトに凄む。

謝罪もなく反省の色も見せないシドの態度に

「ハァ」

ラインハルトは溜め息を吐くと

「確かに他のプレイヤーと揉め事も起こしてない以上私の忠告を無視し勝手に捜索を行った件について多めに見よう」

「なら!」

別に問題ないだろうと言い募のろうとするシドに対し

「だが…都市内で私闘紛いのPVPを行いあまつさえ神威開放(アルティマ)を使う意味をシド、君が分からない筈がないだろ」

「ツッ!」

ラインハルトの言葉にラインハルトを睨んでいたシドはラインハルトの言葉に何も反論できず歯を噛み締めた。


ジェネティクノーツ内ではある規則が設けられている。

しかしそれは自由を売りにするジェネティクノーツ運営が決めたわけではな五大ギルドが決めて全プレイヤーに指し示めたことである。


初期の頃、ジェネティクノーツが始まってから一年近くはPVPがフィールド内だけではなく都市内でも活発に横行していた。

それも仕方ない事ではある。

ゲーマーと云う人種は自分が育てたアバターの強さをモンスターではなく他のプレイヤーと戦うことで示したい確かめたいとゆう承認欲求がある故だ。

そのため様々な場所で朝昼夜関係なく横行していた。まさにPVP無法期と言った処である。

しかし誰しもがPVPを行いたいわけではない、ゆっくりと自分のペースで冒険したい人やそもそもモンスターとのバトルはいいが対人戦が好きでないという人もいる。

しかしそんなプレイヤー達の事などお構いなしにPVPを吹っ掛ける奴は当然おり拒否すれば臆病者と言ってあざけ笑う悪質なプレイヤーもいる。


いくら自由を売りにしているジェネティクノーツだろうとこのままでは一定のプレイヤーにとっては折角のフルダイブゲームもやりにくいゲームとってしまい辞めてしまう者も続出するだろう。

実際辞めようとした者もいる。

しかしそんな中現状を嘆きジェネティクノーツの秩序を守るため立ち上がった者達がいる。

それがかの有名なオリュンポス、ブリテン、武蔵、桃源郷、アースガルズのちの五大ギルドである。

五大ギルド長達は全てのプレイヤーが安心してプレー出来るようにPVPを禁じた。

勿論PVPそのものが好きな挑戦的なプレイヤーもいる。

その者達からは当然の様に反対の声が上がった。

それは仕方のないことだ、運営すら自由にプレーする様に宣言されているのに運営ですらない一プレイヤーの者達が勝手に決めたことだ反対の声も出るだろう。

しかも運営から制限や禁止実行として明言されていない以上違反をしているわけではないのだから。


だが後の五大ギルド長達も反対の声が出ることは予測していた。

なので禁止と言ってもあくまでPVP全てではなく都市内だけに限定しするなら都市外か又はどうしても都市内と云う場合は私闘目的ではなくちゃんとした理由があれば構わないと言い全プレイヤーが過ごしやすい環境の為に頼むと頭まで下げた。

今はまだ五大ギルドではないとはいえその時点で充分力を持っていた五つのギルドから頭まで下げられてはと反対の声も失くなっていた。

流石に此処で更に反対するなら村八分とは云わないがジェネティクノーツでプレイするに辺り周りのプレイヤーから白い目で見られ自分達がやりづらくなると理解したのだ。


後にこの禁止事項は変化し都市内でPVPをするなら五大ギルドの内のどれか一つから許可を貰ってからと神威開放(アルティマ)保持者は都市内でのPVPでは神威開放(アルティマ)を使用を禁ずるとなった。


ラインハルトの正論に反論できず黙するシドに対しラインハルトはもう一度言葉をつぐむ。

「シド、許可なく勝手にPVPをしたうえ神威開放(アルティマ)まで使って負ける。

オリュンポス幹部である君なら事態の重さが分かっている筈だが」

「…………」

歯を噛み締め悔しそうに顔を俯かせ黙るシドに対しラインハルトひ嘆息する。

「君には失望した」

ラインハルトが重く告げるとシドは目を見張り弾かれたように顔を上げた。

「お、俺は!」

シドはラインハルトに言葉を紡ごうとするが自分を見据えるラインハルトの冷淡な顔を見ると口を閉じまた俯くとその場に立ち上がり

「……クソガッ…強く、強くなければ意味ねぇんだよ」

吐き捨てるように呟くと広場から去っていった。


アラヤやユエ、ラインハルト、他のプレイヤー達も去り行くシドに何も言わず見ていた。

正直アラヤにしたらシドのユエに対しての暴言は許せないし、言いたいことはあったがラインハルトが出てきた以上これ以上は何も出来ないと感じ黙っていた。

シドの去っていく姿を何も言わず見ていたラインハルトアラヤに振り向き謝罪した。

「シドが迷惑掛けた。すまなかった」

アラヤに謝罪したラインハルトは次にユエの方を向きユエにも謝罪を行った。

流石に他のプレイヤー達の目もあり頭を下げはしなかったが。

「アルテミス君にも迷惑をかけた」

「いえ。貴方が悪いわけではないですし、さっきの貴方の言葉通りなら私達の捜索を止める様に言ったことも分かりましたし、

ならシドの独断で貴方が謝る必要はないです」

正直シドがオリュンポス幹部である以上、いやそもそもがオリュンポスギルドメンバーの行為から始まった事なのでギルドを纏めるギルド長たるラインハルトの責でもあるが謝罪をもらい先程のシドへの対応を当事者であるアラヤとユエ以外のプレイヤー達の前で行った時点でユエはラインハルト自身の責はもうないとこれ以上は酷だと判断した。

アラヤは黙ったままだがユエは気にしないでとラインハルトに告げた。

ラインハルトもユエの思考を察し

「感謝する」

ユエに感謝の意味も込めて礼を言うとアラヤの方を見て

「君にも感謝する」

「ああ。………ユエ行こう」

アラヤもシドに止めはさせなかったがこれ以上此処で話し合っても意味がないと判断しラインハルトに端的に返事をするとユエを促しこの場を立ち去ろうとした。


「待ってくれないか」

アラヤが立ち去ろうと背を向けた瞬間ラインハルトが声をかけた。

ラインハルトに声を掛けられたアラヤは立ち止まりラインハルトの方に振り向いた。

「まだ何かあるのか」

「すまない。全面的に悪いのは此方と云うのは分かっているんだが」

ラインハルトはそう言って此方を見ている周りのプレイヤー達に目線をやり再びアラヤを見ると

「衆人の観衆の中ギルド幹部が神威開放(アルティマ)迄使った挙げ句敗北したとあっては此方も立つ瀬がない」

不適に笑いながそう言葉を紡ぐラインハルト。

「…さっきも神威開放(アルティマ)に関して言ってたがあんた何時から見ていた」

アラヤの問いにラインハルトは不適な笑顔のまま

「君の想像通りだよ」

アラヤに告げる。

(…この男、最初からかは分からないが少なくともシドが神威の(アルティマ)を使う前からは居たな)

「で、なにが言いたい」

ラインハルトに問うアラヤだが正直ラインハルトが何を言いたいかは察していた。

「私とPVPをしてくれないか」

ラインハルトの言葉に騒ぎ立つ周りのプレイヤー達。

「どうかね」

アラヤにPVPをしないかと問うてはいるがラインハルトがアラヤを見る目は威圧的でしろと言っている。

「する理由は俺にはない」

ラインハルトがアラヤとユエの捜索を止めさせシドを諌めた以上これ以上オリュンポスギルドに関わる理由はないと告げるアラヤだがラインハルトはアラヤの言葉を意にも介さず

「私にはある……それとも彼女の前で負けるのは恥ずかしいか」

ラインハルトはアラヤとユエだけに聞こえる程の声で挑発してきた。

「ちょっと!」

まさかラインハルトまで挑発してくるとは思わずユエが驚き抗議の声を上げるが

「で、どうかね」

ラインハルトはユエの事を気にせず不適に笑いアラヤに対して問う。

シドへの怒り

自分への怒り

ユエの真実

目まぐるしく回り淀む思考のなかシドと云う明確な怒りをぶつける相手を失い少し落ち着いたと思いきやアラヤの意志を省みないラインハルトの発言に再び怒りを、先程よりも遥かに強い怒りがアラヤの中を駆け巡る。

故にもうアラヤは止まらない。

アラヤはラインハルトを倒す敵だと排除しなければならない敵だと定めたのだ。

「いいだろう」

「アラヤ君!?」

「そう来なくては」

アラヤの承諾に驚くユエを他所に此処に今ラインハルトとアラヤのPVPが決定された。



人の気配がない薄暗い路地に木でできた建物に背中を預け座り込むシドはぶつぶつと暗い表情で呟く。

「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな

俺は負けてねぇ、負けてねぇんだ」

シドの脳裏に浮かぶは自分を価値のないものの様に冷淡に見下ろすアラヤの姿。

「チクショウ。なんでだよ…俺は強くなった。今やオリュンポスの幹部だぞ…なのになんでだ、なんで届かねぇ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」


薄暗い路地の中まるで幻影を追うように慟哭を呟き続けるシドである。





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