墓守の王
やぁこんにちは語り手だ
クッククアラヤとユエの砂糖を吐くようなラブラブ空間を見せられたけどいやはや若いっていいね。
さてグランドクエスト最後のクエスト【墓守の王】へ歩みだしたアラヤとユエに待ち受ける運命はどんな結果を二人にもたらすのか。
グランドクエストのその先を見据え決意も新たにグランドクエストの後もパーティーを解散しないことを決めた俺とユエだったが……
自分達の現状抱き締めていると抱き締められている事を理解した途端恥ずかしくなりしばらく先程とは違う意味でお互い顔が赤くなり沈黙していたがこのままの状態でずっといるわけにもいかないので一旦お互いに先程の事は忘れるまでいかずとも脇に追いやりグランドクエスト最後のクエスト【墓守の王】について入念な打ち合わせをした。
暫くして打ち合わせを終えた俺とユエはクエスト場所である猿魔の森の先にあるクエスト最後の舞台であるリネイシア城(今は古びた古城)に向かい歩いていた。
「モグモグ」
リネイシア城に向かっている途中だがユエが余程美味しいのか笑顔浮かべ白い紙袋に入っている手の平ぐらいの通常のより少し大き目のクッキー?を食べながら歩いている。
「それは?」
「モグモグ…ゴックン。
これはねマロンの実のクッキーって言うんだよ。ミミちゃんから貰ったの」
(やっぱりクッキーか。
しかし通常でマロン村に行っても貰えないしそもそもマロンのクッキー処かマロンの実やの存在自体初めて知った。
つまりこのクエスト限定であり通常では手に入らないアイテムってとこか。
しかし俺は貰ってなくユエだけが貰っいるとこを見るとNPCからの親愛度に関係しているのか)
流石はジェネティクノーツ、NPCにいたっても現実と変わらないちゃんと感情等が再現されていると思うなか案に自分の考え通りならマロン村での態度もそうだが目に見えて親愛度がないつまり懐かれていないと言われてるようで少し凹みそうになるそんな想いを抱きながらユエを見ているとマロンの実のクッキーを欲しいのと勘違いしたのかユエは立ち止まり
「アラヤ君も食べる、美味しいよ」
右手に一枚掴むと俺に近付き「はい」と俺の口元に当たり前の行動みたいに流れるようにマロンの実のクッキーを持ってきた。
(えっ…いやこれ)
どうみても恋人同士がやるような『あーん』状態だがユエ本人は自覚がないのかそれとも分かっていて気にしてないのか
「ほら。美味しいよ」
無邪気に言ってくる。
(いや美味しいよと言われても…そもそも欲しいとは一言も言ってないんだが)
しかしこれは下手に自分だけ意識する方が恥ずかしいと思う。
ユエみたいに自然の流れで口にするのがいいんだろうが冷静に考えても意識せずにはいられない。
だがそうなって感情が混濁してしまうと
(まて。もしかしてこれ試されているんじゃないだろうか。
このまま『あーん』で食べるのか手に取り自分で食べるのか)
変な疑心暗鬼に陥ってしまう。
(どうする、どうする、どうする)
女性とこういった経験がまったく無いものだからぐるぐる思考が駆け巡る。
ユエに至ってはそんな俺の気も知らず
「食べないの?美味しいよ」
催促してくる。
俺は考えた末マロンの実のクッキーを手に取る事にしユエの手からマロンの実のクッキーを取るとその際
「あっ…」
ユエが少し残念そうに声を漏らした。
それがどうゆう意味で漏れたのかそもそもその声すらマロンの実のクッキーを取ることで一杯一杯だった俺には分からなかった。
マロンの実のクッキーを食べる俺にユエはマロンの実のクッキーが入っている白い紙袋ごと両手を後ろに組み笑みを浮かべ
「ねぇ!美味しいでしょ」
確かにユエが言う様に美味い。
(マロンと言うからにやっぱり栗を使ったクッキーか。
うん。栗の風味もちゃんとでていて味もしつこくなく食べやすいそれにクッキー自体も香ばしくサクサクしていて何枚でも食べれそうだ。ゲームの中でこの味のクオリティーはジェネティクノーツさながらか凄いな)
俺が一枚を食べ終わるなかでユエは相当マロンの実のクッキーが気に入ったのか次から次へと食べていた。
俺はそれを見ながらふっと魔が差したとゆうか気が抜けていたとゆうか考えなしに
「そんなに食べるとゲームだからいいが現実だと太りそうだな」
愚かとしか言い様のない声を漏らしてしまった。
俺の声が聞こえたのかユエは笑顔のまま食べる手をピタリと止めた。
(あっ…ヤバい!)
俺が自分の漏らした声を自覚するなかユエは無言でマロンの実のクッキーが入った袋をストレージに直すと背中から左手に弓を取り俺の方を振り向き風呂の一件の時と同じく惚れ惚れする様な満面の笑みを浮かべ
「アラヤ君」
誰もが聞き惚れるような綺麗な透き通る声で俺の名前を呼ぶが俺にはユエの声がまるで地獄の鬼のような恐怖を掻き立てる底冷えのする声にしか聞こえない。
おもわず後ろに一歩二歩後退る俺に
「あら?アラヤ君なんで後ろに下がるのかな。ウフフ」
ユエが満面の笑みを保ったまま不思議だなぁと聞いてくる。
ユエが怖いからなんですとは言えない。
(……いや、別に怖くはないが)
こんな時でさえ男と云うものは虚勢を張ってしまう生き物である。
「いや…その」
うまく言葉がでない俺に対し
「ねぇ、頭と口どっちがいい」
「なにをするきだ!?」
「なにって、ウフフ」
具体的どうするかは言わないのが余計に怖い。
いや弓を握っている時点でだいたい想像はつく、おそらく頭と口どちらかを射ぬく気だろう。
なんと猟奇的だろうか。
まぁ、全面的に余計なことを口走った俺の自業自得ではあるが。
その後俺はひたすら謝りなんとか許して貰えた。
「デリカシーがない」
「それだからアラヤ君は」
「女の子に普通言うそんなこと」
謝ってる最中もユエから散々なじられたが許してもらった。
(……許してもらえたよな?)
もしこの場にルビィがいたら
「クックク、アッハハ!!自業自得だね!!」
大爆笑していただろう。
ちなみにマロンの実のクッキーを食べてるユエが餌を頬張るリスに見えたが流石に怒られたばかりなので空気を読み黙っていた。
俺達は猿魔の森の奥地を進んで行くと所々錆び付いた鉄の門の前に着いた。
門の奥には周りを草や木に囲まれた西洋の古城が聳え立っていた。
無人になってから相当年月が経っている様に外壁は所々崩壊していて無数の苔や植物の蔦に覆われていた。
城の周りは庭だったのかそれとも元は建物があり朽ちた結果なのかは分からないが開けた場所で膝丈まである草が周りを草原のように囲みその外側を更に囲うように木が森のように無数に生えその外側を鉄の門が城の前と後ろにあり左右を鉄の柵で囲われている。
俺達は位置と外観から察するに正門の前に立つと固唾を飲んだ。
「いよいよだなユエ」
「いよいよだねアラヤ君」
今からグランドクエスト最後のクエスト【墓守の王】の最終ボスである悪獣【ルドラ】に挑む。
ここまでは数人ではあるが他のプレイヤーも到達している。
しかしこの先悪獣ルドラを倒しクエストの最後に到達したのはラインハルトただ一人だ。
しかも情報はルドラの戦闘についてだけでこの先、ルドラを倒した先に一体何があるのかはラインハルトも公言していない。
唯一公言したのはクリア報酬として最上級装備が手に入るただそれだけでありその先は挑戦しクリアしたものだけが知るべきことだと告げた。
俺達が現在いる正門は固く閉ざされている。
ユエが開示されてる情報通りにエイプルギス討伐の報酬としてミミより貰ったリネイシアの花弁の印がある青い水晶を正門の中央にあるリネイシアの花弁の印が印字されてる窪みに差し込むと
ガコン!ギーー
門全体が一瞬光りひとりでに開いた。
俺達はお互い顔を見合わせ頷くと開いた門の中に足を踏み入れた。
正門からリネイシア城に向かい暫く歩き森を抜けて草原を抜けるとリネイシア城の入り口についた。
「アラヤ君」
「ああ」
お互いがお互いに緊張しているのが分かる。
なんと言っても情報通りならこの城の中にいるのは今まで対峙したことのないそれこそ他のボス級モンスターとは比較にならない程の強さを秘めた強靭な敵が待ち構えているからだ。
俺は軽く息を吐きリネイシア城の入り口の扉に右手を宛て扉を開けるとユエと共にリネイシア城内部に足を踏み入れた。
扉の先つまり城の玄関内部は外観と同じく所々崩壊しており瓦礫が小高い山の様に積もっている場所もある。
二階へ続く階段も崩れ落ちており通れるのは俺達の前にある玄関から真っ直ぐ奥まで続いている大人二人分通れるぐらいの幅の広い通路だけだ。
俺達は構造通り真っ直ぐ通路を進んで行く。
途中途中に扉は幾つかあるものの瓦礫で扉が塞がっているか部屋が崩壊しているかである。
真っ直ぐ進んでいた俺とユエの前に周りは崩れ年代を感じさせる古びた感があるのに対しまるでここだけ昔のまま時が止まっているんじゃないかというぐらい綺麗で重厚感溢れる赤い扉があった。
もし情報がなくてもこの扉を見れば、前にすれば分かっただろう。
この先には途轍もない力を持った何かが居るだろうと。
俺はいざ扉を開けようとしたが緊張からかそれとも恐怖からか扉に向かい伸ばした右手が震えていた。
(なにをしている俺は。ただ扉を開けるだけだろが。そう開けるだけなんだなのに…なんでこんなに手が震える。
やっとここまで来たんだ、ユエと一緒にクリアするんだろうが。
だから落ち着け、落ち着くんだ)
その時扉に向かい伸ばした震える右手に何か重なるような暖かい感触がした。
「えっ?」
見ると俺の震える右手にユエが左手を重ねていた。
俺はゆっくりと隣に居るユエの方を見ると其処には柔らかに微笑むユエが俺を見ていた。
「大丈夫だよアラヤ君。緊張しなくても怖がらなくても。
だって、私達二人ならどんな壁だろうと乗り越えられないものはない。
でしょ。」
俺の内心を見透かしたようにユエは言葉を紡ぐ。
「一人じゃ抱えきれないような不安も恐怖も焦燥も苦しみも悲しみも絶望も二人でならきっと乗り越えられるよ。
だから私達自身を信じていこうよ。」
迷いもなく俺に告げるユエは強い娘だと思う。
それはゲームのレベル、ステータスそういう数値的なものではなくユエ自身が持つ強さ、そう俺が持たず心の内で求めている心の意思の強さだ。
自分の思い違いにまったくもって恥ずかしくなる挑むのは俺じゃなく俺達だと散々言い合ったのに直前にしてこの様だ。
「ああそうだな。ユエの言う通り俺達二人でならきっと乗り越えれる」
俺は決意を新たに重ねられたユエの手と共に赤い扉を押し開けた。
(……俺もいつか彼女のように強くあれるだろうか)
俺は赤い扉を開けながら羨望する。いつに成るかは分からないそれこそ一年先か十年先か、だがどれだけ時が過ぎようといつかはユエの様に強く有りたいと。
赤い扉の先は王の玉座の間であった。
広く厳かで天井には巨大なシャンデリアが吊るしてあり壁の灯装飾と合わせ光を放ち玉座の間全体を照らしている。
壁には幾つもヒビが入っているが全体的な損傷は少なく扉と同じく昔のまま時が止まっているみたいに綺麗に整えられてある。
玉座の間最奥にそいつはいた。
元は王が座る玉座があったのだろう、今はなき玉座にいるのは二足の足で立ち頭に螺旋をえがいた山羊の角を持ち顔と体は獰猛な獅子で全身が黒い毛皮で覆われ皮膚はまるで鋼の様で手や足には鋭い爪を持ち左手には巨大で先端が広い鉄の斧剣を持っており右手には鉄の篭手を着けて手首から腕に掛けて拳銃のリボルバーのように穴が6つありその6つ全てにパイルが入ったシリンダーを装備している6mいやそれ以上に大きい巨大な獣人、悪獣ルドラがいた。
まだ扉を開け対面しただけだというのに押し潰されそうな重圧感を感じる。
だが俺達は取り乱す訳でも恐怖することもなく【ルドラ】を見据えた。
「ユエ」
「アラヤ君」
「「勝つ(ぞ/よ)!!」」
一変の迷いなく勝つことを宣言した俺とユエは玉座の間に足を踏み入れた。
俺とユエが踏み入れると青い線が玉座の間中央から円形状に広がりリネイシア城の外の正門まで広がった。
つまり城だけじゃなくここ一帯がバトルフィールドとして固定された事になる。
バトルフィールドが固定され戦いの火蓋がきられると頭を俯かせ沈黙していた【ルドラ】が獰猛な獅子の顔をあげると咆哮をあげた。
「グオオオオオオ~!!」
【ルドラ】の咆哮により城、大地、大気が震えだした。
あたかもそれは魂を持たない筈のものが魂を持っているものと同じく恐怖を感じ震えている様である。
それぐらい【ルドラ】の咆哮はそれこそキング、クイーンエイプとは比較にならない以上それだけで弱い生き物なら一瞬で死んでしまいそうなぐらい本能的恐怖を死を感じさせるものであった。