ゲームと現実2
やぁこんにちは語り手だ
グランドクエスト最後のクエストに向けて一旦現実に戻る事を告げるユエに了承したアラヤはユエと別れ現実世界へ戻ったアラヤ。
眠るアラヤ、荒木連夜に訪れるのは徐々にその有り様を変える謎の夢。
そんななか荒木連夜は学校で木戸健哉と木戸健哉連れに傷を受けた真田守と話をし真田守の心の内を知る。
そして様々な想いを抱え今日でグランドクエスト最後だと決意しログインするアラヤだった。
さてアラヤとユエは無事グランドクエストクリアできるのか楽しみであるね。
ジェネティクノーツにログインした俺は目を開けると昨日最後にログアウトした空き家の椅子に座っていた。
「…いないな」
周りを見渡すがユエの姿はなく空き家の中には俺一人であった。
(まだログインしてないのか、それとも外に出ているのか)
俺が確認の為パーティーリストを見るとユエはログインしていることが分かった。
ジェネティクノーツでは一度フレンド登録をしたら相手が現在ログインしているかどうか確認知ることが出来る。
流石にクエストをボイコットし他所へ行ったなんてのはこの短い時間ユエと接しそんな事をする娘じゃないのは分かっているので村の何処かにいるのは確実だと思う。
俺は空き家を出るとユエを探すためマロン村を見渡しながら歩いてると
「あっ!昨日のお兄さん」
花を入れた籠を右腕に持った昨日エイプルギスから助けた女の子ミミの姉のミナが俺を見つけ近寄ってきた。
「昨日はお母さんやミミを助けて頂きどうもありがとうございまたした」
幼い少女にしては大人顔負けの懇切丁寧な態度でお礼を言ってくるミナ。
「お礼は大丈夫だ。それよりもユエ…俺と一緒にいたお姉さんを探しているんだが何処にいるか知らないか」
「ああ。お姉さんなら今私の家にいらっしゃいますよ」
「そうか。君の家に居るのか」
ユエの居場所を確認した俺はミナと一緒にミナの家迄行くと
「すいません。私はこれから用事がありますのでここで失礼いたします。
お姉さんならミミと一緒に中にいらっしゃいますからどうぞご自由に入ってください」
ミナはこれまた丁寧に頭を下げるとそう俺に告げ走っていた。
(しっかりした娘だな)
それにしてもユエも家の中にまで招待されるなんて昨日の一件からかなり懐かれてるみたいだ。
俺はミナ達の家の中に入り中を見渡すがユエの姿は見えない。
「ユエの姿処かミミの姿もないな。
ミナはここにユエが居ると言ってたけど俺が来る前に別の場所に移動したのか…」
ユエが居ない以上此処に居る意味がないことが分かり家から出ようとしたら
「~♪~♪~♪」
「なんだ?」
家の奥から鼻歌まじりに声が聞こえた。
(もしかしてユエか?)
声を頼りに鼻歌が聴こえてくる奥の扉の前まで行くと扉越しに声をかけた。
「ユエか?俺だアラヤだ。今ログインしたんだが居るのか」
「えっ!アラヤ君!?」
その声から間違いなく扉の向こうにユエが居る事が分かったので
「開けるぞ」
「!ちょっとまっ……」
扉を開けると中にはまるで本当に女神だと思わんばかりの透き通った白銀の髪を水滴を纏わせ染み一つない綺麗ななめかましい白く透き通った美しい肌に張り付か着痩せするタイプなのか曲線の美しい丸みのある二つの膨らみに抱き締めたら折れてしまいそうな程括れのある細い腰を湯船の上から上半身を出し慌てた様子でこちらに右腕を向け俺の姿を認識し硬直しているユエと湯船に浸かって気持ち良さそうに寛いでいるミミがいた。
ユエの顔は風呂のせいかほのかに赤く上気させ目も潤んでいた。
俺もまさか扉の先が風呂だと思わず不用心に扉を開けてしまった結果に驚き…いやそれ以上に衝撃的なものをユエの裸を見て目をユエに向けたまま硬直した。
(綺麗だな)
正直目を奪われた。
俺もユエもお互い顔を見合せ硬直した状態だったが徐々にお互いがお互いの状況を理解していき
「キャアアア!!」
「すまん!」
ユエが顔を真っ赤にし涙を浮かべ悲鳴をあげると同時に俺は素早く扉を閉めた。
これからグランドクエスト最終クエストなのにこのハプニング正直頭が痛くなりそうだ。
俺はリビングの椅子に凭れる様に座ると頭を抱えた。
「はぁ、まじかよ」
俺は装備整えたユエが風呂から出てくると椅子から立ち上がりユエに向かって頭を下げた。
「さっきはすまなかった」
「いいから外に出て」
ユエが言った意味が理解できず頭を上げると其処には目が笑ってないユエがいた。
「え?」
ユエは言葉の意味が理解できず不思議がる俺に対し家の出入口を指差すと体を芯から凍らす底冷えのする声で
「ミミちゃんが着替えるから一回家から出て」
「了解です!」
俺は急いで家から出た。
…弁明しておくがユエが怖かったからではない。
暫くしてユエが家から出てきた。
「じゃあミミちゃん私達は家に戻るから」
先程とはまるで違う表情最早別人じゃないかと云う豹変ぷりで家の中にいるミミに笑顔で手を振りながら言った。
「え~とお姉ちゃんは大丈夫?」
何故かミミは俺をチラチラ見ながら笑顔でいるユエに恐る恐る聞くとユエは笑顔なのにまるで背後に般若を背負っている笑顔で
「フッフ。お姉ちゃんは大丈夫だよ」
俺は微笑みながらミミに言うユエを見ながら
(ちょと待て「は」ってなんだ「は」って確かに見てしまった以上何かしらあるとは思うが俺この後いったいどんな目に遭うんだよ。
まさかやられたりはしないだろうな…しないよな?)
俺はユエの後に今から断頭台に行く死刑囚のような気持ちで顔を俯かせながら歩き空き家に戻りユエがテーブルの椅子に座ると対面の椅子を無言で指し示した。
(…座れってことか)
俺はそれに文句を言うことも意見することもなく座ると直ぐ様頭を下げ
「さっきはすまなかった」
もう一度謝罪した。
「…………」
ユエは俺の謝罪に何を言うわけでもなく無言で頭を下げる俺を見ていた。
「…………」
俺も自分の不注意の結果なので全面的に自分が悪いと理解しているのでユエの許しがでるまでは頭を下げ続けるつもりだ。
無言で頭を下げる俺とそれを無言で見るユエ。
何秒、何分そうしていたのだろうかお互い沈黙を続けているとユエが絞り出す様にため息を吐き
「はぁ。もういいよアラヤ君。
本気で反省してるみたいだし、別に分かっていて開けたわけではないんでしょ」
ユエの許しの声に俺は頭を上げ
「ああ。俺の不注意とは云えまさか風呂に入ってるとは思わなかったんだ」
俺が一変足りとも嘘がないと真剣な顔で言うのでユエは俺を信じ
「なら今回のことは偶然の事故と云うことにしといてあげるよ」
(はぁー。よかった)
俺がその言葉に心の荷が降りて安堵してるとユエは見た人が惚れ惚れする様な満面の笑みを浮かべながら
「ただ次同じことしたら」
俺はユエが満面な笑みなのにも関わらずまるで先程の般若が見えそうな、それこそボス級のモンスターを相手するようなプレッシャーを感じ息を飲んだ。
「ゴクッ、お…同じことしたら」
ユエは薄く目を開き
「射ぬくから♪」
可愛らしい弾んだ声で警告した。
「今回のようなことがもう二度とないようにきおつけます」
俺はもう二度とこの様な事が成らない様に全身全霊、全身全力で最新の注意をはらい行動する事を心に誓った。
俺が椅子に座り直すと
「だけどアラヤ君そもそもログインしたなら私にメッセージ送ってくれればよかったのに」
ユエが呆れながら言った。
「あっ!すまん確かにそうすればよかったな」
俺はユエがログインしているかは確認したがメッセージの事は失念していた。
「アラヤ君のことだから普段メッセージなんか使わないから思い付かなかったとか」
「………」
確かに俺は普段送る相手もいないしそもそもパーティーを組んだり、フレンド自体が少なくやり取りしてない。
メッセージ自体もルビィやあの男としかほぼしていないしそれでもだいたいが必要な時だけで常時使ってる訳でもない。
図星を衝かれて返す言葉もない俺を見てユエはさらに呆れた顔をして
「やっぱり、そうなんだ。
まぁ、いいけど。
次からはログインしたらちゃんと知らせてね」
「ああ、わかっ…」
(次?今日でグランドクエストが終われば約束も終わりパーティーを解消してユエとはこれっきりのはずだが)
俺は何気無く当たり前の様に言うユエの言葉に不思議そうにするとユエは顔をほのかに赤く染めるて
「ほ、ほら私とアラヤ君って前衛後衛で相性もいいでしょ。
せっかくパーティーを組んだんだからこれが終わっても一人じゃ難しい別の高難度クエストとか二人で一緒にした方がクリアできそうでしょ。」
「………」
「それにアラヤ君は他の人達と違って私を嫌な目線で見たり私の力目当てでもないから私もしやすいし」
「………」
「ダメ…かな」
囃し立てるように俺に話していたユエだが俺が黙っているので不安になり両手を膝の上で握り締め上使い目で俺を見てきた。
俺はもう会うことも連絡を取ることも一緒に冒険することもないと考えてたので急なことに思考が追い付いてなかったが徐々にユエの言葉を理解していった。
俺は母親の死から他人と関わることが怖い、自分のせいで他人を不幸に取り返しのつかない事になったらと不安に思っている。
これは最早只の俺が抱く感情ではなく最早俺を蝕む呪いだ。
ゲームとはいえソロでプレーしているのもそれが理由だ。
一時以上に誰かと関わる事に拒否感を持っている。
やむ得ないクエスト時などはパーティーを組んだりするが結局クエスト中パーティーの輪には入れず距離を置いていた。
中にはそんな俺でも気にかける物好きな奴もいた。
だがそんなのは稀であり大多数は俺をお高くとまった奴、生け簀かない奴だと言ってくる。
そのせいもあってフレンドも片手で数えるぐらいしかいない。
別に今更其れが苦になんて思わない。
ユエとパーティーを組むさえも当初はそう思った。
きっと他のプレイヤー同様嫌な奴だとどうしようもない奴だと飽きられると思った。
しかし俺の思いとは裏腹にユエは俺を気に掛け俺を嫌うこともなく真摯に向かってきた。
だが俺は不安を抱かずにはいられない。
今はそうかもしれないが未来は分からない。
人の心感情はそんな簡単なものじゃない数日、数時間、数分或いは数秒後にはユエも気持ちが変わり今までの人達みたいに俺を蔑み軽蔑し増悪を抱き関わらなければ、お前のせいだと言うかもしれない。
意識が混濁し全身から汗がでそうになり心が深く海の底に沈みそうになった時
「大丈夫、大丈夫だよ」
いつの間にか俺の側まで来ていたユエが両腕で俺の頭を抱き締めながら母親が怯える子供を安心させるように優しく温かく言った。
何が大丈夫かは分からないユエ自身も俺の心情なんて心の内なんて全て分かってはいなかっただろう。
ユエは俺の尋常じゃない様子を見て安心させようとしただけだろう。
だけど今の俺はその優しさ暖かさに救われる気がした。
俺はユエに抱き締められたまま
「ユエ」
「なぁに。アラヤ君」
「これからもよろしく頼む」
「うんこっちこそよろしくね」
未来がどうなるか今は分からない。
だけどユエと一緒ならどんな道を歩んでいくことになろうと大丈夫だろうとこの時の俺は思っていた。
人の心は複雑で摩訶不思議なものだ。
嫌いだと言いながらも気になっていたり話したくないと言いながらも聞いてほしくて、その通りなものもあればまったく逆の想いを抱くこともある。
確かでありながら不確かで愚直でありながら狡猾で言葉にすれば簡単なものも心の中では複雑で他人成らず己ですら制御できず理解できないもの。
まさに今アラヤが感じているものもそうだ。
(関わってはいけない自分の事など知らないのに)と想いながらもユエとこの先も一緒に居たいと想ってしまう。
その感情が何なのかも理解していないのに。
だが今この時はその感情が胸の内心の中から溢れる謎の奔流が何なのか理解できずともユエの胸に頭を預け抱かれているアラヤは只安らかに安堵していた。
この先ユエの真実を知り世界は常に幸福には出来ておらず何処までも非常な現実が隣り合わせにあり嘆きと哀しみが意思を持つように直ぐ側まで今か今かと忍び寄ってることを思い出すまでは。