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ゲームと現実


やぁ、こんにちは語り手だ

さて、とんでもないことが分かったね。

ユエの口から語られたのはPAS【プレイヤーアシストシステム】の根幹Fシステム。

人間の未来の可能性を信じ作られたシステムの心意を思案するアラヤ。

そんななかクエストは順調に進んでいるのにも関わらず時折表情に陰りを見せるユエ。

さてさて今回はどんな話しになるのか。

ああそれにしても素晴らしい、人間の未来に可能性を持ち表すFシステム。

Fシステムが表すように人の未来は希望に満ち溢れているものだ……と言いたいとこだが果たして人間の可能性とはそんなにも万能であるのかそもそも人間の行き着く先自体どこなのか…。



俺は自分のベッドで目が覚めると空腹を感じそういえば学校から帰ってからなにも食べていなかった事を思い出しながら側に置いてるスマホを見ると時間は20:00になっていた。

ログインしたのが17:00ぐらいだから4時間はジェネティクノーツの中にいたことになる。

だが別に今日が遅かったわけではなくだいたい何時もこの調子であり最早日課である。

「腹減ったし、風呂にも入らなきゃな」

俺は箪笥から着替えを取ると一回に降りバスルームで軽くシャワーを浴びると着替えてリビングに行った。

この間約10分足らずまさに烏の行水である。

別段風呂が嫌いなわけではない。

どちらかと言うと好きであるが父親が帰ってくるのが遅いしシャワーだけで風呂に入らないかもしれないので自分だけの為に風呂を溜めるのが面倒なのである。

じゃあ父親に風呂に入るか聞けばいいんじゃないかと思われるが会話処か顔を会わせることも朝食の時ぐらいしかしていないお互いが避けてる状況では無理なのだ。


一階に降りた時チラリと玄関の方を見たが父親の靴はなくどうやらまだ家に帰ってきていないみたいだ。

いつもの事なので遅くとも気にはならないが。

俺は手軽に二人分のチャーハンを作ると自分の分は食べ父親の分にはラップをしテーブルの上に置いたまま自室に戻った。


俺は学校から出された数学の宿題を終わらせ明日の準備を終えると時間は既に22:00になってたので今日はもう寝ることにした。


俺は寝ることにしたものの中々寝付けずベッドに仰向けになりながら考え事にふけっていた。

(いよいよ明日はグランドクエスト最終クエスト一番の最難関だが俺はユエと共にラインハルトしかクリア出来なかったクエストを果たしてクリアすることができるのだろうか)

最後のクエストに不安を抱くなか

(いやそれよりも明日のグランドクエストが成功であれ失敗であれどちらにしろ此でユエとの約束は終わりだ)

最初からこのグランドクエストだけの約束なので終わりなんて分かりきってたことなのに何故だか分からないがユエと此で終わりかと思うとなんだか心の中が切なくなった。

そもそもユエとパーティーを組んだのも初めてのうえユエ自身のことも知ってるわけではない。

だがこの短い時間の中でユエと共に戦ったことその中でユエの様々な表情を見たことが俺の中に鮮明に残っていている。

前にも別のプレイヤーとパーティーを組んだことはあるがこんなのは初めてだった。

何故かは分からないが胸が締め付けられる。

その時俺は自分でも何故だか分からないがまるでそこにユエがいるみたいに空中に右手を伸ばそうとしたら

「ツッ!」

まるで流れる川の様に倒れ付し血を流し続ける母親の姿が脳裏によぎった。


俺の母親は何時も元気で活発で周りから頼りにされ好かれる優しい人であった。

少し…ほんの少しであるがユエが笑った顔に母親の面影を感じた。

そのため母親が死んだ時は母親の両親・親戚・知人から散々俺のせいだと罵倒され蔑まれ憎まれた。

幼かった俺にはその憎しみ哀しみの負の感情の塊は夜の漆黒の帷の様に暗く重くのし掛かった。


その時のことは母親を亡くして失意のドン底にいた俺には周りが俺に対して向けた負の感情以外それこそ父親がその時怒り何かを俺に言ってた記憶はあるが何を言ってたかはあまり覚えてはいない。

だが例え覚えていなくてもきっと周りと同じく俺に憎み怒りの言葉を吐いてたに違いない。


「ハッ!ハッ…」

俺は全速力で走った様に鼓動が激しく高まり息が荒くなる。

俺は伸ばした右腕を目の上にやり覆い被せた。

(馬鹿か…俺は。こんなのはたまたまそうなっただけで本来ならユエと関わることなんてなかったんだ。だから深追いなんてするな、俺が関わろうと動くとどうせろくな結果にしか成らないのは身に染みて分かっているはずだ)

自分に言い聞かせるように心の中で戒め荒い息を落ち着かせようと深く深呼吸して目を瞑ると

(明日だ。明日には全て終わるどんな結果に成ろうと彼女とは明日で終わりそれだけだ)

そう決意すると眠りに着いた。


眠りに着いた俺に待っていたのは何時もの夢暗い空間に星が散りばめたような不思議で神秘的を感じさせる空間だった。

空間に居たのは昨日よりも更に光が濃くなった光の粒子が集まった謎の存在は今回は手だけではなくかろうじて人間の輪郭まで型を形成したものだった。

相変わらず俺は意識だけだが。

「―選択―」

「―選択―」

「―選択―」

ノイズみたいな声が昨日よりも更にはっきりと聞こえる様になり選択と言う言葉だけかろうじて聞こえる様になった。

(選択…一体この存在は何を言っているんだ)

選択という言葉だけは分かるがその先はまだ何を言っているのかは分からなかった。

その光の粒子は昨日とはまるで違いゆっくりと静かに意識だけの俺に腕を伸ばしてきた。


「…朝か」

目覚めた俺は制服に着替えると昨日と同じ自分と父親の分の朝食を作り自分の分を食べ終えると食器を洗い学校へ向かった。


ちなみに朝食を食べてる時は父親も一緒だった。

何時帰ってきたかは分からないが帰っていた父親がおり朝食を食べに来た。

朝食中の俺達の間には相変わらず会話がなかったが。



学校の昼休み先生から用事を頼まれ何時もより遅めに購買でパンを買った俺は何時もの様に屋上で食べようと階段を上がっていたら

木戸健哉とその連れの二人が階段の上から下へ降りてきた。

木戸健哉は何時も通り苛立った表情であり連れの二人は何が可笑しいのかニヤニヤた表情をしていた。

「ハッハ流石だな健哉!相変わらずおっかねぇよ!」

「まったくだぜ惚れ惚れするぐらいの怒りっぷりだな!」

「まぁそれも仕方ねぇか!ちんたらしていた守の奴が悪りぃしな!」

「確かに言えてるな!」

(守?何かあったのかあいつ)

可笑しそうに下卑た笑いをする連れに苛ついたまま黙っていた木戸健哉は唐突に口を開き

「あいつが弱ェのがいけねぇんだよ、弱ぇ奴は何されようが仕方ねぇよ。

チッ!どいつもこいつも俺を苛立たさせやがる」

「ハッハハ確かにな!」

「ハッハハあいつが弱ェのがいけねぇな!」

連れの二人は木戸健哉の言葉に同意だと笑い声をあげた。


俺は木戸健哉達に関わらないように何も言わず黙ったまま階段を上がっていたら

木戸健哉達とすれ違うさい木戸健哉がこちらをギロリと睨み付け舌打ちするとそのまま階段を下へ降りていった。


俺が屋上に着き扉を開けると屋上には顔を腫らしてぼろぼろの姿になった真田守が屋上のフェンスに寄りかかっていた。

俺は真田守の姿から先程の木戸健哉達の言葉の意味を理解した。

(あいつらが言ってたことはこう言うことか……)

俺は真田守の側に近寄り声を掛けた。

「おい大丈夫か」

「えっ?」

真田守は俺の存在に気付いてなかったみたいで突然の声に顔を上げた。

「あっ…荒木君」

傷ついた顔で笑うと俺が傷ついた自分を見てるのに気付き

「あっ、えっと、これは」

しどろもどろになりながら何があったか言いづらそうにしていたので

「木戸達か」

「………うん」

直球で告げると真田守は顔を俯かせて微かな声で頷くと顔を上げニコニコと無理な笑顔で

「アッハハ。でもね僕が何時もよりパンを買うのが遅れたのが悪かったんだ」

えへへと笑いながら答えになってない答えを俺に告げる。


真田が責任がなく悪くないなんてことはボロボロの姿で無理に笑う真田守を見れば一目で分かる。

だいたいパンを買うのが遅れたぐらいで暴力を振る木戸健哉達の方が悪いに決まっている。

「なぁ、お前はそれでいいのか」

「えっ?」

真田守は俺が何を言ってるのか分からず不思議がっているが

「そのままでお前はいいのか」

「ああ…」

俺が再度真田守に問うと俺の言葉の意味を理解し儚げに笑うと両手で膝を抱え

「荒木君。僕もね今のままがいいなんて思ってるわけじゃないんだ。でも今よりもっと酷くなるんじゃないかと思うと怖くて一歩を踏み出す勇気がでないんだ」

「…そうか」

真田守とは置かれている状況は違えど真田守のその気持ち自体は俺にも痛いほど分かる。


未来は誰にも分からない、自分が選ぶ未来が正しいのかそれとも間違っているのかそれは誰にも分からない。

自分が踏み出したせいで誰かが不幸に成るんじゃないかと怖くて一歩が踏み出せない。

だから何も選ばず現状を今のままを受諾しようとする。


(同じ穴の狢だからこそ俺は真田に何も言えない…いや言う資格はない)


俺は真田守の横に座り黙ったまま買った惣菜パンを食べてると

「そうだ!荒木君はゲームってしたりする?」

真田守が沈黙の雰囲気に気を遣ってか俺に話をふってきた。

「ああ。ゲームはするな」

真田守は俺の返答に嬉しそうにパァ!と顔を輝かすと

「荒木君は何のゲームをするの!」

先程までの事を忘れたのかそもそも相当ゲームが好きなのかグイグイ俺に詰め寄る勢いで聞いてくるので俺は若干引きぎみに成りながら

「あ…ああ今はフルダイブゲームをやっている」

「フルダイブゲーム!面白いよね!僕も今はフルダイブゲームに夢中なんだ!、今までのテレビゲームなんかも好きだけど今は断然フルダイブゲームかな、ゲームの中に入れるなんて夢の様だよ!本当に僕が生きてる間にできてくれて感謝で一般だよ!」

輝く様な明るい表情で囃し立てる様にマシンガントークを炸裂させる真田守の姿に本当にゲームが好きなのが伺えた。

「真田は今までどんなフルダイブゲームをしてきたんだ」

現在のフルダイブゲームはジェネティクノーツだけではない。

知能系や教育系、スポーツ系、レース系など様々なジャンルがありジェネティクノーツ程ではないがVRMMORPGもある。

「え~とそうだね。パズル系、教育系、スポーツ系、レース系、VRMMORPG系取り敢えず色々やったよ。」

真田守は最早ゲームが好きと言うレベルを通り越しゲームを愛していると言うレベルに見える。

「VRMMORPGだと何をやっていたんだ」

「今はジェネティクノーツをやっているけど」

(こいつもやっているのか。まぁ、ここまでのゲーム通ならやっていても不思議じゃないな。逆にやっていないと言われた方が驚くくらいだ)

「ハイオメガ、デッドバイト、リバイスクエストをやってたよ」

「はぁ!?ハイオメガにデッドバイト、リバイスクエストってまじか!?」

予想だにしない三種のゲームに思わず声を荒げた。

「荒木君も知ってるの!」

「あ…ああ。ある意味有名なゲームだからな」

この三種のゲームはジェネティクノーツとは同じVRMMORPGでありながらいずれもENDゲームと呼ばれておりある意味ジェネティクノーツのグランドクエスト以上の難しさや理不尽さである。

ちなみにENDゲームの意味はクリアが無理すぎて最早終わっているゲームと言う意味である。


まずハイオメガだがプレイヤーは近接武器オンリーに対し敵は近接武器だけではなくレーザービーム等遠距離武器をプレイヤーの視界を覆うぐらいと云うか弾幕で視界を染め尽くすぐらいの弾幕攻撃をしてくる。

しかも通常のモンスターがだ。


次にデッドバイトだがこれはそもそもHPがなく一回でも攻撃を受ければその時点で  GAMEOVERである。


最後にリバイスクエストだがまず動作が遅く動こうとしてもタイムラグが長いのでまるでスローモーションに近い動きだし、出現したモンスターからは決して逃げれない。


何れも多くのプレイヤーからはクリア出来ないと匙を投げられ今現在やっているのは相当コワなゲーマーぐらいだ。


俺は真田守と昼飯を食べながらゲーム談義をしてたらと云うか

(ほとんど真田が喋っていたが)

昼休みが終わったので俺は教室に真田守は一応怪我の治療の為に保健室の方に別々な方向に別れて行った。


真田守は別れ際に

「荒木君さっきは心配してくれてありがとう」

と笑みを浮かべながら礼を言った。

俺は真田守に何もしてないし何もできない。さっきもただ気になっただけであり礼を言われる資格なんてない。


だが俺の脳裏に「なんだかゲームだとはいえあんなに感謝されるのって悪くないね」

あの時のユエの言葉がよぎった。


俺は家に帰ると今日は何時終わるか分からないので先にシャワーを浴び何時もの黒のTシャツ短パンに着替え自室に戻るとデバイスを頭に装置しベッドに横になり

「ふぅ。今日でグランドクエストを終わらせる」

軽く息を吐くとジェネティクノーツにログインした。

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