~後編~
その少年は10代にしてはしっかりしている男だった。
最初は挨拶もボソボソとしている頼りなさが伺える雰囲気だったが、仕事をさせてみればきちんとやり切る姿勢をみせてくれた。自分よりも真面目だし、自分よりも仕事ができる男ですらあるかもしれない。
鬼道院は自然と仕事終わりに飲み物を奢る事にした。
自分よりも年下の人間にこんな感情を抱くことはそうそうない。
まるで誰かを思いだすが、それは思いださなくていいことなのかもしれない。そういえば彼はどこかの誰かに似ている気がしてならないが……。
そして鬼道院は気のままに零と親睦を深めていった。
気がつけば彼とバンドを組む関係にまでなった。
楽器の演奏なんて10代の頃以来だ。そんな自分がこんなにも歳下の少年とバンドを組むことになるなんて夢にも思ってみなかった。
しかし彼は過去に殺人を犯したことを告白した。そのままバンドは解散することに。それはバンドにメジャーデビューの話がきたタイミングでの出来事。
仕事の休憩中に煙草を吹かしながら、ふと思いだす。
「ははは、面白いな! 自分の名前がバンド名に冠されるなんて最高じゃないかよ!」
「面白くないですよ~。それにこのバンド名には何か嫌な響きを感じちゃって」
「そうか? 俺はイイと思うけどなぁ。でも、何故だろうな? 俺も懐かしい響きを感じるなぁ。何故かな」
「慰めているつもりですか?」
「いや、励ましているつもり」
あのとき、彼は恥じらってはいたが活き活きもしていた。
「零の指弾」
何も思わずにその言葉を呟いた。懐かしく感じるその響き。
「青春なぁ」
そうぼやく自分はもう立派なオッサンか。若い零なんかと話していると余計そう感じてしまう。
煙草の火を消す。今度久しぶりに「零の指弾」の特別ライブをやる予定だ。
特別ライブの観客はたった一人。神奈川から遥々やってくる零の彼女だ。
でも、面倒くさくもないし、そういう悪い気もしない。
零からお願いされる事であれば、喜んでやってやろうと思えるのだ。
人には人を惹きつける魅力を持った奴がいる。
それはときに恐ろしくもあり、ときに頼もしくもあるものだ。それを極めた奴が組織のトップに着くのだろう。自分にそんな力はないと鬼道院は自負する。
しかし神と言われる存在がもしもこの世界にいるだとしたら、それは人智を超えた存在であるのに違いはないが、余程な魅力を持っているのも違いない。
目の前にいる少年、黒崎零に鬼道院魔裟斗は何か眩しさを感じていた。
でもこれは心地のいい眩しさだ。
もしも世の中に神様と謳われる存在がいるのであれば「こういう奴であって欲しいな」と彼は心のなかで唱えてみせた――
∀・)お付き合い頂き大変にありがとうございました♪♪♪シンキロの外伝である本作ですが、鬼道院魔裟斗が白崎創と黒崎零という義兄弟のそれぞれをそれぞれと違う世界で視て想う事をテーマとしていました。最終的に宗教の信仰にまで話が発展しましたが(笑)黒崎(白崎)家のルーツってきっと最強の家系なんでしょうね。そんなことを思いながらの製作でした。シンキロに関しては『SHINIGAMI GAME』の更新がのちほどあると思われます。そちらも宜しければチェックしてみてください♪♪♪いでっちでした★★★彡