~前編~
鬼道院は川崎からそのまま西へ南へと住居を変えていった。
大阪の街で過ごした期間もあったが、そこは彼にとって過ごしにくい地域であったようだ。岡山、広島、愛媛と渡ってもその感触がどことなくあった。
結局彼は地元の鹿児島まで戻ってきた。しかし世で嫌われ者と化した彼には帰る場所なんてどこにもなかった。彼が育った児童養護施設もなくなっていた。
そしてここにきて彼もようやく気づいた。彼の命を狙いに誰もやってくる事なんてなかったのだ。彼は警戒してはいたが、やはり大野組の狙いは白崎組の解体にあり、そこから逃げていなくなる存在に注意なんてなかったのだろう。
それは組長の息子にしても同じである。いざという時にトンズラをこく男に何の未練もなかったのだと思える。アレでもそういう中途半端な自分で川崎に残ったままなら、実際殺害されたのかもしれない。しかし組長の息子がみせた小型トランシーバーのようなマシーンは本当に殺害マシーンなのか疑問も残る。
まだ高校生にも至らない子供のハッタリだったのではないか? と疑っても可笑しくはない。イラクが大量殺戮兵器なんて持ってなかったように、事実はときとして湾曲されるものなのだから。
しかしあの少年の目はどこか恐ろしかった。鬼道院はそれを思いだすたびに川崎をはじめとした関東圏には戻るまいと固く心に誓ってしまうものだった。
結局彼はお金を溜めて北海道へ渡ることにした。
北海道に渡って彼は清掃業の仕事に就いた。その会社は鬼道院のような男も含め“ワケあり”の従業員を採用していたのだ。その風土がどことなく彼にはしっくり合っていた。この手の環境は何もこれが初めてではなかったが、それでもここまでフィットすることはそうそうないだろう? と思わせられるほど職場の雰囲気と彼の意思の相性が合ったのである。
そのままに彼は3年ほど北海道の旭川で生活を続けるのである。
やがて彼はそこで黒崎零という少年と出会うのだ――
∀・)読了ありがとうございます♪♪♪気が付く方は気が付くと思うんですが、じつはシンキロの「改正された世界」とリンクしちゃってたりするんですよね~。次回も乞おう御期待ください☆☆☆彡